『クレオパトラ』(1963)

この週末は、ブルーレイで『クレオパトラ』を見た。

1963年のアメリカ映画。
監督は、『幽霊と未亡人』『イヴの総て』のジョーゼフ・L・マンキーウィッツ。
音楽は、『スパルタカス』のアレックス・ノース
撮影は、『猿の惑星』のレオン・シャムロイ
主演は、『ジャイアンツ』のエリザベス・テイラー、『アレキサンダー大王』『史上最大の作戦』『荒鷲の要塞』『エクソシスト2』のリチャード・バートン、『幽霊と未亡人』のレックス・ハリソン。
共演は、『北北西に進路を取れ』のマーティン・ランドー、『史上最大の作戦』『猿の惑星』『新・猿の惑星』『猿の惑星・征服』『ポセイドン・アドベンチャー』『最後の猿の惑星』『地中海殺人事件』のロディ・マクドウォール、『疑惑の影』『郵便配達は二度ベルを鳴らす(1946)』のヒューム・クローニン、『エル・シド』『荒鷲の要塞』『バリー・リンドン』のマイケル・ホーダーン。
10年位前にDVDで見たのだが、酔っ払っていたのか、ほとんど覚えていない。
改めて見たが、スゴイ映画だった。
世界史の教科書だと、わずか数行の出来事だが、本作はそれを4時間掛けて描いている。
しかも、元々は3時間ずつの2本の映画だったとか。
製作費が史上空前の4400万ドル。
ベン・ハー』が1500万ドル、『史上最大の作戦』が1200万ドルというから、どれだけスゴイか分かる。
この映画のおかげで、20世紀フォックスは倒産寸前まで行った。
まずは、「OVERTURE」から始まる。
カラー、70ミリ(トッドAO方式)。
勇壮かつ哀愁のあるテーマ曲。
時は紀元前48年。
将軍ジュリアス・シーザー(レックス・ハリソン)はポンペイウスを撃破し、ローマへ凱旋途中。
当たり前だが、CGのない時代にこの戦場の描写はスゴイ。
戦士した兵士の遺体を焼く煙。
ポンペイウスはエジプトへ逃げたとの知らせを受けて、シーザーも後を追う。
その頃、エジプトでは、幼い国王プトレマイオスを立てる一派が、その姉クレオパトラエリザベス・テイラー)を追い出した。
要するに、お家騒動の真っ只中。
クレオパトラは、秘かにプトレマイオスを倒そうとする。
エジプトの港にシーザーが到着。
ものすごいセットである。
とにかく、いちいちスケールがデカイ。
プトレマイオスは、シーザーにポンペイウスの首を差し出す。
まあ、この辺までは導入。
シーザーは、エジプトの内乱を収めようとする。
その夜、シーザーの基へクレオパトラから贈り物の絨毯が届く。
中にくるまれていたのはクレオパトラ本人。
これは、伝説なのか知らないが、歴史上、有名な出来事らしい。
彼女は、実に気位の高い女性であった。
余談だが、本作の撮影開始二日目に、エリザベス・テイラージフテリアを発症し、気管切開の手術を受けた。
よく見ると、首に傷跡が残っている。
で、クレオパトラはシーザーに「私をエジプトの女王にして下さい」と頼むが、彼は断る。
そのシーザーにも弱点があった。
彼は、その夜、持病のてんかんの発作で倒れる。
クレオパトラは、色仕掛けでシーザーを落とそうと、入浴シーンを見せつける。
いやらしい女だ。
そこへ、敵が70倍の兵力で攻めて来たという知らせが入る。
シーザーは、それに対抗するために、エジプトの港の船を焼き討ちさせる。
その火が燃え移って、アレキサンドリアの大図書館が焼けてしまった。
余談だが、当時のエジプトの書物はパピルスだから、今の図書館とは大分様相が違うだろう。
で、クレオパトラは読書家だったので、図書館を燃やしたシーザーの蛮行に猛抗議する。
すると、突然、シーザーはクレオパトラにキスする。
なかなか衝撃的だ。
本作の戦闘シーンも、実に派手である。
クレオパトラは、召使いに毒殺されそうになるが、かろうじて窮地を逃れる。
シーザーは、ついにプトレマイオスを追放し、クレオパトラをエジプトの女王にする。
クレオパトラに戴冠するのは、何とシーザー自身。
当時のローマ帝国の強大な権限を見せ付けられる。
そこへ、マーク・アントニーリチャード・バートン)から、シーザーにローマへ帰れという迎えが来る。
クレオパトラがシーザーに「『ガリア戦記』を読んだ」と語るが、本当だろうか。
クレオパトラは7カ国語が出来たらしいから、ラテン語も読めたのだろうが。
印刷技術もない時代だから、本は写本だ。
そんなにすぐに異国まで届くだろうか。
なお、本作では、エジプト人もローマ人も、セリフは英語である。
まあ、いいや。
で、シーザーは自嘲気味に「ラテン語力貧困だと言われたよ」と言う。
僕も、『ガリア戦記』は1巻だけ読んだが、内容は、ただの戦闘の記録で、無味乾燥。
全く面白くない。
ただ、シーザー(カエサル)のラテン語力が貧困だったお陰で、難しい言い回しは使われていないから。
ラテン語の初級文法を終えてすぐに読むのにふさわしいとされているだけ。
で、早くも、クレオパトラは「シーザーの子を生みたい」と言い出す。
シーザーは、アレキサンダー大王を尊敬している。
クレオパトラはシーザーに「世界を征服せよ」と告げる。
悪女だ。
どこかの都知事並みに性質が悪いな。
アントニーは、シーザーの妻の元へ行き、シーザーとクレオパトラの結婚を伝える。
何と、不倫だったんだな。
不倫はイカンよ。
色んな人を傷付ける。
まあ、しかし、昔から政治の世界は、不倫まみれだったんだろう。
クレオパトラが息子シザリオンを生み、シーザーが我が子を抱く。
ローマでは、その噂で持ち切りだった。
シーザーはローマへ凱旋する。
元老院より、終身独裁官に任命される。
クレオパトラがローマへやって来る。
とにかくド派手なクレオパトラ登場シーン。
ローマの街の巨大なセット。
大勢のローマ市民。
凱旋門を、大勢の奴隷に引かれたスフィンクスがくぐる。
乗っているのは、クレオパトラとその息子。
今では、絶対にこんなシーンは撮れないだろう(全てCGだ)。
やや冗長だが、それだけカネを掛けたシーンだから、じっくり見せたかったのか。
で、シーザーとクレオパトラが対面する。
シーザーは、息子に帝王学を教える。
一方、その頃、シーザーと元老院は対立していた。
急先鋒はブルータス。
ブルータスは、議員達から、シーザーを暗殺するように言われる。
明日、元老院でシーザーを王にすることが決まった。
その当日、シーザーは朝からイヤな予感がしている。
クレオパトラは彼を引き留める。
シーザーは、元老院でブルータス達に刺されて、息絶える。
シーザーは、民衆の前で火葬される。
クレオパトラはエジプトへ帰る。
アントニーが見送り、彼女と再会を約束する。
そして、「INTERMISSION」。
ここまでが前半。
長いねえ。
男らしい立派な将軍として描かれていたシーザー。
これに対し、後半のアントニーは、アル中で、女(クレオパトラ)に翻弄される、どうしようもない男として描かれる。
後半の方が、人間ドラマとしては面白い。
戦争というのが、どうやって起こるか。
まあ、大体は下らない理由だ。
北朝鮮アメリカが、ちょっとしたはずみで衝突すると、日本も絶対に巻き込まれるから、本当に止めて欲しい。
海戦シーンも、あの『ベン・ハー』ですらミニチュアだったのに、実物大の船だよ。
本当にスゴイ。
しかし、世界史のいい復習になった。
もっとも、受験生は、4時間掛けて本作を見るより、教科書を読んで5分で理解した方が効率が良い。
なお、本作は公開当時、外面はともかく、内容的には余り評価されなかったようだ。
アカデミー賞撮影賞、美術賞、衣裳デザイン賞、視覚効果賞受賞。
1963年洋画興行収入4位(ちなみに、1位は『史上最大の作戦』、2位は『アラビアのロレンス』、3位は『大脱走』。邦画の1位は『にっぽん昆虫記』。正に、映画の黄金時代だ)。