『黒いジャガー』

この週末は、ブルーレイで『黒いジャガー』を見た。

黒いジャガー [Blu-ray]

黒いジャガー [Blu-ray]

1971年のアメリカ映画。
監督はゴードン・パークス
主演は、『大地震』のリチャード・ラウンドトゥリー。
音楽はアイザック・ヘイズ
1960〜70年代にかけて製作されたブラック・パワー・ムービーの代表作とされている。
出演者は、ほとんど黒人である。
描かれているのも黒人の世界。
おそらく、映画館に集まった客も、みんな黒人なのだろう。
そういう所へ、もし白人が一人で観に行ったりしたら、ヘンな雰囲気になったに違いない(僕は別に差別主義者ではないが)。
どうでもいい話しだが、黒人の蔑称とされる「nigger」は、多分ラテン語のniger(黒い)が起源だと思う。
ドイツ語の「黒い」はschwarzだから、英語のblackはゲルマン語起源ではないのか。
通常、英語ではラテン語起源の単語は学術的だったりするのだが、どうしてnigerは蔑称になってしまったのだろう。
ニューヨークの街中を肩で風切って歩く一人の黒人の登場から始まる。
私立探偵のシャフト(リチャード・ラウンドトゥリー)だ。
車道を横切り、車に中指を立て、ニセ時計売りに警察手帳を見せてビビらせる。
エレキなテーマ曲。
セルジュ・ゲンズブールみたいな歌と女性のコーラス。
黒人の靴磨き屋に入る。
店主から「二人連れの男がお前を探していた」と聞かされる。
続いて、馴染みの白人警部補ビクより、「黒人居住区でゴタゴタがあった」と。
売店で怪しい男を見付け、銃を奪う。
今度は、シャフトの事務所で、二人の黒人男と乱闘になる。
もみ合いの末、一人が窓から落ちて死んでしまった。
彼らは、ハーレムの黒人ボス・バンピーの手下であった。
ここまで、展開は早いが、イマイチ話しが読めない。
要は、やり手の私立探偵で、警察にも知り合いがおり、悪い黒人からは狙われているということが言いたかったのだろう。
シャフトは刑事から、「状況を教えろ。さもないと、探偵免許を停止するぞ」と脅される。
シャフトはバンピーに電話をする。
本作は、黒人が主人公で、黒人の世界を描いているので、人種問題が大きなテーマになっている。
例えば、タクシーがシャフトの乗車を拒否する。
すぐ後に、白人は乗せるのだが。
部下がヒドイ目に合わされたのにも関わらず、今度はバンピーが直接、シャフトを訪ねて来る。
バンピーの娘が誘拐されたので、探し出して欲しいという。
彼は暗黒街のドンなので、警察には頼めない。
犯人は黒か白か?
バンピーは、「自分は悪人だが、娘はまともであり、大学にも行かせたい」と、涙ながらにシャフトに訴える。
バンピーは、娘を誘拐したのは、黒人解放過激グループのボスであるベン・ビューフォードの仕業だと睨んでいた。
「カネは出す」とバンピーが言うので、シャフトは引き受ける。
ベンは、シャフトのかつての相棒だったが、最近は会っていなかった。
あちこち聞き込みをするシャフト。
バックに、黒人の悲惨な現状を歌った曲が流れる。
本作は、アカデミー歌曲賞を受賞しているが、多分、この歌詞が多くの人々の心に響いたのだろう。
ニューヨークの裏街が映し出される。
手掛かりは、なかなかない。
シャフトは、情報屋からネタを仕入れる。
合間に、彼女とも会う。
ラブ・シーンが挿入される。
彼は、ジェームズ・ボンドばりに女にも手が早いのであった。
更に、警部補が探りを入れて来る。
何か、この辺の展開が、如何にも70年代の刑事ドラマのようだ。
太陽にほえろ』とか。
まあ、色々と影響を与えているんだろうな。
ただ、画面の中で事件は起きているのだが、イマイチ展開がつかめない。
途中、黒人の子供に優しく声を掛ける。
シャフトは、子供には優しいという設定か。
苦労して、元相棒であるベンのところへ。
そこは、グループの集会所であった。
しかしながら、突如、外で撃ち合いが始まる。
彼らのアジトも襲撃を受け、機関銃でハチの巣になる。
黒人達の住んでいる建物は、本当に貧しそうだ。
冒頭で流れた高層ビルの立ち並ぶニューヨークの表通りと、何たる対比。
仲間はみんなやられ、死屍累累。
かとうじて、シャフトとベンの二人だけが逃げのびる。
「警察だ!」
シャフトは、ベンをとりあえず友達の家にかくまってもらう。
警察の上の方が、何か噛んでいるのだろうか。
シャフトは警部補と会う。
警部補は、バンピーとマフィアとの対立に関わる不穏な動きをキャッチしていた。
実は、シャフトの後をつけていた男も殺されていた。
バンピーがシャフトをハメたのだろうか。
バンピーの娘の誘拐犯は、ベンではなかった。
では、一体誰が?
この時代、白人にも警察にも顔の利くシャフトのような存在は、黒人社会にとって重要だったのだろう。
彼が、黒人達のヒーローになったのも、分からんではない。
しかし、ストーリーが分かりにくいな。