『第三の男』

この週末は、ブルーレイで『第三の男』を見た。

1949年のイギリス映画。
監督はキャロル・リード
映画史上に残る名作とされている作品である。
大体、『風と共に去りぬ』『市民ケーン』『天井桟敷の人々』『ベン・ハー』『アラビアのロレンス』『2001年宇宙の旅』辺りが、映画史上ベストテンの常連だと思うが。
本作を見るのは、多分2度目。
しかし、以前見た時は、酔っ払っていたのか、内容をほとんど覚えていない。
「それではいかん」ということで、今回はちゃんと見た(と思う)。
脚本はグレアム・グリーン
製作は、『キング・コング(1933)』『風と共に去りぬ』のデヴィッド・O・セルズニック
音楽はアントン・カラス
助監督は、後に『ゴールドフィンガー』『空軍大戦略』『ナバロンの嵐』『地中海殺人事件』等の監督を務めるガイ・ハミルトン
主演は、『市民ケーン』『偉大なるアンバーソン家の人々』『トラ・トラ・トラ!』『ソイレント・グリーン』『天国の門』のジョゼフ・コットン
共演は、『カサンドラ・クロス』のアリダ・ヴァリ、『市民ケーン』『オセロ』『黒い罠』『カジノ・ロワイヤル』のオーソン・ウェルズ、『空軍大戦略』『スーパーマン』『ガンジー』のトレヴァー・ハワード、『007』シリーズのバーナード・リー等。
エビスビールの曲から始まる。
どうしても、『スティング』のテーマと混ざってしまうが。
本ブルーレイの画質は良いので、そんなに古い映画という感じはしない。
舞台は第二次世界大戦後のウィーン。
米英仏ソによる四分割統治下にあった。
アメリカの作家ホリー・マーチンス(ジョゼフ・コットン)が、友人ハリー・ライム(オーソン・ウェルズ)を訪ねにウィーンへやって来た。
マーチンスはライムの家を訪ねるが、管理人から、「ライムは事故死した」と聞かされる。
舞台がウィーンなので、当たり前だが、ドイツ語が飛び交う。
主人公はドイツ語が理解出来ないので、管理人は片言の英語で話す。
マーチンスはライムの葬儀に出席する。
葬式なのに、明るいテーマ曲。
何でも、アントン・カラスは本作の全ての曲を即興で作ったらしい。
即興で、こんな歴史に残る曲が作れるのはスゴイが。
ライムの葬儀で、マーチンスはイギリス人のキャロウェイ(トレヴァー・ハワード)と知り合う。
キャロウェイはマーチンスを車で送る。
何故か、二人は意気投合して、飲みに行く。
キャロウェイはイギリス軍の軍人であった。
彼はマーチンスに「ライムは殺人にも関わっていた悪人だ」と告げる。
信じられないマーチンスは、事件の真相究明を決意する。
彼は、ライムの友人であったクルツ男爵(エルンスト・ドイッチュ)に会う。
男爵は事故の様子を話すが、何か怪しい。
今度は、ライムの恋人らしい女を捜す。
マーチンスはヨーゼフ・シュタット劇場へ行く。
女は、アンナ・シュミット(アリダ・ヴァリ)という女優だった。
マーチンスは「ライムの葬儀で君を見掛けた」と、彼女に声を掛ける。
「本当に事故だとしたら、怪しいところだらけ。」
マーチンスとアンナは、管理人に会う。
しかし、管理人と男爵の話しが食い違っているのである。
マーチンスとアンナは、実は現場に「第三の男」がいたのではないかと考える。
だが、管理人は、そんなはずはないと怒り出す。
アンナが自分の部屋に戻ると、ソ連憲兵がいっぱいいる。
彼女が疑われているのだろうか?
憲兵は、彼女の身分証もライムからの手紙も、全て没収してしまう。
国家権力の横暴は、断じて許せない!!
アンナの身分証は、偽造されたものであった。
彼女は国籍を偽っていたとして、憲兵に連行されてしまうのであった。
マーチンスは、ライムの主治医だったビンケル先生を訪ねる。
その頃、アンナは取り調べを受けていた。
で、マーチンスはGHQの依頼で翌日、講演をすることになっていたのだが、その会場のカサノヴァ・クラブに、「第二の男」であるポペスクジークフリート・ブロイアー)が戻って来る。
彼は「第三の男などいない」と言う。
マーチンスは、アンナの部屋へ行く。
ドイツ語で書かれた台本が読めない。
アンナが言うには、旅券の偽造もライムの紹介だったのだ。
その夜、マーチンスとアンナが歩いていると、人だかりが出来ている。
何と、ライムの管理人が殺されたのだ。
そして、言葉の通じない群衆は、マーチンスを犯人と疑う。
急いで逃げる。
町の人々の無数の視線が怖い。
で、まあ、ここまで書いてみたけれど、イマイチよく分からない。
確かに、思わせ振りなトーンで物語は引っ張られて行くのだが。
ライムは、実は死んでおらず、映画が始まってから1時間位でようやく登場する。
要するに、「第三の男」は死んだはずのライムだったということだ。
彼が飼っていた猫が、足元にすり寄る。
暗闇だったが、ライム以外の誰にも懐かない猫だったから、本人だと分かるというのだが。
実家で15年猫を飼っていた僕の経験から言うと、ニャンコは外では家人と会っても知らないフリをする。
家では、どんなに懐いていても、である。
後半は謎解きだが、結局、どうして最初の事故でライムは死んだことになっており、他の目撃者が皆、一様に口が重かったのかがピンと来ない。
オーソン・ウェルズの二面性の演技はスゴイ。
僕は本作を見るのは2回目だが、何故内容をよく覚えていなかったのか。
酔っ払っていたからというのもあるが、それだけでもなさそうだ。
何か釈然としないのである。
マーチンスとライムの友情も、どうにも薄っぺらく感じてしまう。
でも、ラスト・シーンは実に絵画的で素晴らしい。
本作が映画史に残ったのは、このラスト・シーン故か。
まあ、他にも観覧車のシーンとか、下水道のシーンとか、有名な場面は多数あるが。
カンヌ国際映画祭グランプリ受賞。
アカデミー賞撮影賞(白黒部門)受賞。