イギリス文学史I(第5回)『カンタベリー物語』(その2)

原文読解
それでは、『カンタベリー物語』の冒頭部分(総序の歌 ※一部)を読んでみましょう。
下に、「原文」「現代英語」「日本語訳」を記しました。
「現代英語」には、語注も付けてあります。
ほとんどの英文科の学生は中英語を学んでおらず(僕も独学です)、また、イギリス文学史を学ぶにあたって、中英語を学ぶことは前提ではないと思うので、現代英語で読めば良いと思うからです。
ですので、原文は、あくまで参考のために載せました。

GEOFFREY CHAUCER

Chaucer, Geoffrey(名)チョーサー(1340?-1400/英国の詩人)

The Canterbury Tales

Canterbury Tales(名)(複)(the ~)「カンタベリー物語」(中期英語で書かれたGeoffrey Chaucer作の未完の(主に)韻文物語集)

(原文)
(テキスト3ページ、1行目~)
THE GENERAL PROLOGUE

(現代英語)
(テキスト3ページ、1行目~)
THE PROLOGUE

prologue(名)(文学作品の)序文、序言、序詞

(日本語訳)
総序の歌

(1)

Whan that Aprill with his shoures soote
The droghte of March hath perced to the roote,
And bathed every veyne in swich licour
Of which vertu engendred is the flour,
Whan Zephirus eek with his sweete breeth
Inspired hath in every holt and heeth
The tendre croppes, and the yonge sonne
Hath in the Ram his halve cours yronne,
And smale foweles maken melodye,
That slepen al the night with open eye —
So priketh hem nature in hir corages —
Than longen folk to goon on pilgrimages,
And palmeres for to seken straunge strondes,
To ferne halwes, kouthe in sondry londes;
And specially from every shires ende
Of Engelond to Caunterbury they wende,
The holy blisful martyr for to seke
That hem hath holpen whan that they were seeke.

When in April the sweet showers fall
And pierce the drought of March to the root, and all
The veins are bathed in liquor of such power
As brings about the engendering of the flower,
When also Zephyrus with his sweet breath
Exhales an air in every grove and heath
Upon the tender shoots, and the young sun
His half-course in the sign of the Ram has run,
And the small fowl are making melody
That sleep away the night with open eye
(So nature pricks them and their heart engages)
Then people long to go on pilgrimages
And palmers long to seek the stranger strands
Of far-off saints, hallowed in sundry lands,
And specially, from every shire's end
Of England, down to Canterbury they wend
To seek the holy blissful martyr, quick
To give his help to them when they were sick.

when(接)~する時に、~時(時を表わす副詞節をつくる)
in(前)(時間を表わして)~(のうち)に、~の間、~中
sweet(形)優しい、親切な
shower(名)にわか雨
fall(自)(雨・雪などが)降る
pierce(他)(~を)突き通す、突き刺す
drought(名)旱魃(かんばつ)、日照り、水がれ
to(前)(方向を表わして)(到達の意を含めて)~まで、~へ、~に
root(名)(植物の)根(地下茎・球根・塊根・根茎などを含む)
all(形)(複数名詞の前に置いて)あらゆる、すべての、みな
vein(名)(葉の)葉脈
bathe(他)(~を)(~に)浸す(in)
liquor(名)溶液
such(形)(such ~ asで)~のような
power(名)力
as(代)(関係代名詞)(such、the sameまたはasを先行詞に含んで、制限的に用いて)~のような
bring about(~を)引き起こす、もたらす
engender(他)(事態・感情などを)生ずる、発生させる
of(前)(目的格関係を表わして)(しばしば動作名詞または動名詞に伴って)~を、~の
Zephyrus(名)ゼピュルス(西風の神)
with(前)(材料・中身を表わして)~で
his(代)彼の
sweet(形)香りのよい
breath(名)(a ~)(風の)そよぎ
exhale(他)(息などを)吐き出す(⇔inhale)
grove(名)(散策などに適した下生えのない)小さい森、木立
heath(名)ヒース(ツツジ科の常緑低木が主になっている植生)
tender(形)(肉など)柔らかい(⇔tough)
shoot(名)新芽、若枝
half(形)半分の、2分の1の
course(名)進路
sign(名)宮(きゅう)(黄道(こうどう)12区分の一つ)
ram(名)(the Ram)牡羊座
run(自)(副詞句を伴って)(進路などが)(ある方向に)広がる、延びる
fowl(名)(古)鳥
make(他)(詩・文章などを)創作する、著わす
melody(名)曲、歌、調べ
that(代)(関係代名詞)(人・ものを表わす先行詞を受けて通例制限用法で)(~する(である))ところの(先行詞がもの・人を表わす場合で、最上級の形容詞、all
the、the only、the same、the veryなどの制限的語句を含む時、および、先行詞が疑問代名詞やall、much、little、everything、nothingなどの時に多く用いられる傾向があるが、絶対的なものではない)/(主語として)
sleep(他)眠って(時を)過ごす ・sleep the day away 1日を眠って過ごす
away(副)(行動の連続を表わして)絶えず、せっせと
with(前)(様態の副詞句を導いて)~を示して、~して
prick(他)(~を)ちくちく(ひりひり)させる
their(代)彼ら(彼女ら)の
heart(名)(感情、特に優しい心・人情が宿ると考えられる)心、感情
engage(他)(注意・興味などを)引く
long(自)(~が)(~することを)熱望する(+to do)
go on ~ ~しに行く
pilgrimage(名)巡礼の旅、聖地詣(もう)で ・go on a pilgrimage 聖地詣でに出かける
palmer(名)(パレスチナの)聖地巡礼者(記念にシュロの枝(葉)で作った十字架を持ち帰った)、(一般に)巡礼
seek(他)(古)(~を求めて)(場所へ)行く
strand(名)(海・湖・川などの)岸、浜
far-off(形)はるかかなたの ・a far-off land はるかな土地
saint(名)聖人、聖徒、聖者(生前高徳であったため死後聖人の列に加えられた人、または殉教者などを呼ぶ尊称)
hallowed(形)神聖化された、神聖な ・hallowed ground 霊地
sundry(形)種々様々の、雑多な
land(名)国、国土
specially(副)特に
shire(名)州
end(名)(細長いものの)端、末端、先端 ・from end to end 端から端まで
England(名)イングランド(Great Britain島のScotlandとWalesを除いた部分)
down(副)(北から)南へ(に) ・go down to London from Edinburgh エジンバラからロンドンへ下る
Canterbury(名)カンタベリーイングランドKent州の都市/英国国教総本山(Canterbury Cathedral)の所在地)
wend(自)(古)進む、行く
holy(形)神聖な、聖なる
blissful(形)至福の
martyr(名)(特にキリスト教の)殉教者
quick(形)(~するのが)早くて(⇔slow)(+to do)
give(他)(人・物事が)(~に)(利益・損害などを)(結果として)与える、もたらす(to)
help(名)助け、救助 ・give one's help 助ける、手伝う

四月がそのやさしきにわか雨を
三月の旱魃の根にまで滲みとおらせ、
樹液の管ひとつひとつをしっとりと
ひたし潤し花も綻びはじめるころ、
西風もまたその香しきそよ風にて
雑木林や木立の柔らかき新芽に息吹をそそぎ、
若き太陽が白羊宮の中へその行路の半ばを急ぎ行き、
小鳥たちは美わしき調べをかなで
夜を通して眼をあけたるままに眠るころ、
――かくも自然は小鳥たちの心をゆさぶる――
ちょうどそのころ、人々は巡礼に出かけんと願い、
棕櫚の葉もてる巡礼者は異境を求めて行かんと冀う、
もろもろの国に知られたる
遥か遠くのお参りどころを求めて。
とりわけ英国各州の津々浦々から
人々はカンタベリーの大聖堂へ、昔病めるとき、
癒し給いし聖なる尊き殉教者に
お参りしようと旅に出る。

(2)

Bifel that in that sesoun on a day,
In Southwerk at the Tabard as I lay,
Redy to wenden on my pilgrimage
To Caunterbury with ful devout corage,
At night was come into that hostelrye
Wel nine and twenty in a compaignye
Of sondry folk, by aventure yfalle
In felaweshipe, and pilgrimes were they alle,
That toward Caunterbury wolden ride.

It happened in that season that one day
In Southwark, at The Tabard, as I lay
Ready to go on pilgrimage and start
For Canterbury, most devout at heart,
At night there came into that hostelry
Some nine and twenty in a company
Of sundry folk happening then to fall
In fellowship, and they were pilgrims all
That towards Canterbury meant to ride.

it(代)(形式主語としてあとにくる事実上の主語の不定詞句・動名詞句・that節などを代表して)
happen(自)(非人称のitを主語として)たまたま(~で)ある(+that)
that(形)(指示形容詞)(対話者同士がすでに知っているもの・人・量をさして)あの(⇔this)
season(名)(通例修飾語を伴って)(~の)時季、時節、季節
that(接)(名詞節を導いて)(~)ということ/(主語節を導いて)
one(形)(基数の1)(時を表わす名詞の前に用いて)ある ・one day(過去か未来の)ある日
day(名)(副詞的に)~日 ・one day(過去の)ある日
in(前)(場所・位置・方向などを表わして)~において、~で ・in London ロンドンで(に)
Southwark(名)サザーク(Londonの自治区でThames川の南岸地域)
tabard(名)(the Tabard)陣羽織亭(LondonのSouthwarkにあった旅亭で、Chaucerが描いたようにCanterbury詣での巡礼が集まった店)
as(接)(時を表わして)~している時、~したとたんに
lie(自)(副詞句を伴って)(古)宿泊する
ready(形)用意が整って、準備ができて(+to do)
start(自)出発する ・start for ~に向けて出発する
for(前)(目的地・行き先を表わして)~へ向かって、~へ行くために(の) ・start for ~に向けて出発する
most(副)(通例theを用いないで)はなはだ、非常に(この意味のmostが修飾する形容詞・副詞は話者の主観的感情・判断を表わす)
devout(形)信心深い
at heart 心(気)にかけて
at night 夜に、夜間(に)
there(副)(thereは形式上主語のように扱われるが、動詞の後に通例不特定のものや人を表わす主語が続く/「そこに」の意味はなく、日本語ではthere isで「~がある」の意になる)(述語動詞にseem、appear、come、liveなどを用いて)
come into ~ ~に入る
hostelry(名)(古)宿屋
some(形)(不明または不特定のものまたは人をさして)(単数形の可算の名詞を伴って)何かの、ある、どこかの
nine(代)(基数の9)(複数扱い)9つ、9個、9人
twenty(代)(基数の20)(複数扱い)20個(人)
in(前)(状態を表わして)~の状態に(で)
company(名)(人・ペットが相手として)一緒にいること、同席、同伴 ・in a person's company
folk(名)(複数扱い)人々
happen(自)偶然(たまたま)(~)する(+to do)
fall(自)(~の状態・関係に)なる、陥る(in)
fellowship(名)仲間であること、仲間意識、連帯感
pilgrim(名)巡礼者、霊場参拝者
all(代)(複数扱い)(同格にも用いて)だれも、みな(通例代名詞の場合に用いる)
towards(前)=toward
mean(他)(~する)つもりである(+to do)
ride(自)(しばしば副詞句を伴って)馬に乗る、乗馬する

そんな季節のある日のこと、こんなことが起こりました。
じつは、わたしはとても敬虔な気持からカンタベリーへ念願の巡礼に出かけようと、サザー句の陣羽織屋に泊っておりました。
ところが夜になるとその旅籠屋に二十九人もの人たちが一団となってどやどやと入りこんできました。
この人たちはいろいろな階級の人たちで、ふとしたことから仲間になった連中でした。
彼らはみんな巡礼さんでカンタベリーへ馬に乗ってお参りしようというわけでした。

(3)

The chambres and the stables weren wide,
And wel we weren esed atte beste;
And shortly, whan the sonne was to reste,
So hadde I spoken with hem everichon
That I was of hir felaweshipe anon,
And made forward erly for to rise,
To take oure wey theras I yow devise.

The rooms and stables of the inn were wide;
They made us easy, all was of the best.
And, briefly, when the sun had gone to rest,
I'd spoken to them all upon the trip
And was soon one with them in fellowship,
Pledged to rise early and to take the way
To Canterbury, as you heard me say.

room(名)(ホテルの)部屋
stable(名)(しばしば複数形で)馬(小)屋、家畜小屋
inn(名)(通例階下で飲食店・居酒屋を兼ねた旧式の二階建ての)小旅館、小ホテル、宿屋(現在でもいなかにあり、またホテル・レストランの名にも用いられる)
wide(形)(面積が)広い、広大な
make(他)(~を)(~に)する(+目+補)
easy(形)安楽な、気楽な、楽な(⇔uneasy)
all(代)(単数扱い)すべて(のもの)、万事
of(前)(of+名詞で形容詞句をなして)~の
best(名)(the ~)最上、最善
briefly(副)簡単に、手短に(時に文修飾)
go(自)(~の状態に)なる、陥る(to)
to(前)(限度・程度・結果などを表わして)~に至るまで、~するほどに
rest(名)(ひと時の)休み、休憩、休息
I'd I hadの短縮形
to(前)(行為・作用の対象を表わして)~に対して、~に
on(前)(関係を表わして)~について、~に関する
one(代)(総称人称として/複数形なし)(一般的に)人、世人、だれでも
with(前)(感情・態度の対象を導いて)~に対して、~に ・be in love with ~と恋仲だ
pledge(他)(~に)(~を)誓約する(+to do)
take(他)(道・進路などを)たどる ・take the way 道を通る
way(名)(通例単数形で)(the ~、one's ~)行く道 ・take the way 道を行く
as(代)(関係代名詞)(前後の主節全体を先行詞として、非制限的に用いて)それは~だが
hear(他)(~が)聞こえる、(~を)聞く(+目+原形)
say(他)(人に)(~と)言う、話す、述べる、(言葉を)言う(+that)/(+wh.)

寝る部屋も広ければ厩も広うございましたし、それにわたしたちは最上のもてなしを受けました。
そこで手短に申しますと、太陽が休みについたころ、
わたしはこの人たちの誰彼となくつい話しこんでしまいました。
それですぐこの人たちと仲間になり、明朝はやく起きて今申し上げました目的地へ一緒に出かけようという約束をいたしました。

(4)

But nathelees, whil I have time and space,
Er that I ferther in this tale pace,
Me thinketh it acordant to resoun
To telle yow al the condicioun
Of ech of hem, so as it semed me,
And whiche they weren and of what degree,
And eek in what array that they were inne;
And at a knight than wol I first biginne.

But none the less, while I have time and space,
Before my story takes a further pace,
It seems a reasonable thing to say
What their condition was, the full array
Of each of them, as it appeared to me,
According to profession and degree,
And what apparel they were riding in;
And at a Knight I therefore will begin.

none the less=nonetheless(副)それでもなお、それにもかかわらず(=nevertheless)
have(他)(用事・時間などを)もっている、与えられている ・have time 時間がある
time(名)暇、余暇 ・have time 時間がある
space(名)(通例単数形で)(時に)間、時間
before(接)~より前に、(~する)に先だって、~しないうちに
my(代)私の
story(名)話、うわさ話、所説
take(他)(形・性質などを)とる
further(形)もっと程度の進んだ
pace(名)(単数形で)(仕事・生活などの)速度、ペース、テンポ(=speed)
it(代)(非人称動詞(impersonal verb)の主語として)(特にさすものはなく、従って訳さないで文の形式的主語となる)(seem(appear、happen、etc.)that ~の主語として)
seem(自)(itを主語として)(~には)(~のように)思われる
reasonable(形)(思考・行動など)合理的な、理にかなった、筋の通った、正当な ・It is reasonable to do ~するのは合理的である
thing(名)(無形の)こと、事(柄)、事件
what(代)(疑問代名詞)(間接疑問の節や+to doの形で)
condition(名)(古)身分、地位、境遇
full(形)(数・量を表わす語とともに用いて)まる(まる)
array(名)(通例単数形で)たくさんの(多様な)もの(人)の集まり
of(前)(分量・内容を表わして/数量・単位を表わす名詞を前に置いて)~の
each(代)各自、おのおの(of)
of(前)(部分を表わして)~の中の
as(接)(様態・状態を表わして)~のように
appear(自)(itを主語として)(~には)(~と)思える、どうも~らしい(+to+代名+that)
according to ~(前置詞的に)~に従って(応じて)、~しだいで
profession(名)(特に頭脳を用いる)職業、専門職
degree(名)学位、称号
what(形)(疑問形容詞)何の、何という、どんな、いかほどの
apparel(名)(きらびやかな)衣装、服装
in(前)(着用を表わして)~を着て、身につけて
and(接)(話題を変えたり始めたりする時に)(それ)では、さて
at(前)(場所・位置の一点を表わして)(出入りの点などを表わして)~から ・begin at ~から始める
knight(名)(中世の)騎士
therefore(副)それゆえに、従って、それ(これ)によって(=consequently)
will(助動)(意志未来を表わして)(1人称の主語に伴い、発話時の話者の意志を表わし、約束・諾否・主張・選択などを示して)~するつもりである、~しようと思う
begin(自)(人が)(~から)始める(at)

ですが、まだ時間もありますあいだ、さらにこのお話を進めてゆきますまえに、
皆様にこの人たちのそれぞれの階級を全部、どんな人柄で、どんな身分の出で、
またどんな服装をしていたか、わたしの目にうつったままお話しするとよろしいのではないかと思われます。
ではまず、騎士から始めるといたしましょう。

(5)

A KNIGHT ther was, and that a worthy man,
That fro the time that he first bigan
To riden out, he loved chivalrye,
Trouthe and honour, fredom and curteisye.

There was a Knight, a most distinguished man,
Who from the day on which he first began
To ride abroad had followed chivalry,
Truth, honour, generousness and courtesy.

there(副)(thereは形式上主語のように扱われるが、動詞の後に通例不特定のものや人を表わす主語が続く/「そこに」の意味はなく、日本語ではthere isで「~がある」の意になる)/(beを述語動詞として)
knight(名)(中世の)騎士(封建時代に名門の子弟がpageからsquireに昇進し武功を立ててknightとなった/ナイトに就任する儀式をaccoladeといい、土地と黄金の拍車(spurs)を下賜された)
most(副)(通例theを用いないで)はなはだ、非常に(この語が修飾する形容詞が名詞の単数形とともに用いられる時は不定冠詞を伴う/この意味のmostが修飾する形容詞・副詞は話者の主観的感情・判断を表わす)
distinguished(形)(態度など)気品のある、上品な
man(名)(修飾語句を伴って)(特定の仕事・性格などの)男性
who(代)(関係代名詞)(非制限的用法で/通例前にコンマが置かれる)そしてその人は
from(前)(空間・時間などの起点を表わして)~から
on(前)(日・時・機会を表わして)~に
which(代)(関係代名詞)(制限的用法で)~する(した)(もの、事)(通例「もの」を表わす名詞を先行詞とする形容詞節をつくる)/(目的格の場合)
first(副)(通例動詞の前に用いて)初めて
begin(他)(~し)始める、(~し)だす(+to do)
ride(自)(しばしば副詞句を伴って)馬に乗る、乗馬する
abroad(副)国外へ(に)、海外へ(に)(=overseas/⇔at home)
follow(他)(人(の説・教え・主義)を奉ずる
chivalry(名)(中世の)騎士道、騎士道精神(忠君・勇気・仁愛・礼儀などをモットーとし婦人を敬い弱きを助ける)
honour(名)(英)=honor(名)名誉、栄誉
generousness(名)<generous(形)寛大な、思いやりのある
courtesy(名)礼儀(正しさ)、丁寧、いんぎん、親切

一人の騎士がおりました。
それも立派なお方で、遠征にはじめて出かけて以来、騎士道を尊び、真実と名誉、寛容と礼儀を愛していました。

(6)

Ful worthy was he in his lordes werre,
And therto hadde he riden, no man ferre,
As wel in Cristendom as hethenesse,
And evere honoured for his worthinesse.

He had done nobly in his sovereign's war
And ridden into battle, no man more,
As well in Christian as in heathen places,
And ever honoured for his noble graces.

do(自)(well、rightなどの様態の副詞または副詞節を伴って)ふるまう
nobly(副)りっぱに、堂々と
in(前)(範囲を表わして)~において、~内で
his(代)彼の
sovereign(名)主権者、元首、君主、国王(=monarch)
battle(名)(特定地域における組織的な)戦い、戦闘
no more それ以上(もはや、二度と)~しない
as well as ~ ~はもちろん、~も~も
in(前)(場所・位置・方向などを表わして)~において、~で ・in London ロンドンで(に)
Christian(形)キリスト教
heathen(形)異教徒の、異教の(=pagan)
place(名)地域、地方
ever(副)いつも、常に、始終/(肯定文で)
honour(動)(英)=honor(他)(人に)名誉(光栄)を与える
for(前)(敬意を表わして)~を記念して、~のために
noble(形)高潔な、気高い、崇高な
grace(名)(動作・態度・物言いなどの)優美、優雅、気品、しとやかさ、上品

主君の戦いにとても勇敢にたたかいました。そのうえ、異教の国はもとよりキリスト教国にも遠征に出かけました。
だれもこの騎士よりは遠くへ行った者もないくらい。そしていつもその勇気のゆえに名誉を与えられておりました。

(7)

At Alisaundre he was whan it was wonne;
Ful ofte time he hadde the bord bigonne
Aboven alle nacions in Pruce;
In Lettow hadde he reised and in Ruce,
No Cristen man so ofte of his degree.

When we took Alexandria, he was there.
He often sat at table in the chair
Of honour, above all nations, when in Prussia.
In Lithuania he had ridden, and Russia,
No Christian man so often, of his rank.

when(接)~する時に、~時(時を表わす副詞節をつくる)
take(他)(とりで・都市などを)占領する、奪取する
Alexandria(名)アレクサンドリア(エジプト北部、ナイル川河口の海港/Alexander大王が建設したヘレニズム文化の中心地)
at the table 食卓について ・sit at the table 食卓につく
of(前)(of+名詞で形容詞句をなして)~の
all(形)(複数名詞の前に置いて)あらゆる、すべての、みな
nation(名)民族、種族
Prussia(名)プロイセンプロシア(ドイツ北部にあった旧王国)
Lithuania(名)リトアニアバルト海沿岸の共和国/首都Vilnius)
Russia(名)(1917年以前の)ロシア帝国(1917年の革命で滅亡/首都St. Petersburg)
Christian(形)キリスト教徒の
so(副)(程度を表わして)それ(これ)ほど、そんな(こんな)に、これくらい
rank(名)階級、等級、(社会的な)地位

アレクサンドリアが占領されたとき、彼はちょうどそこにおりました。
プロシアではすべての外国の騎士たちをさしおいて、たびたび食卓の最上席につきました。
リトアニアにも遠征に出かけました。またロシアにも征きました。
同じ階級のキリスト教徒の騎士たちでこんなにたびたび遠征したものはありませんでした。

(8)

In Gernade at the seege eek hadde he be
Of Algezir, and riden in Belmarye;
At Lyeys was he and at Satalye
Whan they were wonne, and in the Grete See
At many a noble armee hadde he be.

When, in Granada, Algeciras sank
Under assault, he had been there, and in
North Africa, raiding Benamarin;
In Anatolia he had been as well
And fought when Ayas and Attalia fell,
For all along the Mediterranean coast
He had embarked with many a noble host.

Granada(名)グラナダ(スペイン南部の都市/Alhambra宮殿などの遺跡で有名)
Algeciras アルへシラス(スペイン南西部Gibraltar海峡のAlgeciras湾に面する港町)
sink(自)(通例副詞句を伴って)(地盤・建物などが)(~に)沈下する、陥没する
under(名)急襲、強襲
north(形)(しばしばNorth)北部の、北国の ・North Africa 北アフリカ
raid(他)(場所を)急襲(奇襲、空襲)する
Anatolia(名)アナトリア小アジア(=Asia Minor)
as well なお、そのうえ、おまけに
fall(自)(要塞(ようさい)・都市などが)(敵などの手に)落ちる、陥落する
for(前)(目的地・行き先を表わして)~へ向かって、~へ行くために(の)
all(代)(単数扱い)すべて(のもの)、万事
Mediterranean(形)地中海の
coast(名)(大陸・大きな島などの)海岸、沿岸
embark(自)船出する(for)
many(形)(many aに単数形の名詞・動詞を伴って/単数扱い)数々の、多数の
host(名)(客をもてなす)主人(役)、ホスト(役)

またこの騎士はアルゼシラスの包囲戦のおり、グラナダにいたこともありました。そしてベンマリンでも戦いました。
アイアスやアタリアが占領されたときにもそこにおりました。
そして地中海では名高い遠征に多く加わったということでありました。

(9)

At mortal batailles hadde he been fiftene,
And foghten for oure feith at Tramissene
In listes thries, and ay slain his foo.

In fifteen mortal battles he had been
And jousted for our faith at Tramissene
Thrice in the lists, and always killed his man.

fifteen(形)(基数の15)15の、15個の、15人の
mortal(形)はなはだしい、大変な
battle(名)(個々の戦闘)
joust(自)馬上槍試合をする
our(代)我々の、私たちの
faith(名)信仰
thrice(副)三たび、3倍
list(名)(the lists)(中世の槍試合場の周囲に作った)矢来(やらい)

必死の激戦に加わったことも十五たびもありましたし、アルジェリアでわが信仰を守るために三度も一騎打ちの勝負をし、そのたびに敵を倒しました。

(10)

This ilke worthy knight hadde been also
Somtime with the lord of Palatye
Again another hethen in Turkye,
And everemoore he hadde a soverein pris.

This same distinguished knight had led the van
Once with the Bey of Balat, doing work
For him against another heathen Turk;
He was of sovereign value in all eyes.

this(形)(指示形容詞)この/(対話者同士がすでに知っているもの(人)をさして)
same(形)(this、that、these、thoseに続いて)例の、あの、その、~とかいう
distinguished(形)すぐれた、抜群の(=illustrious)
lead(他)(~を)率いる
van(名)(軍隊・艦隊の)前衛、先頭、先陣(⇔rear)
once(副)昔(ある時)、かつて(は)
bey(名)(オスマントルコの)地方長官
another(形)別の、ほかの
Turk(名)(特にオスマン帝国の)トルコ人
of value 価値のある、貴重な
sovereign(形)最上(至高)の
eye(名)(an ~、one's ~)目的、意図

この勇敢な騎士は、またときに、パラティアの主君の味方になってトルコの別の異教徒と戦ったこともありました。
そしていつも最高の栄誉を与えられておりました。

(11)

And though that he were worthy he was wis,
And of his port as meke as is a maide,
Ne nevere yet no vileinye he saide
In al his lif unto no maner wight.
He was a verray parfit gentil knight.

And though so much distinguished, he was wise
And in his bearing modest as a maid.
He never yet a boorish thing had said
In all his life to any, come what might;
He was a true, a perfect gentle-knight.

much(副)(過去分詞を修飾して)大変に、非常に、大いに
wise(形)(人・行動など)賢い、賢明な、思慮深い、分別のある(⇔foolish)
bearing(名)(またa ~)態度
modest(形)謙遜(けんそん)な、謙虚な、慎み深い(⇔immodest)
as(接)(様態・状態を表わして)~のように
never(副)(notよりも強い否定を表わして)決して~ない
boorish(形)野卑(粗野)な、やぼな、がさつな
thing(名)(無形の)こと、事(柄)、事件
in(前)(時間を表わして)~(のうち)に、~の間、~中 ・in one's life 自分の生涯で
to(前)(行為・作用の対象を表わして)~に対して、~に
any(代)(否定文で、any of ~の形か既出名詞の省略の形で用いて)何も、だれも
come what may 何事があろうと
true(形)本当の、正真正銘の
perfect(形)申し分のない、満足のゆく、理想的な
gentle(形)(態度など)もの柔らかな、上品な

この騎士は勇敢ではありましたが、さらに、思慮深い人でもありました。
そして態度物腰といったらそれこそ乙女のようにやさしいものでした。
ほかの人に向かって騎士にふさわしくない野卑な言葉なぞそれこそ生涯に一度だって言ったことはありません。
彼は真実の、申し分のない、気品のある騎士でありました。

(12)

But for to tellen yow of his array,
Hise hors were goode but he was nat gay.

Speaking of his equipment, he possessed
Fine horses, but he was not gaily dressed.

speaking of ~ ~について言えば、~の話のついでだが、~と言えば
equipment(名)(ある目的のための)備品、接尾、装具、用品
possess(他)(資産などを)所有する
fine(形)すばらしい、見事な、りっぱな
not(副)(述語動詞・文以外の語句を否定して)
gaily(副)派手に、華やかに ・a gaily dresses girl 華やかに着飾った少女
dressed(形)(~の)服装をして(身じたくをして)

それはそうと、この騎士のいでたちのことを申し上げてみましょう。
彼の乗る馬は立派な馬でしたが、当の本人は派手な服装ではありませんでした。

(13)

Of fustian he wered a gipoun,
Al bismotered with his habergeoun,
For he was late ycome from his viage,
And wente for to doon his pilgrymage.

He wore a fustian tunic stained and dark
With smudges where his armour had left mark;
Just home from service, he had joined our ranks
To do his pilgrimage and render thanks.

fustian(形)ファスチアン綿布の
tunic(名)チュニック/警官・軍人などの制服の短い上着
stain(他)(~で)(~に)しみをつける(with)
dark(形)(色彩が)薄黒い、黒ずんだ
with(前)(材料・中身を表わして)~で
smudge(名)よごれ、しみ
where(副)(関係副詞)(制限的用法で)~する、~した(場所、場合など)(「場所」「場合」を表わす名詞を先行詞とする形容詞節をつくる)
armour(名)よろいかぶと、甲冑(かっちゅう)
leave(他)(傷跡・感情・疑問などを)残す
mark(名)(本来の形や色を傷つけたりよごしたりする)跡、傷跡
home(副)(自宅・自国へ)帰って
service(名)勤務、奉職、勤め、勤続
join(他)(人・団体に)加わる、加入する、(~の)仲間になる
rank(名)(組織・グループの)メンバーたち、同類、仲間 ・join the ranks of ~の中に加わる
pilgrimage(名)巡礼の旅、聖地詣(もう)で
render(他)(人・神などに)(感謝を)ささげる
thank(名)(複数形で)感謝、謝辞

木綿と麻の荒いファスティアン布の胴着を着ておりました。
しかもそれは鎖帷子のためすっかり汚れておりました。
実は先ごろ遠征から帰ったばかりで、すぐにお礼参りの巡礼へ出かけてきたからでした。

(14)

With him ther was his sone, a yong SQUIER,
A lovere and a lusty bacheler,
With lokkes crulle as they were leid in presse;
Of twenty yeer of age he was, I gesse.

He had his son with him, a fine young Squire,
A lover and cadet, a lad of fire
With locks as curly as if they had been pressed.
He was some twenty years of age, I guessed.

have(他)(ある関係を表わして)(肉親・友人などが)いる、(~が)ある
fine(形)(外観・形状など)押し出しのりっぱな ・a fine young man ハンサムな青年
squire(名)騎士の従者
lover(名)恋人、愛人(単数の時は通例男)
cadet(名)末の息子
lad(名)若者、少年、若いの、にいちゃん(⇔lass)
fire(名)熱情、熱烈さ
with(前)(所持・所有を表わして)~を持って(た)、~のある ・a woman with long hair 長い髪の女
lock(名)(ひと房の)巻き毛、たれ髪
as(副)(通例as ~ as ~で、形容詞・副詞の前に置いて)(~と)同じ程度に、同様に、同じくらい(as ~ as ~で前のasが指示副詞、後のasは接続詞)
curly(形)巻き毛の、カールした(⇔straight)
as if まるで~であるかのように(as if節中では仮定法を用いる)
press(他)(ものを)押して平らにする
some(副)(数詞の前に用いて)約
twenty(形)(基数の20)20の、20個の、20人の
of(前)(関係・関連を表わして)~の点において、~に関して、~について ・He's twenty years of age. 彼は20歳だ。
guess(他)(なんとなく)(~だと)思う(+that)

騎士には息子の若い近習が従っておりました。
恋をしている、見るからに元気のいい若者でした。
髪はまるでこてでもかけたように巻き毛になっておりました。
年のころは二十歳くらいだったでしょうか。

(15)

Of his stature he was of evene lengthe,
And wonderly delivere and of greet strengthe;
And he hadde been somtime in chivachye
In Flaundres, in Artois and Picardye,
And born him wel, as of so litel space,
In hope to stonden in his lady grace.

In stature he was of a moderate length,
With wonderful agility and strength.
He'd seen some service with the cavalry
In Flanders and Artois and Picardy
And had done valiantly in little space
Of time, in hope to win his lady's grace.

in(前)(性質・能力・芸などの分野を限定して)~において、~が
stature(名)(人の)身長、背丈
moderate(形)(量・大きさ・程度・質など)適度の、中くらいの、並の
length(名)丈(たけ)
with(前)(様態の副詞句を導いて)~を示して、~して
wonderful(形)不思議な、驚くべき、驚嘆すべき
agility(名)機敏、軽快さ
strength(名)強さ、強いこと、力、体力
He'd→He had
see(他)(~を)経験する、(~に)遭遇する
cavalry(名)(集合的/単数または複数扱い)騎兵隊
Flanders(名)フランドル、フランダース(ベルギー北西部の5州とフランス北部の小地域を含み北海に臨む地方)
Artois アルトア(フランス北部の旧州)
Picardy ピカルディー(フランス北部の地方・旧州/第一次大戦の激戦地)
valiantly(副)<valiant(形)りっぱな、すぐれた、価値のある
in(前)(時間を表わして)~(のうち)に、~の間、~中
little(形)(時間・距離など)短い(⇔long)
space(名)(通例単数形で)(時の)間、時間 ・in such a short space of time そんなに短い時間で
in(前)(状態を表わして)~の状態に(で)
hope(名)期待(+to do)
win(他)(名声・称賛・信頼などを)得る、博する
lady(名)貴婦人
grace(名)(上の立場の人が示す)親切、好意、思いやり

背丈はほぼ中背でおどろくほど敏捷、それにたいへん力もありました。
彼はすでにフランドル地方やアルトワやピカルディに遠征に出かけたこともありました。
そして貴婦人の愛顧を得たいと短い期間に立派な振舞いをいたしました。

(16)

Embrouded was he, as it were a meede,
Al ful of fresshe floures white and reede.

He was embroidered like a meadow bright
And full of freshest flowers, red and white.

embroider(他)(布などに)刺繍(ししゅう)する
like(前)~のような、~に似た
meadow(名)(特に低地帯の干し草を作る)牧草地、草地
bright(形)(色が)あざやかな、さえた(⇔dull)
of(前)(目的格関係を表わして)(形容詞に伴って)~を
fresh(形)(色が)明るい、鮮明な

彼の衣服はちょうど白や赤の新鮮な花いっぱいの牧場のように、きれいに刺繍がしてありました。

(17)

Singinge he was, or floitinge, al the day;
He was as fressh as is the monthe of May.

Singing he was, or fluting all the day;
He was as fresh as is the month of May.

flute(自)フルートを吹く
all the day 一日中、終日
fresh(形)生き生きして、元気のいい、はつらつとして

ひねもす歌をうたい、笛を吹いておりました。
彼はまさに五月の季節のように目ざめるばかりに新鮮でした。

(18)

Short was his gowne, with sleves longe and wide;
Wel koude he sitte on hors and faire ryde.

Short was his gown, the sleeves were long and wide;
He knew the way to sit a horse and ride.

gown(名)(大学教授・学生・市長・裁判官・弁護士・聖職者などの着る黒の)職服、正服、法服、式服
sleeve(名)(衣服の)そで、たもと
way(名)やり方、手段(+to do)
sit(他)(馬に)乗る、乗りこなす

上衣は短く、袖は長くたっぷり広い仕立てでありました。
彼は馬に乗って上手に御するすべを心得ておりました。

(19)

He koude songes make and wel endite,
Juste and eek daunce, and wel purtreye and write.

He could make songs and poems and recite,
Knew how to joust and dance, to draw and write.

make(他)(詩・文章などを)創作する、著わす
recite(自)暗唱(朗唱)する
know(他)(~を)知る、知っている、(~が)わか(ってい)る(+wh.)
how(副)(疑問詞)(方法・手段を尋ねて)(to doまたは節を導いて)(~する)しかた
draw(自)(~で)絵を描く、製図する
write(自)著述する、著作する

歌を作曲し、歌詞をつくることから、馬上槍試合をしたり、また踊ったり、絵を描いたり、物を書いたりする才能に恵まれておりました。

(20)

So hoote he lovede, that by nightertale
He slepte namoore than dooth a nightingale.

He loved so hotly that till dawn grew pale
He slept as little as a nightingale.

love(自)愛する、恋をする
so(副)(程度・結果を表わして)(so ~ that ~で)(順送りに訳して)非常に~なので~
hotly(副)猛烈に、激しく
that(接)(副詞節を導いて)(so ~ thatの形で程度・結果を表わして)(非常に)~なので、~(する)ほど
till(接)(否定語の後に用いて)~までは(~しない)、~になって初めて(~する)
dawn(名)夜明け、あけぼの、暁(=daybreak)
grow(自)(次第に)(~に)なる(+補)
pale(形)明るい(色の)(=light/⇔dark)
sleep(自)眠る
little(副)(aをつけないで否定的用法で)ほとんど~しない
nightingale(名)(鳥)サヨナキドリ、ナイチンゲールツグミに似たヨーロッパ産の小鳥/ウグイスより大型/雄は春に夕方から夜ふけまで美しい声で鳴く)

彼はじつに熱烈に恋をして、夜は小夜鳴鳥ほどにも眠らぬという有様でした。

(21)

Curteis he was, lowely and servysable,
And carf biforn his fader at the table.

Courteous he was, lowly and serviceable,
And carved to serve his father at the table.

courteous(形)礼儀正しく思いやりのある、丁重な
lowly(形)謙虚な
serviceable(形)使える、役に立つ
carve(自)肉を切り分ける
serve(他)(人・料理店などが)(飲食物を)(食卓に)出す

彼は宮廷の礼儀作法をまもり、腰が低く、奉仕の心に燃えていました。
食卓では騎士である父のまえで肉を切って差し上げました。

(22)

A YEMAN hadde he (and servantz namo
At that time, for him liste ride so),
And he was clad in coote and hood of grene.
A sheef of pecok arwes, bright and kene,
Under his belt he bar ful thriftily —
Wel koude he dresse his takel yemanly;
His arwes drouped noght with fetheres lowe —
And in his hand he bar a mighty bowe.

There was a Yeoman with him at his side,
No other servant; so he chose to ride.
This Yeoman wore a coat and hood of green,
And peacock-feathered arrows, bright and keen
And neatly sheathed, hung at his belt the while
— For he could dress his gear in yeoman style,
His arrows never drooped their feathers low —
And in his hand he bore a mighty bow.

yeoman(名)(昔、王家・貴族に仕えた高位の)従者
side(名)(通例単数形で)(人の)かたわら、そば、わき ・at one's side ~のそばで
servant(名)召し使い、使用人(=domestic)
choose(他)(~しようと)決める(+to do)
coat(名)上着、ジャケット
hood(名)(コートなどの)フード、ずきん
green(名)緑色
peacock(名)(鳥)(特に雄の)クジャク(美しい大きな羽を広げることで知られ、見えを張ることのイメージを持つ)
feathered(形)羽根飾りのある
arrow(名)矢
keen(形)(先端・刃物など)鋭い、鋭利な(⇔dull、blunt)
neatly(副)きちんと、こぎれいに
sheathe(他)(~を)さやに納める
belt(名)(通例腰の周りにつける)ベルト、帯
the while(副詞句として)同時に
for(接)(通例コンマ、セミコロンを前に置いて、前文の付加的説明・理由として)という訳は~だから(=as、since)
dress(他)(~を)美しく飾る
gear(名)(通例修飾語を伴って)(特定の用途に用いる)用具(一式)、道具(ひとそろい)、装備
in(前)(方法・形式を表わして)~で、~をもって
style(名)やり方、スタイル、方式、流儀
droop(他)(首・顔・目などを)たらす、伏せる、うつむける
their(代)彼ら(彼女ら)の
feather(名)矢羽根、矢はず
low(副)低く
bear(他)(武器・マーク・痕跡(こんせき)などを)身につける、帯びる
mighty(形)(人・ものが)力強い、強力な、強大な
bow(名)弓

騎士は一人の楯持をつれておりました。
その折はそれ以上、家来をつれていませんでした。そんな旅が騎士の気に入っていたからでした。
この楯持は緑の上衣と頭巾をつけていました。
彼は孔雀の羽のついた、輝く鋭い矢を一束、帯皮の下につけていましたが、それがまたぴったりとあっていました。
楯持にふさわしくその矢を立派に整えるわざを彼はよく心得ておりました。
その矢は羽毛がおしつぶされて垂れ下がったりしてはいませんでした。
手には強弓をたずさえていました。

(23)

A not-heed hadde he, with a broun visage;
Of wodecraft wel koude he al th'usage.
Upon his arm he bar a gay bracer,
And by his side a swerd and a bokeler,
And on that oother side a gay daggere,
Harneised wel and sharp as point of spere;
A Cristofre on his brest of silver shene.
An horn he bar, the bawdrik was of grene.

His head was like a nut, his face was brown.
He knew the whole of woodcraft up and down.
A saucy brace was on his arm to ward
It from the bow-string, and a shield and sword
Hung at one side, and at the other slipped
A jaunty dirk, spear-sharp and well-equipped.
A medal of St Christopher he wore
Of shining silver on his breast, and bore
A hunting-horn, well slung and burnished clean,
That dangled from a baldrick of bright green.

nut(名)頭
face(名)顔色、顔つき
brown(形)(皮膚が)浅黒い
whole(名)(the ~)全部、全体(of)
woodcraft(名)森林(山)の知識、山林技術(山林での狩猟・野営・通過・生活法など)
up and down 上下に
saucy(形)(ものが)気のきいた、粋(いき)な、しゃれた
brace(名)(廃)よろいの腕の部分
on(前)(付着・所持を表わして)~にくっつけて、~の身につけて
ward(他)(危険・打撃などを)かわす、防ぐ、避ける
from(前)(抑制・防止などを表わして)~から
bowstring(名)弓のつる
shield(名)盾(たて)(矢・槍(やり)・刀などを防ぐための昔の武具)
sword(名)剣、刀
one(形)(another、the otherと対照的に)一片の、片方の
other(代)(the ~)(二つのうちの)ほかの一方(の人)、他方
slip(他)(副詞句を伴って)(指輪などを)そっとはめる(はずす)
jaunty(形)(服装が)いきな、スマートな
dirk(名)(海軍士官候補生の)短剣
spear(名)槍(やり)、投げ槍
well-「よく、十分に」の意の連結形(過去分詞と結合して複合形容詞を造る)
equip(他)(船・軍隊に)(必要な道具・装置を)装備する、(~に)備え付ける(しばしば受身)
medal(名)(聖職者などを形どった)メダル状のもの
St.(略)聖~、セント~/(聖人・使徒名などにつける)
Christopher, Saint(名)聖クリストフォロス(?-?250/小アジアの殉教者/旅人の守護聖人で、祝日7月25日)
of(前)(材料を表わして)~で(作った)、~から(成る)
shining(形)光る、輝く、ぴかぴかする
breast(名)胸
hunting horn(名)狩猟用らっぱ
well(副)上手に、うまく
slung(動)slingの過去形・過去分詞
sling(他)(通例副詞句を伴って)つり下げる、ぶら下げる、つり包帯でつる(しばしば受身)
burnish(他)(金属を)磨く、光らせる
clean(副)きれいに(なるように)
that(代)(関係代名詞)(人・ものを表わす先行詞を受けて通例制限用法で)(~する(である))ところの/(主語として)
dangle(自)ぶら下がる
baldrick→baldric(名)(昔の)飾り帯(肩から斜めに腰へかけて剣をつる革帯)

頭はざんぎり頭で顔は褐色に日焼けしていました。
森の狩猟のことならそのじっさいのやり方をじつによく知っていました。腕には派手な弓懸けをつけ、脇には剣と小ぶりの楯をつけていました。
そしてまた一方のがわには、立派な装飾をほどこした、槍の穂先のように鋭い、派手な短剣を下げていました。胸の上には美しい銀製の、クリストファー聖人をかたどったブローチが下がっておりました。
彼はまた狩りの角笛をもっていました。その吊り革の肩帯は緑色でした。

(24)

A forster was he soothly, as I gesse.

He was a proper forester, I guess.
(Nevill Coghill・訳)

proper(形)(目的・状況などにかなって)適切な、ふさわしい(=correct)
forester(名)森林官、林務官、森林管理者、森林警備(監視)員

この楯持はじつに森の狩猟番らしい男だと私には思えました。
(桝井迪夫・訳)

【参考文献】
The Canterbury Tales: (original-spelling edition) (Penguin Classics)
The Canterbury Tales (Penguin Classics)』Nevill Coghill・訳
完訳 カンタベリー物語〈上〉 (岩波文庫)』桝井迪夫・訳
新英和中辞典 [第7版] 並装』(研究社)
リーダーズ英和辞典 <第3版> [並装]』(研究社)
リーダーズ・プラス』(研究社)
新英和大辞典 第六版 ― 並装』(研究社)