『不思議惑星キン・ザ・ザ』

この週末は、ブルーレイで『不思議惑星キン・ザ・ザ』を見た。

久々の映画(ブルーレイ)鑑賞。
1986年のソ連映画
監督はゲオルギー・ダネリヤ
主演はスタニスラフ・リュブシン。
この映画が日本で公開されたのは1991年。
僕が一浪の時だ。
僕は、一浪目は上京して新聞奨学生をしながら映画を見まくっていたので(だから二浪するハメに)、この映画が話題になっていたのもよく覚えている。
実際、今でもカルトSFという扱いを受けているが、僕は残念ながら、これまで見る機会がなかった。
カラー、スタンダード。
荒涼たる砂漠が延々と続く。
穏やかなテーマ曲。
一般家庭。
中年男(スタニスラフ・リュブシン)が帰宅。
リビングのテレビは大きいが、白黒である。
この辺から旧ソ連らしさが伺える。
男は帰宅早々、妻から「パンとマカロニを買って来て」と頼まれる。
最後まで見ると判るが、あちこちに伏線が張り巡らされている。
街を歩いていると、見知らぬ青年が「あそこに異星人という人が、この星のクロス番号を教えてくれと言っている」と話し掛けて来る。
異星人のところへ行ってみると、汚らしい服装に裸足(モスクワなのに)で、ホームレスにしか見えない。
彼はベータ星雲UZM247という星から来たという。
手には空間移動装置を持っていて、ボタンを押せば、一瞬で家に帰れるという。
しかし、話しているのは何故かロシア語。
で、男が「何をバカな」と言わんばかりにボタンを押すと、一瞬で冒頭の砂漠へ。
2001年宇宙の旅』もビックリの鮮やかな編集である。
青年も一緒に移動している。
太陽も砂も引力もあるので、地球上の砂漠だろうと、二人はあてもなく歩き始める。
広大な砂漠。
男の名はウラジーミル、青年の名はゲデヴァンと自己紹介。
ゲデヴァンのカバンの中にはブドウ酢と野菜が入っており、先生に届けるはずだったバイオリンを持っていた。
とりあえず、水を探す。
暑いので、コートや上着を脱ぐ。
何かが空を飛んで来る。
錆びたバケツを逆さまにしたような乗り物が着陸。
中から「クー」という奇声を発しながら、小太りと背が高いおっさんの二人が降りて来る。
「資本主義国だ」とつぶやくウラジーミル。
ゲデヴァンに「外国語は出来るか?」と尋ねると、「英語とフランス語なら」という答え。
さすが、旧ソ連の学生はエリートだから、ちゃんと勉強しているんだな。
しかし、「We haven't money.」という表現は、教科書が古かったのだろうか。
相手には、ちゃんと「Do you speak English?」と尋ねる。
全く通じないので、今度はフランス語で(これは、残念ながら僕のフランス語力では聴き取れなかった)尋ねる。
相手は何を訊いても、「クー」としか言わない。
とりあえず、コートと帽子を差し出す。
小太りの方のおっさんがカバンを開けてブドウ酢を飲む→オエー。
連中は、コートと帽子だけ持って、また宇宙船に乗って行ってしまった。
ウラジーミルが一服しようと、何気なくタバコにマッチで火を点けた瞬間、さっきの乗り物が高速で戻って来る。
連中は「マッチをよこせ」という。
ウラジーミルは、「乗せてくれるならやる」と。
こうして乗り物に乗り込んだウラジーミルとゲデヴァン。
二人は、連中から鈴のついたリングを渡され、鼻に着けろと言われる。
乗り物が停まった。
おっさんが降りる。
砂漠の中に杭が1本、立っている。
地中から人が出て来る。
その直後、砂漠で爆発。
おっさんが戻って来て、乗り物は再び飛び立つ。
「女房め、マカロニなんか頼むからだ」とウラジーミルがつぶやくと、連中はそれを理解したようだ。
よく分からないが、連中は相手の脳内を解析する能力を持っていて、ロシア語とグルジア語を理解出来るようになったのだという。
連中が言うには、ここはクロス番号215の惑星プリュク。
スパイラル・キン・ザ・ザ星雲にあるという。
ウラジーミルは、「地球まで送ってくれれば、マッチをやる」と言う。
連中が言うには、加速器があれば、宇宙のどこへでも5秒で行けると。
一方、火を点けるのは、マッチが貴重品なので、火打ち石だ。
文明が発達しているのか遅れているのか分からない。
連中が言うには、マッチの密輸は重罪だという。
連中が「街」に着いたというが、砂漠の中に小屋が1軒あるだけ。
で、連中は識別器をウラジーミルとゲデヴァンに向ける。
緑が点灯。
緑はパッツ人で、オレンジはチャトル人。
小太りの男はチャトル人で、背が高い男はパッツ人だった。
この星では、支配階級であるチャトル人の前では、パッツ人は鈴を着けなければならない。
何という人種差別。
4人が小屋の中に入って行くと、地下深くまで続く階段がある。
女が出て来て、ウラジーミルだけ通すと。
女について行くウラジーミル。
最下層に着くと、若い男が二人いる。
マッチ半本で加速器と交換するという。
ウラジーミルはマッチと引き換えに水と食料をよこせと告げる。
顔に傷がある男が、「マッチが本物かどうか調べる」と言うので、ウラジーミルはマッチを全部渡してしまう。
戻って来ない。
しまった。
ウラジーミルがドアを開けると、大量の砂が流れて来る。
急いで地上へ。
大量の砂で小屋が崩壊し、飛び立つロケット。
逃げられた。
まんまとだまされたのである。
「お前がケチって都心へ行かず物価の安いという郊外へ行ったからだ」とケンカを始めるチャトル人とパッツ人。
しかし、ウラジーミルはかろうじてマッチ1本だけ残していた。
彼は「地球に帰ってからマッチ2500箱と交換する」という条件を提示する。
この星には海はない。
全て燃料に使ってしまったのだという。
ゲデヴァンがトイレに行きたいと告げると、「現金を置いて行け」と言われる。
トイレでは、水の代わりに砂が流れる。
この星では、カツェ(=マッチ)の所有者は黄色ステテコの着用を許され、パッツ人から2度のお辞儀を受けられる。
カツェの大量所有者は赤色ステテコの着用を許されるという。
ゲデヴァンが戻って来ない。
「学生は緊急脱出装置で放出した。あいつは不要だ」というチャトル人。
「戻れ! 火を点けるぞ!」とウラジーミル。
戻って着地してみるが、ゲデヴァンはいない。
「エツィロップ(権力者、警察官)に捕まったんだろう」とチャトル人。
そこへ、卵形の乗り物が飛んで来る。
中からエツィロップが出て来る。
偉そうである。
ウラジーミルが「青年を知らないか?」と訊いたが、その態度が無礼だったのか、怒って行ってしまう。
ウラジーミルが最後のマッチでタバコに火を点けると、もう用がなくなったのか、チャトル人とパッツ人も行ってしまった。
ゲデヴァンのバイオリンとカバンを置いて。
知らない星の砂漠の中で一人になってしまい、途方に暮れるウラジーミル。
しかし、この後、砂の中からゲデヴァンが出て来て、再会。
二人は、砂漠を走る下層階級の若い女が運転する車に乗せてもらうが、やはりだまされて置いて行かれる。
ゲデヴァンは、数年後に地球へ戻り、先生に宇宙をさまよっていたことを報告するが、全く信用されないという夢を見る。
ここまでが第1部。
さあ、これからどうなる。
こうしてあらすじを文章で書いても、この作品の雰囲気は伝わらない。
ヘンな映画だが、面白い。
製作から30年以上経っても、カルト的人気を博しているのも分かる。
細君は、「『スター・ウォーズ』よりこっちの方が、よっぽどちゃんとした映画だ」と言っていた。
ウィキペディアによると、本作は「ディストピア映画」だという。
確かに、『ガリヴァー旅行記』のような雰囲気があるな。
旧ソ連を風刺しているらしい。
まあ、本作の公開後、ほんの数年でそのソ連は崩壊してしまうのだが。

Kin Dza Dza Movie Trailer