『ドラゴン危機一発』

この週末は、ブルーレイで『ドラゴン危機一発』を見た。

ドラゴン危機一発 [Blu-ray]

ドラゴン危機一発 [Blu-ray]

1971年の香港映画。
監督はロー・ウェイ。
主演は、『燃えよドラゴン』のブルース・リー(改めて紹介するまでもないか)。
ブルース・リー主演のカンフー映画の第1作。
僕が小学生の頃、カンフー映画が異様に流行って、ハマっている同級生もいた。
僕は全く興味がなかったが。
ケイブンシャの大百科か何かで読んで、ブルース・リーの主演作が日本で公開されたのは彼の死後であったことや、謎の死を遂げたことは知っていたが。
別に、今でも特別興味がある訳ではないのだが、これも70年代のムーヴメントの一つとして、避けては通れないであろう。
本ブルーレイはシネスコ・サイズ。
画質は良い。
舞台はタイなんだって。
安っぽいオープニングから始まる。
大河の岸に辿り着いた舟から降りるチェン・チャオ・ワン(ブルース・リー)。
ただの地味な青年だ。
彼は、田舎から従弟のシュー・シェン(ジェームズ・ティエン)を頼って町に出て来た。
と言っても、70年代のアジアの町並みは、かなり貧しそうに見える。
道端のかき氷屋台でかき氷を食べる。
すると、若い女性店員にチンピラどもが絡んで来る。
更に、肉まん売り子(未だ子供)から肉まんをふんだくってタダ食いする。
だが、チェンは黙って見ている。
従弟のシューが現われてチンピラを撃退するが、明らかに当たっていない足蹴りにアフレコで音を入れてあるカンフー・シーンに興醒め。
それと言うのも、本ブルーレイに収録されているのは、アフレコ・バージョン(広東語)らしい。
セリフと口が全く合っていない。
おまけに、最初はジェームズ・ティエンが主役の作品だったのが、撮影途中でブルース・リーを主演にすることになり、脚本を書き変えたのだとか。
だから、ブルース・リーはなかなか活躍しない。
チェンは、田舎を出る時に、母親にケンカを堅く禁じられたという設定になっている。
従弟の家は大家族で、男達は皆、町の有力者マイの経営する製氷工場で働いている。
出て来る男達は、皆揃いも揃って根っからの労働者階級である。
それも、生半可な労働者ではない。
先日、僕が大阪へ出張に行った時に見た、西成のあいりん地区の日雇い労働者と同じだ。
最近、工場の同僚が何人も死んだり、行方不明になったりしているという。
この家の若い娘(シューの妹)チャオ・メイは、どうやらチェンに惚れたようだ。
近所には賭博場があり、イカサマが行なわれていた。
仲間を助けに行ったチェンとシューは、悪党どもと乱闘になる。
ここでチェンのカンフーが少しだけ披露され、シューは「なかなかの腕っぷしだ」とほめる。
日にちが変わって、チャオ・メイが川で洗濯(!)していると、金持ちそうな若造にナンパされる。
これが、製氷工場の社長のドラ息子であった。
一方、チェンは工場で働き始める。
仕事に慣れない彼の手元が狂って、大きな氷を落として割ってしまうと、中からヤクの入った袋が出て来た。
実は、この工場は、社長もドラ息子も工場長も皆、ウラで麻薬の取り引きに手を染めていたのである。
そして、社長はカンフーの達人でもあった。
ある時、工場長から「ヤクの取り引きの仲間になれ」と言われ、断った工員二人が秘かに殺されてしまう。
仲間が戻って来ないことを不審に思ったシュ―は社長の家に乗り込むが、「首を突っ込むな」と言われてしまう。
帰ろうとすると、ドラ息子に率いられた悪党どもに取り囲まれる。
シューはカンフーの達人であったが、大人数が相手ではかなわない。
ボコボコにされ、ドラ息子にとどめを刺されてしまう。
前述のように、撮影途中で脚本が書き換えられたので、彼はここで殺されるのであった。
帰って来ないシューを心配した仲間達は、みんなで彼を捜す。
翌日、工員達が工場長に抗議する。
「シューが帰って来るまではストライキだ!」
いいね!
万国の労働者よ、団結せよ!
で、大乱闘になる。
工場長から連絡を受けた社長は、応援を寄こす。
チェンは黙って見ていたが、母親から渡され肌身離さず身に着けていたペンダントを壊され、ついに堪忍袋の緒が切れる。
メチャクチャ強い。
彼が「出てけ!」と叫ぶと、悪党どもはスゴスゴと退散する。
チェンは、工場長に呼び出された。
チェンの強さに驚いた工場長は、社長と相談し、懐柔策に出る。
何と、チェンを主任に任命したのだ。
プロレタリアート達は「我々は勝利した!」と勘違いし、大いに沸く。
でも、チェンが主任になったところで、シューが帰って来る訳でもない。
チャオ・メイは、相変わらず悲嘆に暮れている。
チェンは「4人を返さなければオレが許さん!」と息巻く。
しかし、彼は工場長にまんまと丸め込まれてしまう。
夜、チェンは酒の席に招かれる。
お姉ちゃんをはべらせ、ヘネシーをストレートで一気飲みし、へべれけになる。
そして、酔った勢いでお姉ちゃんと寝る。
でも、全然覚えていない。
翌朝、チェンは怪しい娼館から飛び出す。
すると、運悪くチャオ・メイと出くわしてしまう。
こりゃ、バツが悪いわ。
彼女はショックを受ける。
更に、工場長に酒を飲まされて朝帰りしたチェンを、仲間達はなじる。
そりゃそうだな。
シールズの代表が安倍に酒を飲まされるようなもんだもんな。
権力の犬め!
安倍政権粉砕!
本作におけるブルース・リーの役柄は、意外と人間的である。
この時は、未だスターではなかったからかな。
カンフー・シーンは比較的少ない。
チェンは、「相手が悪党なら殺してしまっても良いのか」と悩む。
ストーリーは単純だが、よく出来ている。
更に、意外な結末が待っている。
本作のブルース・リーは、全然「超人」じゃない。
ちょっとカンフーが得意な、普通の青年だ。
ここに僕は、好感を覚えた。
1974年の洋画興行収入4位(1位は『エクソシスト』。ちなみに、邦画の1位は『日本沈没』)。