『舞踏会の手帖』

この週末は、ブルーレイで『舞踏会の手帖』を見た。

1937年のフランス映画。
有名な映画なので、タイトルだけは知っていたが、恥ずかしながら未見だった。
監督は、『我等の仲間』『旅路の果て』の巨匠ジュリアン・デュヴィヴィエ
音楽は、『我等の仲間』『北ホテル』のモーリス・ジョベール。
主演はマリー・ベル。
モノクロ、スタンダード・サイズ。
優雅な音楽から始まる。
イタリアの湖畔。
旦那が亡くなり、喪服姿の未亡人クリスティーヌ(マリー・ベル)。
彼女は夫を愛していなかった。
自分のことを「恋を知らない女」と言う。
彼女はどこかへ旅に出ようと思った。
夫の形見を全て召し使い達に与え、思い出の品を炉に投じた。
持ち物の中から、「舞踏会の手帖」が出て来る。
20年前の1919年、16歳の時に参加した舞踏会で踊った10人の男性の名前が書き連ねてある。
彼女は、その舞踏会の様子を思い出した。
金髪で、ギリシア神話に登場する神のように美しく、彼女が秘かに愛を感じたジェラール。
亡き夫の秘書であったブレモンに頼んで、その10人の住所を調べてもらうと、その内の二人は既に他界していた。
現代の感覚だと、どうしてこれで住所が調べられるのかが分からないが。
個人情報の保護なんていう観念はなかった時代だ。
そして、ジェラールの住所だけが分からない。
彼女は、その男性達を訪ねて回ろうと決意する。
これはどうなんだろう。
確かに、34歳で未亡人になったというのは気の毒だが、昔の男を訪ねようっていうのは、女性に一般的なのだろうか。
そうではないような気がする。
まあ、それを言ってしまうと、この話しは成り立たない。
一人目はジョルジュ。
応対したばあやは、「ジョルジュさんはお亡くなりになりました」と言うが、ジョルジュの母親(フランソワーズ・ロゼー)が出て来て、それを覆す。
しかし、すぐに、この母親が狂っていると判る。
ジョルジュは、クリスティーヌにフラれたショックでピストル自殺したのだ。
母親の中では、20年前で時が止まっている。
クリスティーヌは20年前、大金持ちと婚約して、イタリアの古城に移り住んだ。
それが死んだ旦那なのだが。
それ以来、ジョルジュは引きこもってしまったという。
母親は、クリスティーヌのことを、クリスティーヌの母親だと思っている。
彼女の中では、クリスティーヌも、20年前で止まっている。
「息子はもうすぐ24歳」なんて平気で言う。
息子の葬式の招待状が大量に残っている。
クリスティーヌは、だんだん怖くなって来る。
要するに、母親は息子の自殺のショックで狂ってしまったのだ。
結局、「帰って!」とクリスティーヌは追い返される。
まあ、人生において、好きな女性にフラれるなんていうのはよくあることで、そんなことで死んでいたら、命が幾つあっても足りない。
二人目は、文学少年だったピエール(ルイ・ジューヴェ)。
彼はかつて、ヴェルレーヌの詩を暗唱していた。
今ではジョーと名を変えて、キャバレーを経営していた。
しかし、裏では、客として訪れた男爵の殺害を画策するなど、犯罪集団のボスでもあった。
クリスティーヌが店を訪ね、店員に、ヴェルレーヌの詩の一節をピエールに伝えるように告げる。
ピエールはすぐに、彼女が誰だか分かった。
この店では、トップレスのダンサーが踊っている。
この時代に、トップレスの女性が出演しているというのは驚きだ。
で、最初、ピエールはクリスティーヌがカネに困って自分を訪ねて来たのだと勘違いし、この店で働かせ、客をあてがおうとする。
「わたしはジョーではなくピエールに会いに来た」と彼女に言われ、ようやく誤解が解ける。
ピエールは一度、弁護士にもなったが、犯罪に手を染め、3年間、刑務所に入る。
出所後、今の店を開いた。
「あなたは変わったわ。」
昔話しに時が過ぎ去るのを忘れたピエールは、逃げるタイミングを逃し、踏み込んで来た官憲に連行される。
ああ、何ということだ。
続いて、修道院へ。
少年聖歌隊を指導する神父ドミニクがいる。
少年に「ラテン語で歌える?」なんて尋ねる。
彼は、気の毒な境遇の少年に聖歌を教えているのだ。
合唱の練習中に、クリスティーヌが訪ねて来る。
彼女はアランの消息を尋ねる。
そのアランこそが、今は神父のドミニクなのであった。
それにしても、どうしてみんな、こうも訳アリかねえ。
主は、昔のことは忘れよと言ったという。
かつてアランは新進の音楽家であった。
苦悩と信仰から修道院へやって来たという。
アランは昔、舞踏会である令嬢と出会った。
彼は、「希望の日のソナタ」という愛の曲を弾いた。
しかし、令嬢は聴いていなかった。
隣席の男と談笑していた。
アランは、「年齢が違い過ぎたのだ」と諦める。
その後、息子が死んだ(この息子がどこから来たのかの説明はない)。
失意のどん底の時、主が現われ、「他人様の子を育てよ」と告げる。
ドミニクはクリスティーヌに、「令嬢は今も私の心の中に生きている、昔のまま」と。
クリスティーヌは静かに立ち去る。
さあ、これからどうなる?
こんな調子で、7人の過去の男が登場するが、ことごとくロクでもない。
最後はキレイにオチが着く。
映画としてはまとまっている。
クリスティーヌの自己顕示欲には男として腹が立つが、ラストがうまく行ったので、映画として評価されているのかも知れない。
まあ、人間模様を描いた作品としてはいいのか。
ヴェネツィア国際映画祭外国映画大賞受賞。

A Dream Sequence from UN CARNET DE BAL