『恋人たち』

この週末は、ブルーレイで『恋人たち』を見た。

恋人たち Blu-ray

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1958年のフランス映画。
監督は、『好奇心』のルイ・マル
ルイ・マルの長編第2作である。
1作目は『死刑台のエレベーター』。
そして、『恋人たち』の次は『地下鉄のザジ』だな。
ヌーヴェル・ヴァーグの初期の作品だが、ルイ・マルは『カイエ・ドュ・シネマ』とは関わりがないから、ゴダールトリュフォーとは全く別物らしい。
しかし、僕が大学1年の時に登録した「ヌーヴェル・ヴァーグ研究」という授業では、ルイ・マルの作品が取り上げられていたような(ガイダンスしか出ていない授業なので、記憶が曖昧)。
撮影は、『チェイサー』のアンリ・ドカエ
音楽はヨハネス・ブラームス
主演は、『審判』のジャンヌ・モロー
共演は、『エマニエル夫人』のアラン・キュニー。
モノクロ、シネスコ・サイズ。
画質はいい。
哀愁の漂うテーマ音楽だが、これがブラームスなのだろうか(クラシック音楽には疎いもので)。
ポロの競技が行われている。
それを見物しながら、選手のラウル(ホセ・ルイ・ド・ビラロンガ)のことを「素敵」という二人の女性。
ジャンヌ(ジャンヌ・モロー)とマギー(ジュディット・マーグル)は幼い頃から友人同士。
ジャンヌの夫アンリ(アラン・キュニー)は地方新聞の社主。
アンリは仕事で忙しくて、彼女のことを構ってくれない。
で、月に2回、パリに住むマギーの元を訪ねるのが楽しみであった。
見るからに、優雅な暮らしをしている二人。
マギーの家で、ジャンヌはラウルに会う。
ジャンヌは、ラウルのことを「あなた」と呼ぶ。
「何故、あなたと呼ぶの?」と聞かれると、「急に親しくは呼べないわ」と答える。
つまり、ドイツ語でいうところの「Sie」と「du」の違いなのだろう(フランス語は最初の1時間で挫折したので、何と言うのかは知らない)。
愛はジャンヌを別人に変えた。
早い話しが、ジャンヌはラウルと不倫関係なのだ。
彼女は自分の家へ戻った。
何と、幼い娘がいる。
子供がいるのに、こんな自分勝手にあちこちほっつき歩いていていいのか。
家にはお手伝いさんもいる。
子供の世話はお手伝いに任せているようだ。
何と言う…。
夫のアンリは、書斎で難しい顔をしてブラームスを聴いている。
彼は、妻の友人のマギーのことをクソミソに言う。
常識人の彼から見れば、遊んでばかりいる女どもは理解出来ないのだろう。
ジャンヌは、髪型に気を遣ってばかりいる。
アンリには、それも気に入らない。
物語が進むに連れて、ジャンヌの髪型がどんどん変わって行く。
これには、深い意味があるのだが、さりげなくここで伏線を張っている。
ある日、ジャンヌは気まぐれに夫の会社へ行ってみた。
仕事で忙しそうな夫には、邪険にされる。
そりゃそうだろう。
仕事は遊びじゃないんだから。
しかし、ジャンヌは、夫が自分に冷たいのは、美人秘書のエレーヌと関係があるからだと邪推する。
ジャンヌは、いよいよパリへ頻繁に行くようになる。
マギーは「退屈は幸せ」と言う。
まあ、「貧乏暇なし」の裏返しだわな。
夜、ジャンヌはラウルと遊ぶ。
ラウルは、ジャンヌの家族に嫉妬している。
場面変わって、ジャンヌの家。
彼女がパリに行く前夜。
アンリが彼女のことを咎める。
「何でそんなにしょっちゅうパリへ行きたがるのか?」
明らかに、何か疑っている。
「マギーは友人なんだから、たまには我が家に呼べばいい」と。
だが、ジャンヌがこれをマギーに提案すると、彼女は嫌がった。
要するに、田舎なんかへ行きたくないのだろう。
フランスの地理を全く知らないので、ジャンヌの家がパリからどれ位離れているのか分からんが。
でも、結局、彼女はマギーとラウルを自分の家に招かなければならなくなった。
ジャンヌは車を飛ばし、トンボ返りで家に帰ろうとする。
と、突然、エンジンが壊れる。
困ったジャンヌは、通りすがりの旅行者に車に乗せてもらう。
それにしても、他人に物を頼むのに、何と偉そうな。
彼女は、何でも自分の思い通りになると思っている。
旅行者のランベール(ジャン・マルク・ボリー)は、金持ちが大嫌いであった。
そして、急ぐことも嫌い。
ところが、ラウルとマギーの車が追い抜いて行ったので、いよいよジャンヌはランベールを急かす。
話している内に、ランベールはマギーと親戚関係にあることが分かった。
車で自分を家に送らせたら、もう用済みと言わんばかりのジャンヌであったが、アンリがランベールに「我が家に泊まって行きなさい」と言う。
そりゃ、幾らなんでも、見ず知らずの他人に車で家まで送らせておいて、何の御礼もしないというのは、余りにも常軌を逸している。
まあ、しかし、本作のヒロインは、何から何まで常軌を逸しているのだが。
ジャンヌの目線で見ると、まるでこちらがおかしいようだが、実は旦那は常識人なのであった。
そして、アンリとランベールは気が合ったようだ。
ランベールは考古学者なのだが、アンリは、彼に書斎の本を紹介したりして、楽しそう。
一方、遊び人のジャンヌ、マギー、ラウルは三人でよろしくやっている。
どう見ても、この二組は相容れなさそうだ。
ところが後半、何と、まさかまさかの大展開が起きるのである。
まるで、『高慢と偏見』のエリザベスとダーシーのような。
それにしても、ジャンヌは、旦那のお陰で有閑マダムが出来ていることを、全く分かっていない。
ネタバレになるので書かないけれど、ラストは破滅の序章でしかない。
余りにもクレイジーだ。
すぐれたストーリーというより、衝撃的過ぎて、思わず見てしまうといったところだろう。
どうでもいい話しだが、フランスの女性は脇毛を剃らないようで、ジャンヌ・モローも、まるで黒木香のように黒々と生やしている。
僕は高校時代、大好きなシャルロット・ゲンズブールの『小さな泥棒』という映画を観に行って、彼女が脇の毛を剃っていないのを見て、ショックを受けた記憶がある。
まあ、文化の違いかな。
『恋人たち』は、ヴェネツィア国際映画祭で審査員特別賞を受賞している。