『ティファニーで朝食を』

この週末は、ブルーレイで『ティファニーで朝食を』を見た。

ティファニーで朝食を [Blu-ray]

ティファニーで朝食を [Blu-ray]

1961年のアメリカ映画。
監督はブレイク・エドワーズ
原作はトルーマン・カポーティ
余談だが、斎藤兆史先生は『英語達人塾』(中公新書)の中で、この原作を「多読」の入門書として挙げていた(もちろん、僕は読んでいない)。
音楽は、『大アマゾンの半魚人』『黒い罠』のヘンリー・マンシーニ
衣装は、ジバンシィと、『サムソンとデリラ』『麗しのサブリナ』『泥棒成金』『明日に向かって撃て!』『スティング』『ファミリー・プロット』の巨匠イーディス・ヘッド。
主演は、『麗しのサブリナ』『戦争と平和(1956)』『パリの恋人』のオードリー・ヘップバーン
共演は、『西部開拓史』のジョージ・ペパード、『地球の静止する日』のパトリシア・ニール、『サイコ』『トラ・トラ・トラ!』『大統領の陰謀』のマーティン・バルサム
小田和正が中学生の頃、本作を観て感動し、初めて自分の小遣いで買ったレコードが主題歌の「ムーン・リバー」だという話しは以前から知っていた。
彼は、自分の2枚目のソロ・アルバムに「ムーン・リバー」を入れている。
小田が好きな僕だが、恥ずかしながら、本作は未見であった。
しかしながら、今回初めて見て、彼が何故、映画では評価されなかったのかが分かったような気がする。
正直なところ、本作は想像していたのとは大分違っていた。
パラマウント映画。
テクニカラー、ワイド。
ムーン・リバー」が流れる。
朝のニューヨーク。
タクシーがティファニーの前で停まる。
中から降りて来るホリー(オードリー・ヘップバーン)。
ウインドーを見ながら、紙袋からパンを出してかじる。
これが「ティファニーでの朝食」ということか。
ここからして、想像していたのと全然違っていた。
彼女のアパートの上の階には、ユニオシ(ミッキー・ルーニー)という日系人が住んでいる。
これが実に差別的な描写で、現在ならば絶対に許されないだろう。
ユニオシは、階下のホリーがうるさいので、いつも文句を言っている。
ホリーは、『吾輩は猫である』ではないが、名前のないニャンコと一緒に住んでいる。
これが実によくなついていて、ここまでの演技をさせられたことには感心する。
で、この朝、同じアパートの下の階に引っ越して来た青年ポール(ジョージ・ペパード)が、ホリーの部屋に電話を借りに来る。
携帯電話全盛時代の今では、この設定は使えまい。
ホリーは、ティファニーに夢中であった。
しかし、彼女はただ憧れているだけで、到底手が届かないブランドである。
彼女は、週に1回、シンシンの刑務所に行って、サリー・トマトというマフィアのドンの話し相手になっている。
これで100ドルもらえるのだ。
彼女が外出のためにドレスに着替えると、ポールは目を見張る。
まあ、オードリー・ヘップバーンの嫌いな僕は、何も感じないが。
ポールは売れない作家で、有閑マダムのヒモでもあった。
夜、ホリーはポールの部屋に窓から侵入する。
彼女はヘビー・スモーカーである。
今のハリウッドでは、スター女優がスクリーンでスパスパとタバコを吸うシーンなど、まず考えられない。
オードリー・ヘップバーンは、この作品のやさぐれた役を演じることで、イメージ・チェンジを図りたかったらしいが。
見ていて気分が悪くなるので、余り成功したとは思えない。
ホリーは14歳の時に家出をした。
彼女にはフレッドという兄がいるが、兵役に出ている。
貯金が出来たら、彼女はフレッドを服役させたいという。
で、ポールは、この大好きな兄のフレッドに似ているのであった。
ある日、ポールはホリーから「私の部屋でお酒でも飲みませんか」というメモを受け取る。
彼女の部屋に行ってみると、パーティーの真っ最中。
芸能プロの親玉とかいうバーマン(マーティン・バルサム)を始め、色んな人達が来ている。
ホリーは、その中の、アメリカで何番目かの金持ちとやらに言い寄ったりもする。
彼女は、とにかく兄を服役させるためにカネがいる。
そのために、手っ取り早く金持ちと結婚しようと考えているのであった。
まあ、何と言うか、頭は悪そうだな。
で、パーティーで余りに騒ぎ過ぎたので、とうとう上の部屋の日系人が警察に通報する。
ある日、ホリーはシンシンの刑務所にポールと一緒に行く。
サリー・トマトに、ポールのことを「フレッド」と紹介する。
ポールは、処女作しかなかったのだが、また小説を書き始めた。
下の部屋では、ホリーが「ムーン・リバー」を歌っている。
大して上手くはない。
で、ポールが外出すると、謎の男が追い掛けて来た。
公園のベンチで男は隣に座った。
「何の用だ?」と聞くと、男は「オレはホリーの亭主だ」と言う。
彼はゴライトリーといって、獣医であった。
フレッドがもうすぐ服役するから、迎えに来たのだという。
「彼女に伝えてくれ」と頼まれたポールは「お安い御用だ」と引き受ける。
が、内心はウンザリしていた。
そりゃそうだよな。
好意を持っていた女が既婚者と判ったのだから。
ところが、彼女は夫の元へ戻る気はさらさらなかった。
ポールの部屋に「私を助けて。彼とは離婚する」と言って来る。
バス停で夫に「私は行かないわ」と告げ、ゴライトリーは一人で帰って行く。
ホリーはポールと一緒に飲んだ。
当然のように、ベロンベロンに酔っ払う。
彼女は、愛人稼業から足を洗い、先のパーティーで知り会った金持ちと結婚するという決意を表明する。
ポールは呆れた。
何と言うか、実に頭の足りない、軽薄な女だと思う。
そういうのが好きな男もいるのかも知れんが、僕はゴメンだ。
という訳で、この女には、どうにも感情移入が出来ない。
で、先のパーティーで知り会った金持ちが結婚したというニュースが新聞に載った。
で、ポールはホリーと仲直りする。
彼女は「私と結婚しない?」とポールに持ち掛け、彼は「いつでも」と応える。
そんな折、ポールの短編が50ドルで売れた。
二人はお祝いに朝からシャンパンを開け、そして散歩へ出掛ける。
ティファニーへ行くと、朝の6時に店は開いている。
こういう店が早朝から営業しているというのは、日本では考え難いのではないか。
二人は店に入り、店員に「10ドル以内の商品はないか?」と尋ねる。
当時の10ドルって、今の日本円で幾ら位かな?
まあ、とにかく、店員は困った顔をして、「かなり商品が限定されますが」と応える。
要するに、「ウチは高級店だから、そんな安い品物は置いてねえよ!」ということを、オブラートに包んで言ったんだな。
で、結局、キャンディーの景品の指輪に名前を彫ってくれと頼み、店員は承諾する。
あり得ないと思うんだが。
でも、ティファニーが協力して撮影しているんだろうから、企業イメージを良く見せるために、こういう設定にしたんだろうな。
何か、白けてしまった。
さあ、これからどうなる?
どうなるもこうなるもない。
紆余曲折の末、最後はご都合だ。
オードリー・ヘップバーンにこの役は合っていないし、本作を名作扱いする人には理解に苦しむ。
中学生の小田和正は、この作品のどこに感動したのだろうか。
確かに、「ムーン・リバー」はいい曲だと思うが。
主題歌さえ良ければ、その映画は名作になるのか。
そうじゃないだろう。
アカデミー賞ドラマ・コメディ映画音楽賞、歌曲賞受賞。