『高慢と偏見』を原書で読む(第44回)

(テキスト47ページ、1行目〜)

“Thank you—but I always mend my own.”

mend(他)(こわれたものなどを)直す、修理(修繕)する、繕う ・mend a quill pen 鵞ペンを切りなおす
my(代)私の
own(代)(one's ~/独立用法で)わがもの、わが家族、いとしい者

“How can you contrive to write so even?”

how(副)(疑問詞)(理由を尋ねて/しばしばcan(could)を伴って)どうして(まあ)、なぜ
contrive(他)何とか(うまく)(~)する(=manage)(+to do)
write(自)(字を)書く
so(副)(程度を表わして)それ(これ)ほど、そんな(こんな)に、これくらい
even(副)平らに

He was silent.

“Tell your sister I am delighted to hear of her improvement on the harp, and pray let her know that I am quite in raptures with her beautiful little design for a table, and I think it infinitely superior to Miss Grantley’s.”

tell(他)(人に)(~を)話す、告げる、語る、言う、述べる(+目+that)
your(代)あなた(たち)の、君(ら)の
delighted(形)(~に)大いに喜んで(+to do)
hear of ~ ~のこと(消息)を聞く
her(代)彼女の
improvement(名)改良、改善、進歩、上達
on(前)(関係を表わして)~について、~に関する
harp(名)ハープ、竪琴(たてごと)
pray(副)どうぞ、どうか、願わくは(=please)
let(他)(使役を表わして)(人に)(働きかけて)(~)させる(+目+原形)(原形はknow、hear、seeなどに限られる)
know(他)(~を)知る、知っている、(~が)わか(ってい)る(+that)
that(接)(名詞節を導いて)(~)ということ/(目的語節を導いて)/(主語節を導いて)
quite(副)(程度を表わす形容詞・動詞などを修飾して)(思ったより)かなり、なかなか
in(前)(状態を表わして)~の状態に(で)
rapture(名)(また複数形で)有頂天、狂喜、歓喜 ・be in raptures 有頂天になっている
with(前)(感情・態度の対象を導いて)~に対して、~に
design(名)模様、ひな型
think(他)(~と)思う、考える(+目+補)
infinitely(副)(比較級の前に用いて)ずっと、はるかに
superior(形)(質・程度などが)すぐれた、上等の、上質の(to)(⇔inferior)
to(前)(比較を表わして)~に比べて、~より

“Will you give me leave to defer your raptures till I write again? ―At present I have not room to do them justice.”

will(助動)(意志未来を表わして)(2人称を主語とする疑問文に用い、相手の意志を問い、また依頼・勧誘を表わして)~してくれませんか
give(他)(人などに)(時間・機会・許可・休息などを)認める、許す(+目+目)
leave(名)許し、許可(=permission)(+to do)
defer(他)(~を)延ばす、延期する(=postpone)
till(接)(動作・状態の継続の期限を表わして)~まで8ずっと)
write(自)手紙を書く、便りをする
at present 現在は、今は、目下(=at the moment)
have(他)(しばしば目的語に形容詞用法のto不定詞を伴って)((~すべき(できる))用事・時間などを)もっている、与えられている
room(名)あき場所(+to do9
do ~ justice ~を実物どおりに表わす

“Oh! it is of no consequence. I shall see her in January. But do you always write such charming long letters to her, Mr. Darcy?”

oh(間)(しばしば直後にコンマや!などを従える)(驚き・恐怖・苦痛・願望・反応・了解などを表わして)ああ!、おお!、おや!
of(前)(of+名詞で形容詞句をなして)~の
consequence(名)(影響の)重大性、重要さ ・of no consequence まったく取るに足りない
see(他)(人に)会う、面会する
in(前)(時間を表わして)~(のうち)に、~の間、~中 ・in January 1月に
do(助動)(be以外の動詞の疑問文に用いて)
write(他)(人に)(手紙・葉書きなどを)書く
such(形)(程度を表わして)(形容詞+名詞の前で/副詞的に)あれほど(これほど)の、あんな(そんな)に、このように
charming(形)(物事が)すてきな、とてもおもしろい(楽しい)
to(前)(行為・作用の対象を表わして)~に対して、~に
Darcy ダーシー

“They are generally long; but whether always charming, it is not for me to determine.”

generally(副)概して、大体
it(代)(形式主語としてあとにくる事実上の主語の不定詞句・動名詞句・that節などを代表して)
for(前)(通例it is for a person to doの形で)(~するのは)~にふさわしい、~がすべきことである
determine(他)(特に物事が)(要因となって)(~を)決定する、決める(+wh.)

“It is a rule with me, that a person who can write a long letter, with ease, cannot write ill.”

rule(名)慣例、通例、常のこと
with(前)(関係・立場を表わして)~にとっては、~の場合は
who(代)(関係代名詞)(制限的用法で)~する(した)(人)(通例「人」を表わす名詞を先行詞とする形容詞節をつくる)/(主語の場合)
with(前)(様態の副詞句を導いて)~を示して、~して ・with ease やすやすと、楽々と
ease(名)困難のないこと、容易さ、平易(⇔difficulty)・with ease 容易に、楽々と
ill(副)悪く

“That will not do for a compliment to Darcy, Caroline,” cried her brother―“because he does not write with ease. He studies too much for words of four syllables. ―Do not you, Darcy?”

that(代)(指示代名詞)(前に言及しているか、場面上了解されている物事をさして)そのこと
will(助動)(話し手の推測を表わして)~だろう
do(自)(通例will、won'tを伴って)(~に)役に立つ、間に合う、十分である(for)
for(前)(目的・意向を表わして)~のために、~を目的として
compliment(名)賛辞、ほめ言葉
Caroline(名)キャロライン(女性名/愛称Carrie)
cry(他)(~を)大声で叫ぶ、どなる(+引用)
because(接)(副詞節を導いて)(なぜなら)~だから(である)、~なので
study(自)勉強する、学ぶ(for)
too(副)(形容詞・副詞の前に置いて)非常に
much(副)(動詞を修飾して)おおいに、たいそう、非常に
four(形)(基数の4)4の、4個の、4人の
syllable(名)音節、シラブル

“My stile of writing is very different from yours.”

stile→style(名)やり方、スタイル、方式、流儀(of)
writing(名)書くこと、執筆
from(前)(区別・相違を表わして)~から、~と ・be different from ~と異なる
yours(代)あなた(たち)のもの

“Oh!” cried Miss Bingley, “Charles writes in the most careless way imaginable. He leaves out half his words, and blots the rest.”

Charles(名)チャールズ(男性名/愛称Charley、Charlie)
write(自)原稿(文章)を書く
in(前)(方法・形式を表わして)~で、~をもって ・in this way この方法で、こうやって
most(副)(主に2音節以上の形容詞・副詞の最上級を伴って)最も、いちばん
careless(形)(人が)不注意な、軽率な、そそっかしい(⇔careful)
way(名)やり方、手段 ・in a different way 違った方法で
imaginable(形)(通例強調のために最上級形容詞またはall、every、noなどに添えて用いて)想像できる、想像できる限りの(=possible)
leave out(~を)省く
half(形)(冠詞またはone'sのついた名詞の前に置いて)~の半分の
his(代)彼の
word(名)(しばしば複数形で)(口で言う)言葉
blot(他)(~に)インクをにじませる、しみをつける
rest(名)(the ~)残り、残余(不可算をさす時は単数扱い、可算(複数名詞)をさす時は複数扱い)

“My ideas flow so rapidly that I have not time to express them—by which means my letters sometimes convey no ideas at all to my correspondents.”

idea(名)思いつき、着想、アイディア
flow(自)(言葉・アイディアなどが)すらすらと出る
so(副)(程度・結果を表わして)(so ~ that ~で)(順送りに訳して)非常に~なので~
rapidly(副)速く、速やかに
that(接)(副詞節を導いて)(so ~ thatの形で程度・結果を表わして)(非常に)~なので、~(する)ほど
time(名)(必要な)時間 ・I have no time to do ~する時間がない
express(他)(思想などを)(言葉で)表現する、言い表わす
by(前)(手段・媒介を表わして)~で
which(形)(関係形容詞)そして(だが)その
means(名)方法、手段
convey(他)(意味・感情・情報などを)伝える、伝達する(=communicate)
at all(否定文に用いて)少しも(~でない)
correspondence(名)書簡(往信・来信のいずれも含む)

“Your humility, Mr. Bingley,” said Elizabeth, “must disarm reproof.”

humility(名)謙遜(けんそん)、卑下(⇔conceit、pride)
say(他)(人に)(~と)言う、話す、述べる、(言葉を)言う(+引用)
Elizabeth(名)エリザベス(女性名/愛称Bess、Bessie、Bessy、Beth、Betty、Eliza、Elsie、Lily、Lisa、Liz、Liza、Lizzie、Lizzy)
must(助動)(当然の推定を表わして)~にちがいない、~に相違ない、きっと~だろう
disarm(他)(怒り・疑いなどを)やわらげる
reproof(名)叱責(しっせき)、非難

“Nothing is more deceitful,” said Darcy, “than the appearance of humility. It is often only carelessness of opinion, and sometimes an indirect boast.”

deceitful(形)(外見など)人を誤らせやすい
appearance(名)(人・ものの)外観、見かけ
only(副)ただ単に
carelessness(名)<careless(形)無関心な、むとんちゃくな(=casual)(of)
of(前)(関係・関連を表わして)~の点において、~に関して、~について
opinion(名)一般(世間)の考え、世論
indirect(形)間接的な、二次的な
boast(名)誤り、自慢(の種)

“And which of the two do you call my little recent piece of modesty?”

and(接)(等位接続詞)(相手に対する疑問文中で)それで、じゃあ
which(代)(疑問代名詞)(一定数のもの・人の中からの選択に関して用いて)どちら、どれ、どの人/(目的語の場合)
of(前)(部分を表わして)~の中野
two(代)(複数扱い)二つ、2個(人)
call(他)(~と)(~と)みなす、考える(+目+補)
little(形)ささいな、大したことのない
recent(形)最近の、近ごろの、新しい
piece(名)(不可算の名詞を伴って、まとまりのある数量を示して)一片、1個、1枚、1編、1節(of)
of(前)(分量・内容を表わして/数量・単位を表わす名詞を前に置いて)~の
modesty(名)謙遜(けんそん)、謙虚、慎み深さ

“The indirect boast; ―for you are really proud of your defects in writing, because you consider them as proceeding from a rapidity of thought and carelessness of execution, which if not estimable, you think at least highly interesting. The power of doing any thing with quickness is always much prized by the possessor, and often without any attention to the imperfection of the performance. When you told Mrs. Bennet this morning that if you ever resolved upon quitting Netherfield you should be gone in five minutes, you meant it to be a sort of panegyric, of compliment to yourself—and yet what is there so very laudable in a precipitance which must leave very necessary business undone, and can be of no real advantage to yourself or any one else?”

for(接)(通例コンマ、セミコロンを前に置いて、前文の付加的説明・理由として)という訳は~だから(=as、since)
really(副)実際には、実のところ、実際
proud(形)誇らしげな、自慢する、得意な(of)
of(前)(目的格関係を表わして)(形容詞に伴って)~を
defect(名)欠点、欠陥(in)
in(前)(範囲を表わして)~において、~内で
consider(他)(~を)(~だと)みなす、考える(+目+as 補)
as(前)(動詞の目的補語を導いて)~と、~だと(あとに名詞のみならず形容詞や分詞が用いられることもある)
proceed(自)(~から)発する、生ずる、由来する(from)
from(前)(出所・起源・由来を表わして)~から(来た、取ったなど)
rapidity(名)急速、敏捷(ぶんしょう)
of(前)(主格関係を表わして)(動作の行為者、作品の作者を表わして)~が、~の
careless(形)(行為・仕事など)ぞんざいな、いいかげんな、不注意(不用意)でした
execution(名)(職務・計画・命令などの)実行、遂行、達成
which(代)(関係代名詞)(非制限的用法で/通例前にコンマが置かれる)(主格・目的格の場合)そしてそれは(を)
if not ~でないとしても
estimable(形)(人・行動が)尊重(尊敬)すべき、敬意を表わすべき
think(他)(~を)(~だと)思う、みなす(+目+補)
at least(前言より正確に言い直して)少なくとも
highly(副)(強意語として)大いに、たいへん、非常に、とても(=very)
power(名)力(of)
quickness(名)速さ、迅速
much(副)(過去分詞を修飾して)大変に、非常に、大いに
prize(他)(しばしば受身で)(~を)重んずる、尊ぶ(=treasure)
possessor(名)(通例単数形で)所有主、占有者(=owner)
any(形)(否定文で名詞の前に用いて)(可算の名詞の複数形または不可算の名詞につけて)少しも(~ない)、何も(~ない)、だれも(~ない)
attention(名)注意、注目(to)
imperfection(名)不完全
performance(名)実行、(任務・義務の)履行
when(接)~する時に、~時(時を表わす副詞節をつくる)
Bennet ベネット(Jane Austen, Pride and Prejudiceに登場する一家)
this(形)(指示形容詞)(たった)今の、現在の、今~、当(しばしば時を示す名詞を伴って副詞句をなす)(⇔that)・this morning けさ
morning(名)(副詞的に)朝に、午前中に ・this morning 午前中に
ever(副)(条件文に用いて)いつか、いずれ
resolve(自)(~することを)決心する、決定する(on doing)
quit(他)(場所などを)去る、立ち退く
should(助動)(可能性・期待を表わして)きっと~だろう、~のはずである
gone(形)(人が)いなくなった、行ってしまった
five(形)(基数の5)5の、5個の、5人
mean(他)(~を)(~の)つもりで言う
a sort of ~ 一種の~、~のようなもの
panegyric(名)称賛の演説(文)、賛辞(=eulogy)
compliment(名)賛辞、ほめ言葉
yourself(代)(再帰的に用いて)あなた自身を(に)/(前置詞の目的語に用いて)
yet(副)(andまたはbutに伴って)それにもかかわらず、それなのに、しかもなお
laudable(形)称賛するに足る、見上げた、あっぱれな
precipitance(名)=precipitancy(名)大急ぎ、大あわて
which(代)(関係代名詞)(制限的用法で)~する(した)(もの、事)(通例「もの」を表わす名詞を先行詞とする形容詞節をつくる)/(主格の場合)
leave(他)(~する)ままにしておく(+目+補)
business(名)業務、事務、仕事、執務、営業
undone(形)できあがらない、未完成の ・leave one's work undone 仕事をしない(仕上げない)でおく
can(助動)(可能性・推量を表わして)(疑問文で)~はずがあろうか、いったい~だろうか
advantage(名)(他より有利な立場にあることから生じる)利益
to(前)(行為・作用の対象を表わして)~にとっては、~には
anyone(代)=anybody(代)(否定文で用いて)だれか
【参考文献】
Pride and Prejudice (Penguin Classics)』Jane Austen・著
自負と偏見 (新潮文庫)小山太一・訳
新英和中辞典 [第7版] 並装』(研究社)
リーダーズ英和辞典 <第3版> [並装]』(研究社)

『夜と霧』

この週末は、ブルーレイで『夜と霧』を見た。

夜と霧 アラン・レネ Blu-ray

夜と霧 アラン・レネ Blu-ray

  • 発売日: 2020/04/24
  • メディア: Blu-ray
1955年のフランス映画。
監督は、『去年マリエンバートで』のアラン・レネ
撮影は、『鬼火』のギスラン・クロケと、『去年マリエンバートで』のサッシャ・ヴィエルニ
本作は32分のドキュメンタリーである。
十数年前にDVDで見て以来、二度目の鑑賞。
特に、後半は胸が痛くなる。
カラー、スタンダード・サイズ。
重苦しい音楽から始まる。
現在(撮影時点)はカラーで、戦時中はモノクロの記録フィルムで描かれる。
アウシュビッツの跡地。
のどかなヨーロッパの風景である。
1933年、ナチスヒトラーは収容所の建設に全国民の協力を求め、業者が群がる。
ヨーロッパ各地でユダヤ人が逮捕され、貨車に積まれて収容所へ。
途中、必死の落とし文をする者も。
死者も出た。
収容所では、囚人(ユダヤ人)達は裸にされ、丸刈りにされ、ナンバリングの入れ墨を彫られる。
政治犯と刑事犯は色分けされる。
政治犯の方が格上。
毎朝、点呼が行われるが、死者で毎日数が変わる。
囚人達は強制労働させられる。
食事はスープの配給。
トイレは、床に穴が開いているだけ。
ケガ人専用棟もある。
当然ながら、裸の人々は無修正である。
本作は、公開当時の日本では「残虐過ぎる」という理由でカットされたらしいが。
こういう歴史的な作品に勝手に手を加えてはいけない。
日本も多少は進歩した。
収容所内では密告が横行している。
見せしめの絞首刑も行われる。
囚人達は、抵抗するために組織を作った。
医務室では死の注射が行われ、外科病棟では手足切断などの人体実験が。
22万人の収容者リストからは、死者が出るたびに赤線で消される。
カポ(監視員)用の売春宿もあった。
独房では拷問が行われた。
1942年、ヒムラーが視察に訪れる。
「生産的に処分せよ」との命で、ガス室が作られた。
天井に残る爪痕。
死体の山。
ガス室や火葬場は囚人が作った。
遺品の山も、ものすごい数である。
骨は肥料に、女性の毛髪は毛布に加工された。
死体からは石鹸を作ろうとしたが、これはうまく行かなかったという。
1945年、収容所を拡張。
これにより、10万人の「都市」になる。
敗戦。
連合軍が到着。
死体の山はブルドーザーで除去され、大きな穴に埋められる。
このシーンを見るといつも、人間の尊厳とは何だろうと考えさせられる。
生き残った人々の解放。
戦後、カポも将校も「命令に従っただけ。責任はない」と言った。
では、責任は誰に?
900万の霊が漂う。
今は廃墟に。
戦争の狂気。
元々は人種差別から始まった悲劇である。
現在の日本にも、中国人や韓国人を公然と差別する勢力が存在する。
これが如何に危険なことであるか、本作を見ると、身にしみて分かる。

Night And Fog (1956) Trailer

『ロビンソン・クルーソー』を原書で読む(第153回)

(テキスト155ページ、1行目〜)

It is as impossible, as needless, to set down the innumerable crowd of thoughts that whirl'd through that great thorow-fare of the brain, the memory, in this night’s time:

it(代)(形式主語としてあとにくる事実上の主語の不定詞句・動名詞句・that節などを代表して)
as(副)(指示副詞)~と同様に、同じくらい
needless(形)不必要な、むだな
set down(~を)書き留める(=write down)
innumerable(形)数えきれない、無数の
crowd(名)(a crowd of ~で/複数扱い)多数の、たくさんの
of(前)(分量・内容を表わして/数量・単位を表わす名詞を前に置いて)~の
thought(名)(理性に訴えて心に浮かんだ)考え
that(代)(関係代名詞)(人・ものを表わす先行詞を受けて通例制限用法で)(~する(である))ところの/(主語として)
whirl'd→whirled
whirl(自)(考え・感情などが)次々と出てくる、混乱する
through(前)(貫通・通過を表わして)(心など)を貫いて
thorow-fare→thoroughfare(名)(特に)大通り、主要道路、本道
brain(名)(時に複数形で)脳、脳髄
in(前)(時間を表わして)~(のうち)に、~の間、~中 ・in the evening 晩に
this(形)(指示形容詞)(たった)今の、現在の、今~、当~(⇔that)・this evening きょうの夕方
time(名)(特定の)時、時期

I ran over the whole history of my life in miniature, or by abridgment, as I may call it, to my coming to this island; and also of that part of my life, since I came to this island.

run over(~を)あれこれ考える
history(名)経歴、来歴、沿革、由来
my(代)私の
in miniature 細密画で
by(前)(手段・媒介を表わして)~で
abridgment(名)縮約、要約、簡約
as(代)(関係代名詞)(前後の主節全体を先行詞として、非制限的に用いて)それは~だが
call(他)(~を)(~と)みなす、考える(+目+補)
to(前)(到達点を表わして)~まで、~に至るまで
come(自)(人・ものが)(ある場所に)到着する、やってくる(to)
to(前)(方向を表わして)(到達の意を含めて)~まで、~へ、~に
this(形)(指示形容詞)この/(対話者同士がすでに知っているもの(人)をさして)(⇔that)
that(形)(指示形容詞)(対話者同士がすでに知っているもの・人・量をさして)あの(⇔this)

In my reflections upon the state of my case, since I came on shore on this island, I was comparing the happy posture of my affairs, in the first years of my habitation here, compar'd to the life of anxiety, fear, and care, which I had liv'd ever since I had seen the print of a foot in the sand; not that I did not believe the savages had frequented the island even all the while, and might have been several hundreds of them at times on shore there; but I had never known it, and was incapable of any apprehensions about it; my satisfaction was perfect, tho' my danger was the same; and I was as happy in not knowing my danger, as if I had never really been expos'd to it.

in(前)(範囲を表わして)~において、~内で
reflection(名)熟考、内省、黙想
on(前)(関係を表わして)~について、~に関する
state(名)(通例単数形で)状態、ありさま、様子(of9
case(名)場合、状況
on shore 陸に、上陸して ・come on shore 上陸する
compare(他)(~を)比較する(to)
happy(形)(物が)幸福な、楽しい
posture(名)状態、形勢
affair(名)(複数形で)状況、情勢 ・the state of affairs 事態、情勢
of(前)(部分を表わして)~の中の
habitation(名)居住
here(副)(名詞の後に用いて)ここにいる(ある)、この
compar'd→compared
compared to ~ ~と比べて、と比べると
life(名)(通例単数形で)(具体的な)生活、暮らし方
of(前)(of+名詞で形容詞句をなして)~の
anxiety(名)心配、不安
care(名)(細心の)注意、配慮、気配り
which(代)(関係代名詞)(非制限的用法で/通例前にコンマが置かれる)(主格・目的格の場合)そしてそれは(を)
liv'd→lived
ever(副)(比較級の前後・最上級の後でそれらを強めて)これまで、今まで、ますます
print(名)跡、痕跡
sand(名)砂浜
not that ~ ~といって~というわけではない
believe(他)(~と)思う、信じる(+that)
savage(名)野蛮人、未開人
frequent(他)(場所に)しばしば行く、よく行く(集まる)
all the while その間じゅう、ずうっと
might(助動)(直説法過去)(主に間接話法の名詞節中で、時制の一致により)(不確実な推量を表わして)~かもしれない
hundred(名)(複数形で)何(幾)百 ・hundreds of people 何百という人々、幾百人もの人々
at times 時々、たまに
never(副)(notよりも強い否定を表わして)決して~ない
incapable(形)(人など)(~が)できなくて(of)
any(形)(否定文で名詞の前に用いて)(可算の名詞の複数形または不可算の名詞につけて)少しも(~ない)、何も(~ない)、だれも(~ない)
apprehension(名)気づかい、心配、懸念(about)
satisfaction(名)満足、満足させる(する)こと(⇔dissatisfaction)
perfect(形)申し分のない、満足のゆく、理想的な
tho'(接)=though
same(形)(the ~)(質・量・程度・種類など)同じ、同一の、同様の
as(副)(通例as ~ as ~で、形容詞・副詞の前に置いて)(~と)同じ程度に、同様に、同じくらい
in(前)(行動・活動・従事を表わして)~して、~に、従事して(+doing)
not(副)(不定詞・分詞・動名詞の前に置いてそれを否定して)(~し)ない
as if まるで~であるかのように(as if節の中では仮定法を用いる)
really(副)(否定文で/表現をやわらげて)本当に(まったく)(~というわけではない)(reallyはnotの後にくる)
expos'd→exposed(形)風雨(攻撃、危険(など))にさらされた、吹きさらしの
to(前)(行為・作用の対象を表わして)~に対して、~に
this(代)(指示代名詞)(すぐ前に言われたことをさして)こう、こういう、このこと

This furnish'd my thoughts with many very profitable reflections, and particularly this one, How infinitely good that Providence is, which has provided in its government of mankind, such narrow bounds to his sight and knowledge of things; and tho' he walks in the midst of so many thousand dangers, the sight of which, if discover'd to him, would distract his mind, and sink his spirits; he is kept serene, and calm, by having the events of things hid from his eyes, and knowing nothing of the dangers which surround him.

furnish'd→furnished
furnish(他)(人に)(必要物を)供給する(with)
with(前)(材料・中身を表わして)~で
profitable(形)ためになる、有益な
reflection(名)(しばしば複数形で)(熟考して得た)感想、意見、考え
particularly(副)特に、とりわけ
one(代)(既出の可算名詞の反復を避けて)(その)一つ、それ
how(副)(感嘆文に転用して)まあ何と、いかに
infinitely(副)大いに、非常に
good(形)(道徳的に)良い、善良な、有徳の(⇔evil)
that(形)(指示形容詞)(関係詞節による限定をあらかじめ指示して)あの(日本語では訳さないほうがよい)(⇔this)
Providence(名)神、天帝
provide(他)(機会・好ましい結果・答えなどを)もたらす
in(前)(範囲を表わして)~において、~内で
its(代)それの、あれの、その
government(名)支配
of(前)(目的格関係を表わして)(しばしば動作名詞または動名詞に伴って)~を、~の
mankind(名)人類、人間
such(形)(程度を表わして)(形容詞+名詞の前で/副詞的に)あれほど(これほど)の、あんな(そんな)に、このように
narrow(形)(範囲が)狭い、限られた(=restricted/⇔wide)
bound(名)(複数形で)限度、範囲(to)
his(代)彼の
sight(名)視力、視覚(=vision)(of)
knowledge(名)(またa ~)知る(知っている)こと、知識、認識(of)
of(前)(関係・関連を表わして)~の点において、~に関して、~について
thing(名)(複数形で)物事、事物
midst(名)(通例the ~、one's ~)真ん中、中央、中(特に人々に囲まれた中にあることや、ある状況の中にあることを言う)・in the midst of ~の中に
so many ~ そんなにたくさんの
thousand(形)何千もの
discover'd→discovered
to(前)(行為・作用の対象を表わして)(間接目的語に相当する句を導いて)~に
would(助動)(仮定法(叙想法)で用いて)(現在または未来の事柄について帰結節で無意志の仮定を表わして)~(する)だろう
distract(他)(古)混乱させる
sink(他)(人を)弱らせる
spirit(名)(複数形で)気分、心持ち
keep(他)(~を)ずっと(~の状態に)しておく(+目+補)
serene(形)(人・心・生活など)落ち着いた、穏やかな、平和な
calm(形)(人など)平静な、落ち着いた ・keep calm 平静を保つ、落ち着きを失わない
by(前)(手段・方法・原因・媒介を表わして)(doingを目的語にして)(~すること)によって
have(他)(~を)(~)される(主語が何事かを経験するという意味を表わす受身で、これを経験受身という)(+目+過分)
event(名)事象
hide(他)(通例副詞句を伴って)(~を)隠す
from(前)(視点・観点を表わして)~から(見ると)
danger(名)(~にとって)危険(有害)となるもの、脅威(=threat)
which(代)(関係代名詞)(制限的用法で)~する(した)(もの、事)(通例「もの」を表わす名詞を先行詞とする形容詞節をつくる)/(主格の場合)
surround(他)(~を)囲む、取り巻く

After these thoughts had for some time entertained me, I came to reflect seriously upon the real danger I had been in, for so many years in this very island; and how I had walk'd about in the greatest security, and with all possible tranquillity; even when perhaps nothing but a brow of a hill, a great tree, or the casual approach of night, had been between me and the worst kind of destruction, viz. that of falling into the hands of cannibals, and savages, who would have seiz'd on me with the same view, as I did of a goat, or a turtle; and have thought it no more a crime to kill and devour me, than I did of a pigeon or a curlieu:

after(接)(~した)後に(で)、~してから
for(前)(時間・距離を表わして)~の間(ずっと)
time(名)(またa ~)(ある一定の長さの)期間、間 ・for a time しばらく、当分(は)
entertain'd→entertained
entertain(他)(人を)楽しませる、慰める
come(自)(~するように)なる、(~するに)至る(+to do)
reflect(自)(~を)よく考える、思案(熟考)する(upon)
seriously(副)まじめに、真剣に
real(形)(想像・空想でなく)現実の、実際の
in(前)(状態を表わして)~の状態に(で)
very(形)(the、this、thatまたは所有格人称代名詞に伴って強意を表わして)まさしくその、ちょうどその、~にほかならない
how(副)(疑問詞)(感嘆文に転用して)(節を導いて)
walk'd→walked
about(副)(通例動作を示す動詞に伴って)あちこちに、あちらこちらへ、方々に
security(名)安全、無事 ・in security 安全に、無事に
with(前)(様態の副詞句を導いて)~を示して、~して
all(形)(性質・程度を表わす抽象名詞を修飾して)あらん限りの、最大の、最高の ・with all speed 全速力で
possible(形)(最上級、all、everyなどに伴ってその意味を強めて)できる限りの ・with the least possible delay できるだけ早く
tranquillity(名)落ち着き、平静
when(接)~する時に、~時(時を表わす副詞節をつくる)
nothing but ~ ただ~のみ、~にほかならない
brow(名)(the ~)がけっぷち ・the brow of a hill 山の端
casual(形)偶然の、たまたまの、思いがけない、ふいの
approach(名)近づくこと、接近 ・the approach of winter 冬が近づくこと
of(前)(主格関係を表わして)(動作の行為者、作品の作者を表わして)~が、~の
worst(形)(badの最上級で)最も悪い、いちばんひどい
destruction(名)滅亡、破滅
viz.(副)すなわち(通例namelyと読む)
that(代)(指示代名詞)(反復の代名詞として)(~の)それ(oneと違ってthe+名詞の代用で通例of ~などの前置詞句が伴う)
of(前)(同格関係を表わして)~という、~の、~である
fall into a person's hand 人の手に入る(落ちる)
cannibal(名)人肉を食べる人
who(代)(関係代名詞)(非制限的用法で/通例前にコンマが置かれる)そしてその人は
would(助動)(仮定法(叙想法)で用いて)(would have+過分で/過去の事柄について帰結節で無意志の仮定を表わして)~しただろう
seiz'd→seized
seize(自)(ぱっと)つかむ(on)
with(前)(原因を表わして)~のせいで、~のゆえに、~のために
same(形)(the ~/as、that、who、whereなどと相関的に用いて)(質・量・程度・種類など)(~と)同じ、同種の、同一の
view(名)目的、計画
as(代)(関係代名詞)(such、tha sameまたはasを先行詞に含んで、制限的に用いて)~のような
do(自)(代動詞としてbe以外の動詞の反復を避けるのに用いて)(同一の動詞(およびそれを含む語群)の反復を避けて
of(前)(関係・関連を表わして)~の点において、~に関して、~について
goat(名)ヤギ(ヤギは繁殖力が旺盛なので好色のイメージがある/罪や悪との連想が古くからあり、悪魔はよくヤギの姿で現われる)
turtle(名)(特に)ウミガメ
think(他)(~を)(~だと)思う、みなす(+目+補)
it(代)(形式目的語としてあとにくる事実上の目的語の不定詞句・動名詞句・that節などを代表して)
no more ~ than ~ ~ほど~でない
crime(名)犯罪、罪
devour(他)(動物・人が)(食物を)むさぼり食う、がつがつ食う
pidgeon→pigeon(名)ハト
curlieu→curlew(名)ダイシャクシギ

I would unjustly slander my self, if I should say I was not sincerely thankful to my great preserver, to whose singular protection I acknowledg'd, with great humanity, that all these unknown deliverances were due; and without which, I must inevitably have fallen into their merciless hands.

unjustly(副)<unjust(形)不公平な、不当な
slander(他)(~を)中傷する
myself(代)(再帰的に用いて)(一般動詞の目的語に用いて)私自身を(に)
should(助動)(仮定法で)(条件節に用いて実現の可能性の少ない事柄に対する仮定・譲歩を表わして)万一(~ならば、~しても)、もしかして~ということでもあれば(あっても)
say(他)(人に)(~と)言う、話す、述べる、(言葉を)言う(+that)
sincerely(副)心から、本当に
thankful(形)(人が)感謝して、ありがたく思って(to)
great(形)(能力・価値・重要性など)偉大な、すぐれた、卓越した
preserver(名)保存者、保護者
whose(代)(関係代名詞)(非制限的用法で/通例前にコンマが置かれる)そしてその人(たち)の
singular(形)並はずれた、まれにみる、非凡な(=remarkable)
protection(名)保護(する(される)こと)、擁護、庇護(ひご)
acknowledg'd→acknowledged
acknowledge(他)(~が)(~だと)認める(+that)
humanity(名)人間愛、博愛、慈愛、慈悲、人情、親切(⇔inhumanity)
that(接)(名詞節を導いて)(~)ということ/(目的語節を導いて)/(主語節を導いて)
all(形)(複数名詞の前に置いて)あらゆる、すべての、みな
unknown(形)未知の、不明の、未詳の
deliverance(名)救出、救助
due(形)(功績・感謝・権利など)当然(~に)与えられるべきで(to)
without(前)~がなければ
must(助動)(当然の推定を表わして)~にちがいない、~に相違ない、きっと~だろう
inevitably(副)必然的に、必ず
their(代)彼ら(彼女ら)の
merciless(形)無慈悲な、無情な、残酷な(=cruel)

When these thoughts were over, my head was for some time taken up in considering the nature of these wretched creatures; I mean, the savages; and how it came to pass in the world, that the wise governour of all things should give up any of his creatures to such inhumanity; nay, to something so much below, even brutality it self, as to devour its own kind; but as this ended in some (at that time fruitless) speculations, it occurr'd to me to enquire, what part of the world these wretches liv'd in; how far off the coast was from whence they came; what they ventur'd over so far from home for; what kind of boats they had; and why I might not order my self and my business so, that I might be able to go over thither, as they were to come to me.

over(形)終わって、済んで、過ぎて
head(名)(知性・思考などの宿る所としての)頭
take up(時間・場所などを)取る、ふさぐ
consider(他)(~を)よく考える、熟考する、考察する
nature(名)(人・動物の)本性、天性、性質
wretched(形)あさましい、見下げ果てた、卑劣な
creature(名)生き物
I mean(挿入的に用いて、話の補足や訂正を示して)つまり、いやその
how(副)(疑問詞)(理由を尋ねて)どうして(まあ)、なぜ
in the world(疑問詞を強めて)一体全体(=on earth)
wise(形)(人・行動など)賢い、賢明な、思慮深い、分別のある(⇔foolish)
governour→governor(名)治める者、統治者(=ruler)
should(助動)(遺憾・驚きなどを表わす主節に続くthat節、またはI'm surprised、I regretなどに続くthat節に用いて)~する(のは、とは)
give up(~を)(~に)(手)渡す、(土地・家などを)譲り(明け)渡す、(席を)譲る(to)
any(代)(疑問文・条件節でany of ~の形か既出名詞の省略の形で用いて)いくらか、多少
to(前)(結果・効果を表わす句を導いて)
inhumanity(名)不人情、残酷さ
nay(副)(古)否、いや(=no/⇔yea、aye)
so ~ as to do ~するほどに(~だ)
much(副)(一部の形容詞を修飾して)とても、非常に
below(副)(地位・身分において)下位に(ある)(⇔above)
brutality(名)野蛮、残忍性、無慈悲
itself(代)(強調に用いて同格的に)それ自身、そのもの
one's own kind 同類、同じタイプの人々(もの(全体))(単数扱い)
as(接)(原因・理由を表わして)~だから、~ゆえに
end(自)(物事が)(結果として)(~に)終わる、帰する(in)
at(前)(時の一点を表わして)~に ・at that time あの時は
that(形)(指示形容詞)(遠方の時・所をさして)あの、あちらの、その(⇔this)・at that time その時
fruitless(形)結果を生じない、無益な、むなしい(=unproductive)
speculation(名)推測、憶測
occurr'd→occurred
occur(自)(しばしばIt occurs ~ to doの形で)(人(の心)に)浮かぶ、思い出される(to)
to(前)(行為・作用の対象を表わして)~にとっては、~には
enquire(動)=inquire(他)(~を)尋ねる、問う(+wh.)
what(形)(疑問形容詞)(間接疑問の節を導いて)何の、どんな
wretch(名)恥知らず、嫌われ者
how(副)(疑問詞)(程度を尋ねて)(節を導いて)
off(副)(時間・空間的に離れていることを表わして)隔たって、離れて、あちらに、遠くに ・far off ずっと遠くに
whence(副)(疑問副詞)どこから
what ~ for 何のために、なぜ
ventur'd→ventured
venture(自)(副詞句を伴って)危険を冒して(思い切って)行く
over(副)遠く離れた所に、あちらに
so(副)(程度を表わして)それ(これ)ほど、そんな(こんな)に、これくらい
far from ~ ~遠くに
home(名)生まれ故郷、郷里
kind(名)種類 ・what kind of ~ どんな種類の~
might(助動)(直説法過去)(主に間接話法の名詞節中で、時制の一致により)(疑問文において不確実の意を強めて)(一体)~だろう
order(他)(人に)(~(すること)を)命じる、指図する
business(名)(通例one's ~で)(やるべき)仕事、職務、務め、本分
that(接)(副詞節を導いて)(目的を表わして)~するように、~せんがために
might(助動)(直説法過去)(時制の一致により副詞節中で)~するために、~できるように
able(形)(~することが)できて、(~し)えて(⇔unable)(通例生物の主語に用いる)(+to do)
go over(向こう側へ)(通り・川・海などを)渡っていく
thither(副)(古)あちらへ、こちらへ
as(接)(as ~ as ~で同程度の比較を表わして)~と同じく、~と同様に、~のように、~ほど
be(助動)(be+to doで)(予定を表わして)~することになっている、~する予定だ(公式の予定に用いる)
【参考文献】
Robinson Crusoe (Penguin Classics)』Daniel Defoe・著
ロビンソン・クルーソー (河出文庫)』武田将明・訳
新英和中辞典 [第7版] 並装』(研究社)
リーダーズ英和辞典 <第3版> [並装]』(研究社)
新英和大辞典 第六版 ― 並装』(研究社)

『みずうみ(湖畔、インメンゼー)』を原文で読む(第16回)

(テキスト30ページ、3行目〜)

„Jawohl!“ riefen die Jungen.

jawohl(副)(jaを強めて)そうですとも、そのとおりです
rufen(他)(~と)叫ぶ、大声で言う(過去:rief)(過分:gerufen)(完了:haben)
der Junge(男)男の子、少年(英:boy)(複:Jungen)(弱変化)

„Ja, seht,“ sagte der Alte, „sie ist aber noch nicht zu Ende. Wir Alten haben uns im Leben schon genug umhergetrieben; darum bleiben wir jetzt zu Haus, das heißt, hier unter diesen breiten Bäumen, und schälen die Kartoffeln und machen Feuer und rüsten die Tafel, und wenn die Uhr zwölf ist, so sollen auch die Eier gekocht werden. Dafür seid ihr uns von euren Erdbeeren die Hälfte schuldig, damit wir auch einen Nachtisch servieren können. Und nun geht nach Ost und West und seid ehrlich!“

ja(副)(肯定の答え)はい、ええ、そうです(英:yes)
sehen(他)見てとる、わかる(過去:sah)(過分:gesehen)(完了:haben) ・du siest、er sieht/(目的語なしでも)・Siest du! そらごらん(言ったとおりだろう)
sagen(他)(事4格を)言う、述べる(英:say)(過去:sagte)(過分:gesagt)(完了:haben)/(引用文とともに)
der Alte(男)(女)(語尾変化は形容詞と同じ)老人、年寄り、高齢者
aber(接)(並列接続詞)(相反・対比)しかし、けれども、だが(英:but)
noch(副)まだ、いまだに(英:still) ・noch nicht まだ~ない
zu(前)(3格とともに)(結果)~に(なる、する)
das Ende(中)(ふつう単)終わり、最後(英:end)(複:Enden)/(前置詞とともに)・zu Ende gehen 終わる
umher|treiben(再)(sich4格)放浪(漂流)する
in(前)(時間的に)(時点・期間)(3格と)~(中)に、~のうちに
das Leben(中)(ふつう単)人生、生涯、一生(英:life)(複:Leben)
schon(副)すでに、もう(英:already)
genug(副)十分に、たっぷり(英:enough)
darum(副)(接続詞的に)だから、それゆえに
bleiben(自)(場所を表す語句とともに)(~に)とどまる、残る、滞在する(英:remain)(過去:blieb)(過分:geblieben)(完了:sein) ・zu Hause bleiben(ずっと)家にいる
jetzt(副)今、現在(英:now)
zu(前)(3格とともに)(場所)~に、~で ・zu Haus bleiben 家にいる
das Haus(中)家、建物(英:house)(複:Häuser)/(zu Hausの形で)在宅している、家にいる ・zu Haus bleiben 自宅にとどまる
heißer(自)(~という)意味である、(~と)いう、(~と)いうことである(過去:hieß)(過分:geheißen)(完了:haben) ・das heißt すなわち、つまり、ただし
hier(副)(空間的に)ここに、ここで(英:here)
unter(前)(空間的に)(どこに)(3格と)~の下に、~の下方に
dieser(代)(指示代名詞)(付加語として)この(英:this、these)
breit(形)幅の広い(英:broad)(比較:breiter)(過分:breitest)
der Baum(男)木、樹木、立ち木(英:tree)(複:Bäume/3格のみ:Bäumen)
schälen(他)(物4格の)皮をひく、穀(さや)を取り除く(英:peel、shell)(過去:schäite)(過分:geschält)(完了:haben)
die Kartoffel(女)ジャガイモ、馬鈴薯(英:potato)(複:Kartoffeln)
machen(他)作る、製造する(英:make)(過去:machte)(過分:gemacht)(完了:haben) ・Feuer4格 machen 火をおこす
das Feuer(中)火(英:fire)(複:Feuer)
rüsten(他)(事4格の)準備(用意)をする(過去:rüstete)(過分:gerüstet)(完了:haben)・du rüstest、er rüstet ・das Essen4格 rüsten 食事の用意をする
die Tafel(女)(宴会の)食卓(英:board、table)(複:Tafeln)
wenn(接)(時間的に)~するとき、~するときはいつでも(英:when)
die Uhr(女)(複なし)(時刻)~時(英:o'clock)(複:Uhren)
zwölf(数)(基数/無語尾で)12(の)(英:twelve)
sollen(助動)(話法の助動詞)(zuのない不定詞とともに)(主格以外の人の意志)(話し手の意志)~して欲しい、~させよう(過去:sollte)(過分:sollen)(完了:haben) ・ich soll、er soll
auch(副)~もまた、~も(同様)、同じく(英:also、too)
das Ei(中)卵(英:egg)(複:Eier)
kochen(他)煮る、ゆでる、沸かす(英:boil)(過去:kochte)(過分:gekocht)(完了:haben)/(過去分詞の形で)・ein gekochtes Ei ゆで卵
werden(助動)(動作受動の助動詞)(過去分詞とともに受動態をつくる)~される(過去:wurde)(過分:worden)(完了:sein)
dafür(副)その代償として、その代わりに
seid sein(~である)のihrに対する命令
von(前)(3格とともに)(全体の一部)~の(うちの)
die Erdbeere(中)イチゴ(の実)、ストロベリー(複:Erdbeeren)
die Hälfte(女)半分、2分の1、半ば(英:half)(複:Hälften)
schuldig(形)(人3格に物4格の)借りがある、負債がある
damit(接)(従属接属詞/動詞の人称変化形は文末)~するために、~であるように
der Nachtisch(男)デザート(=Nachspeise)(英:dessert)(複:Nachtische)
servieren(他)(飲食物など4格を)出す、食卓に運ぶ(完了:haben)
können(助動)(話法の助動詞)(zuのない不定詞とともに)~できる、~する能力がある(英:can)(過去:konnte)(過分:können)(完了:haben) ・ich kann、du kannst、er kann
nun(副)(文頭で/文中でのアクセントあり)(軽い疑問・慰め・催促・譲歩などを表して)ところで、まあ、さあ(=also)
gehen(自)(方向を表す語句とともに)(~へ)行く、出かける(英:go)(過去:ging)(過分:gegangen)(完了:sein)/(前置詞とともに)(nach)
nach(前)(3格とともに)(方向・目標)~(の方)へ、~に向かって(英:to)
der Ost(男)(複なし/冠詞なし/無変化)(海・気象)東(=Osten)(複:Oste)
der West(男)(複なし/冠詞なし/無変化)(海・気象)西(=Westen)(複:Weste)
ehrlich(形)誠実な(英:honest)

Die Jungen machten allerlei schelmische Gesichter.

machen(他)(ある顔つき・動作など4格を)する(過去:machte)(過分:gemacht)(完了:haben) ・Sie machte ein erustes Gesicht. 彼は真剣な顔をした。
allerlei(形)(無語尾で)かなり多くの、さまざまな
schelmisch(形)いたずらっぽい、おちゃめな
das Gesicht(中)顔(英:face)(複:Gesichter)

„Halt!“ rief der alte Herr noch einmal.

halt!(間)止まれ、やめろ、ストップ
alt(形)年とった、高齢の、老齢の(英:old)(比較:älter)(最上:ältest)
der Herr(男)紳士、男性、殿方(英:gentleman)(複:Herren) ・ein alter Herr 老紳士
noch(副)さらに、その上(ほか)に ・noch einmal もう一度
einmal(副)1度、1回(英:once) ・noch einmal もう一度

„Das brauche ich euch wohl nicht zu sagen: wer keine findet, braucht auch keine abzuliefern; aber das schreibt euch wohl hinter eure feinen Ohren, von uns Alten bekommt er auch nichts. Und nun habt ihr für diesen Tag gute Lehren genug; wenn ihr nun noch Erdbeeren dazu habt, so werdet ihr für heute schon durchs Leben kommen.“

brauchen(他)(否定詞およびzu不定詞句とともに)~する必要はない、~するにはおよばない(過去:brauchte)(過分:gebraucht)(完了:haben)
wohl(副)(文中でのアクセントなし)おそらく、たぶん
keiner(代)(不定代名詞)だれも(どれも)~ない、一つ(一人)も~ない(英:none)/(既出の名詞を受けて)
finden(他)見つける、見つけ出す、発見する(英:find)(過去:fand)(過分:gefunden)(完了:haben) ・du findest、er findet、ihr findet
ab|liefern(他)(物4格を)届ける、引き渡す(完了:haben)
schreiben(他)(文字など4格を)書く、つづる(英:write)(過去:schrieb)(過分:geschrieben)(完了:haben)
wohl(副)よく、十分に(比較:besser)(最上:am besten)
hinter(前)(空間的に)(どこに)(3格と)~の後ろに、~の裏に、~の陰に(英:behind)
fein(形)繊細な、鋭敏な、デリケートな(英:fine)
das Ohr(中)耳(英:ear)(複:Ohren)
von(前)(3格とともに)(出所・出身)~から、~出身の
bekommen(他)もらう、受け取る(英:get)(過去:bekam)(過分:bekommen)(完了:haben)
auch(副)(文中でのアクセントなし)実際(~なのだから)
nichts(代)(不定代名詞/無変化)何も~ない(英:nothing)
für(前)(4格とともに)(予定の日時)~日(時)に ・für heute きょうのところは
der Tag(男)日、1日、1昼夜(英:day)(複:Tage)
gut(形)(質的に)良い、上等の、上手な(英:good)(比較:besser)(最上:best)
die Lehre(女)教訓(英:lesson)(複:Lehren)
wenn(接)(従属接属詞/動詞の人称変化形は文末)(条件・仮定)もし~ならば、仮に~だとすれば(英:if)
nun(副)今、今や(もう)、今度は(英:now)
dazu(副)それに加えて、その上
so(副)(文中でのアクセントなし)それなら
werden(助動)(未来の助動詞)(他の動詞の不定詞とともに未来形をつくる)(未来・推量)~だろう(過去:wurde)(過分:geworden)(完了:sein) ・du wirst、er wird
heute(副)きょう、本日(英:today)/(前置詞とともに)・für heute きょうは
schon(副)(文中でのアクセントなし)(疑いを打ち消して)きっと、確かに
durch(前)(4格とともに)(ふつう名詞のあとに置かれて)(時間的に)~を通じて、~の間 ・durch das ganze Leben 一生を通じて
kommen(自)来る(英:come)(過去:kam)(過分:gekommen)(完了:sein)
【参考文献】
みずうみ (対訳シリーズ)』中込忠三、佐藤正樹・編(同学社)
アポロン独和辞典』(同学社)
新コンサイス独和辞典』(三省堂

『夕陽のギャングたち』

この週末は、ブルーレイで『夕陽のギャングたち』を見た。

1971年のイタリア・スペイン・アメリカ合作映画。
監督は、『夕陽のガンマン』『続・夕陽のガンマン』『ウエスタン』『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』の巨匠セルジオ・レオーネ
音楽は、『夕陽のガンマン』『アルジェの戦い』『続・夕陽のガンマン』『ウエスタン』『シシリアン』『エクソシスト2』『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』『アンタッチャブル』『ハムレット(1990)』の巨匠エンニオ・モリコーネ
主演は、『波止場』『史上最大の作戦』『ドクトル・ジバゴ』『夜の大捜査線』のロッド・スタイガー、『荒野の七人』『大脱走』『シャレード』『戦争のはらわた』のジェームズ・コバーン
MGM。
カラー、シネスコ
「革命とは贅沢な食事でも言葉の遊びでもない。刺繍の模様でもない。優雅さと丁寧さをもってなされるものでもない。革命とは暴力行為なのだ―毛沢東」という字幕。
本作の舞台は20世紀初頭の革命に揺れるメキシコである。
本作は、僕の大好きな革命がテーマだ。
ぼくの好きな映画を列挙すると、『戦艦ポチョムキン』『スパルタカス』『アルジェの戦い』『猿の惑星・制服』『レッズ』であるが、ここに本作を加える。
アリの群れに放尿するフアン・ミランダロッド・スタイガー)から始まる。
フアンは脂ぎった汚らしい身なりで、裸足である。
雷の音が聞こえてきた。
遠くから砂煙を上げながら近付いて来るリムジンのような馬車。
静かなテーマ曲。
フアンが馬車を停めようとするが無視される。
しかし、少し先で停まる。
「サン・フェリペまで頼みます。お袋が死んでしまって…」とフアン。
「失せやがれ!」
しかし、何かフアンを利用することを思い付いたようである。
「行きなアミーゴ。お前はうってつけだ」と馬車に乗せられる。
車内は見るからに上流階級の人達が豪勢な食事をしている最中だった。
汚らしい身なりのフアンがこの場にいると、強烈な違和感がある。
当然、フアンの席はなく、補助椅子に座らせられる。
連中は農民を見下している。
野獣だとかネズミだとか、極めて差別的である。
マデロ政権がどうとか、革命がどうとか、農地解放がどうとかの話しをしている。
この辺は、世界史をちゃんと勉強しなかった僕にはさっぱり分からないのだが。要するに、メキシコ革命の話しだ。
馬車が進むと、道端にメキシコ人の老人や子供達が寝そべっている。
「怠け者のメキシコ人め」と上流階級の一人が吐き捨てる。
と、次の瞬間、馬車を襲撃するメキシコ人。
何と、フアンは山賊で、このメキシコ人達はグルであり、馬車を待ち伏せしていたのであった。
彼らは、フアンの父親と息子達なのである。
フアンは、上流階級の婦人を小屋の中で犯す。
そして、連中を身ぐるみ剥がして素っ裸にして、ロープにつないで歩かせる。
人間、裸になれば、ブルジョワジープロレタリアートもない。
突然、馬車の前方で爆発が起きる。
煙の中から、バイクに乗ったジョン・マロリー(ジェームズ・コバーン)が現れる。
フアンは、銃でタイヤを撃ってバイクを停める。
ジョンはフアンに「火をくれ」と言い、タバコに火を点けたかと思いきや、馬車の中に投げ入れた。
爆発が起こり、馬車の屋根に穴が開く。
フアン達は一斉に銃をジョンに向ける。
ジョンはニヤリと笑って、自分のコートの内側を開く。
大量のダイナマイトが吊るされていた。
「私が死ぬと国の半分が吹っ飛ぶ。君らも道連れだ」とジョン。
フアンの脳裏に、「メサ・ヴェルデ国立銀行」が浮かぶ。
が、ジョンは「バイクを直せ」と命じる。
フアンはジョンを「花火屋」と呼ぶ。
ジョンのカバンの中から、アイルランドの新聞の切り抜きが出て来た。
ジョンの顔写真と共に、「ジョン・マロリー、賞金300ポンド」とある。
フアンはジョンと組んで銀行強盗をやろうと思い付く。
フアンの仲間達は、ジョンを殺して、爆薬だけ奪えばいいと言ったが、フアンは「素人じゃケガする」と言う。
実際、ダイナマイトが爆発して、一人が死んだ。
ジョンの目的地は銀山であった。
メサ・ヴェルデの銀行を一緒にやろうぜ。フアン&ジョンで」とフアンが持ち掛けるが、ジョンは興味がない。
フアンは字が読めないが、賞金の金額で、ジョンがどの程度の悪事をやらかしたかが分かった。
ジョンはアイルランド革命で戦った。
ジョンは、フアンの誘いに「やめとくよ」とにべもない。
フアンはジョンを引き止めるが、聞かないので、またバイクを撃つ。
バイクを壊されたジョンは、報復に馬車を爆破する。
ジョンが野宿していると、フアン達の声がする。
自分を殺しに来たと思ったジョンは、導火線を引いて、建物ごと爆破する。
しかし、巻き込まれたのは、ジョンが訪ねる予定だった銀山のオーナーと、政府軍の大尉だった。
これでジョンはお尋ね者だ。
「お前のせいで何もかもメチャクチャだ。」
仕方がないので、ジョンはフアンと組むことにする。
線路の上を馬で歩くフアンとジョン達。
汽車が近付いて来る。
避けて、汽車が走り去ると、ジョンがいない。
汽車に飛び乗ったのだろう。
ファン達も汽車に乗る。
客室に入って来た警官を、フアンが刺し殺す。
同室に居合わせた謎の紳士が手助けしてくれた。
彼は外科医のビィエガ(ロモロ・ヴァリ)であった。
メサ・ヴェルデ駅に到着。
駅前には軍隊が闊歩している。
市民が街中で銃殺されている。
総督のポスターがあちこちに貼られている。
ものものしい雰囲気で、フアンが幼い頃に見た街とは全く変わっていた。
銀行の前のレストランにフアンが入ってみると、ジョンが食事をしている。
このレストランの裏の部屋が革命軍のアジトになっていた。
ジョンに導かれてフアンも入ると、例のビィエガ医師がいて、多くの人達を前に、「革命を起きれば混乱が生じる。政府軍に攻撃を仕掛ける」などという相談をしている。
合言葉は「土地と自由を!」
フアンとジョンは銀行に押し入ることになった。
フアンの幼い息子が汽車のオモチャを引いて銀行の入り口の前へ。
何と、これが仕掛け爆弾であった。
爆発と同時に突入するフアンとジョン達。
政府軍と銃撃戦になる。
フアンは地下へ行くが、カネはどこにもなく、地下室の扉を壊して開けてみると、多数の人民が収容されていた。
実は、銀行は先月、メキシコ・シティに移っていた。
ジョンはフアンを革命のために利用したのである。
メサ・ヴェルデ国立銀行の建物は政治犯の収容所となっており、150人を救出したフアンは革命の英雄となった。
さあ、これからどうなる?
本作は、マカロニ・ウエスタンとは言うが、かなり異色の革命映画である。
興業的には失敗したらしいが、ものすごくスケールの大きな作品だ。
橋の爆破シーンなど、『戦場にかける橋』も凌駕するレベルである。
政治犯を大量に殺戮するシーンも凄まじい。
もっと評価されても良い作品である。

A Fistful of Dynamite Official Trailer #1 - James Coburn Movie (1971) HD

『頭上の敵機』

この週末は、ブルーレイで『頭上の敵機』を見た。

1949年のアメリカ映画。
監督はヘンリー・キング
製作は、『怒りの葡萄』『わが谷は緑なりき』『イヴの総て』『史上最大の作戦』の大プロデューサー、ダリル・F・ザナック
音楽は、『怒りの葡萄』『わが谷は緑なりき』『荒野の決闘』『イヴの総て』『七年目の浮気』『西部開拓史』『大空港』の巨匠アルフレッド・ニューマン
撮影は、『王様と私』『アラスカ魂』『クレオパトラ』『猿の惑星』のレオン・シャムロイ
主演は、『白い恐怖』『大いなる西部』『ナバロンの要塞』『西部開拓史』『アラバマ物語』『オーメン』の大スター、グレゴリー・ペック
共演は、『イヴの総て』『地球の静止する日』のヒュー・マーロウ、『雨に唄えば』のミラード・ミッチェル、『バニシング・ポイント』のディーン・ジャガー
モノクロ、スタンダード・サイズ。
勇ましいが不穏なテーマ曲。
アメリカ空軍の勇士にこの映画をささげる。彼らは勇敢にも危険な白昼爆撃に挑戦した。1942年秋、ヨーロッパで戦ったアメリカ兵は彼らだけだった。この作品の空中戦シーンはすべて実戦で、アメリカとドイツの空軍が撮影したものである」という字幕。
1949年のロンドン。
ハーヴィ・ストーヴァル(ディーン・ジャガー)は、ある骨董品店のウィンドーに見慣れたトビー・ジョッキ(老人の顔をかたどった陶器製のビア・ジョッキ)を見付ける。
そのジョッキはアーチベリーで手に入れられたものであった。
ジョッキを買い、一等車に乗ってアーチベリーへ。
飛行場の跡地。
ハーヴィが懐かしそうに歩きながら、1942年へと回想。
アーチベリーの飛行場に空軍機が胴体着陸
中から兵士達が助け出される。
「無謀な出撃だった。」
ケガ人が多数おり、死者も出た。
機長は戦死、代わりに操縦して来たビショップ中尉は辛い。
最初の交戦で大打撃を受けた。
悲惨な戦闘であった。
今回の作戦で5機の爆撃機を失ったが、補充が3機届くという。
ドイツのラジオ放送でも、今回の激戦のことを伝えていた。
明朝の出撃命令が下る。
しかし、兵士達は出撃疲れで士気が下がっていた。
フランク・サヴェージ准将(グレゴリー・ペック)は、高度9000フィートからの白昼爆撃作戦を命じる。
だが、その高度では潜水艦に狙われる。
「黙って出撃しろ!」と言うフランクに、第918航空群の航空指令キース・ダヴェンポート大佐(ゲイリー・メリル)は「部下を無駄死にさせたくない」と反対。
フランクは、パット・プリチャード少将(ミラード・ミッチェル)に「指揮官キースに問題あり」と伝える。
プリチャードはキースに今回の件について聞き取りを行なった。
離陸時の事故で3分の遅れが生じた。
これは致命的であるが、キースは部下をかばい、解任出来ない。
プリチャードはキースを解任し、フランクに指揮官を命じる。
フランクは門番に「なぜチェックせずにオレを通した?」と叱責。
さらに、自分に敬礼しない軍曹を兵卒に格下げする。
「どいつもこいつもたるんでいる!」とフランク。
ハーヴィは酔っていた。
飛行隊長のベン・ゲートリー中佐(ヒュー・マーロウ)も基地外のバーで酔っているという。
フランクはゲートリーを逮捕・連行せよと命じる。
ゲートリーの親父はトム・ゲートリー中将。
しかし、このゲートリーはわずか3回しか出撃していない。
指揮官の自覚ナシとみなしたフランクは、「ぐうの音も出ないほどしごき抜いてやる! 生まれたことを後悔するほどに」と、『フルメタル・ジャケット』の鬼軍曹のようなセリフを吐く。
基地内のバーにビールを飲みに来たフランクは、カウンターにいたコッブ少佐に「帽子を脱げ! 規則だからな」と告げ、「別命があるまでバーを封鎖しろ!」と命じて立ち去る。
翌朝8時、兵士が集まっている。
そこへフランクがやって来る。
「これから演習を行う。基礎から鍛え直す」と宣言するフランク。
「休みたい? 自分を甘やかすな! 命を捨てろ!」
厳しい発言を連発するフランクに、兵士達は「前の指揮官が恋しいぜ」「Me too!」
フランクの部屋の前には、異動希望者が列をなす。
フランクはコッブ少佐と軍医を呼び出す。
軍医はフランクに「あなたは慣れるまで手綱を緩めること」と告げるも、フランクは「No!」
そして、「この航空群にはプライドがない」と。
そこへ、ビショップがやって来る。
「私は異動希望者の代表です。(希望者は)全員です」とフランクに告げるビショップ。
フランクは「移動の手続きは取るが、演習には参加しろ」と言う。
さあ、これからどうなる?
有名な戦争映画である。
全編を通して、伏線が巧みに張り巡らされている。
鬼のように冷酷に見えたフランクも、実は人間であることが分かる。
ハリウッドの戦争映画は、最後に勝利して「バンザイ!」みたいなのが多いが、本作はそれらとは一線を画しており、非常に余韻の残るラストになっている。
物語の狂言回し役を、年長で世の中をよく知ったハーヴィにさせているのも良い。
戦闘シーンは実写のフィルムだが、巧みに編集されていて、スゴイ迫力である。
アカデミー賞助演男優賞(ディーン・ジャガー)、アカデミー賞録音賞受賞。

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『星の王子さま』を原文で読む(第6回)

(テキスト14ページ、1行目~)

J'ai sauté sur mes pieds comme si j'avais été frappé par la foudre.

je(人称代名詞)(母音または無音のhの前ではj'となる/J'aime)(主語)私は、私が(英:I)
ai avoirの直・現在・1・単
avoir(助動詞)avoir+過去分詞(全ての他動詞、大部分の自動詞の助動詞となり複合時制を作る)(英:have)
sauter(自)(sur、àに)飛びかかる、飛びつく、飛び乗る(英:leap、lump)
sur(前)(方向・目標)に向かって、の方に(英:on、upon、above)
mes(所有形容詞)(複)→mon
mon(所有形容詞)(所有・関係)私の(英:my)
pied(男)(人間の)足(英:foot)
comme si ~ あたかも~であるかのように(動詞は直説法で、主節と同時のことをいうときは半過去、主節より前に完了したことをいうときは大過去)(英:as if)
avai-→avoir
été êtreの過去分詞
frapper(他)(光・音などが)打つ、当たる、ぶつかる(英:strike、knock at)
par(前)(動作主・手段・動機などを示す)(動作主)(受動態)~によって(英:by)
la(定冠詞)(女性単数)→le
le(定冠詞)(普通名詞の前)あの、その、いつもの(英:the)
foudre(女)雷(英:lightning)

J'ai bien frotté mes yeux.

bien(副)よく、うまく、立派に、きちんと(英:good、well)
frotter(他)こする、こすりつける、摩擦(まさつ)する
yeux(男)目、両眼(œilの複数)(英:eyes)

J'ai bien regardé.

regarder(他)見る、眺める/(目的語なしで)(英:look at)

Et j'ai vu un petit bonhomme tout à fait extraordinaire qui me considérait gravement.

et(接)(時間的)そして、それから(英:and)
voir(他)見る、見える(過分:vu)(英:see)
un(e)不定冠詞)(不特定の)ある、1つの、1人の(英:one、a)
petit(e)(形)(多くは名詞の前)幼い、小さな、年少の(英:small、little)
bonhomme(男)坊や ・un petit bonhomme 坊や
tout à fait すっかり、まったく
extraordinaire(形)異常な、不思議な、奇妙な(英:extraordinary)
qui(関係代名詞)(性・数不変)(先行詞を伴って)(主語として働き先行詞は人でもものでもよい)~するところの(who、whom/which、that)
me(人称代名詞)(直接目的語)私を(英:me)
considérer(他)じっと見つめる、注視する、眺める(英:consider)
gravement(副)真剣な(重々しい)表情で、厳かに

Voilà le meilleur portrait que, plus tard, j'ai réussi à faire de lui.

voilà掲示して)ここに~がある
meilleur(e)(形)(定冠詞(所有形容詞)を付けて)(deの中で)最もよい、最も好ましい(bonの最上級)(英:better、best)
portrait(男)肖像画、肖像写真、ポートレイト
que(関係代名詞)(性・数不変)(直接目的語)(先行詞は人でもものでもよい)~ところの~(英:that、whom、which)
plus tard のちに
réussir(自)(réussir à+不定詞)(~すること)に成功する、うまく~できる(英:succeed)
à(前)à+不定詞/(限定)~することに(英:to、at、in)
faire(他)作る、生み出す、こしらえる ・faire un dessin 絵を書く(英:make、do)
de(前)(最上級の母集団)の中で(英:of、from)
lui(人称代名詞)(男)(il(ils)彼(彼ら)の強勢形)(前置詞の後)

Mais mon dessin, bien sûr, est beaucoup moins ravissant que le modèle.

mais(接)(対立)しかし、だが(英:but)
dessin(男)(簡単な)絵(図)、図画(英:drawing、sketch)
bien sûr もちろんだ
est êtreの直・現在・3・単
être(自)(属詞を伴って)~である(英:be)
beaucoup(副)(形容詞・副詞の比較級を強めて)はるかに、ずっと(英:much、many)
moins(副)(peuの比較級)より少なく(英:less、least)(⇔plus)/(moins+形容詞・副詞+que ~)(劣等比較級を作る)
ravissant(e)(形)うっとりするような、すばらしい、みごとな
que(接)(比較・結果・程度の表現で)~よりも(比較を表す形容詞・副詞とともに用いて比較対象を示す)(英:than、as)
modèle(男)(絵や文学の)モデル

Ce n'est pas ma faute.

ce(指示代名詞)(中性)これ、それ、あれ(性・数による変化はない)(英:it、this、that)/(êtreの主語)C'est ~これ(それ、あれ)は~である/(話し手の指示する人、もの、ことを受けて)
n' neの省略形(→ne)
ne, n'(母音または無音のhの前ではn'となる)(副)(動詞に伴い、これを否定する)(他の否定語と併用される場合)~ない(英:not)/ne ~ pas ~ない/ne ~ rien 何も~ない
ma(所有形容詞)(女)→mon
faute(女)落ち度、責任(英:mistake、fault) ・Ce n'est pas ma faute. それは私のせいじゃない。

J'avais été découragé dans ma carrière de peintre par les grandes personnes, à l'âge de six ans, et je n'avais rien appris à dessiner, sauf les boas fermés et les boas ouverts.

décourager(他)落胆させる、がっかりさせる、気力を失わせる(英:discourage)
dans(前)(動詞・名詞の補語の前で)~に対して(英:in)
carrière(女)(職業人としての)経歴、キャリア、出世(英:career)
de(前)(所有・所属)~の(英:of、from)
peintre(名)画家
les(定冠詞)(定冠詞le、laの複数形)→le
grande personne(子供の言葉で)大人(=adulte)
à(前)à+名詞・代名詞/(時間)(時点)~に、のときに(英:to、at、in)
l' le、laの母音字省略形
âge(男)年齢 ・à l'âge de vingt ans 20歳のときに
six(数形容詞)(不変)6の(英:six) ・six ans 6歳
apprendre(他)(apprendre à+不定詞)~することを学ぶ、覚える(英:learn、teach)
dessiner(他)(線で)描く、デッサンする(英:draw)
sauf(前)~は別として、~を除いて
boa(男)(動物)ボア(南米産の大蛇)
fermé(e)(形)閉じた、閉ざされた(英:closed)
et(接)(列挙)そして、と(英:and)
ouvert(e)(形)開いた、開いている(英:open)

Je regardai donc cette apparition avec des yeux tout ronds d'étonnement.

donc(副)それ故、従って(英:so、therefore、indeed
cette(指示形容詞)(女)→ce
ce(指示形容詞)この、その、あの(目の前にあるが前に話題になった人・ものを指して)(英:this、that)
apparition(女)出現、姿を見せること
avec(前)(手段・方法・用具)~を使って、でもって(英:with)
des不定冠詞)(複)いくつかの、いく人かの
tout(副)(tout+形容詞)まったく、非常に(英:all)
rond(e)(形)丸い、円形の(英:round)(⇔carré) ・yeux ronds(びっくりして)大きく見開かれた目
d' deの省略形(前置詞・冠詞のdeに母音字または無音のhが続くときこの形をとる)
de(母音または無音のhの前ではd'となる)(前)(手段)~で、~によって(英:of、from)
étonnement(男)驚き

N'oubliez pas que je me trouvais à mille milles de toute région habitée.

oublier(他)(oublier que+直説法)~であることを忘れる
que(接)(名詞節を導いて)~ということ(英:that)/(直接目的語)
se trouver(代動)(ある場所・状態に)いる、ある(英:find)
à(前)à+名詞・代名詞/(空間)(道のり・距離)~のところに ・à 20 kilomètres de Paris パリから20キロのところに
mille(数形容詞)(不変)1000の(英:thousand)
mille(男)(英米の)マイル(mille anglais/1609メートル)
de(前)(場所)~から(の)(英:of、from)
tout不定形容詞)(後に冠詞などなしで)(単数)(tout(e)+無冠詞名詞)どんな~でも、あらゆる(英:all)
région(女)地方、地域(英:region)
habité(e)(形)居住者(棲息(せいそく)物)のいる、人が住んでいる

Or mon petit bonhomme ne me semblait ni égaré, ni mort de fatigue, ni mort de faim, ni mort de soif, ni mort de peur.

or(接)さて、ところが
mon(所有形容詞)(親愛・皮肉)
ne(副)(動詞に伴い、これを否定する)(niとともに)(ne ~ ni A ni B)AでもBでもない
me(人称代名詞)(間接目的語)私に、私から(英:me)
sembler(自)(àには)~のように見える(思われる)(英:seem)/(sembler+属詞)
ni(接)(ne+動詞+ni A ni B)AもBも~ない(英:nor、neither ~ nor)
égaré(e)(形)道に迷った
mort(e)(形)死んだような、活気のない(英:dead)
de(前)(原因)~のために、~で(英:of、from)
fatigue(女)疲れ、疲労(英:fatigue)
faim(女)空腹、飢え、飢餓(英:hunger)
soif(女)(のどの)渇き
peur(女)恐れ、恐怖(英:fear)

Il n'avait en rien l'apparence d'un enfant perdu au milieu du désert, à mille milles de toute région habitée.

il(人称代名詞)(主語)彼は(英:he、it)
ne, n'(母音または無音のhの前ではn'となる)(動詞に伴い、これを否定する)(rien、personnne、nul、aucunなどの否定語(不定代名詞、不定形容詞)とともに)/ne ~ rien 何も~ない
avoir(他)持つ、所有する(英:have)/(avoir+直接目的語+属詞(形容詞句、過去分詞))
en rien 少しも
le(定冠詞)(普通名詞の前)(名詞が形容詞・補語・従節などによって特定化されるとき)(英:the)
apparence(女)外見、外観、姿、風采(ふうさい)
de(母音または無音のhの前ではd'となる)(前)(特徴・性質)~の、~らしい、~を持った
enfant(名)(男女同形)(大人に対する)子供、児童、(法律)未成年者(英:child)
perdu(e)(形)迷った ・enfant perdu 迷子
au milieu de ~ ~の真ん中に(で)
du(=de+le。前置詞deと男性単数定冠詞leの縮約形)(→de)~の、~から(英:of the、from the)
désert(男)砂漠

Quand je réussis enfin à parler, je lui dis :

quand(接)~する時に、~すると(英:when)
réussir(自)(réussir à+不定詞)~することに成功する、うまく~できる(英:succeed)
enfin(副)ついに、とうとう、やっと(英:at least、finally)
parler(自)話す(英:talk、speak)
lui(人称代名詞)彼(女)に(英:to him、her、it/them)
dis→dire
dire(他)言う、述べる(英:say)/(dire à ~+直接話法)

« Mais... qu'est-ce que tu fais là ? »

mais(接)(対立)しかし、だが(英:but)
qu'est-ce que(疑問代名詞)(直接目的語)何を(英:what)
tu(人称代名詞)きみ、おまえ、あなた(英:you)(友人、家族、子供など親しい間柄の者に対して使う)
faire(他)(行為・動作などを)する、行なう(英:make、do)
(副)(場所)そこ、あそこ(に、で)(英:there、here)

Et il me répéta alors, tout doucement, comme une chose très sérieuse :

répéter(他)繰り返す、やり直す
alors(副)その時、そのころ、当時(英:then)
doucement(副)そっと、静かに、穏やかに、緩やかに、優しく(英:gently)
comme(接)(比較・比喩)のように(な)、と同じように(な)、同様に(な)(英:like、as)
chose(女)こと、事柄(英:thing)
très(副)非常に、大変(形容詞句、副詞句を修飾)(英:very)
sérieux(ieuse)(形)(事態が)重大な(英:serious)

« S'il vous plaît... dessine-moi un mouton... »

s'il vous plaît どうぞ、すみません、お願いします(←もしそれがあなたのお気に召すなら)(頼んだり尋ねたりする場合に用いる)(英:please)
moi(人称代名詞)(肯定命令形の後でmeの代わりに)私を(に)(英:me)
mouton(男)羊(英:sheep、mutton)

Quand le mystère est trop impressionnant, on n'ose pas désobéir.

quand(接)~するたびに、~する時はいつも(英:when)
le(定冠詞)(総称)~というもの(英:the)
mystère(男)神秘
trop(副)あまりに、過度に(英:too、too much)
impressionnant(e)(形)印象的な、心を打つ、驚くべき、恐ろしい
on不定代名詞)(不特定の人)人は、人々は(英:one、people、someone、we)
oser(他)(oser+不定詞)思い切って(あえて、勇敢にも)~する(英:dare)
désobéir(自)(àに)背(そむ)く、従わない(英:disobey)(⇔obéir)

Aussi absurde que cela me semblât à mille milles de tous les endroits habités et en danger de mort, je sortis de ma poche une feuille de papier et un stylographe.

aussi+形容詞(副詞)+que+接続法(譲歩)いかに~であろうとも
absurde(形)ばからしい(英:absurd)
cela(指示形容詞)(中性)そのこと、それ(英:that、it)/(問題になっている事柄を受けて)
tout不定形容詞)(後に冠詞など(冠詞・指示(所有)形容詞)を伴って/(複数)(全体・一般)すべての、全部の(英:all)
endroit(男)(住んでいる・生まれた)土地、町、村(英:place)
en(前)(多くは無冠詞名詞・代名詞の前)(状態・形状)~の状態で(に)、~になって(た)(英:in、to)
danger(男)危険(英:danger)
mort(女)(~ de mort)死の ・danger de mort 死の危険(⇔vie)
sortir(他)(助動詞はavoir)(deから)(ものを)外へ出す、取り出す(英:go out/take out)
poche(女)ポケット(英:pocket)
feuille(女)紙片、紙葉、ページ ・une feuille de papier 1枚の紙
papier(男)紙(英:paper)
stylographe(男)(古)万年筆

Mais je me rappelai alors que j'avais surtout étudié la géographie, l'histoire, le calcul et la grammaire et je dis au petit bonhomme (avec un peu de mauvaise humeur) que je ne savais pas dessiner.

se rappeler(代動)(se rappeler+que+直説法)~を覚えている、思い出す
surtout(副)何よりも、とりわけ、とくに、くれぐれも(英:above all)
étudier(他)勉強する、学ぶ(英:study)
géographie(女)地理(学)
histoire(女)歴史(英:history、story)
calcul(男)計算(英:calculation)
grammaire(女)文法(学)(英:grammer)
dire(他)(dire à ~+que+直説法)人に~だと言う(英:say)
au=à+le→à
à(前)à+名詞・代名詞/(動作の対象)~に、に対して、への(英:to、at、in)/(動詞の間接目的語)~に
avec(前)(様態)avec+抽象名詞(無冠詞)(ある様子)をして(抽象名詞に形容詞などがつくと不定冠詞をつけて)(英:with)
peu(副)(肯定的)(un peu de+無冠詞名詞(非可算名詞))少しばかりの~、わずかの~(英:a little、a few)
mauvais(e)(形)(性質が)悪い(英:bad)
humeur(女)機嫌、気分(英:mood、humor) ・mauveise humeur 悪い機嫌
savoir(他)(savoir+不定詞)~できる、~する術(すべ)を心得ている(英:know)

Il me répondit :

répondre(自)(àに)答える(英:answer、respond)

« Ça ne fait rien. Dessine-moi un mouton. »

Ça ne fait rien. 構わない、大したことではない
【参考文献】
対訳 フランス語で読もう「星の王子さま」』小島俊明・訳注(第三書房)
クラウン仏和辞典 第7版』(三省堂

日本近代文学を文庫で読む(第7回)『たけくらべ』

今回は、樋口一葉の『たけくらべ』を取り上げます。
こちらも文語体なので、読んだことがあるという人はそんなにいないのではないでしょうか。
かく言う僕も、高校生くらいの頃には読んでみようとすら思わず、最近になってようやく読みました。
しかしながら、これが難物でした。
文語体の近代小説でも、『金色夜叉』のような漢文訓読調なら読み易いのですが、一葉の文体は、『源氏物語』のような和文です。
主語の省略が著しく、部分は分かっても、全体の流れが分かりません。
日本の近代文学の代表作を一通り読んでみたいと思って始めたこの企画ですが、お手上げなので、河出文庫から出ている現代語訳を読みました。
しかし、これが原文に忠実過ぎて、ピンと来ませんでした。
アマゾンのレビューを見ても、「統一感を持たせた真面目な現代語訳ではなく、一葉を読んだことすらない人間を含む個々の訳者に、各編を自由に担当させた、キワモノ企画の本です」「まず訳文そのものが、現代語訳と呼べるような読みやすいものになっていません」「こんな訳文を読むくらいなら、振り仮名つきの原文を読んだほうがよっぽど内容が理解できると思います」とさんざんな書かれっぷりです。
「訳者後書き」に、『たけくらべ』の訳を担当した松浦理英子氏が「『たけくらべ』体感記」と題して書いている文章が、上記のアマゾン・レビューの酷評の原因でもありますが、面白いので、少し引用してみましょう。

樋口一葉の作品は『たけくらべ』に尽きると思う。『にごりえ』も悪くないが、あとは『たけくらべ』と同等の面白さを期待して読むと落胆する、というのが正直な感想である。こう書くからには、私には一葉という作家に対する格別の思い入れはないのであり、数多くの一葉愛読者、研究者が熱心に一葉を語り持ち上げるさまを目にすると、何やら別世界の出来事を見るような思いに囚われたりもするのであるが、しかし、『たけくらべ』一作から受ける強い印象は、作品にどっぷりと身を浸して愉しむだけではすまず、「一葉はなぜこんな作品を書いたのだろう」という埒もない疑問まで呼び起こすほどのものだ。今回『文藝』編集部から、『たけくらべ』の口語訳を、という話が持ち込まれた時にわりあい簡単に引き受けたのは、この作品を一語一句読み文語を口語に移し換えて行く作業によって、より深くこの作品に身を浸すことができるのではないか、ただ読んでいるばかりでは得られないような新しい愉しさを味わえるのではないか、と予感したからにほかならない。

確かに、「一葉に対する格別の思い入れはない」人が訳したのか、という驚きはあります。

動機がそういうものだから、訳すにあたっては、この作品があたかも初めから口語文で書かれたかのように見える訳文にすることは、全く考えなかった。

これが、この本の現代語訳が読み難い理由ですね。
そこで、角川ソフィア文庫のビギナーズ・クラシックスを読むと、こちらは詳細な解説でようやく内容が理解出来ました。
この本の「はじめに」には、次のようにあります。

さて、『たけくらべ』は古語を交えた文語体で書かれているので、今の私たちにはとても読みにくく感じられます。朗読すれば、流れるようなリズムがありますが、内容を理解するにはたくさんの注が必要です。けれど、本文と注の間を眼球移動させてばかりでは、せっかくの名作が無味乾燥になってしまいましょう。
そこで、注を織り込んだ独自の通釈文( )を原文( )の前に用意しました。たんなる現代語訳ではありません。わかりやすい現代語に言い換えるのはもちろん、注に相当する内容を新たに補うなど、さまざまな工夫を凝らしました。さらに図版・コラム・付録類を添えて内容の理解に役立つよう配慮しました。
通釈文を読んだ後で原文に入るならば、より鮮明な場面の映像を楽しみながら、流麗な原文の響きに耳を傾けることができるでしょう。

確かに、読み易かったです。
また、集英社文庫版は、原文ですが、仮名遣いを現代仮名遣いに改め(文語のまま)、適宜改行や句読点の変更、会話にカギカッコを施すなどして、まるで現代語のように読み易くなっています。
しかし、河出文庫版も角川ソフィア文庫版、集英社文庫版も、残念ながら絶版になっています。
僕はアマゾンの中古で買いました。
こういう、難解な古典に少しでも近付ける様にした本を、どうして絶版にするのでしょうか。
まあ、需要がないのでしょうが。
このように難解な『たけくらべ』ですが、当然ながら、高校日本史の教科書にも載っています。
例えば、僕の手元にある『詳説日本史』(山川出版社)には、第9章「近代国家の成立」の「おもな文学作品」という一覧表の中です。
一葉については、本文中に、次のように書かれています。

底辺の女性たちの悲哀を数篇の小説に描いた樋口一葉も、ロマン主義の運動の影響下にあった。

『精選日本文学史 改訂版』の脚注には、次のようにあります。

樋口一葉 明治五(一八七二)年―明治二十九(一八九六)年。歌人・小説家。東京都生まれ。本名は奈津。中島歌子の萩の舎塾で歌を学び、半井桃水に小説の指導を受ける。

また、同書の本文には、次のようにあります。

はやく露伴に学んで作家となったのが樋口一葉である。『たけくらべ』『十三夜』『にごりえ』などの名作を生んだ。旧時代のしがらみの中で悲運に泣く女性を描いて傑出した才能を見せた。その流麗な雅俗折衷の文章によって写し出された微妙な心理や浪漫的詩情は、時代を越えてこの女流作家の名を高からしめている。極貧の中での日常や揺れる内面を伝える日記が、また優れた日記文学になっている。

『田村の[本音で迫る文学史]』(大和書房)でも、一葉について述べられているので、そちらも引用しておきます。

樋口一葉は、近代日本文学に初めて名を残す女性作家であるが、武士の誇り・男性的教養・貧窮生活といった要素を自身の内に持って、社会の中で虐げられる女性の立場を描いた作品を残し、やはり二十四歳の若さで世を去った。『にごりえ』『十三夜』『たけくらべ』などの作品は、社会の仕組みゆえに女性達が不幸になる様を描いており、後の女性作家たちのように世の仕組みそのものに挑戦するという面のないところが、まだ日清・日露戦争前の時代の小説として特徴的である。文体は、美文的な擬古文である。

何度も書いていますが、上の引用の中に「文体は、美文的な擬古文である」とありますが、本文の引用はありません。
これでは、本当に一葉の文体が美文的かどうかは分からないでしょう。
受験対策の虚しさです。
高校生の時は名前だけ覚えるにしても、大学に入ったら、出来るだけたくさんの文学作品を読むべきだと思います。
と偉そうに言っている僕は、学生時代は、映画ばかり観て、ロクに本は読まずに過ごしてしまったのですが。
樋口一葉について
さて、一葉の略歴について、岩波文庫版の「解説」をもとに、少し詳しく述べておきましょう。
樋口一葉は、明治5(1872)年3月25日(太陽暦では5月2日)、東京府の内幸町に父則義・母たきの次女として生まれました。
幼い時から読書に夢中になり、学問を好んでいたが、母たきの意見で学校教育を諦めなければならなくなります。
一葉の最終学歴は青海学校小学高等科第四級卒業というものです。
一葉が初めて明確に文学の道を歩み始めるのは、中島歌子の主宰する歌塾萩の舎に入門した時でした。
明治19年、一葉は14歳です。
萩の舎への入門は、作家一葉の誕生において大きな意味を持っています。
まず挙げるべきは、一葉の小説文体形成への影響です。
萩の舎では、和歌の教授のほかに、『源氏物語』などの日本古典の講義も行われていました。
一葉の文学的教養基盤は、彼女自身の読書と萩の舎での日本古典の摂取に多くを負っており、西洋文化キリスト教思想の影響を強く受けていた同時代の女性作家達とは対照的です。
さらに、作家一葉の誕生に具体的に関わったという点で、若き女性作家・三宅花圃の存在を看過することは出来ません。
一葉が作家の道を志した時、まず具体的な目標としたのは花圃でした。
一葉の初期作品には、花圃の影響が看取されます。
一葉は長兄泉太郎の夭折・父則義の病没などによって、樋口家の相続戸主となりました。
既に、姉ふじは他家に嫁ぎ、次兄虎之助は分籍されていたため、母たきと妹邦子の生活は全て戸主一葉の責任となったのです。
父則義が事業に失敗したため、樋口家は没落の一途をたどっており、貧窮の中で一葉達の前には安定した収入の道はありませんでした。
この時、一様は小説を書くことを選択したのです。
小説家となることを志した一葉は、明治24年、妹邦子の友人野々宮菊子の紹介で、当時「東京朝日新聞」の小説および雑報記者であった半井桃水に弟子入りしました。
親身になって一葉に助言・援助を与えてくれた桃水は、雑誌「武蔵野」を創刊し、一葉はその第1篇に第1作『闇桜』(明治25年3月)を掲載することが出来たのです。
明治25年、時に一葉は二十歳でした。
しかし、この頃、桃水との関係が萩の舎で醜聞として噂され、中島歌子や友人伊東夏子から忠告を受けた一葉は、桃水との交際を絶つことを決意します。
小説発表のつてを失った一葉に、三宅花圃は有力な文学雑誌であった「都の花」を紹介してくれました。
同雑誌に発表した『うもれ木』(明治25年11月)に注目した星野天如が「文学界」への寄稿を求め、一葉と「文学界」との関係が生じます。
作家的成熟に伴い、一葉の内面の苦悩・葛藤はより切迫したものとなっていました。
一方、生活は日に日に困窮を極めています。
この難局を打開するべく、一葉は文学を捨てて、商売を始める決意をしたのです。
明治26年7月20日、一葉は母たき・妹邦子とともに下谷龍泉寺町に転居し、小さな駄菓子屋を開きました。
当時の龍泉寺町は、吉原遊廓に寄生する廓者たちが軒の傾いた長屋にひしめく場所でした。
ここで一葉が目にした、女性たちが身を売る吉原遊廓という闇の空間、その場所に経済的に依存する周辺の町の人々の生活などが、作家としての彼女の社会認識を深化させ、後に「奇跡の十四か月」と呼ばれる創作の充実期をもたらすことになるのです。
明治27年5月、商売を廃業して本郷の丸山福山町に転居した一葉は、再び書くことへと向かいました。
明治27年12月に「文学界」に掲載した『大つごもり』を幕開けとして、一葉は近代文学史上に残る傑作の数々をほぼ1年あまりの間に集中的に執筆します。
どの作品も、それまで描かれえなかった明治近代の抑圧の中を生きる女性たちの姿を、所属する社会的な階層を越えて描き出したものでした。
そして、明治29年11月23日、一葉は結核のため、わずか24歳でその生を終えました。
たけくらべ』について
たけくらべ』は、雑誌「文学界」に、明治28年1月(1~3回)、2月(4~6回)、3月(7、8回)、8月(9、10回)、11月(11、12回)、12月(13、14回)同29年1月(15、16回)と断続的に掲載され、明治29年4月に「文芸倶楽部」第二巻第五編に一括再掲載されました。
女性作家樋口一葉の名前を一躍有名にしたのは、幸田露伴斎藤緑雨森鷗外による合評「三人冗語」(「めさまし草」明29・4)の『たけくらべ』評です。
特に、鷗外による「われは縦令世の人に一葉崇拝の嘲を受けんまでも、此人にまことの詩人といふ称をおくることを惜しまざるなり」との激賞は、同時代のみならず後世に至る一葉の評価を決定付けた感があります。
それでは、ここで、『たけくらべ』のあらすじを、簡潔にまとめているウィキペディアから引用しておきましょう。

吉原の遊女を姉に持つ勝気な少女美登利は、豊富な小遣いで子供たちの女王様のような存在だった。
対して龍華寺僧侶の息子信如は、俗物的な父を恥じる内向的な少年である。
二人は同じ学校に通っているが、運動会の日、美登利が信如にハンカチを差し出したことで皆から囃し立てられる。
信如は美登利に邪険な態度をとるようになり、美登利も信如を嫌うようになった。
吉原の子供たちは、鳶の頭の子長吉を中心とした横町組と、金貸しの子正太郎を中心とした表町組に分かれ対立していた。
千束神社(千束稲荷神社)の夏祭りの日、美登利ら表町組は幻灯会のため「筆や」に集まる。
だが正太郎が帰宅した隙に、横町組は横町に住みながら表町組に入っている三五郎を暴行する。
美登利はこれに怒るが、長吉に罵倒され屈辱を受ける。
ある雨の日、用事に出た信如は美登利の家の前で突然下駄の鼻緒が切れて困っていた。
美登利は鼻緒をすげる端切れを差し出そうと外に出るが、相手が信如とわかるととっさに身を隠す。
信如も美登利に気づくが恥ずかしさから無視する。
美登利は恥じらいながらも端切れを信如に向かって投げるが、信如は通りかかった長吉の下駄を借りて去ってしまう。
大鳥神社の三の酉の市の日、正太郎は髪を島田に結い美しく着飾った美登利に声をかける。
しかし美登利は悲しげな様子で正太郎を拒絶、以後、他の子供とも遊ばなくなってしまう。
ある朝、誰かが家の門に差し入れた水仙の造花を美登利はなぜか懐かしく思い、一輪ざしに飾る。
それは信如が僧侶の学校に入った日のことだった。

まず、舞台が吉原というところが普通の世界ではありません。
主人公の美登利の姉は、売れっ子の遊女です。
今で言えば、ナンバーワン・ソープ嬢でしょうか。
だから、未だ14歳の美登利は美人で大人びていて、金銭感覚がおかしい。
で、この子の将来は、やはり遊女(=売春婦)と決まっています。
カネはあって、男にチヤホヤもされるのでしょうが、根本的に、これが幸せと言えるのだろうかという疑問が、まず湧いて来ます。
いや、こういう職業の方を差別するつもりはありませんが。
僕の知り合いのライターで、風俗嬢のドキュメントを書いて有名になった人がいますが、この人の本を読むと、不幸な女性のオンパレードです。
今も昔も、女性が自分の体を売るというのは大変なことで、本質は何も変わっていないのだと思い知らされます。
で、美登利の初恋の相手の信如は、坊主の息子で、やはり将来は仏門に入ると決められています。
風俗嬢と僧侶なんて、この世で最も掛け離れた人種のような気もしますが。
ところが、この二人の恋は、自分に素直になれず、うまく気持ちを伝えられない、切なくて甘酸っぱい、誰にも覚えのある初恋そのものなのです。
これが、本作を優れた文学の高みに押し上げた点ではないでしょうか。
好きな相手と言葉を交わすのもうまく出来ないような純情な少女が、もうすぐ知らない男からカネをもらって股を開かなければならない。
そして、こんな娘に惚れられた少年は、煩悩を断ち切らなければならない仏門に入るという。
何という話しでしょうか。
樋口一葉は、よくこんなのが書けましたね。
で、この主筋に、まるで『ウエスト・サイド物語』みたいな子供達同士の「組」の対立が絡みます。
登場人物それぞれのキャラクターが非常に生き生きと描かれているのです。
それでは、岩波文庫版の「解説」が非常に簡潔にまとまっているので、そこから重要そうな箇所を引いておきましょう。

たけくらべ』は、夏から初冬への季節の移ろいのなかで、吉原周辺の町・大音寺前を舞台に、二度とは戻ってこない<子供たちの時間>を見事に描き出している。大黒屋の美登利、龍華寺の新如、田中屋の正太郎を中心に、頭の長吉や滑稽者の三五郎など、それぞれがそれぞれの場所で、大人の時間を目前にした最後の季節を過ごしている。ことに美登利と新如の間で交わされるそこはかとない思慕は、私たち読者の惜春の思いを誘引してやまない。だが『たけくらべ』の哀切な調べは、吉原遊郭という悲惨な場所によって支えられている。美登利の身体もすでにこの空間に深くからめとられている。一方新如は僧侶となるべく間もなくこの俗塵の地を去らねばならない。それぞれに「大黒屋の」「龍華寺の」との称号を背負って登場していることからも明らかなように、彼らが現在そして将来も所属すべき場所はすでに決定されているのであって、二人の住む世界は永遠に交わらないのである。それを象徴するのが、雨の日の大黒屋の寮の格子戸の場面である。あたかも芝居の一場面を思わせるような画面の切り取り方、終始無言のうちに展開される二人の言葉にできない内面の逡巡、そして雨のなかに取り残される紅の端切れ。このもっとも印象的な美しい場面で示されているのは、しかし二人の住む世界は決して交わらない、ということなのだ。二人を隔てる格子戸は、まさに「何うでも明けられぬ門」であった。
美登利はある日を境に、別人のように変わってしまった。美登利に何が起こったのか、初潮を迎えたのか、それとも何らかの形で身を売るに近いことがひそかに行われたのか、語り手ははっきりとは明かしていない。だが明らかなのは、彼女にとって大人になることがすなわち遊女となること、自らの性を切り売りして生きていくその決定の時を意味することである。一葉は『たけくらべ』の執筆と並行して、『ゆく雲』『にごりえ』『十三夜』『わかれ道』といった代表作の数々を書いた。「ゑゝ厭や/\、大人に成るは厭やな事」という美登利の嘆きは、これからの計り知れない未来の時間を、性的存在としてのみ生きていかねばならない一人の少女の、言葉として発せられることのない思いであった。そしてその美登利の姿は、他の作品に登場する多くの女性たちの原点とも言うべきものなのである。
ある霜の朝、新如は水仙の作り花を残してこの町を去って行く。だが吉原の格子戸の中にからめとられた美登利は、どこへも行くことはできない。水仙の「淋しく清き姿」に見入る美登利の背後に吉原の闇があることを、語り手の視線は確かにとらえている。その非情と豊かな抒情の拮抗するところに『たけくらべ』の世界はあるのである。

文庫版について
現在、新刊で流通している『たけくらべ』の文庫版は、岩波と新潮から出ています。
岩波文庫

にごりえ・たけくらべ (岩波文庫 緑25-1)

にごりえ・たけくらべ (岩波文庫 緑25-1)

  • 作者:樋口一葉
  • 発売日: 1999/05/17
  • メディア: 文庫
初版は、何と1927年7月。
岩波文庫の創刊と同時です。
現在出回っているのは、1999年の改版。
にごりえ」「たけくらべ」の2篇を収録。
「注」と「解説」は菅聡子氏。
新潮文庫
初版は昭和24年。
にごりえ」「十三夜」「たけくらべ」「大つごもり」「ゆく雲」「うつせみ」「われから」「わかれ道」の8篇を収録。
「注解・解説」は三好行雄氏。
【参考文献】
たけくらべ 現代語訳・樋口一葉 (河出文庫)松浦理英子藤沢周阿部和重井辻朱美、篠原一・訳
一葉の「たけくらべ」 ビギナーズ・クラシックス 近代文学編 (角川ソフィア文庫)角川書店・編
たけくらべ (集英社文庫)
詳説日本史B 改訂版 [日B309] 文部科学省検定済教科書 【81山川/日B309】笹山晴生佐藤信五味文彦、高埜利彦・著(山川出版社
精選日本文学史』(明治書院
田村の〈本音で迫る文学史〉 (受験面白参考書)』田村秀行・著(大和書房)
たけくらべ - Wikipedia

『素晴らしき哉、人生!』

この週末は、ブルーレイで『素晴らしき哉、人生!』を見た。

1946年のアメリカ映画。
監督は、『オペラハット』『我が家の楽園』『スミス都へ行く』の巨匠フランク・キャプラ
音楽は、『我が家の楽園』『スミス都へ行く』『疑惑の影』『赤い河』『見知らぬ乗客』『遊星よりの物体X』『私は告白する』『ジャイアンツ』『ナバロンの要塞』『北京の55日』『ローマ帝国の滅亡』の巨匠ディミトリ・ティオムキン
撮影は、『新・猿の惑星』のジョセフ・バイロック。
主演は、『我が家の楽園』『スミス都へ行く』『ロープ』『裏窓』『知りすぎていた男』『めまい』『西部開拓史』のジェームズ・ステュアート。
共演は、『地上より永遠に』のドナ・リード、『グランド・ホテル』『我が家の楽園』『キー・ラーゴ』のライオネル・バリモア、『透明人間(1933)』『ミニヴァー夫人』『疑惑の影』のヘンリー・トラヴァース、『スミス都へ行く』『風と共に去りぬ』『脱出(1944)』のシェルドン・レナード。
モノクロ、スタンダード・サイズ。
画質は良い。
にぎやかなテーマ曲。
「ここはベドフォード・フォールズ」という字幕。
雪の夜。
「ジョージにもう一度チャンスを」祈る人々。
地上で大勢がジョージ・ベイリー(ジェームズ・ステュアート)のために祈っている。
その頃、天国では翼を持たない二級の天使(ヘンリー・トラヴァース)を、ジョージを救うために派遣することが決定した。
天使にジョージについての予備知識を与えるという名目で、ジョージの人生を回想。
1919年、12歳のジョージ。
仲間達とソリ遊びをしていると、弟のハリーが池の氷を破って水没。
ジョージはハリーを助けて風邪を引き、左耳の視力を失う。
ジョージはガウアーの薬局でアルバイト。
ガウアーの息子は流感で死亡。
悲しみにくれるガウアーは、客に渡す薬に間違って毒薬を入れてしまうが、ジョージがそれに気付く。
ジョージは大人になった。
ガウアーから旅行カバンを贈られる。
明日から世界旅行に出発する予定。
実家(ベイリー下宿)での最後の食事。
ジョージは父親に、将来は建築・設計・都市計画に関する仕事に就きたいと言う。
父親の会社(住宅金融)を継ぐつもりはない。
この町は、金持ちだが性悪のポッター(ライオネル・バリモア)が牛耳っている。
父はジョージに「大学へ行き、ここを出ろ」と告げる。
時は1928年。
ジョージは弟の高校卒業パーティーに出る。
友人の妹メアリー・ハッチ(ドナ・リード)を紹介される。
一緒に踊るジョージとメアリー。
友人のいたずらでフロアが開き、ジョージとメアリーは下のプールへドボン。
それを見た周りの連中が、阪神優勝後の道頓堀みたいに次々と飛び込む。
ガウンを羽織ったメアリーとジョージの帰り道。
メアリーは18歳。
ボロ屋敷に石を投げると願いが叶うという。
オッサンに冷やかされて、逃げ出すメアリー。
ガウンが脱げたので、茂みに隠れる。
そこへ、ジョージの父が発作という知らせが届き、車に乗せられて自宅へ向かうジョージ。
当然、世界旅行は中止に。
ジョージは、父の会社の業務を整理したら、大学へ行くことにした。
ポッターが乗り込んで来て、「この会社は不要」と告げる。
ジョージは、「貧しい人達のために必要だ」と、ポッターと口論。
結果、会社は存続することになったが、ジョージは社長を継ぐことになる。
大学進学も諦める。
ジョージは自分の学資で弟のハリーを大学に行かせる。
ハリーはスポーツで大学に通った。
卒業して、ガラス工場主の娘と婚約して戻って来る。
一方、ニューヨークから戻って来たメアリーが、ジョージに「私の家に寄って」と伝える。
メアリーの家に夜も、彼女の母親はジョージよりもサムと付き合って欲しいと思っているので、ジョージを邪険に扱う。
しかし、ジョージはメアリーにキス。
二人は結婚する。
ニューヨークとバミューダに2週間、新婚旅行に出掛けることになった。
正に出発する時、タクシーの中から銀行の取り付け騒ぎを見たジョージは、車を降りて、自分の会社へ向かう。
客が会社に押し寄せている。
銀行が急きょ、融資の返済を迫り、会社のカネを全て持って行ったという。
ポッターから援助を申し出る電話が掛かって来る。
しかし、その手には乗らない。
ジョージは、「この町で良心的な業者はウチだけだ」と自負している。
ポッターは、ジョージの会社を乗っ取ろうとしているのだ。
会社に「出資金を返せ」と押し寄せて来た客に、メアリーが持って来た新婚旅行の費用2000ドルを支払いに充てる。
何とか破産を免れたジョージ。
よく出来た奥さんだ。
メアリーは、例のボロ屋敷を改装して、新居にした。
かつてメアリーがボロ屋敷のガラスに石を投げた時、願ったのはジョージとの結婚だった。
さあ、これからどうなる?
この後も、ジョージの波乱の人生が描かれる。
最後に、窮地に陥ったジョージを、天使が助けに来る。
天使の愛読書は『トム・ソーヤーの冒険』。
当然、ハッピー・エンドだと分かってはいても、最後には、「やっぱり、いい話しだなあ」と思わされて、ホロリとする。
フランク・キャプラは偉大だ。

It's A Wonderful Life Trailer

『逃亡者』(1947)

連休中は、ブルーレイで『逃亡者』を見た。

逃亡者 Blu-ray

逃亡者 Blu-ray

  • 発売日: 2019/11/29
  • メディア: Blu-ray
1947年のアメリカ映画。
監督は、『怒りの葡萄』『わが谷は緑なりき』『荒野の決闘』『アパッチ砦』『黄色いリボン』『幌馬車』『西部開拓史』の巨匠ジョン・フォード
原作は、『第三の男』のグレアム・グリーン
製作は、『キングコング』『アパッチ砦』『黄色いリボン』『幌馬車』のメリアン・C・クーパー。
主演は、『怒りの葡萄』『荒野の決闘』『アパッチ砦』『戦争と平和(1956)』『間違えられた男』『十二人の怒れる男』『史上最大の作戦』『西部開拓史』『ウエスタン』の大スター、ヘンリー・フォンダ
共演は、『怒りの葡萄』『荒野の決闘』『アパッチ砦』『幌馬車』『静かなる男』のワード・ボンド、『アパッチ砦』『007 ロシアより愛をこめて』のペドロ・アルメンダリス。
モノクロ、スタンダード・サイズ。
不安げなテーマ音楽。
「この映画が描くのは時代を越えた真実の物語だ。起源は古く聖書の中で初めて語られ、その普遍的テーマゆえ今も世界中で演じられている。全編をメキシコで撮影したこの映画はメキシコの政府と映画界から招致を受け、実現した。舞台となるのは架空の小さな国だ。赤道の北か南かさえよく分からない」というナレーション。
架空の小さな国と言っているが、実際はメキシコらしい。
馬に乗って一本道を行く司祭(ヘンリー・フォンダ)。
廃墟の教会へ。
中に入り、ひざまずく。
無人かと思いきや、中に赤ん坊を抱いた一人の女性(ドロレス・デル・リオ)がいる。
女性「誰? なぜここへ?」
司祭「私の家だから。」
女性「いいえ。」
司祭「追われる身だ。私は司祭だ。ここは我が教会。」
この国では、革命で、宗教が禁止されているのだ。
女性の名はマリア・ドロレス。
夫はいないという。
彼女は、「娘(赤ん坊)に洗礼名をお与え下さい」と司祭に頼む。
「洗礼前の子を持つ親を集めなさい。私が集めよう」と、教会の鐘を鳴らす司祭。
人々が集まって来る。
司祭は、洗礼の儀式を行う。
一方、プエルト・グランデの港に船が到着する。
札束と銃を持った男が下りて来る。
町には、お尋ね者「グリンゴ」のポスターが貼られている。
罪状は殺人と窃盗。
この男こそ、グリンゴその人であった。
官憲がゾロゾロといる。
一般市民が集められている。
副官(ペドロ・アルメンダリス)が飲酒の罰金として5ペソを徴収しようとする。
この国では、禁酒法で酒が禁止されている。
こんな国では生きて行けない。
罰金を払えない者は拘禁60日。
何という国だ。
署長が副官にある神父を捕まえるように求める。
副官は、「最後の神父は半年前に銃殺した」という。
署長によると、今回の神父はかくまわれているという。
署長は副官に写真を渡した。
副官は、「村から人質を取り、神父を教えなければ、人質を殺す。捕まえるまで何人でも」と恐ろしいことを言う。
一体、人の命を何だと思っているのか。
幾ら任務とは言え、神父を殺すことがそんなにも重要なことなのか。
ジョン・フォードは熱心なカトリック教徒なので、この映画には特別の思い入れがあるらしい。
僕は完全な無神論者だが、宗教を禁止しようとまでは思わない。
そんなの、個人の勝手だ。
で、司祭は早くも村人に融け込んでいる。
そこへ、副官を筆頭に官憲が馬で乗り込んで来て、村を蹂躙する。
まるで、『七人の侍』の野武士の来襲みたいだ。
やっぱり、ジョン・フォードはクロサワの師匠なんだな。
で、副官は教会を発見して、高らかに笑う。
中から赤ん坊の泣き声がする。
入ってみると、マリアがいる。
実は、副官はマリアの元夫であった。
ここが原作とは違う点で、グレアム・グリーンはこの改変に激怒したらしい。
副官は、任務があって戻れなかったとマリアに言い訳をする。
マリアは現在、酒場で働いているのであった。
しかし、このブルーレイ・ソフトは画質が悪いな。
フィルムの傷やゆがみがそのままだ。
で、官憲は広場に村民を集めている。
副官が、村長に神父の居場所を尋ねる。
副官は、教会の祭壇にろうそくの燃えかすと聖水があったと告げる。
村人ひとりひとりに尋問する副官。
「言えば1000ペソやる。言わなければ人質を取り、見せしめに殺す!」
だが、誰も名乗り出ない。
副官は、村長を人質として首に縄を掛ける。
司祭は「私を人質に」と志願するが、副官は誰だか気付かず、却下する。
司祭は、「私は去った方がいい。プエルト・グランデへ行き、ラバを売り、船で出国する」と言って、去る。
川辺で、お尋ね者のポスターが貼ってあるのを見付ける。
傍に賞金稼ぎの乞食みたいな男がいる。
「警察が来たのか?」と尋ねる司祭を見て、賞金稼ぎは直感する。
実は、この賞金稼ぎは司祭の指名手配のポスターも持っているのであった。
もう、この賞金稼ぎが実に粘着質のいやらしいヤツで。
嫌悪感を抱かせる役者の演技がスゴイ。
で、賞金稼ぎは走ってラバの司祭を追い掛けて来る。
「俺を案内役に雇え」と司祭に言う。
賞金稼ぎは、ぜいたく品であるろうそくを持っている司祭を、金持ちだと目を付けたのだ。
司祭はこいつを怪しむ。
司祭が寝ているスキに、司祭のカバンを開ける賞金稼ぎ。
聖杯が入っている。
ミサ用のワインを一気飲みする賞金稼ぎ。
司祭が目覚める。
賞金稼ぎは、司祭の正体を既に知っている。
一目散に逃げる司祭。
翌朝、司祭はプエルト・グランデに着いた。
3等の切符を買い、船に乗り込もうとしたその時、「神父様」と少年に声を掛けられる。
司祭に洗礼を授けてもらったという少年であった。
「母が死にそうなんです」と訴える少年。
司祭が乗れないまま、船は出て行った。
司祭は村に戻る。
しかし、少年の母親は亡くなってしまった。
親族一同が集まって、葬式を開く。
だが、ワインがない(賞金稼ぎが飲んでしまった)ため、司祭はミサが出来ない。
禁酒令のため、酒を入手するのは困難だ。
司祭は、少年と共にヤミ市へ。
怪しい仲介人にカネを払い、「ホテル・スプレンディッド」へ連れて行かれる。
2階に、これまた明らかに怪しい売人がいる。
ブランデーはあるが、ワインはないという。
司祭は自分の身分を明かせない。
でも、ブランデーではなく、ワインが必要だと主張する。
売人が、奥から署長のために取って置いたというワインを持って来る。
売人もワインを飲むのは久し振りなので、何と、この場で空けようということになった。
気の弱い司祭は、この場から立ち去れない。
見ていると、何とももどかしい。
しかも、そこに署長がやって来る。
闇の取り引きは署長公認であった。
署長と売人と仲介者でワインは空けられてしまい、司祭は無理矢理ブランデーを飲まされ、残りの瓶を持たされる。
フラフラになりながら、ようやくこの場を後にすると、ホテルの目の前に待ち構えていた官憲に捕まる。
今なら、覚醒剤でも持っているような感じなんだろうな。
司祭は留置場へ送られてしまう。
さあ、これからどうなる?
主役の司祭を筆頭に、登場人物達はほとんど名前も明かされない。
余計な感情移入は廃し、物語は淡々と進む。
それでも、かえって司祭の神々しさが浮び上がって来る。
数奇な運命を全うした司祭。
スゴイ宗教映画だ。
原作では、司祭はもっと欲にまみれて人間臭かったというが。
この映画は、これで非常に完成度の高い作品だと思う。
無神論者の僕でも思うのだから、間違いない。
ヴェネツィア国際映画祭国際賞・国際カトリック映画事務局賞受賞。

The Fugitive (Preview Clip)