『2010年』

この週末は、ブルーレイで『2010年』を見た。

2010年 [Blu-ray]

2010年 [Blu-ray]

  • 発売日: 2010/04/21
  • メディア: Blu-ray
1984年のアメリカ映画。
監督はピーター・ハイアムズ
原作は、『2001年宇宙の旅』の巨匠アーサー・C・クラーク
音楽は、『カンバセーション…盗聴…』『大統領の陰謀』『サタデー・ナイト・フィーバー』のデイヴィッド・シャイア
SFXスーパーバイザーは、『スター・ウォーズ』の巨匠リチャード・エドランド
ビジュアル・フュ―チャリストは、『スタートレック』の巨匠シド・ミード
僕は小学生の頃、SFXに大変興味があり、技術の本を熟読していた。
リチャード・エドランドシド・ミードは、その手の本で何度も目にした名前で、懐かしくて涙が出る。
主演は、『フレンチ・コネクション』『ジョーズ』『マラソンマン』『ジョーズ2』の大スター、ロイ・シャイダー
共演は、『愛と追憶の日々』のジョン・リスゴー、『真夜中のカーボーイ』『未知との遭遇』のボブ・バラバン、『2001年宇宙の旅』のキア・デュリア、『2001年宇宙の旅』のダグラス・レイン
僕は以前も書いたが、『2001年宇宙の旅』を映画史上の最高傑作だと思っている。
僕が小学6年生の時、『2001年』を大好きなK先生が脚本を書いた人類の進化をテーマにした芝居で、猿人の役を演じた。
K先生が「『スター・ウォーズ』みたいな見世物映画はつまらん。『2001年』こそ本物だ」と言うので、その影響で『2001年』に興味を持った。
ちょうどその頃、『2010年』が公開されたので、映画館に朝からパンとコーヒー牛乳を持って行き、3回観た。
もちろん、パンフレットも買って熟読した。
今回は、その時以来、約35年振りの鑑賞である。
で、話しを戻すと、ちょうど『2010年』が公開されたタイミングで、『キューブリック2001年宇宙の旅』という本が再販され、これを読んで、キューブリックに興味を持った。
さらに、その頃、自宅の最寄り駅の駅前のスーパーの家電売り場で、レーザーディスクのデモ上映で、『2001年宇宙の旅』を流していたので、学校帰りに寄って、何十回も見た。
この家電売り場の担当の兄ちゃんが、SFや特撮が大好きな人だったので、僕みたいなクソガキの相手をよくしてくれた。
ジョーズ』や東宝特撮の予告編集なんかも、この店で繰り返し見た。
中学時代は、アーサー・C・クラークにハマり、色んな作品を読んだが、中学生では、多分なかなか理解出来ていないだろう。
『2001年』の原作は、難解な映画版のガイドブックとして、何度も熟読した。
と言う訳で、『2010年』は、僕にとって思い出深い作品である。
キューブリックは、この続編に全く興味がなかった。
当時も感じたことだが、『2001年』の映画は、哲学的なテーマを見事に表現して、映画史に残る名作となったが、『2010年』は、SF映画としてはよく出来ているが、キューブリックの才能には、残念ながら足元にも及んでいない。
それから、現実の世界の出来事を多く描いているので、2010年をとっくに過ぎた現在、見返してみると、ソ連は崩壊しているし、パソコンの画面はブラウン管だし、色々と古臭い面が目に付く。
そんな訳で、残念ながら、『2001年』のように時代を超越した作品にはならなかった。
『2001年』にはスター俳優が出ていなかったので、多分、映画会社の興行上の理由で、本作の主演にはロイ・シャイダーというスターが起用された。
他にも、ヘレン・ミレンを初め、名のある役者が出ている。
『2001年』の象徴であるHAL9000の声には前作と同じダグラス・レイン、ボーマン船長にはキア・デュリアが起用されたので、前作との連続性は感じられる。
テーマ曲も、リヒャルト・シュトラウスの『ツァラトゥストラはかく語りき』が使われている。
しかし、多くの人が感じるように、やはり『2001年』とは別物である。
ただ、アーサー・C・クラークの世界観には忠実なような気がする。
メトロ・ゴールドウィン・メイヤー
カラー、シネスコ・サイズ。
まず最初に、『2001年宇宙の旅』の概略が、ヘイウッド・フロイド博士(ロイ・シャイダー)の報告書の形で示される。
デビッド・ボーマン船長(キア・デュリア)が最後に残した言葉は、「My God, it's full of stars!」ということになっているが、これは前作には出て来ない。
ツァラトゥストラはかく語りき』が流れる。
パラボラ・アンテナの行列。
かつてアメリカ合衆国宇宙評議会の代表だったフロイドは、ディスカバリー計画の失敗の責任を取り、ハワイ大学の学長になっていた。
そこへ、ソ連の宇宙船アレクセイ・レオノフ号に同乗して、再度調査のために木星に向かうという話しが出て来る。
ソ連は、ディスカバリー号モノリスについて、何のデータもない。
フロイドが、現在木星の衛星イオの軌道上にあるディスカバリー号の軌道を計算すると、あと2年でイオに引き寄せられて、衝突するということが分かった。
アメリカはディスカバリー2号を飛ばす計画になっているが、レオノフ号の方が1年も早く木星に到着する。
米ソの関係が悪化しており、フロイドの公認の宇宙評議会会長が大統領にうまく話しをしたらしく、フロイドは木星へ向かうことになった。
で、ディスカバリー号の設計者ウォルター・カーナウ博士(ジョン・リスゴー)と、HAL9000の開発者R・チャンドラ博士(ボブ・バラバン)と共に、レオノフ号に乗ることになった。
フロイドの家には、何故かイルカがいる。
奥さんは海洋生物学者らしい。
幼い息子が一人いるが、『2001年』に出て来たのは娘だったが。
と思ったら、前の奥さんとは死別して、再婚したという話しが、後の方に出て来る。
『2001年』には、そんな人間臭い話しは一切出て来なかった。
で、フロイドが木星に行くと告げると、奥さんはショックを受ける。
で、レオノフ号に乗り、人口冬眠から目覚めたフロイドは、ソ連のクルーから「エウロパからのデータによると、何かがいる」という話しを聞かされる。
ターニャ・カーバック船長(ヘレン・ミレン)は軍人。
ちなみに、ソ連の宇宙船なのに、何故か皆、英語を話す。
エウロパに探査機を飛ばすことになった。
驚いたことに、酸素や葉緑素などの有機体が存在している。
探査機がクレーターの中に近付くと、巨大な火の玉のようなものが飛び出した。
探査機は破壊され、何故か調査のデータも全て消えてしまう。
これについて、フロイドは「何らかの警告だ」と言う。
イオの軌道へ向かうために、木星の大気圏に突入する。
大気ブレーキというものを使う。
高熱と震動に包まれるレオノフ号。
さて、カーナウ博士とチャンドラ博士も人口冬眠から目覚めた。
米ソ合同の船内は、国際関係を反映してか、険悪な雰囲気。
まもなく、ディスカバリー号にランデブー。
ディスカバリー号は回転している。
『2010年』の公開当時、パンフレットで読んだのだが、『2001年』のディスカバリー号のミニチュアは全長16メートルの巨大なものであった。
宇宙空間には太陽しか大きな光源はないので、ライトは一方向からのみ。
ミニチュアの端から端までピントを合わせるために、超長時間露光で、1コマずつ撮影したので、気が遠くなるような時間が掛かった。
合成の際も、フィルムのコマをスライドで拡大し、手描きで1コマずつマスクを使った。
要するに、アナログでCGと同じ事を行なったのである。
という訳で、『2001年』は、星の背景の絵の前を、ピアノ線で吊ったミニチュアの宇宙船を飛ばして撮影していた60年代当時では、あり得ない様な映像になったのである。
『2001年』のディスカバリー号は、キューブリックが他の映画に流用されないように破壊してしまった。
『2010年』のディスカバリー号は、全長3メートルくらいのミニチュアらしい。
本作の公開当時では、最先端のSFX技術を駆使して撮ったと思うが、やはり『2001年』のような強烈なインパクトはない。
キューブリックのような、偏執狂的なこだわりに対して、やはり、ピーター・ハイアムズは、職人的な監督なのだろう。
で、カーナウやチャンドラがディスカバリー号の船内に入るのだが…。
さあ、これからどうなる?
この後、木星の巨大モノリスの調査、HALの再生、ボーマンの復活などが起こる。
ラストは、確かに、人類の進化を表現したかったアーサー・C・クラークの世界なのだが。
これを映像にしてしまうと、荒唐無稽な印象を与える。
細君は、かなり興醒めしていた。
『2001年』という、映画史上の大傑作の続編を撮るというのは、大変なプレッシャーだっただろうが。
結果が全て。
ご苦労様でした。
なお、アーサー・C・クラークには、本作の続編で、『2061年宇宙の旅』『3001年終局への旅』があるが、映画化はされていない。

2010: The Year We Make Contact Official Trailer #1 - Roy Scheider Movie (1984) HD