『エデンの東』

この週末は、ブルーレイで『エデンの東』を見た。

エデンの東 [Blu-ray]

エデンの東 [Blu-ray]

1955年のアメリカ映画。
監督はエリア・カザン
僕が中学生くらいの時に読んだムックに、スタンリー・キューブリックが尊敬する監督として、確かエリア・カザンの名が挙げられていたと思う。
原作はジョン・スタインベック
僕は英文科に7年も在籍したのに、スタインベックの作品は一つも読んだことがない。
二十日鼠と人間』は映画で観た。
スタインベックは、幼少の頃からトマス・マロリーの『アーサー王の死』やミルトンの『失楽園』を愛読していたらしい。
僕も見習おう。
主演はジェームズ・ディーン
伝説的な俳優だが、僕はこれまで、彼の出演作を見たことがなかった。
生涯でわずか3本の映画にしか出演していない。
今の日本に、彼に匹敵する役者はいないだろう。
共演は、『西部開拓史』のレイモンド・マッセイ、『暴力脱獄』のジョー・ヴァン・フリート、『ワイルドバンチ』のアルバート・デッカー、『大いなる西部』のパール・アイヴス等。
音楽は、『続・猿の惑星』『バリー・リンドン』の巨匠レナード・ローゼンマン
最初に「序曲」が流れる。
古い映画だが、シネマ・スコープのカラー作品である。
テーマ曲は非常に有名。
誰でも一度は聴いたことがあるだろう。
舞台は1917年のアメリカ・カリフォルニア州モントレー
海岸近くの町である。
道端に座っているキャル(ジェームズ・ディーン)。
鋭い目つきだ。
目の前を通り過ぎたケート(ジョー・ヴァン・フリート)という中年女性の後を追う。
辿り着いた家は邸宅であった。
明らかに金持ちである。
しかし、この家の用心棒に見付かって、ボコボコにされる。
キャルは貨物列車に飛び乗り、地元のサリナスへ戻った。
彼には双子の兄のアロン(リチャード・ダヴァロス)がいた。
従順なアロンは、父アダム(レイモンド・マッセイ)から愛されていた。
一方、反抗的なキャルは、父親から嫌われている。
キャル達の母親は、既に亡くなって、いなかった。
アロンの恋人アブラ(ジュリー・ハリス)も、キャルのことを恐れていた。
最初の方で、これらの人間関係を簡潔に描く。
昔の映画は、実に分かり易い。
アダムは、レタスの冷凍保存というビジネスを手掛けている。
当時は、今と違って、野菜を保存するのも大変だった。
キャルは、氷の保管庫に行く。
そこでは、アロンとアブラが逢い引き中だった。
キャルが覗いているのを見付けたアブラが、彼を怖がる。
突然、キャルは大量の氷の塊を破壊し始める。
無軌道な若者の衝動。
尾崎豊みたいだ。
アダムは怒るが、聖書の一節を引用して、キャルのことを許そうとする。
だが、キャルには全く反省の色が見えない。
キャルは「母さんは死んでいない!」と言い張る。
では、母は何故出て行ったのか?
出て行ったとしても、それから何の便りもないのはどうしてか?
問い質しても、アダムは黙ってしまう。
実は、キャルは先述のケートを自分の母親ではないかと疑っているのであった。
夜、キャルはモントレ―のいかがわしい酒場へ行く。
そこは、ケートの経営する店であった。
キャルは店の奥の彼女の部屋に侵入するが、捕まってしまう。
彼は、保安官から真実を聞く。
今まで誰にも見せなかったという、キャルの両親が結婚した時の写真。
そこに写っているのは、アダムと、間違いなくケートであった。
キャルは、保安官に家まで送ってもらう。
それから、キャルは父のレタス農場で真面目に働くようになった。
ある時、彼はふとしたきっかけでアブラと話しをする。
彼女も、13歳の時に母親を亡くしたと打ち明ける。
お互い似たような境遇であることを知って、二人の心理的な距離が一気に縮まった。
キャルは、レタスを効率的に運ぶための工夫を考え出す。
けれども、アダムはその考案を認めない。
とにかく、キャルのやることなすことが気に入らないのだ。
アダムは、冷凍保存したレタスを貨物列車で東海岸まで運び、大儲けすることを狙っていた。
そのために全財産を賭けていた。
ところが、雪崩のために汽車が立ち往生して氷が融け出し、レタスがパーになる。
貨物列車から滝のように流れる水が切ない。
父の考え出した冷凍法は、自然の前には無力であった。
キャルは父親の出した損失を取り戻すべく、大豆で稼ぎたいと考える。
第一次大戦に米国が参戦すれば、大豆が値上がりするという話しを聞いたのだ。
しかしながら、先物投資に必要な5000ドルは、到底彼に工面出来るものではない。
余りにもハチャメチャな振る舞いなので忘れていたが、彼は未だ高校生なのだ。
再びキャルはケートの後を付け、彼女のもとへ。
そこで、彼女に「5000ドルを貸して欲しい」と頼む。
彼女は、ついに自分がキャルの母親であることを認めた。
ケートは、アダムに束縛されていた。
自由が欲しかった。
彼女は家を出る時にアダムを撃った。
殺すことも出来たが、それはしなかった。
そして、彼女はいかがわしい店の経営を始め、成功させた。
ケートはアダムのことを恨んでいる。
だが、キャルには自分と共通する部分を感じたのかも知れない。
「憎めない子だ。さっさとお行き!」と言って、彼女はキャルに5000ドルを渡した。
キャルの読み通り、アメリカはドイツに宣戦布告をする。
さあ、これからどうなる?
この後の展開は、なかなかに衝撃的である。
本作が映画史上に残っているのも、分かる気がする。
ただ、最後がメロドラマなんだよなあ。
アカデミー賞助演女優賞ジョー・ヴァン・フリート)受賞。
1955年洋画興行収入5位。