『ウエスト・サイド物語』

この週末は、以前DVDで見た『ウエスト・サイド物語』をブルーレイで再見した。

1961年のアメリカ映画。
監督は、『地球の静止する日』『サウンド・オブ・ミュージック』『アンドロメダ…』『スタートレック』のロバート・ワイズと、ジェローム・ロビンス。
音楽は、『波止場』のレナード・バーンスタイン、『サウンド・オブ・ミュージック』『チキ・チキ・バン・バン』のアーウィン・コスタル
主演は、『幽霊と未亡人』『理由なき反抗』のナタリー・ウッド、『史上最大の作戦』のリチャード・ベイマー。
共演は、『雨に唄えば』のリタ・モレノ、『サムソンとデリラ』『西部開拓史』のラス・タンブリン。
監督のロバート・ワイズは、本作と『サウンド・オブ・ミュージック』で映画史上に残っている。
地球の静止する日』や『スタートレック』も監督して、SFからミュージカルまで、守備範囲は広い。
が、この監督の作風は余り好きではない。
もっとも、『サウンド・オブ・ミュージック』はスゴイ映画だと思うが。
本作で助演のジョージ・チャキリスは、僕の母が好きだった。
僕が小学生位の頃、どんな流れだかは忘れたが、しきりにジョージ・チャキリスのことを話していた。
僕は彼の名を全く知らなかったが、珍しい名前なので、記憶に残った。
もう少し詳しく聞いておけば良かった。
本作は、シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』を元にしたミュージカルである。
シェイクスピアの現代化というのが如何に難しいかを痛感させられる。
ユナイテッド・アーティスツ
カラー、70ミリ。
序曲が流れた後、タイトル・バックは現代のニューヨークを航空撮影。
約半世紀前だが、既に摩天楼が林立している。
画質は良い。
指を鳴らす若造ども。
バスケをする。
踊る。
最初は、ミュージカルなのに、歌わない。
ポーランドアメリカ人で構成されるジェット団という少年ギャングだ。
「見ろよ、臭う」「失せろ」という、昨今のヘイト・スピーチのような言葉を合図に、対立するグループとケンカが始まる。
対立するのは、プエルトリコアメリカ人のグループ・シャーク団だ。
ペンキを頭からかけたりして、大乱闘になる。
そこへ、警察が来る。
「この街はお前らチンピラの街じゃない。殺し合いならオレの管轄外でやれ!」と、シュランク警部補(サイモン・オークランド)。
彼らの対立の理由が、地元の唯一の広場である運動場の占有権を巡ってとか。
実に下らない。
中世が舞台なら、名家の対立も受け入れられるが、法治国家である現代のアメリカでは、チンピラ同士の対立に置き換えるしかない。
レオナルド・ディカプリオの『ロミオ+ジュリエット』もそうだったが、チンピラの対立なんて、一般市民には迷惑なだけだ。
到底、感情移入出来ない。
この時点で、主役の二人は名門の子供から、貧困にあえぐ下層階級になってしまう。
で、ジェット団は「シャーク団を掃除する」なんて物騒なことを言って、全員で決闘することになった。
今夜10時にダンス場で挑戦状を叩き付けると。
ジェット団リーダーのリフ(ラス・タンブリン)は、元リーダーで親友のトニー(リチャード・ベイマー)に声を掛ける。
トニーはこの1ヶ月、コカ・コーラの瓶を運ぶ仕事をしている。
一方、シャーク団リーダーのベルナルド(ジョージ・チャキリス)の妹マリア(ナタリー・ウッド)は、ダンス・パーティーに着て行く洋服を選んでいる。
彼女はシャーク団のチノ(ホセ・デ・ヴェガ)という男に言い寄られていたが、彼には何も感じないという。
「白いドレスなんて私だけよ(本当は赤色に染めたい)」と言いながらも、「今夜は私のアメリカ娘としての第一歩よ」と、ダンス・パーティーへ出掛ける。
案の定、ジェット団とシャーク団の対立が起こる。
まあ、それはともかくとして、ダンスは、山手線のように内回りと外回りで回転しながら、止まった相手とペアになって楽しく踊ることになっていた。
お約束どおり、トニーとマリアは出会い、一緒に踊り、早くも惹かれ合って、キスをする。
ベルナルドは激怒して、「手を出すな!」と、トニーとマリアを引き離す。
で、ベルナルドはリフから決闘を申し込まれる。
詳細はドク(ネッド・グラス)の店で決めることになった。
もう足を洗ったから争い事なんて巻き込まれたくないトニーは、今夜出会ったマリアの名前を唱えながら帰る。
ベルナルドは「今夜でカタを付ける!」と息巻く。
ベルナルドの嫁のアニタ(リタ・モレノ)は「アメリカがいい」と。
移民の人達は色々と大変だろう。
昨今のアメリカでは、ロクでもない大統領が移民を排斥しようとしているが。
新天地を夢見てアメリカにやって来た人達にとって、ここは天国のように映るのだろう。
トニーはマリアのアパートの下へ。
二人は愛をささやき合う。
邸宅のバルコニーが、貧民アパートの階段だよ。
ロミオとジュリエット』は、アメリカの高校では全員が読まされるらしい。
だから、誰もがストーリーを知っているという前提で、この物語が作られているようだ。
話しの運びが大雑把なのは、ミュージカルだからだろうか。
マリアはトニーに「明日午後6時に、ルシアの婚礼衣装店(彼女が働く店)にいるわ」と言う。
夜、ジェット団が集会をしている。
そこへ、警察がやって来る。
「すぐに散れ!」「今度は捕まえるぞ!」
容赦ない国家権力。
ドクの店にジェット団がいる。
そこへ、ベルナルドらがやって来る。
「女は出て行け。」
そして、ドクも出て行く。
リフとベルナルドは、決闘の詳細について話し合う。
決闘は全員で行うことに。
「国へ帰れ!」なんていう、ヘイト・スピーチまがいの言葉が飛び交っているが。
場所は高架の下。
そこへトニーがやって来る。
彼は「素手でケンカをしてみろ」と提案する。
そこへ、警部補が来る。
連中は、サッと打ち合わせを止める。
「オレにはバッジがある。分かったら失せろ! プエルトリコ人め!」
何と人種差別的な!
プエルトリコ系のシャーク団は帰る。
残ったジェット団の連中から、警部補はケンカが行われる場所を聞き出そうとする。
しかし、連中は誰も口を割らずに出て行く。
トニーは最後まで残っていたが、やがて、店主と一緒に店を去る。
ここで「Intermission」。
ここまでで約1時間20分である。
展開が非常に遅い。
それから、当たり前だが、原作を端折っている所も多い。
辻褄を合わせるために、改変されている所もある。
例えば、「仮死状態になる薬」なんて、現代にはそんな物はないから、出て来ない。
結末も違っている。
そんなことはさておき、やはりシェイクスピアの現代化は無理があると思う。
ディカプリオの『ロミオ+ジュリエット』なんて、セリフまで原作のままだし。
まあ、セリフを変えてしまっては、シェイクスピアと言えるかどうかは微妙だが。
蜘蛛巣城』や『乱』のように、舞台を日本の戦国時代に置き換えるというのなら、やりようもあろうが。
本作を、映画史上の傑作だと言う人は多いし、ミュージカルの傑作だと言う人も、同様に多い。
でも、僕は、そうは思わない。
ミュージカルでも、本作よりもっと面白い(明るいとか、笑えるという意味ではなくて)作品はたくさんある。
アカデミー賞作品賞、監督賞、助演男優賞(ジョージ・チャキリス)、助演女優賞(リタ・モレノ)、脚色賞、撮影賞、編集賞美術賞、衣装デザイン賞、録音賞受賞。
1961年洋画興行収入2位(1位は『荒野の七人』。邦画の1位は『椿三十郎』)。