『ほら男爵の冒険』(1961)

この週末は、ブルーレイで『ほら男爵の冒険』を見た。

1961年のチェコスロバキア映画。
監督は、『悪魔の発明』のカレル・ゼマン
音楽は、『悪魔の発明』のズデニェク・リシュカ。
主演はミロシュ・コペツキー。
知らなかったが、テリー・ギリアムの『バロン』(恥ずかしながら未見)も、本作と同じ原作なんだな。
本作も、『悪魔の発明』と同様、実写なのか、絵なのか分からない映像が特徴だが、テリー・ギリアムも影響を受けているのかも知れない。
カラー、スタンダード・サイズ。
穏やかなテーマ曲。
嵐。
雨が止むと地面に足跡。
空を見上げる。
ロケットが月へ。
宇宙飛行士のトニークが月面に到着したが、先に足跡がある。
まるで、『2001年宇宙の旅』を思わせるような鮮やかなシーンの省略である。
足跡の傍には手袋が落ちている。
蓄音機もある。
小屋(?)の入り口には、「『地球より月へ』1865年、ジュール・ベルヌ」とある。
で、何故かシラノ・ド・ベルジュラックがいる。
更に、大砲クラブ会長バービカン、ニコール船長、ミシェル・アルダンの3人もいる。
ただ、彼らは特に主筋には絡まない。
宇宙服もヘルメットも着けていない。
彼らが言うには、月では何世紀も(他の人との)出会いがなかったと。
そこへ、ミュンヒハウゼン男爵が馬で登場する。
(名前から分かるように)彼らは地球から来た。
そして、トニークのことを月の人だと勘違いしている。
彼らはシャンパンで乾杯する。
トニークは、ヘルメットを着けているので、シャンパンが飲めない。
「我々の故郷、地球へ!」
彼らが乗った船は、数頭のペガサスがぶら下げて飛ぶものであった。
トニークが普通の服に着替えると、「着替えてみると、人間に似ているなあ」と言われる。
当たり前だ、人間なのだから。
船の横を、ほうきに乗った魔女が飛んで行く。
船はトルコに着く。
男爵によると、ここは「冒険の土地」らしい。
これから国王に謁見するという。
画面は、いつの間にかセピア調のモノクロになっている。
男爵が王に対して、暗号のような言葉を話している。
トニークが王に近付くと、槍が飛び出して来る。
続いて、王が消えて大砲が飛び出して来る。
この場面に何の意味があるかは分からない。
本作は全編を通して、ナンセンスな場面が散りばめられている。
終始、こんな調子だ。
ちょっと『ガリヴァー旅行記』の第三部に似ているかも。
今度は、2階の窓から、王女らしき美しく若い女性がトニークに微笑みかける。
彼女が言うには、「船が難破した後、国王に捕まった。助けて!」
彼女はビアンカ姫という。
男爵は「誘拐しろ」とトニークに言う。
夜になった。
男爵とトニークは城へ侵入する。
見張りが呑気にチェスをやっている。
男爵は見張りと闘う。
それを皮切りに、多数の兵士がやって来て、それらとも闘うハメに。
一方、トニークは、銅鑼を鳴らす係のいかつい男を(運良く)倒す。
そこへ、ビアンカ姫がやって来る。
トニークは姫と抱き合う。
一方、男爵は大量の兵士を倒した。
1万人だとか。
「月の友人も立派なものだ。初心者にしては。彼は見事に姫を射止めた」と男爵。
トニークと姫はキスをする。
しかし、ミュンヒハウゼン男爵が登場すれば、恋の行方は分からない。
城の中で閉じられた扉が開かない。
トニークにも男爵にも。
しかし、姫は開け方を知っていた。
3人は城の外へ。
つないであった馬を奪って逃げる。
追っ手が来る。
本作は、まるでサイレント映画のようにセリフが少ない。
要所要所で、男爵のナレーションが入る。
男爵は怖いものナシであった。
ヴェネチアのバラが月に恋をした」と、姫とトニークのことをたとえる。
姫は男爵が狙っていた。
3人に対する追跡劇は三日も続いた。
橋の壊れた谷を馬で跳び越える3人。
しかし、追っ手の馬は怖がって跳べない。
落ちた馬は、ワシのえさになった。
3人は尚も進むが、断崖にぶつかる。
その先は海だ。
遥か洋上に船が見える。
オランダの商船だ。
助けを求める3人。
男爵が、気付いてもらえるように、馬ごと海に飛び込む。
続いて、トニークと姫も。
商船の船長は、女性がいるので助ける。
船はタバコ商船であった。
ワインとタバコで3人を歓待する船長。
ところが、逃げた姫を追って、トルコ艦隊がズラリと商船を囲った。
商船に一斉に大砲が向けられる。
船員全員でタバコを吸い、煙で船を隠そうとする。
余計に目立つだけだ。
艦隊は一斉に大砲を放つ。
しかし、大砲の弾が飛び過ぎて、左右の艦隊同士で撃ち合う形になってしまった。
トルコ軍の同士討ち。
が、我々の船も沈んだ。
商船の船員たちは2隻の救命艇で避難する。
1隻にはトニークが、もう1隻には男爵と姫が乗った。
男爵は、「願ってもない機会だ」といきり立つ。
男爵は、若い頃から名うてのプレイボーイであった。
さあ、これからどうなる?
本作が描くのは、魔法が支配する非常に不思議な世界だ。
この後、男爵達の救命艇は、巨大な魚の胃袋に飲み込まれる。
何だろう、この感覚は。

Karel Zeman: The Fabulous Baron Munchausen - TRAILER of the digitally restored film