『断崖』

連休中は、ブルーレイで『断崖』を見た。

断崖 Blu-ray

断崖 Blu-ray

  • 出版社/メーカー: IVC,Ltd.(VC)(D)
  • 発売日: 2019/11/29
  • メディア: Blu-ray
1941年のアメリカ映画。
監督は、『レベッカ』『逃走迷路』『疑惑の影』『白い恐怖』『ロープ』『見知らぬ乗客』『私は告白する』『裏窓』『泥棒成金』『ハリーの災難』『知りすぎていた男』『間違えられた男』『めまい』『北北西に進路を取れ』『サイコ』『鳥』『マーニー』『引き裂かれたカーテン』『トパーズ』『フレンジー』『ファミリー・プロット』の巨匠アルフレッド・ヒッチコック
製作は、『キング・コング(1933)』『風と共に去りぬ』『レベッカ』『白い恐怖』『第三の男』の大プロデューサー、デヴィッド・O・セルズニック
脚本は、『疑惑の影』のアルマ・レヴィルと、『レベッカ』『逃走迷路』のジョーン・ハリソン。
音楽は、『フランケンシュタインの花嫁』『レベッカ』『サンセット大通り』『裏窓』の巨匠フランツ・ワックスマン
撮影は、『イースター・パレード』『マイ・フェア・レディ』のハリー・ストラドリング。
主演は、『レベッカ』のジョーン・フォンティンと、『赤ちゃん教育』『泥棒成金』『めぐり逢い』『北北西に進路を取れ』『シャレード』の大スター、ケーリー・グラント
共演は、『ロープ』『十戒』のセドリック・ハードウィック、『レベッカ』のナイジェル・ブルース、『レベッカ』『白い恐怖』『見知らぬ乗客』『北北西に進路を取れ』のレオ・G・キャロル
モノクロ、スタンダード・サイズ。
穏やかなテーマ曲。
列車のコンパートメントで、ハンサムだがちゃらんぽらんな性格のジョニー(ケーリー・グラント)と、美人だが内気で野暮ったいリナ(ジョーン・フォンティン)が同席している。
リナは『幼児心理学』の本を読んでいる。
車掌が検札に来る。
リナはヘゼルディーニ行きの1等の切符を持っている。
ジョニーはヘゼルディーニ行きの3等の切符しか持っていない。
車掌から差額を払うように言われるが、所持金が足りない。
見ず知らずのリナから切手をもらって、差額分だと言って車掌に渡した。
もう、これだけでロクでもない男だということが分かる。
カネがないクセに、偉そうなスーツを着ている。
僕も学生の頃、分不相応にラルフ・ローレンでオーダー・スーツを作ったりして、カード破産寸前にまで行ったことがある。
リナが新聞に目を落とすと、目の前の男性(ジョニー)が上流階級の婦人と一緒に写っている。
彼は社交界の有名人であった。
で、目的地に着いた。
ジョニーは、上流階級の婦人達から記念撮影を求められる。
しかし、彼の目を引いたのは、男勝りに馬を乗りこなすリナであった。
周りの女性達に彼女のことを尋ねるジョニー。
彼女がお嬢様だと聞いて、「紹介して」と頼む。
彼女の父親はマクレイドロウ将軍で、大きな屋敷に住んでいた。
ジョニーは女性達とリナの家を訪ねる。
ジョニーが何気なくリナの本を手に取ると、中に例の新聞の自分の写真が挟まっていた。
皆で教会に行くことになったが、途中でジョニーはリナに、「二人で散歩しよう」と持ち掛ける。
軟派なジョニーは彼女を口説こうとするが、ガードは固い。
しかし、彼女が家に帰ると、両親が「娘は結婚するタイプじゃない」と話しているのが聞こえた。
そこへ、ジョニーが現れる。
リナは、とっさにジョニーに自分からキスをする。
食卓で、リナは両親に「ジョニー・アイガースを知っているか?」と尋ねると、二人とも眉をひそめる。
父親(マクレイドロウ将軍)は、「バクチでイカサマ、その上、女たらしで、ロクでもない」と言う。
しかし、リナは彼と3時に会う約束をしていた。
そこへ、ジョニーから電話が掛かって来る。
ところが、その後、幾らリナがジョニーに連絡しようとしても、一向に連絡が取れない。
木曜の夜7時には、マクレイドロウ将軍主催の狩猟会パーティーがあった。
しかし、ジョニーと連絡が取れないので、リナはそんなパーティーに行く気など全く起きなかった。
そこへ、ジョニーから「パーティーで会おう」という電報が届く。
一転、彼女は肩を出した大胆なドレスを着て、パーティーに飛んで行く。
ところが、会場に着いても、ジョニーはいない。
それもそのはず、彼はマクレイドロウ将軍から招待されていないので、会場に入れるはずがないのであった。
しかしながら、リナが飛んで来たので、彼はまんまと会場に入り、彼女と踊るのであった。
ジョニーはリナを外へ連れ出し、彼女の車でドライブする。
車内でキスする二人。
「女はたくさんいるが、君にはいちばんふさわしい」と調子のいいことを言うジョニー。
リナの家の前で車を停め、書斎でキスする二人。
クレイドロウ将軍の大きな肖像画が飾られている。
まるでジョニーを睨んでいるように見える。
「僕には信用がない」と嘆くジョニー。
リナは、父親の肖像画に向かって、「彼を愛しています」と告げる。
翌日、父親は怒っていて、家の中の雰囲気は大変気まずかった。
リナは用事で出掛けると言って、そのまま婚姻登録所へ行き、ジョニーと結婚してしまう。
ナポリモンテカルロ、パリ、イングランドと、二人は新婚旅行であちこちを回った。
そして、新居へ。
素晴らしく立派な新居で、お手伝いの女性も雇っていた。
リナはお金のことが心配であったが、その話しになると、ジョニーははぐらかす。
実は、ジョニーは新婚旅行のために、友人に1000ポンドの借金をしていた。
ドルじゃないから、ここはイギリスだな。
1000ポンドが現在の日本円で幾ら位なのか分からないが、1000万円くらいなのかな。
そして、ジョニーは文無しであった。
リナは、ジョニーが自分の持参金を目当てにしていたことを知って、愕然とする。
しかし、ジョニーは「ボロ家には住めない」などと、全く意に介さない。
駆け落ち同然で家を飛び出して来たリナが、両親にカネの無心など出来る訳がない。
ジョニーは、「どうしようもなくなれば、また借りるさ。」
こいつは、こういう生き方で世の中を渡って来たのだろう。
まあ、人間のクズだ。
こんな男に惚れてしまったリナも、見る目がなかったということだが、ちょっと可哀想だ。
この先、ずっと彼女は可哀想なままなのだが。
リナはジョニーに、「借金はもうダメ。働くの」と告げる。
「働く?」何を言い出すんだというような目で彼女を見るジョニー。
そこへ、彼女の母親から電話が掛かって来る。
父が結婚祝いをくれるという。
勘当されたのか思っていたリナは、大変喜ぶが、ジョニーは「お金のことも頼んでくれ」などと横から口を挟む。
「よくそんなことを!」
そこへ、結婚祝いが届く。
彼女が実家で大切に使っていたアンティークの椅子が2脚。
彼女は涙を浮かべて喜ぶが、ジョニーは露骨に「椅子なんか要らん」という顔をしている。
ジョニーは、従兄弟で不動産業を営んでいるメルベック(レオ・G・キャロル)の仕事を手伝うことにした。
が、彼女には「この椅子以上の物がもらえると思っていた」などと告げる。
ヒドイね。
そこへ、ジョニーの親友ビーキー(ナイジェル・ブルース)が訪ねて来る。
彼は、口が滑って、ジョニーが結婚した後も競馬場に入り浸っていることを話してしまう。
しかも、例の椅子がなくなっていた。
「競馬のカネのために美術商に売り飛ばしたんだ」とビーキー。
にわかには信じられないリナに、「あいつが賭け事を止める訳がない」と追い討ちを掛けるビーキー。
「結婚してから止めたはず。」
「あいつに椅子のことを聞いてごらん。信じられないようなウソをつくから。」
ああ、いるよね、こういう口から出まかせで生きているようなヤツ。
だが、ビーキーは、ジョニーはそういうヤツだと分かって付き合っているから、いちいち腹も立たないのであった。
案の定、リナがジョニーに問い質すと、「椅子はアメリカ人が持って行った。メルベックの友人。1脚100ポンドで。」
それを聞いたビーキーは、「メルベックはアメリカ人を知らないに10ポンド賭ける」と言う。
で、それはさておき、ビーキーは「1週間、ここに泊めてくれ」と言う。
次の日、買い物に出掛けたリナは、骨董屋の店先に、例の椅子が売られているのを発見する。
彼女は、ビーキーの言うことを信じなかったことを詫びる。
そこへ、ジョニーが、リナへのプレゼントとしてネックレス、毛皮のコート、帽子、更に、ビーキーには高級なステッキ、お手伝いの女性にも毛皮のマフラーなどを大量に抱えて帰って来る。
更に、ワンコまで連れている。
競馬で200ポンドが10倍になったのだと。
しかも、元手は例の椅子を売った代金だ。
「ノミ屋に借金があったが、200ポンドで帳消しにしてもらい、新たな情報を得た」と、全く悪びれる素振りすら見せないジョニー。
本当に人間のクズだな。
どんな神経なら、こんな生き方が出来るのか知らんが。
見ていて、イライラする。
もちろん、リナは怒るが、ジョニーは椅子も取り返して来たと言う。
彼女は一転、喜ぶ。
結局、このクソ野郎を甘やかすからいけないんだが。
彼女が甘いんだ。
で、酒を開けてパーティーを開く。
「最後の賭け事に乾杯!」などと、いけしゃあしゃあと言うジョニー。
が、ビーキーは酒が弱いようで、ブランデー一口で発作を起こす。
友人が苦しんでいても、何故か冷淡なジョニー。
翌日、ジョニーの友人の女性から「火曜日に競馬場でジョニーを見掛けたけど、休みだったのかしら」と聞かされ、不安になってメルベックの不動産屋を訪ねたリナ。
メルベックは、リナの顔を見るや、「告訴は止めにしました」と告げる。
リナには何のことか分からない。
聞くと、メルベックはジョニーを6週間前に解雇したという。
信じられないリナ。
帳簿を調べたら2000ポンド不足しているという。
返済さえしてもらえれば、告訴はしないという。
ショックを受けるリナ。
競馬で勝ったということすらウソであった。
「もう二度と会いません」という置き手紙をして出て行こうとするリナ。
しかし、結局、勇気が持てず、書いた手紙を破り捨てる。
彼女が優柔不断なんだよ。
そこへ、ケリーが戻って来る。
何と、リナの父親であるマクレイドロウ将軍が亡くなったという電報が届いたという。
さあ、これからどうなる?
この後、二人は実家に帰るが、駆け落ち同然で胡散臭い男と結婚したリナには、ロクな財産が遺されなかった。
金策に困ったジョニーが、彼女の保険金に目を付け、彼女は自分が殺されるのではないかという恐怖に駆られる。
展開は非常にスピーディで、後半は、正にヒッチコック調のサスペンスになる。
ただ、ラストが大いに問題だ。
本作の結末には、ヒッチコックも納得していないという。
映画会社からの要請や、検閲の問題などが絡んでいるらしい。
なるほど。
大変な時代だったんだな。
それを聞いて納得したのだが、とにかく、結末は、それまでのサスペンスを全て引っくり返してしまうものだった。
その点が残念。
アカデミー賞主演女優賞(ジョーン・フォンティン)受賞。

Suspicion (1941) Official Trailer - Cary Grant, Joan Fontaine Movie HD