フランス語を学ぼう

フランス語を学ぼう
僕には、昔からフランス文化への憧れがありました。
思い起こせば、高校1年の頃、太宰治にハマりまして。
この太宰の出身校(ただし、中退)が東京帝国大学文学部仏文科だというので、「大学は仏文科に進むぞ」と、漠然と思ったのでした。
実は、仏文科が何をするところなのかも、よく知らなかったのですが。
(そして、太宰が実はフランス語を学んでおらず、教授のコネで仏文科に入れてもらったということも、遥か後に知ることになるのですが。)
続いて、高校2年の時、確か『AERA』だったと思うのですが、『小さな泥棒』という映画の紹介記事を、たまたま目にしました。
主演はシャルロット・ゲンズブール
僕は、この記事の小さな写真で、彼女のことが大変気になりました。
当時、僕の出身地である京都には「朝日シネマ」というミニシアターがあり、東京で公開されたフランス映画などを、半年遅れくらいで上映していたのです。
そして、『小さな泥棒』も朝日シネマで上映されるということで、僕はいそいそと出掛けました。
映画を観て、簡単に言うと、僕は彼女に恋してしまったのです。
彼女の写真集やCDなども買いました。
CDを聴きながら、全く分からないフランス語の音マネをし、歌詞カードを見ては、「大学に入学したら、フランス語を勉強しよう」と思ったものでした。
高校の卒業文集にも、僕が尊敬する映画監督であるスタンリー・キューブリックと共に、彼女のことを書いています。
ちなみに、今でも、昔ほどの思い入れはありませんが、「好きな女優は?」と訊かれたら、「シャルロット・ゲンズブール」と答えますね(ちなみに、好きな俳優はアル・パチーノ)。
まあ、彼女も今や、カンヌ映画祭の女優賞なんかも獲って、押しも押されもせぬ大女優です。
という訳で、僕は、大学は仏文科のある文学部を受験したのですが。
結局、二浪したものの、第一志望には不合格で、第二志望(夜間部)に入学しました。
そこは文学部だったのですが、仏文科はありませんでした。
ただし、年度によっては、2年次に進級する時に、昼間部への転部試験を受けられると聞きました。
仏文科に空きがあるかどうかは分かりませんが。
そこで、転部試験のことも念頭に、また、それ以前に、憧れのフランス文化に触れたいという思いで、第二外国語は、当然のようにフランス語を選択しました。
ところが、僕はフランス語の授業に、最初の1回しか出席しませんでした。
正確に言えば、バイトと映画と酒に夢中で、大学に通うことそのものに挫折したのですが。
もちろん、フランス映画はさんざん観ましたし、シャルロットから始まって、フレンチ・ポップスなどもよく聴いてはいました。
でも、最終的に大学は中退してしまったのです。
その後、社会人になってしばらく経ってから、大学を中退したことを後悔し、再度、勉強し直そうと、日大通信に編入します。
ただ、外国語は、その頃、旧制高校文化に関心があったのと、当時、仲の良かった女の子(現・細君)が大学ではドイツ語選択だったということで、僕もドイツ語を選びました。
ドイツ語の方は、その後、独学で『若きウェルテルの悩み』を原書で読破したので、マスターしたとは到底言えないものの、自分では納得しています。
しかしながら、フランス語のことは、キレイさっぱり忘れていました。
たった1時間だけ大学の授業を受けてから四半世紀。
つい先日のことですが、仕事の後で、付き合いのある編集者の方と飲みに行きました。
その方は、僕と同じ学部の出身ということで、学生時代の話しなどで盛り上がったのですが。
「好きな女優は誰ですか?」と訊かれたので、僕は、例によって、「シャルロット・ゲンズブールです」と答えました。
それから、フランス映画の話しなどをひとしきりしたのですが、そうしているうちに、忘れていたフランス文化への関心がムクムクとよみがえって来たのです。
「よし、フランス語を勉強しよう!」
そう決意した翌日、僕は新宿の紀伊国屋語学書コーナーへ、辞書と参考書を購入しに向かったのでした。
フランス語入門書について
事前に、アマゾンで検索すると、フランス語の初級文法書で、売れ筋のものは3点ありました。
一つ目は、『フラ語入門、わかりやすいにもホドがある!(CD付・改訂版)』清岡智比古・著(白水社)。
これは、タイトルがふざけ過ぎているのと、練習問題がないとのことで、除外しました。
確かに、フランス語の文法概念には、英語にはないものもあり(特に時制)、初心者にはとっつき難いかも知れません。
とは言え、しょせんは同じインド・ヨーロッパ語族なので、日本語と比べると、遥かに似ています。
ですから、わざわざ話し言葉でくだけた説明を受けなくても、普通に解説してくれれば理解出来るでしょう。
僕は、それでドイツ語もラテン語も勉強しました。
それに、文法学習において、練習問題は重要です。
説明を聞いて分かったつもりになっても、練習問題を解いてみると、全然理解していなかったということが、よくあるからです。
二つ目は、『これならわかるフランス語文法 入門から上級まで』六鹿豊・著(NHK出版)。
これは、500ページ以上もある大部の参考書ですが、「入門から」とうたっているにも関わらず、「発音」の章がないので、やはり除外しました。
フランス語は、発音が非常に難しいです。
僕は、会話には全く興味がなく、フランス文学を原書で読みたいと思っているのですが、それでも発音が重要なのは言うまでもありません。
文法学習が終わってからも、後々、折に触れて参照するはずの文法書に、発音の章がないというのは、致命的です。
という訳で、結局、次の本を選びました。

増補改訂版 新・リュミエール―フランス文法参考書

増補改訂版 新・リュミエール―フランス文法参考書

初版は2013年(増補改訂版)。
著者は、森本英夫(大阪市立大学甲南女子大学名誉教授)氏、三野博司(奈良女子大学名誉教授、放送大学特任教授)氏。
この参考書は、改訂される前の初版は1992年とのことで、伝統のある本です。
僕が大学で受けたフランス語のガイダンスでも、先生がこの本を薦めていました。
実際に使ってみると、少し章分けが細か過ぎたり、練習問題に、未だ習っていない文法事項が出て来たりもしますが。
それでも、初級文法の必要事項を網羅した、良い参考書だと思います。
語学学習の基本は、こうした定番的な文法書(英語で言えば、『フォレスト』のような)を、まずは一通り終えることだと思います。
僕は、昨年(2018年)の12月から今年(2019年)の2月中旬まで、2ヵ月強の間、毎日、仕事が終わった後に、会社の近くの喫茶店に寄って、本書に取り組みました。
辞書について
学習用の仏和辞典(英語で言えば、『クラウン』『アンカー』『ライトハウス』などに当たる)については、売れ筋のものが3点あります。
『クラウン仏和辞典』(三省堂)、『プチ・ロワイヤル仏和辞典』(旺文社)、『ディコ仏和辞典』(白水社)です。
このうち、『プチ・ロワイヤル』と『ディコ』は、僕が受けたフランス語のガイダンスでも、先生が薦めていたような気がします(『クラウン』を何故、薦めていなかったのかは分かりません)。
これらは、3万語から5万語程度の収録語数があり、第二外国語として2年間学ぶ、つまり、初級文法から中級の講読までは使えるように作られているはずです。
ほかに、入門用の辞書として、『パスポート初級仏和辞典』(白水社)や『ベーシック・クラウン仏和・和仏辞典』(三省堂)などがあります。
これらは、初級文法の教科書だけを学んでいるうちは良いのですが、実際に講読の授業が始まると、語彙数が少ないので、すぐに使えなくなるでしょう。
ですので、本格的にフランス語を学びたいなら、避けた方が無難です。
僕は、上述の学習用仏和辞典のうち、一番伝統があるという理由で、『クラウン』を選びました。
クラウン仏和辞典 第7版

クラウン仏和辞典 第7版

初版は2015年(第7版)。
ただし、改訂前の初版が発行されたのは1978年で、日本で最初の学習仏和辞典です。
実際に使ってみると、例えば、カナ発音表記が重要語にしかないとか、該当英単語が一部にしか記されていないとか、不便な点はあります。
また、ドイツ語と比べて、フランス語は動詞の活用が複雑なので、結局、巻末の活用表や文法書を参考しなければなりません。
まあ、これは辞書のせいではないのでしょうが。
英語に比べれば、選べる辞書の種類は少ないですが、それでも、ドイツ語と並ぶ第二外国語の王者(もっとも、今では中国語や韓国語も人気なのでしょうが)なので、たくさんのものが発行されています。
単語集について
単語集については、僕は否定派です。
ただ単に単語と意味が羅列してあるだけで、あんなものでは、到底覚えられません。
例文も、あったとしても一文くらいで、多義語になると、全く足りないでしょう。
結局は、辞書を引きながら、出会ったものを一つ一つ覚えて行くしかありません。
もし、単語集に意味があるとすれば、リストとしてのみでしょう。
例えば、初心者向けの単語集なら、初級に必要な約1500の単語が、一体どれとどれなのかが分かります。
ですから、単語集を買ったら、載っている単語について、辞書にアンダーラインを引いておくと、どれが重要語なのか、ひと目で分かって便利です。
もっとも、そんなことをしなくても、ほとんどの学習辞典では、重要語は色刷りにしたり、大きな活字を使ったりしていますが。
なお、仏検などの検定用単語集は、範囲が偏っていて、その試験を目指す人にしか役に立ちません。
アマゾンによると、単語集の売れ筋は、次のものだそうです。
CDブック これなら覚えられる!  フランス語単語帳

CDブック これなら覚えられる! フランス語単語帳

初版は2008年。
著者は、六鹿豊(元・白百合女子大学教授)氏。
ただし、単語集については、僕は実際に使っていないので、何とも言えません。
さあ、それでは、上に紹介した本を使って、フランス語を学びましょう!