この週末は、ブルーレイで『パピヨン』を見た。
- 出版社/メーカー: キングレコード
- 発売日: 2018/07/04
- メディア: Blu-ray
- この商品を含むブログ (2件) を見る
監督は、『猿の惑星』『パットン大戦車軍団』のフランクリン・J・シャフナー。
脚本は、僕の大好きな映画『スパルタカス』のダルトン・トランボと、『コンドル』『キングコング(1976)』のロレンツォ・センプル・ジュニア。
音楽は、『猿の惑星』『パットン大戦車軍団』『トラ・トラ・トラ!』『チャイナタウン』『オーメン』『エイリアン』『スタートレック』の巨匠ジェリー・ゴールドスミス。
撮影は、『パットン大戦車軍団』『タワーリング・インフェルノ』のフレッド・J・コーネカンプ。
主演は、『荒野の七人』『大脱走』『華麗なる賭け』『栄光のル・マン』『ゲッタウェイ』『タワーリング・インフェルノ』の大スター、スティーブ・マックイーンと、『卒業』『真夜中のカーボーイ』『大統領の陰謀』『マラソンマン』『クレイマー、クレイマー』『トッツィー』『レインマン』の名優ダスティン・ホフマン。
共演は、『オレゴン魂』のアンソニー・ザーブ、『タワーリング・インフェルノ』のグレゴリー・シーラ。
本作は、10年位前に一度DVDで見たのだが、先日、高校時代の友人と会った時に、彼が見たい映画の1本として挙げていたので、再見することにした。
僕は、脱獄映画が大好きである。
傑作の多いジャンルであり、パッと思い付くだけでも、『抵抗』『穴』『大脱走』『暴力脱獄』『ミッドナイト・エクスプレス』『アルカトラズからの脱出』『ショーシャンクの空に』と枚挙に暇がないが、『パピヨン』は、それらの中でも、指折りの大傑作である。
今回、再見して、改めてその思いを強くした。
ワーナー・ブラザース。
テクニカラー、シネスコ・サイズ。
時代は、作品中ではっきりと明言されないが、原作者のアンリ・シャリエールが形を宣告されたのは1931年らしい(実話)。
舞台はフランス領ギアナの刑務所。
なお、フランスなのに、セリフは英語である。
囚人達を前に、「刑期を終えても、8年以上の者はギアナに属する。お前達は祖国に見捨てられたのだ!」と演説する刑務所長。
公道を銃を突き付けられながら歩かされる囚人達。
哀れみながら眺める沿道の人々。
パピヨン(スティーブ・マックイーン)に「帰れるわ」と声を掛ける女性。
しかし、パピヨンの隣の男は「帰れるもんか!」と吐き捨てる。
護送船に乗る。
ナイフを隠し持つパピヨン。
紙幣を丸めて尻の穴に隠す。
パピヨンには胸にチョウの刺青がある。
彼は終身刑。
しかし、囚人の半分は最初の1年で死ぬ。
刑務所は沼地の真ん中だから、逃げようがない。
船内に、ニセ札作りの名人、ルイ・ドガ(ダスティン・ホフマン)がいる。
朝、起床。
船外は嵐。
ドガの隣に座るパピヨン。
パピヨンは殺人罪だが、無実だと主張する。
金庫は破ったが、人は殺していないと。
パピヨンはドガに「俺が守ってやる」と告げる。
船内には、既に病気の者もいる。
パピヨンは脱走を企んでいる。
だが、バレたら独房行きである。
囚人達は本当にヒドイ扱いを受けている。
が、それを過剰演出することなく、淡々とした描写が続く。
それで、十分にこちらには伝わって来る。
ドガはパピヨンに、逃走に必要なカネを用意すると告げる。
ただし、逃げるのはパピヨンだけだ。
船内で就寝中、二人の男に切り付けるパピヨン。
捕まって拷問を受ける。
島へ到着。
ここでは、泳いでも流れが早くて押し戻される。
早くも脱走を図った若い囚人は、その場で銃殺される。
サン・ローラン刑務所へ。
脱走を企てた者は2年間の独房行き。
2度目は5年。
それ以上はギロチンだ。
見せしめの公開処刑も囚人達の前で行われた。
つい数十年前には、こんな野蛮な死刑が実施されていたんだな。
もっとも、現在の日本も絞首刑だから、同じようなものだが。
強制労働あるいは島送りから逃れるために、パピヨンとドガは看守を買収しようとする。
ところが、担当の看守は運悪く、ドガの作ったニセ国債で破産したという。
パピヨンとドガは「キロ40」に送られる。
「キロ40」とは、ワニのいる川での強制労働だ。
パピヨンとドガは、生きたワニを捕まえるように命じられる。
このワニは本物である。
捕まえたワニの腹を割く。
本作は、動物の(いや、人間も含めて)生々しい描写が多い。
強制労働の余りのキツさに、自殺者も出る。
ドガはモルフォ蝶を捕まえる。
モルフォ蝶は、ドル札の染料になるので、高く売れるという。
パピヨンは、(カネで)看守に脱走用ボートの手配を交渉する。
ドガは、「逃げるなら、俺も連れてってくれ。ここに残っていたら死んじまう」とパピヨンに告げる。
パピヨンは「好きにしろ」と答える。
ドガは死体を見て嘔吐する。
それを見た非情な看守に殴られる。
パピヨンは止めに入り、思わず看守に、そこにあった熱湯を掛けてしまう。
パピヨンは逃げようとして、ボートの手配を交渉した看守のところへ。
ところが、銃を突き付けられる。
ハメられたのだ。
パピヨンは独房送りになる。
最初に、所長から「ここでは沈黙しろ。危険人物は無害にする」と告げられる。
食事はゴキブリ入りの食器に、まずいスープ。
「何でも食ってやるぞ!」と誓うパピヨン。
ドガから、「体力を付けろ」と秘かにココナッツの差し入れが始まる。
隣の独房の者も、いつの間にかいなくなった。
隣の部屋の者に自分の様子を聞くと、ウソでも「元気そうだ」と答えるのである。
コウモリが飛んで来て、足を噛まれる。
とうとう、ココナッツの件が所長にバレる。
「ココナッツを誰にもらったか言わないと、食事は半分、半年間明かりナシにしてやる!」
それでも、パピヨンは白状しない。
パピヨンは夢を見た。
「お前は罪を犯している。人間として最大の罪、人生を無駄に過ごしている」と、夢の中で裁かれる。
まずいスープの量が半分になった。
パピヨンはムカデを入れて食う。
だんだん狂って来て、目が据わって来る。
もう、このシーンの、マックイーンの鬼気迫る演技がスゴイ。
「何としても生き抜いてやる!」という強烈な執念が伝わって来る。
描写の一つ一つから、環境の苛酷さが突き付けられているので、説得力がある。
あらゆる脱獄映画の中で、これほどの極限状況を描いた作品は、他に知らない。
半年振りに明かりが入れられる。
まぶしくて目が潰れる。
最初は白かった囚人服も、真っ黒に汚れている。
しかしながら、それでもパピヨンはココナッツが誰からの差し入れだったか言わない。
「では死ね!」と所長。
栄養失調で歯が抜ける。
パピヨンは所長に、「ボケてしまって、差し入れたヤツの名前を忘れた」と言う。
また、パピヨンの夢。
死んだ仲間の方へ走って行くパピヨン。
日本で言えば、三途の川を渡るような感じなのだろう。
済んでのところで目が覚める。
ついに、2年間の刑期満了。
「クソ野郎め!」と吐き捨てて、倒れるパピヨン。
パピヨンが刑務所に戻って来る。
涙ながらにパピヨンを抱き寄せるドガ。
ベッドに横たわっているパピヨンに、ドガから肉入りの熱いスープが届けられる。
あれほど悲惨な食事を散々見せられた後だから、これがどんなにうまそうか、こちらにも痛いほど伝わって来る。
ドガはパピヨンに「女房と弁護士にお前の減刑を頼んでおいた」と告げる。
だが、それでも3年は掛かるという。
「長過ぎる!」
パピヨンは、そんなことよりも、ボートを用意してくれとドガに頼む。
ここまでで半分。
後半も、手に汗握る展開で、画面から目が離せない。
現在なら難しそうな、ハンセン病患者の描写も出て来る。
現地人の描写も、今なら問題になるだろう。
明らかに児童ポルノに該当しそうな、現地女性のヌードも出て来る。
今では、こういう映画は撮れないだろう(ホメ言葉です)。
パピヨンは、まるで川口浩のように色んな場所を巡る。
でも、それよりも遥かにカネが掛かっている。
本作には、安っぽいところが微塵もない。
全編、ものすごいロケである。
唯一、ラストシーンが残念だと言われる(有名だ)が、そんなことは気にならないくらい、全体の完成度が高い。
ラストは、写ってはいけないものが写ってしまっていて、現在のデジタル技術なら簡単に消すことが出来るだろうが、作品に敬意を払って、そのままにしてあるのだろう。
題材は脱獄なんだけど、結局、パピヨンとドガの男の友情に心を打たれる。
映画史に残る大傑作である。
つい最近、本作のリメイクが作られたそうだが、見るまでもなく、オリジナルは越えていないだろう。
1974年洋画興行収入3位(1位は『エクソシスト』。邦画の1位は『日本沈没』。スゴイ時代だ。面白い映画に客が入った幸福な時代だったのだ)。