『逃亡者』(1947)

連休中は、ブルーレイで『逃亡者』を見た。

逃亡者 Blu-ray

逃亡者 Blu-ray

  • 発売日: 2019/11/29
  • メディア: Blu-ray
1947年のアメリカ映画。
監督は、『怒りの葡萄』『わが谷は緑なりき』『荒野の決闘』『アパッチ砦』『黄色いリボン』『幌馬車』『西部開拓史』の巨匠ジョン・フォード
原作は、『第三の男』のグレアム・グリーン
製作は、『キングコング』『アパッチ砦』『黄色いリボン』『幌馬車』のメリアン・C・クーパー。
主演は、『怒りの葡萄』『荒野の決闘』『アパッチ砦』『戦争と平和(1956)』『間違えられた男』『十二人の怒れる男』『史上最大の作戦』『西部開拓史』『ウエスタン』の大スター、ヘンリー・フォンダ
共演は、『怒りの葡萄』『荒野の決闘』『アパッチ砦』『幌馬車』『静かなる男』のワード・ボンド、『アパッチ砦』『007 ロシアより愛をこめて』のペドロ・アルメンダリス。
モノクロ、スタンダード・サイズ。
不安げなテーマ音楽。
「この映画が描くのは時代を越えた真実の物語だ。起源は古く聖書の中で初めて語られ、その普遍的テーマゆえ今も世界中で演じられている。全編をメキシコで撮影したこの映画はメキシコの政府と映画界から招致を受け、実現した。舞台となるのは架空の小さな国だ。赤道の北か南かさえよく分からない」というナレーション。
架空の小さな国と言っているが、実際はメキシコらしい。
馬に乗って一本道を行く司祭(ヘンリー・フォンダ)。
廃墟の教会へ。
中に入り、ひざまずく。
無人かと思いきや、中に赤ん坊を抱いた一人の女性(ドロレス・デル・リオ)がいる。
女性「誰? なぜここへ?」
司祭「私の家だから。」
女性「いいえ。」
司祭「追われる身だ。私は司祭だ。ここは我が教会。」
この国では、革命で、宗教が禁止されているのだ。
女性の名はマリア・ドロレス。
夫はいないという。
彼女は、「娘(赤ん坊)に洗礼名をお与え下さい」と司祭に頼む。
「洗礼前の子を持つ親を集めなさい。私が集めよう」と、教会の鐘を鳴らす司祭。
人々が集まって来る。
司祭は、洗礼の儀式を行う。
一方、プエルト・グランデの港に船が到着する。
札束と銃を持った男が下りて来る。
町には、お尋ね者「グリンゴ」のポスターが貼られている。
罪状は殺人と窃盗。
この男こそ、グリンゴその人であった。
官憲がゾロゾロといる。
一般市民が集められている。
副官(ペドロ・アルメンダリス)が飲酒の罰金として5ペソを徴収しようとする。
この国では、禁酒法で酒が禁止されている。
こんな国では生きて行けない。
罰金を払えない者は拘禁60日。
何という国だ。
署長が副官にある神父を捕まえるように求める。
副官は、「最後の神父は半年前に銃殺した」という。
署長によると、今回の神父はかくまわれているという。
署長は副官に写真を渡した。
副官は、「村から人質を取り、神父を教えなければ、人質を殺す。捕まえるまで何人でも」と恐ろしいことを言う。
一体、人の命を何だと思っているのか。
幾ら任務とは言え、神父を殺すことがそんなにも重要なことなのか。
ジョン・フォードは熱心なカトリック教徒なので、この映画には特別の思い入れがあるらしい。
僕は完全な無神論者だが、宗教を禁止しようとまでは思わない。
そんなの、個人の勝手だ。
で、司祭は早くも村人に融け込んでいる。
そこへ、副官を筆頭に官憲が馬で乗り込んで来て、村を蹂躙する。
まるで、『七人の侍』の野武士の来襲みたいだ。
やっぱり、ジョン・フォードはクロサワの師匠なんだな。
で、副官は教会を発見して、高らかに笑う。
中から赤ん坊の泣き声がする。
入ってみると、マリアがいる。
実は、副官はマリアの元夫であった。
ここが原作とは違う点で、グレアム・グリーンはこの改変に激怒したらしい。
副官は、任務があって戻れなかったとマリアに言い訳をする。
マリアは現在、酒場で働いているのであった。
しかし、このブルーレイ・ソフトは画質が悪いな。
フィルムの傷やゆがみがそのままだ。
で、官憲は広場に村民を集めている。
副官が、村長に神父の居場所を尋ねる。
副官は、教会の祭壇にろうそくの燃えかすと聖水があったと告げる。
村人ひとりひとりに尋問する副官。
「言えば1000ペソやる。言わなければ人質を取り、見せしめに殺す!」
だが、誰も名乗り出ない。
副官は、村長を人質として首に縄を掛ける。
司祭は「私を人質に」と志願するが、副官は誰だか気付かず、却下する。
司祭は、「私は去った方がいい。プエルト・グランデへ行き、ラバを売り、船で出国する」と言って、去る。
川辺で、お尋ね者のポスターが貼ってあるのを見付ける。
傍に賞金稼ぎの乞食みたいな男がいる。
「警察が来たのか?」と尋ねる司祭を見て、賞金稼ぎは直感する。
実は、この賞金稼ぎは司祭の指名手配のポスターも持っているのであった。
もう、この賞金稼ぎが実に粘着質のいやらしいヤツで。
嫌悪感を抱かせる役者の演技がスゴイ。
で、賞金稼ぎは走ってラバの司祭を追い掛けて来る。
「俺を案内役に雇え」と司祭に言う。
賞金稼ぎは、ぜいたく品であるろうそくを持っている司祭を、金持ちだと目を付けたのだ。
司祭はこいつを怪しむ。
司祭が寝ているスキに、司祭のカバンを開ける賞金稼ぎ。
聖杯が入っている。
ミサ用のワインを一気飲みする賞金稼ぎ。
司祭が目覚める。
賞金稼ぎは、司祭の正体を既に知っている。
一目散に逃げる司祭。
翌朝、司祭はプエルト・グランデに着いた。
3等の切符を買い、船に乗り込もうとしたその時、「神父様」と少年に声を掛けられる。
司祭に洗礼を授けてもらったという少年であった。
「母が死にそうなんです」と訴える少年。
司祭が乗れないまま、船は出て行った。
司祭は村に戻る。
しかし、少年の母親は亡くなってしまった。
親族一同が集まって、葬式を開く。
だが、ワインがない(賞金稼ぎが飲んでしまった)ため、司祭はミサが出来ない。
禁酒令のため、酒を入手するのは困難だ。
司祭は、少年と共にヤミ市へ。
怪しい仲介人にカネを払い、「ホテル・スプレンディッド」へ連れて行かれる。
2階に、これまた明らかに怪しい売人がいる。
ブランデーはあるが、ワインはないという。
司祭は自分の身分を明かせない。
でも、ブランデーではなく、ワインが必要だと主張する。
売人が、奥から署長のために取って置いたというワインを持って来る。
売人もワインを飲むのは久し振りなので、何と、この場で空けようということになった。
気の弱い司祭は、この場から立ち去れない。
見ていると、何とももどかしい。
しかも、そこに署長がやって来る。
闇の取り引きは署長公認であった。
署長と売人と仲介者でワインは空けられてしまい、司祭は無理矢理ブランデーを飲まされ、残りの瓶を持たされる。
フラフラになりながら、ようやくこの場を後にすると、ホテルの目の前に待ち構えていた官憲に捕まる。
今なら、覚醒剤でも持っているような感じなんだろうな。
司祭は留置場へ送られてしまう。
さあ、これからどうなる?
主役の司祭を筆頭に、登場人物達はほとんど名前も明かされない。
余計な感情移入は廃し、物語は淡々と進む。
それでも、かえって司祭の神々しさが浮び上がって来る。
数奇な運命を全うした司祭。
スゴイ宗教映画だ。
原作では、司祭はもっと欲にまみれて人間臭かったというが。
この映画は、これで非常に完成度の高い作品だと思う。
無神論者の僕でも思うのだから、間違いない。
ヴェネツィア国際映画祭国際賞・国際カトリック映画事務局賞受賞。

The Fugitive (Preview Clip)