『アレキサンダー大王』(1956)

この週末は、ブルーレイで『アレキサンダー大王』を見た。

アレキサンダー大王 [Blu-ray]

アレキサンダー大王 [Blu-ray]

1956年のアメリカ映画。
監督は、『ハスラー』のロバート・ロッセン
撮影は、『第三の男』『エル・シド』『ローマ帝国の滅亡』のロバート・クラスカー
主演は、『史上最大の作戦』『荒鷲の要塞』『エクソシスト2』のリチャード・バートン
共演は、『空軍大戦略』『スーパーマン』のハリー・アンドリュース、『ナバロンの要塞』のスタンリー・ベイカー、『戦争と平和(1956)』のバリー・ジョーンズ、『ハムレット(1947)』のピーター・カッシング
僕は学生の頃、池袋西口の今は亡きシネマセレサで、テオ・アンゲロプロス監督の『アレクサンダー大王』を見た記憶があるが、あれとは別物。
長い映画だったが、内容はさっぱり覚えていない。
そもそも、アレキサンダー大王は世界史の教科書に登場するが、世界史の偏差値が20台で受験科目にするのを諦めた僕は、どんな人だったか全く理解していなかった。
まあ、今回、この映画を見て、少しは思い出したけれども。
歴史映画の常として、史実に基づいているかは分からない。
もちろん、教科書の内容をすっかり忘れてしまった僕に、そんなことが判斷出来るはずもないのだが。
MGM。
テクニカラーシネマスコープ
昨今見られるインチキな「シネスコ・サイズ」ではなくて、アナモフィック・レンズを使った本物のシネマ・スコープ。
そのため、画面の歪みがヒドイ。
シネマスコープ第1作の『聖衣』(ちなみに、リチャード・バートン主演)が製作されたのが、本作の3年前。
それが大ヒットしたので、歴史映画の大作は皆、シネマスコープで作られたのだろう。
勇ましいテーマ音楽。
舞台は、紀元前356年のギリシア
本作はハリウッド映画なので、ギリシア人もマケドニア人もペルシア人も、当然のように英語を話す。
市民の前で「戦争だ!」と演説する男。
マケドニア王のピリッポス2世(フレドリック・マーチ)は、ギリシアの都市を次々に陥落させていった。
その戦いの最中、王妃オリュンピアス(ダニエル・ダリュー)に息子が生まれたという知らせが届く。
アレキサンダーと名付けられたその息子は、「神の子」として育てられた。
出自は偉いのかも知れんが、こういうのを聞くと、どこかの国の将軍様と大差ないような気がする。
場面変わって、早くも成長したアレキサンダーリチャード・バートン)。
リチャード・バートンが若い。
家庭教師はアリストテレス
その間にも、父王は征服の戦を続け、ペルシアへ侵攻。
アリストテレスは「ギリシア人以外は野蛮人。征服しなければならない」と説く。
ヒドイ差別思想である。
この人が、本当に偉い哲学者なのだろうか。
この時、一緒に学んでいた「ご学友」達が、側近として後にも登場する。
ピリッポスは、アレキサンダーに「マケドニアの首都ペラを統治せよ」と告げ、摂政に据える。
アレキサンダーは、母オリュンピアスを訪ねた。
父ピリッポスは、オリュンピアスを追放したがっていた。
彼には愛人がいて、再婚したかったから、オリュンピアスが邪魔なのであった。
一方、オリュンピアスは民衆を扇動してもいた。
未だ20歳にもならないアレキサンダーは、父母の不和に悩んだ。
そりゃそうだろう。
自分が20歳の頃のことを思い起こすと、未だ未だ親に甘えていたからな。
そういう意味では、大変な立場ではある。
摂政の就任式で、ピリッポスはアレキサンダーに「誰も信じるな」「孤独になるな」と教訓を伝える。
アレキサンダーは、父に請われ、将軍として出兵する。
彼は、征服した町を焼き払い、アレキサンドロポリスと名付けて再建した。
レニングラードスターリングラードのようなものか。
かなりの暴君だぞ。
そして、カイロネイアの戦いで、父を助け、アテナイ・テーバイ連合軍を破る。
「カイロネイアの戦い」って、世界史の教科書に載っていたなあ。
これがアレキサンダーの初陣であった。
勝利した彼は、カイロネイアの英雄になる。
大使としてアテナイへ赴き、軍事同盟を結ぶ。
ここで、彼はメムノン将軍(ピーター・カッシング)の妻バルシネ(クレア・ブルーム)と出逢い、心惹かれた。
デモステネスの神殿へ行くと、父親は酔っ払っている。
アレキサンダーにも結構、酔っ払っている場面があって、どうも、それほどの英雄には見えない。
もっとも、英雄としてだけではない、人間的な面も描きたかったのか。
しかし、いずれにしても中途半端で、成功しているとは言えない。
故郷ペラへ戻ると、母は、父王の命令で離婚していた。
で、父親はまんまと若い愛人ユーリディスと再婚したのであった。
その祝宴の夜、アレキサンダーの不満は爆発し、公衆の面前で父を侮辱する。
怒った王は、アレキサンダーとオリュンピアスを追放した。
で、早くもピリッポスとユーリディスの間に息子が生まれた。
ピリッポスの命令で、アレキサンダーの側近4人も追放された。
その後、ピリッポスはペルシアの侵略を計画するが、それにはアレキサンダーの力が必要であった。
王はアレキサンダーを許す。
出生前夜、王は暗殺者の刃に倒れた。
暗殺者は、アレキサンダーの友人であった。
アレキサンダーは、即座に暗殺者を刺し殺す。
これは、アレキサンダーの命令ではなかった。
次の王は軍が決めることになった。
アレキサンダーは、反逆者を捕まえて、復讐することを誓う。
ペルシアを征服すると宣言し、彼は王位に就いた。
ここまでで半分。
どうだろう。
王位に就いたのは、結構タナボタっぽいのだが。
で、彼は自分のことを「私は神だ」という。
でも、行動はそんなに神のように偉大ではない。
独裁者にありがちな、猜疑心の塊である。
どうして、彼がこんなに歴史上の英雄視されるのかが分からない。
まあ、ナポレオンだって、日本の伝記では英雄のように書かれているが、ロシアでは不倶戴天の敵だからなあ。
スペクタクル映画だが、物量はそれほどでもない。
ただ、クライマックスのダレイオス3世軍との戦いのシーンはスゴイ。
ベン・ハー』のような戦車が大量に登場する。
が、正直、映画としてはそんなに面白くない。
いずれの登場人物にも、あまり感情移入出来ない。