『街の灯』

この週末は、ブルーレイで『街の灯』を再見した。

街の灯 City Lights [Blu-ray]

街の灯 City Lights [Blu-ray]

  • 発売日: 2016/12/22
  • メディア: Blu-ray
1931年のアメリカ映画。
監督・製作・脚本・音楽・編集・主演は、『キッド』『巴里の女性』『黄金狂時代』『サーカス』の喜劇王チャールズ・チャップリン
音楽は、『怒りの葡萄』『わが谷は緑なりき』『荒野の決闘』『頭上の敵機』『イヴの総て』『七年目の浮気』『王様と私』『西部開拓史』『大空港』の巨匠アルフレッド・ニューマン
助監督は、『キッド』『黄金狂時代』『サーカス』(いずれも出演)のアルバートオースチンと、『キッド』『巴里の女性』『黄金狂時代』『サーカス』(いずれも出演)のヘンリー・バーグマン。
共演は、『黄金狂時代』『サーカス』のアラン・ガルシア、『キッド』『巴里の女性』『黄金狂時代』『サーカス』のヘンリー・バーグマン、『キッド』『黄金狂時代』『サーカス』のアルバートオースチン、『007 カジノロワイヤル(1967)』(監督)のロバート・パリッシュ、『黄金狂時代』『サーカス』のジョン・ランド。
本作を初めて見たのは、いつのことだったか思い出せないが、子供の頃にテレビで見たような気がする。
『モダン・タイムス』と『ライムライト』は、はっきりと見たことを覚えているのだが。
大人になってから、DVDで再見した。
それから、本作の翻案で、赤塚不二夫の『おそ松くん』に「イヤミはひとり風の中」というエピソードがある。
これが素晴らしい。
僕は、読んで泣いてしまった。
僕の人生で、漫画を読んで泣いたのは、これだけだと思う。
赤塚不二夫も天才だな。
もちろん、本体の『街の灯』は、何度見ても、よく出来た映画だと思う。
笑いと哀愁が見事に融合しているし、チャップリンが時代を超えて愛される理由が分かる。
正に、「古き良き映画」である。
あのスタンリー・キューブリックも、かつて自分の好きな映画のベスト10の中に、『街の灯』を入れていたな(何位だったかは忘れた)。
モノクロ、スタンダード・サイズ。
コミカルな音楽が流れる。
作曲したのは、チャップリン自身だ。
チャップリンは、トーキーが嫌いだったので、既に時代はトーキー全盛だったが、本作は、音楽は入っているものの、ほぼサイレント映画のような作りである。
「『平和と繁栄』の記念碑をこの町の人々におくる。」
直ちにコロナが蔓延しそうなほどの群衆の前で演説するオッサン。
しかし、何を喋っているかは分からない。
トーキー嫌いのチャップリンは、わざとセリフを聞こえなくしたんだな。
除幕式。
幕を開けると、像の上でチャップリンが寝ている。
ズボンの尻に像の剣が刺さって、降りられない。
聴衆からブーイングの嵐。
「その午後」
街を歩くチャップリン
道路工事の穴に落ちそうになる。
花売りの娘(ヴァージニア・チェリル)がいる。
彼女は目が見えない。
『お拾いになった?』
チャップリンは思わず、娘から花を買ってしまう。
娘はその時、たまたま高級車のドアが閉まる音を聞いたので、チャップリンのことをお金持ちだと勘違いしてしまう。
『お待ちになって、おつりを。』
そっと見守るチャップリン
「日も暮れて」
娘が家に帰る。
『おばあさん。』
娘はおばあさんと二人暮らし。
恋人とデートに出掛ける近所の青年の声を聞いて、寂しい気持ちになる。
「その夜」
波止場でロープで首をくくり、重石を付けて海に飛び込もうとしている男がいる。
そこへ、チャップリンがやって来る。
『明日が来れば、鳥も歌います。』
『悲観せず、立ち上がりなさい。』
『何もかも、おしまいだ。』
チャップリンは男の自殺を止めるが、男は聞く耳を持たない。
間違って、チャップリンの首にロープが巻き付く。
ここで、一連のドタバタがあるが、ともかく、男は助かって、チャップリンに感謝する。
『私は目が覚めた。君は私の生涯の友だ。』
『家に帰って、一杯やろう。』
チャップリンは男の家で飲むことに。
この男は富豪で、どうやら奥さんが出て行って、ヤケになったようだ。
『何かニュースは?』
『奥様の使いが荷物をとりにまいりました。』
『よろしい。』
この家の執事は、汚い身なりをしたチャップリンに冷たい。
『僕らの友情のために。』
乾杯したが、富豪は既に酔っ払っている。
チャップリンは酒が苦手なので、すぐに酔っ払う。
『私は生きるぞ!』
『ジェイムズ、車を出せ。町で飲み明かすぞ。』
二人でホールに行く。
チャップリンもタキシードを着せられている。
二人はテーブルに座る。
葉巻きを投げ捨てて、隣のおばさんのドレスに燃え移って、大騒ぎ。
チャップリンは終始、パントマイム。
セリフは一言も発さない。
まあ、これがチャップリンだよな。
セリフでなく、映像に語らせる。
それが本来の映画のあり方だ。
スパゲティの代わりに、クラッカーのテープを食べるチャップリン
『黄金狂時代』の靴ひもみたいなもんだな。
楽団が演奏を開始し、みんな踊り出す。
チャップリンも踊る。
「朝早く、帰途につく。」
富豪は思い切り飲酒運転。
オープンカーで街を暴走。
今なら、即刻逮捕だな。
『運転に気をつけて!』
『私が運転してるのか?』
余りに危なっかしいので、チャップリンが交代する。
免許はあるのか。
屋敷に到着。
『すてきな車だ。』
『では、君にやろう。』
目の前を花売り娘が通り掛かる。
『友達はどこだ?』
チャップリンが消えたので、富豪は執事に尋ねる。
『つれて来なさい。私の客だぞ。』
『花を買いたい』
チャップリンは戻って来るや、富豪に頼む。
札束をもらって、娘のところへ飛んで行くチャップリン
娘が抱えている花を全部買う。
『10ドルです。』
『おつりがありませんわ。』
釣り銭は要らないというチャップリン
今の日本円に直すと、幾らくらいかな。
チャップリンは娘の前では金持ちのフリをする。
『ジェイムズ!』
よそ者なのに、執事を呼び付けるチャップリン
『この花を家へ。私はすぐ戻ってくる。』
富豪のオープンカーに娘を乗せて、ドライブ。
娘を家まで送る。
『ご親切ありがとうございました。』
別れ際、娘の手の甲にキス。
『また来てもよろしいですか?』
『いつでもどうぞ。』
娘は夢見心地。
「夜が明けると、人間が変わっていた。」
富豪は目が覚めると、何も覚えていない。
シラフになると、飲んでいた時のことは全て忘れるんだな。
そういう人いるな。
『誰が来ても、留守だと言え。』
『誰であろうと、追い返せ。』
追い返されるチャップリン
一方、娘は一緒に暮らすばあさんにチャップリンのことを語る。
『…そして、その方が車で家まで送って下さったの。』
『きっと、お金持ちなのね。』
『ええ、でも、それ以上の方よ。』
「午後になって」
チャップリンが街を歩いていると、酔っ払った富豪と出くわす。
『わが友よ。』
酔っ払っている時はチャップリンのことを親友扱い。
『家に来たまえ。君のためにパーティーを開こう。』
「パーティー
パーティーチャップリンは、誤って笛を飲み込んでしまう。
チャップリンがしゃっくりをする度に笛の音がする。
ピーピーと止まらない。
楽団が演奏しようとするとピーピー。
仕方なく、チャップリンは屋敷の外へ出る。
今度は、笛の音でワンコがたくさん寄って来る。
「次の朝」
またも富豪はチャップリンのことを覚えていない。
追い出されるチャップリン
さあ、これからどうなる?
この時代、車は高級で、馬が普通に街を歩いている。
のみならず、ゾウも街を歩いている。
この後、娘が病気になる。
チャップリンは働く決意をする。
娘の家賃が払えなくなる。
色んな出来事がある。
ボクシングのシーンもある。
このボクシングの時の役者の動きがスゴイ。
何百回とリハーサルを繰り返したんだろうな。
本作は、製作に3年も掛かっているらしい。
今の時代、お笑いにそこまで時間とカネを費やすことは不可能だろう。
余談だが、ボクシング会場内のタバコの煙がスゴイ。
観客は皆、ボクシングを観ながら、スパスパ吸っている。
これも今では考えられない。
それから、チャップリンが対戦相手に飛び掛かるシーンがあるが、チャップリンを釣っているヒモが見えている。
まあ、デジタル・リマスタリングをしたからだろうな。
ただし、最後の方は画質が悪い。
画面の歪みと揺れがヒドイ。
ラストの余韻は素晴らしいね。
これぞ、チャップリンの映画だろう。

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