『霧の波止場』

連休中は、ブルーレイで『霧の波止場』を見た。

1938年のフランス映画。
監督は、『北ホテル』『枯葉~夜の門~』の巨匠マルセル・カルネ
撮影は、『巴里祭』『アタラント号』『舞踏会の手帖』『北ホテル』『旅路の果て』の巨匠モーリス・ジョベール。
主演は、『我等の仲間』『大いなる幻影』『フレンチ・カンカン』『シシリアン』の大スター、ジャン・ギャバン
共演は、『素晴らしき放浪者』『アタラント号』『旅路の果て』のミシェル・シモン
モノクロ、スタンダード・サイズ。
レストア版なので、画質はまあ良い。
もの哀しげな音楽から始まる。
夜道。
ル・アーヴルまで20キロ」の標識。
トラックが走る。
目の前に人が歩いている。
急停車。
「乗せてくれ」と彼。
軍人のようだ。
彼はジャン(ジャン・ギャバン)。
ル・アーヴルを目指している。
突然、トラックの前に1匹のワンコが!
とっさにハンドルを切るジャン。
運転手は「表へ出ろ!」と怒り、ケンカになりかけるが、相手が軍人なので、収める。
トラックはル・アーヴルに着いた。
「ありがとな。」
ジャンがトラックを降りると、さっきのワンコが着いて来た。
実は、本作の主役はこのワンコである。
ジャンは、「小さな道化師」という名の酒場へ。
ザベル(ミシェル・シモン)というヒゲもじゃのオッサンと、ルシアンという金持ちのボンの不良が口論をしている。
ただ、ここでは単に登場人物を紹介するだけで終わる。
ザベルが店を出たところへ、入れ代わりにジャンがやって来る。
ジャンは店の前で酔っ払いに絡まれるが、数人の兵士がやって来たので隠れる。
ジャンは脱走兵であった。
そこへ、さっきのワンコがやって来る。
酔っ払いは、ジャンが訳ありであることを察して、海辺の「パナマ」という行きつけの酒場へ連れて行く。
もちろん、ワンコも着いて来る。
店主は白いパナマ帽をかぶったオッサン。
そこには、厭世的な画家がいる。
ジャンとケンカになるが、文無しで腹ペコなのを察したパナマがパンとソーセージとチーズのメシを食わしてくれる。
当然、ワンコにも分け与える。
このワンコは、全編を通して、尻尾を振りまくって、ものすごくジャンに懐いている。
そこへ、ネリー(ミシェル・モルガン)という長身の美女が入って来る。
後で、彼女の年齢が17歳であるということが明かされるが、ものすごく大人びていて、到底17歳には見えない。
しかし、撮影当時のミシェル・モルガンの実年齢は18歳だったらしい。
昔の人は老けて見えるな。
そんなことを言ったら、ジャン・ギャバンだって当時、34歳だが、もっとずっとオッサンに見える。
現在50歳の僕よりも年上だと思って見ているが。
で、まあ、フランス映画なので、男はとりあえず美女に「君に惚れた」などと言って口説くが、実際は「商売女だろう」くらいに思っている。
そこへ、銃声が響く。
「与太者だ!」とパナマ
さっきのルシアン達が車でパナマの店の前にやって来たのであった。
パナマは「酒はない。閉店だ!」と叫びながら、威嚇発砲。
そして、発砲。
ルシアンの車のライトに当たる。
車は去った。
しかし、パナマの店の前には、ザベルがうずくまっていた。
「入れ」とザベルを店に入れるパナマ
しかし、ネリーはザベルと顔を合わせたがらない。
ネリーは、ザベルが営む土産物屋の店員で、他にも、色々とややこしい関係があるのであった。
ザベルを怪しんだワンコが彼に吠え掛かる。
パナマは「もう帰れ」と言って、ザベルを追い返す。
夜が明けた。
酔っ払いが水道で顔を洗い、「仕事だ」と言って、波止場へ酒泥棒に出掛ける。
ジャンとネリーは店を出る。
ワンコも着いて来る。
画家は、脱走兵であるジャンが人生をやり直すには、服、靴、通行証、戸籍などが必要だとパナマと話す。
偶然にも、画家の服や靴のサイズはジャンと同じであった。
画家は、所持品一切をジャンのために残して、命を絶つ。
一方、波止場ではジャンとネリーが腰掛けて話している。
ネリーは別れ際に、こっそりとジャンのポケットに紙幣を入れる。
そこへ、昨夜のルシアンらの車が到着。
ルシアンがチンピラ仲間と共に、ネリーを取り囲む。
「モリスの行方を知りたい。オレを無視しやがって」とネリーに迫るルシアン。
モリスというのは、本編には登場しないが、要するにネリーの元カレだ。
ルシアンはネリーに気があるが、全く相手にされない。
「触らないで!」
見かねたジャンが、「放してやれ。嫌がってるだろ!」
そして、ルシアンらを往復ビンタでコテンパンにする。
「二度と俺の前に現れるな!」
涙目で逃げ去るルシアン。
「今夜もパナマへ行くわ」とジャンに告げるネリー。
で、ザベルはネリーの養父だが、彼女のことを色目で見ている。
ルシアンとザベルは盗品を売買する間柄だ。
彼らにとっては、ネリーが惚れていて、かつ正義面をしているジャンは邪魔者でしかない。
さあ、これからどうなる?
う~ん。
有名な映画だが、そんなに面白い訳ではない。
まあ、ジャン・ギャバンありきの映画だ。
最後も結構あっけない。
しかし、とにかくワンコが素晴らしい。
忠犬ハチ公もビックリだ。
ジャン・ギャバン仲代達矢かと思えて来る。
ヴェネツィア国際映画祭特別賞、ルイ・デリュック賞受賞。

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