『赤ちゃん教育』

この週末は、ブルーレイで『赤ちゃん教育』を再見した。

1938年のアメリカ映画。
監督は、『脱出(1944)』『三つ数えろ』『赤い河』の巨匠ハワード・ホークス
撮影は、『黒い罠』『スパルタカス』の巨匠ラッセル・メティ。
主演は、『旅情』『オレゴン魂』の大スター、キャサリン・ヘップバーンと、『泥棒成金』『めぐり逢い』『北北西に進路を取れ』『シャレード』の大スター、ケーリー・グラント
本作の原題は、『Bringing Up Baby』だが、「Baby」とは、「赤ちゃん」ではなく、本作に登場する豹(ヒョウ)の名前である。
人間の赤ちゃんは出て来ない。
まるで、『Dr. Strangelove』が、ストレンジラブ博士という人の名前なのに、「博士の異常な愛情」と訳してしまったようなものである。
モノクロ、スタンダード。
にぎやかなテーマ曲。
舞台は、ニューヨークの「自然歴史博物館」。
若き動物学者デイヴィッド・ハックスリー(ケーリー・グラント)は4年掛けてブロントサウルスの骨格を組み立て、あとは鎖骨1本が足りないだけであった。
そこへ、コロラドの発掘隊から、「ついにブロントサウルスの鎖骨を発見したので、直ちに送る」という一報が入る。
デイヴィッドは、助手のアリスと明日、結婚することになっていた。
このアリスは、仕事を重視しているが、なかなかの美人である。
その日、彼は、博物館に100万ドル寄付しても良いと言っているという弁護士のピーボディ氏とゴルフをする約束だったので、アリスに促されて、出掛けた。
しかしながら、カネを出すと言っているのはピーボディが法律顧問をしている富豪の未亡人で、自分はカネを持っていないという。
のみならず、ゴルフ以外の話題には、彼は全く興味を示さず、「話しがあるなら、後で食事の時に」と言う。
同じゴルフ場にいた横着なわがまま娘(キャサリン・ヘップバーン)は、間違ってデイヴィッドのボールを打ってしまう。
しかも、出発しようとした彼女は、自分の車をデイヴィッドの車にぶつけてしまう。
デイヴィッドが飛んで行くと、彼女は、今度は勝手にデイヴィッドの車を運転して、「邪魔だからどかす」と言う。
阻止しようと車に乗り掛かったデイヴィッドを乗せたまま、彼女は発進してしまった。
大事な接待相手であるピーボディ氏を置き去りにして。
まあ、キャサリン・ヘップバーンが出て来た時点で、この二人の恋仲を中心に物語が進むというのは分かるが。
キャサリン・ヘップバーンは全然美人じゃない。
婚約者のアリスの方が断然美人だ。
僕なら、美人の方を選ぶ。
その夜、ピーボディ氏と約束のレストランにデイヴィッドは到着するが、未だ氏は来ていない。
ところが、例のわがまま娘がまたいるじゃないか。
デイヴィッドは、マジックの練習をしているとかいう娘が落としたお菓子に足を滑らせて、自分のハットの上に尻餅をつき、ハットをつぶしてしまう。
わがまま娘は、たまたまレストランにいた精神科医に、「私を追い回す男」の精神状態を質問する。
彼女は、たまたま居合わせただけなのに、デイヴィッドが自分をストーキングしていると思ったのだ。
精神科医は、「愛ゆえの執着」と答える。
つまり、デイヴィッドは、この娘に気があることになってしまった。
婚約しているのに。
その後、彼女は誤ってデイヴィッドの上着を破いてしまい、彼女のスカートも裂けてしまう。
彼女のスカートの裂け目を隠すように頼まれ、デイヴィッドは、またもピーボディ氏を尻目にその場を去るハメに。
娘の名前はスーザン・ヴァンスと言った。
デイヴィッドの上着を繕いながら、彼女は、「ピーボディなら子供の頃からの知り合いだから、その家へ連れて行く」と言う。
時は既に深夜。
ピーボディ家の灯かりは消えている。
スーザンは窓に石を投げた。
気付いたピーボディ氏が窓を開けたが、その顔面にも思い切り石をぶつけてしまい、スーザンとデイヴィッドは急いで逃げる。
翌日、アリスに電話をしているデイヴィッドのもとへ、例の恐竜の骨が届く。
しかし、こんな大事な学術資料を、普通の郵便で届けるかな。
そこへ、スーザンから電話が掛かって来る。
彼女は、ヒョウを飼っていた。
これが、随分と人になついている。
撮影は大変だったと思う。
ヒョウの話しをしても信じない電話口のデイヴィッドに向けて、スーザンは「ヒョウに襲われた! 助けて!」と芝居を打つ。
彼女の家に飛んで来たデイヴィッドの足元にじゃれ付くヒョウ。
スゴイ絵だ。
今なら、確実にCGだろう。
このヒョウが「ベイビー」という名前なんだな。
ベイビーは音楽が好き。
スーザンは、このお人好しのデイヴィッドのことが好きになったので、彼の結婚を妨害しようと企てた。
ヒョウを恐れるデイヴィッドを、ベイビーを使って無理矢理自分の車に乗り込ませ、コネティカットの寒村にある叔母の家に向かう。
もう、絶対に結婚式には間に合わない。
僕なら、断じて許さないね。
美人の奥さんの方がいいよ。
で、スーザンの車が走っている途中、目の前を走っていた養鶏場のトラックにぶつけてしまう。
カゴが壊れて、ニワトリやらアヒルやらが大量に道路に飛び出す。
それを見たベイビーが、野性の本能で追い掛ける。
もうギャグだね。
更に、途中の肉屋で車を停めて、デイヴィッドがステーキ肉を30ポンド(!)買う。
いきなりステーキだって300グラムだからね。
シャイロックの担保ですら1ポンドだ。
30ポンドというのは、13キロくらいか。
で、わがままでイカれたスーザンは、車を消火栓の前に停めていた。
これは違法駐車である。
そこへ、運悪く保安官が通り掛かり、駐車違反でスーザンを逮捕しようとする。
駐車違反で逮捕か!
何という逮捕権の濫用!
で、スーザンは「これは私の車じゃない」と、隣の車に乗り移って逃走。
既に、ベイビーも乗り移っていて、デイヴィッドは、発車寸前に戻って来て飛び乗った。
叔母の家へ。
今日は結婚式だというのに(もう間に合わないが)、デイヴィッドは、ずっと動物と一緒だったので、汚れていた。
「シャワーを貸してくれ。」
ズル賢いスーザンは、デイヴィッドがシャワーを浴びている間に、彼の洋服を、お手伝いに命じて、街のクリーニング屋に持って行かせてしまう。
シャワーから出て来たデイヴィッドはビックリ仰天。
仕方なく、そこにあったスーザンのネグリジェを着てシャワー室から出て来る。
運悪く、そこにスーザンの叔母が帰って来る。
知らない男が女物のネグリジェを着て部屋の中をうろついているので、彼女はデイヴィッドを変質者だと思ってしまう。
まあ、そりゃそうだろう。
通報されて当然のレベルだ。
しかも、弁解しようにも、スーザンはシャワーを浴びていて、そこにはいない。
その頃、デイヴィッドが肌身離さず持ち歩いていた恐竜の骨を、叔母の飼い犬ジョージがくわえてどこかへ持ち去っていた。
実は、この叔母こそが、100万ドル寄付してくれるという未亡人・ランダム夫人であった。
スーザンは、叔母を通せば、叔母の法律顧問であるピーボディはどうにでもなるという。
哀れ、デイヴィッドのランダム夫人に対する第一印象は最悪であった。
デイヴィッドは、この人に本名を知られては大変と、「ボーン(骨)」という偽名を使う。
さらに、大事な恐竜の骨がなくなったことに気付いたデイヴィッドとスーザンは、おそらくジョージが庭に穴を掘って埋めたのだろうと考え、必死に庭を探す。
ジョージが、とても嬉しそうに尻尾を振って、庭のある場所を掘り出す。
「ここか!」と喜ぶ二人。
しかし、出て来たのは古びたブーツであった。
その後も、ジョージは色んな所を掘るが、出て来るのはことごとくガラクタばかり。
ああ、もう結婚式もパアだし、骨もないし、絶対絶命のデイヴィッド。
さあ、これからどうする?
この映画は、動物を非常にうまく撮っている。
と言うより、よくこんなに調教出来たものだ。
後半、ワンコとヒョウがつかみ合うシーンもある。
また、飼いヒョウ(?)で人間にじゃれ付くベイビーと、サーカスから脱走した人間を襲う凶暴なヒョウを演じたのは、同じヒョウだという。
信じられない。
本作は、公開当時は批評家にもさんざんコケにされ、興行収入も振るわなかった。
しかしながら、今では映画史に残るコメディーの傑作とされている。
確かに、本作のコメディーはドタバタである。
オチもヒドイ。
でも、ドリフのコントも、こういうところから影響を受けているんだろうなと思う。
しかし、見返してみると、やっぱりヒドイ話しだな。
ヒド過ぎて笑えない。

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