『宇宙空母ギャラクティカ』

この週末は、ブルーレイで『宇宙空母ギャラクティカ』を見た。

1978年のアメリカ映画。
監督はリチャード・A・コーラ。
主演はリチャード・ハッチ
スター・ウォーズ』の人気に便乗して作られた作品。
元々はテレビ・ドラマだったのを、日本では無理矢理劇場公開した。
僕が小学生の頃、ケイブンシャかどこかの「プラモデルの作り方」の本に、宇宙空母ギャラクティカが大々的に載っていたのを覚えている。
プラモデルでは大人気だったのだろう。
多分、小学生の男子の間では、普通に生きていれば知っているような作品だったと思う。
しかし、まさかこんなにショボイ映画だったとは。
一応勇壮なテーマ曲から始まる。
宇宙空間は、まるで『ウルトラマン』に出て来るように前時代的。
おそらく遠い未来、人類は宇宙各地の12の植民惑星に分散して住んでいた。
で、人類は宿敵サイロンズとの長年に渡る戦争を終結させるため、彼らとの和平会談を持つことになった。
アトランティア号という宇宙船の中で、大統領を中心にこのことを決めるのだが。
大統領はローマ法王みたいな衣装を着ている。
12の色んな民族の代表が出席しているが、みんなそれぞれの民族衣装を着ている。
未来を描いたSFにありがちだが、どうにも衣装が古臭い。
未来を描こうとすると、どうしてもクラシックに回帰するのかな。
メトロポリス』なんかもそうだった(本作と比べるのが申し訳ないくらいのSFの古典だが)。
時計じかけのオレンジ』のインタビューか何かで、キューブリックが「未来を描くために、わざと古典的なデザインを使う。その方が古びて見えない」というような意味のことを言っていたような気がする。
アトランティア号は、大統領がいるくらいだから、この宇宙船団の母船なのかな。
で、ギャラクティカ号に舞台は移る。
本作は、登場人物のアップ・ショットが多くて、如何にもTVドラマ風。
そして、特撮がチャチ。
主人公達のかぶっているヘルメットがツタンカーメンみたい。
サイロンズの真意は交渉に応じると見せかけ、奇襲をかけて人類を絶滅させることにあった。
大したストーリーじゃないので登場人物の名前も一々書かないけれど、主人公が宇宙空間をパトロールしていると、敵が攻撃して来た。
何か、この映像がインベーダー・ゲームみたい。
更に、サイロンズはインチキなダース・ベイダー
本作は「『スター・ウォーズ』のパクリだ」と言って訴えられたらしいが、確かに、オリンピックのエンブレムも真っ青なほど似ている。
映像の合成の精度が低い。
テレビだと分からないのだろうが、スクリーンで見れば、きっとヒドイことになっていただろう。
ストーリーは単純である。
演出には、全く緊迫感がない。
ただ出来事を順番に並べているだけである。
脚本がヒドイのかな。
TVドラマを編集したから、どうしてもあらすじだけになってしまうのかも知れない。
ああ、でも、一応主人公の弟が死んで、その父親が司令官で、優柔不断な大統領や、敵と通じている大統領の側近やらがごにょごにょと動き回ってはいたな。
それにしても、本作を見ると、『2001年宇宙の旅』が如何に偉大な作品であったかがよく分かる。
10年経って、SF映画の進歩が、むしろ著しく退化している。
まあ、しかし、本作を見ると、政治家はみんな戦争が好きなんだなあということが分かる。
安保を通したい安倍だって、結局は戦争をしたいんだ。
安保反対!
それはさておき、主人公の弟が死に、その恋人らしき女性が「黒い涙」を流す。
こんなメイクで良いのか。
人間ドラマが、どうにも表層的。
で、優柔不断な大統領のせいで、敵に攻撃されて、アトランティア号は爆発してしまう。
ネトウヨなら、村山や鳩山みたいな左翼に重ねて、「日本もこのままじゃ中国にやられるぞ」とか言いそうだが。
戦争なんかない方がいいに決まっている。
本作は、真珠湾攻撃が元ネタらしいので、サイロンズは日本人ということになる。
アメリカ人にしてみれば、有色人種に叩かれたことが余程ガマン出来ないんだろう。
サイロンズは、話合いの余地すら一切ない「絶対悪」として描かれている。
で、無防備の人類は彼らの攻撃を受け、12の植民地惑星が全て潰滅させられてしまった。
そもそも、「植民地惑星」というのが、帝国主義的な発想だと思うのだが。
で、それぞれの植民地星から、220の宇宙船が難民を乗せて脱出する。
あるだけの宇宙船で急いで脱出したことにしたいのだろう。
船はコンテナ船だったり、ペンキがハゲていたりする。
今や、宇宙空母ギャラクティカは、人類に残された唯一の基地であり、彼らは共通の祖国である、宇宙の彼方の地球という星を目指すことにした。
宇宙船内には、帰るところのない難民の群れが押し込まれている。
まるで、『十戒』か何かの宗教映画のようだが、それもそのはず、本作の元ネタの一つは「出エジプト」なのであった。
それにしても、この難民達の衣装が、異様に古臭い。
紀元前のユダヤ人そのままである。
ハンガリーの難民でも、GパンにTシャツなのに。
さて、大量の難民を抱えたギャラクティカでは、食糧が底をつき、今にも暴動が起きそうな不穏な空気が漂っていた。
しかしながら、船の特権階級は、秘密の部屋で何人もの愛人を囲い、豪華な食事を並べてパーティーを行なっていた。
ヒドイね。
やはり、特権階級は腐敗するのである。
天皇制反対!
で、何だかよく分からんが、毛むくじゃらのアイボみたいなロボットも出て来る。
顔は、ちょっとグレムリンに似ているかも。
で、更に、インチキなカップルも誕生する。
どうしても恋愛ネタに持って行きたいのだろうか。
しかし、コイツらがどうにもチャラ過ぎて、全く感情移入出来ない。
いよいよ、ギャラクティカでは食糧と燃料が不足したので、補給のため、惑星キャサリンへ着陸する。
ここで開かれているパーティーが、またも酒と女とギャンブルまみれ。
正に酒池肉林。
しかも、これが「天国みたいだ」って。
何と天国の発想が陳腐なことか。
聖書も泣いているよ。
このキャバレーみたいなところで、「矢島美容室」みたいな黒人女の3人組が歌っているのだが、コイツらには目が四つ、口が二つあって、夢に出て来そうなほど恐ろしく不気味。
一つ、「権力者が勲章を与える時には裏がある」というセリフだけは印象に残った。
支持率の落ちた内閣が国民栄誉賞を乱発するようなものだな。
この構図は、いつの時代も変わらない。
安倍政権粉砕!
それにしても、何という結末だろう。
こんなに見ていて疲れた映画は、久し振りだ。