『シラノ・ド・ベルジュラック(1990)』

この週末は、ブルーレイで『シラノ・ド・ベルジュラック』を見た。

1990年のフランス・ハンガリー合作映画。
日本公開は1991年。
僕は浪人中に、渋谷の文化村ル・シネマでこの映画を観た。
ル・シネマでは、この作品を数ヶ月間の超ロングラン(確か、新記録だったと思う)で上映していた。
僕は浪人中、100本以上の映画を映画館で観たが(勉強もせず)、その中でも、最も感銘を受けた作品の一つである。
その後も、ビデオで見返したことがある。
文化村ル・シネマは、正統派のフランス映画(シネマライズ渋谷とか六本木シネ・ヴィヴァンのようにとんがった作品ではなく)ばかり上映していたので、よく通ったものだ。
一つ、浪人中のことで白状すると、ジャン・ポール・ベルモンドが池袋の東京芸術劇場で『シラノ・ド・ベルジュラック』を上演するために来日するということで、僕は月給8万円の新聞奨学生の身でありながら、S席2万円のチケットを買ったんだな。
けれども、結局、食費がなくて払い戻したという。
今なら、もう少し懐に余裕があるから、絶対に観に行くんだが。
一生の後悔だ。
この映画の監督は、ジャン・ポール・ラプノー。
あのルイ・マルの『地下鉄のザジ』の脚本を書いた人だ。
脚本はジャン・クロード・カリエール
他にも、『昼顔』(ルイス・ブニュエル監督)や『ブリキの太鼓』(フォルカー・シュレンドルフ監督)など、映画史に残る作品の脚本を物している。
原作はエドモン・ロスタン。
僕は、原作は読んでいないが、『シラノ・ド・ベルジュラック』を初めて知ったのは、中学生の時だった。
僕は中学3年間、文化祭で演劇をやったが、その時に脚本の候補に誰かが持って来たのを読んだのだと思う。
もちろん、中学生向けの脚本なので、原作通りではないが。
なので、「鼻のシラノ」のあらすじはその時に知った。
なお、結局、その年、僕のクラスは『とりかへばや物語』を上演した(ちなみに、演出は僕)。
シラノ・ド・ベルジュラック』はフランスの国民的(嫌いな言葉だが)戯曲で、イギリスで言えば『ハムレット』、日本で言えば『忠臣蔵』あたりに相当するのだろうか。
これで、実に7回目の映画化だという。
ロミオとジュリエット』や『ハムレット』よりも多いんだな。
有名なのは、ホセ・フェラーが主演してアカデミー賞主演男優賞を獲った1950年版らしいが。
フランスの古典を英語で見せられてもなあ。
僕は本作しか見ていないが、主役の素晴らしさと、スケールの大きさから考えて、こちらが「決定版」と言えるのではないかと思う。
当時の宣伝では、製作費は日本円で約26億円。
あの、フランスから出資してもらったという、クロサワの『乱』と同じくらいである。
古典が原作ということと、アカデミー賞衣装デザイン賞を受賞しているという点も共通している。
で、主役のシラノを演じたのは、フランスの大スター、ジェラール・ドパルデュー
僕は、前述のように、学生の頃、やたらフランス映画ばかり観ていたが、その大半に、ドパルデューかジャン・ユーグ・アングラードのどちらかが出ていた気がする。
『ジュ・テーム…』(セルジュ・ゲンズブール監督)、『隣の女』(フランソワ・トリュフォー監督)、『カミーユ・クローデル』(ブリュノ・ニュイッテン監督)、『さよならモンペール』(ジェラール・ロージェ監督)、『ハムレット(1996)』(ケネス・ブラナー監督)(※これはフランス映画じゃないか)…。
ドパルデューはスゴイ役者で、「フランスのロバート・デ・ニーロ」とも言える。
僕が学生時代、映画館でアルバイトをしていた時に、映画の大好きな先輩が『1900年』(ベルナルド・ベルトルッチ監督)を、「デ・ニーロとドパルデューの演技合戦が素晴らしい!」と絶賛していたが、残念ながら、今に至るまで未見。
この『シラノ・ド・ベルジュラック』は、ドパルデューの代表作の一つで、カンヌ国際映画祭の男優賞、セザール賞(フランスのアカデミー賞)の主演男優賞を受賞している。
剣の達人で、詩人。
全編暴れ回りながら詩的なセリフを喋りまくり、一方で、容姿にコンプレックスがあるので、愛する女性の前ではしゅんとするという、大変起伏の多い難しい役なので、相当な役者じゃないと務まらんだろう。
逆に言うと、主役が立派なら、それで成立する作品だと。
共演は、アンヌ・ブロシェとヴァンサン・ペレーズ
ヴァンサン・ペレーズの出演作は、『インドシナ』(レジス・ヴァルニエ監督)や『王妃マルゴ』(パトリス・シェロー監督)を文化村ル・シネマで観たような記憶がある。
で、『シラノ・ド・ベルジュラック』は、フランス映画界が威信を懸けて、総力を挙げて製作しただけあって、セットも衣装も豪華だし、エキストラもたくさん出て来るし、戦闘シーンもスゴイ迫力で、とにかくカネが掛かっている。
もちろん、上に書いたように、主役のシラノが完璧だから、それらの舞台装置も活きて来るのだが。
まあ、こういう映画は、もう二度と作れないだろう。
カラー、ワイド。
高らかなテーマ曲。
雨の中、走る人力車。
少年が降りて来て、劇場の中へ。
美男のクリスチャン(ヴァンサン・ペレーズ)はソワソワしている。
そこへ、美女ロクサーヌ(アンヌ・ブロシェ)がやって来る。
クリスチャンは、ロクサーヌに見とれて一目ぼれするが、そのためにスリに遭ってしまう。
シラノ・ド・ベルジュラックジェラール・ドパルデュー)は未だやって来ない。
役者が登場する。
すると、階上の観劇席の奥から、「失せろ!」と声が響く。
シラノだ!
場内は大騒ぎ。
シラノは、デブの大根役者が大嫌いであった。
剣で緞帳のロープを切り、芝居をブチ壊す。
そして、払い戻しの入場料として、自分の財布を投げ付ける。
ロクサーヌがシラノに手を振る。
彼女はシラノの従妹であった。
シラノは鼻が人並み外れてデカイ。
鼻を侮辱されて怒るシラノ。
「オレが相手をしよう!」
しかし、侮辱の言葉がほんの一言しかない。
「オレなら言えるぞ、色々とな!」と、次から次へとと詩的な言葉が飛び出す。
相手は青年貴族であった。
この貴族は、シラノに「マヌケ!」と言われて激昂し、ついに剣を抜く。
シラノは、詩を唱えながら、見事に剣をさばく。
彼は、詩人であり、剣の達人でもあった。
そして、とうとう貴族の腹をブスリと刺す。
それまでやんやの喝采を送っていた物見高い聴衆は、さっと引く。
その後、シラノは友人に、財布を投げて一文無しになってしまったと告白する。
シラノが大根役者を嫌う理由は、ロクサーヌに色目を使ったからであった。
シラノは、ロクサーヌに惚れていたのである。
だが、色恋は、大きな鼻のせいで諦めていた。
そこへ、「ロクサーヌが明日の夜、お会いしたい」と使いの者がやって来る。
心ときめくシラノ。
友人の詩人が、権力者であるギーシュ伯爵の女癖の悪さを揶揄する詩を書いたので、伯爵の手先の者が100名ほど、門の前で待ち伏せしていて、家に帰れないとシラノに打ち明ける。
「オレが相手にしてやる!」
血気盛んなシラノは、100人の男達を、バッサバッサと斬り捨てる。
翌日、パティシエのラグノーの店では、女房が彼の大切な本を破って、パンを包む袋にしたと言って大騒ぎ。
そこへ、シラノがやって来る。
ラグノーは、「昨晩の韻文の決闘は素晴らしかった」とシラノを称賛する。
シラノは、この店でロクサーヌと待ち合わせしているのであった。
ふとテーブルの上に置いてある鏡に目をやってしまい、そこに映った己の鼻の醜さに、思わず鏡を伏せるシラノ。
「手紙を渡して逃げるか」と悩んでいると、ロクサーヌがやって来る。
彼女はシラノに、「昨夜、あなたが見事に打ちのめした男をとある貴族が私の夫にと」と打ち明ける。
「ある人を愛しているの」という彼女の言葉に一瞬、色めき立つシラノだが、「その人の名はクリスチャン・ド・ヌヴィレット」と聞いて、落胆する。
「もし彼が俗物なら?」
「私、死ぬわ。」
最初は、「私は役に立てない」と言うシラノだったが、彼女の懇願で、仕方なく、「よろしい、彼を守ってあげよう」と答える。
ロクサーヌが去った後のシラノが切ない。
シラノは、自分の中隊に顔を出す。
昨晩の大立ち回りを知っている部下達は、大いに歓迎の意を表するが、シラノは「うるさい!」と一蹴。
そこへギーシュ伯爵がやって来る。
気分の悪いシラノは、伯爵にもぞんざいな態度を取る。
「私の専属詩人にならんか?」
「お断りします。」
しかし、これは伯爵の皮肉であった。
伯爵は、自分を揶揄する詩を書いた詩人を捕まえようと100人の手勢を送ったのだが、それをシラノに邪魔されて、激怒していたのである。
「君は私の計画を妨害した。」
シラノは、権力者に媚びるのが嫌いなのであった。
そこへ、今日から入隊することになったクリスチャンがやって来る。
兵士達は、新人のクリスチャンに「ここでは、『鼻』は禁句だ」と警告する。
ところが、シラノが部下達に昨晩の武勲を聴かせている所で、クリスチャンは「鼻」を連呼。
シラノは、それがロクサーヌの恋するクリスチャンだと知って黙ったものの、ついに怒り心頭、部下達を追い出し、すわ決闘か!
けれども、シラノが「私は彼女の従兄だ」と告げたので、急にクリスチャンが下手に出る。
シラノは、クリスチャンの顔を見て、「確かに美しい」と溜息を吐く。
だが、クリスチャンは見掛けだけで、黙っていればいいのだが、女性の前に出ると、うまく思いを伝えられなくなってしまうのであった。
「天は二物を与えんな」とシラノ。
そこで、シラノは「二人で一人。オレが弁舌を与えよう」と、自分の書いた見事な恋文をクリスチャンに渡し、「あとは署名をすればいい」。
これには、さっきまでの生意気な態度もどこへやら、クリスチャンは「Mon ami!」とシラノにすがり付く。
その手紙を受け取ったロクサーヌは、余りに美しい文面に、恍惚とした表情を浮かべる。
その後も、彼女の元には、何通もの手紙が届けられた。
ギーシュ伯爵がロクサーヌの所にやって来る。
伯爵は、美しいロクサーヌを愛人にしようと狙っていた。
「お別れです。戦争が始まる」と告げる伯爵。
戦争が始まると、シラノとクリスチャンも戦場へ赴かなければならない。
伯爵の狙いもそれであったが、ロクサーヌは逆に、「戦いに行けないことが最大の不名誉でしょう」と、彼らの中隊を戦闘に参加させないよう提案する。
彼女が自分に気があると勘違いした伯爵は、その提案を受け入れる。
ロクサーヌは、街でクリスチャンとばったり出くわす。
クリスチャンは逃げる。
もちろん、会っても何を話せば良いのかが分からないからだが。
困ったロクサーヌは、「手紙はくれるのに、姿は見えない」とシラノに訴える。
「彼を見付けて。今夜ぜひ会いたい。手紙の言葉を直接聞きたい。」
そこで、シラノはクリスチャンに、「オレの言うセリフを覚えろ」と言うが、浮かれトンチキな勘違い野郎は、「いやだ、自分の言葉で伝えたい!」
その夜、『ロミオとジュリエット』のような、ロクサーヌ邸のバルコニーの下。
「美しい愛の言葉を聞かせて」と言うロクサーヌに、下世話なセリフしか吐けないクリスチャン。
たちまち彼女は失望するが、シラノが船場吉兆の記者会見のように助け舟を出す。
そして、暗闇の中で、クリスチャンとシラノは入れ代わる。
シラノは、滔々と自分の想いを語る。
彼女がときめいているのを見て、「今だ!」と、クリスチャンはバルコニーに上る。
抱き合って、キスをする二人。
それを遠巻きから見て、落胆しながら帰るシラノ。
ああ、切ないねえ。
しかし、こんな真夜中にギーシュ伯爵の使いの者が手紙を届けに来る。
「どうしても会いたいので、今からあなたの所へ忍んで行く」とのこと。
シラノは、とっさにあるアイディアを思い付く。
伯爵が到着する前に、クリスチャンとロクサーヌに結婚式を挙げさせようというのだ。
とは言え、時間がない。
シラノは、鼻をマスクで隠し、「私は月から来た」などと頭のおかしなことを言って、伯爵の行く手を遮り、時間稼ぎをする。
ロクサーヌ邸に到着し、彼女が既に人妻となってしまったことを知った伯爵は激怒。
シラノ達に戦場へ赴くよう命じる。
「手紙を書いて」と抱き合いながらクリスチャンに懇願するロクサーヌ
かくして、シラノとクリスチャンは出陣した。
さあ、これからどうなる?
後半は、大合戦シーンのスペクタクルと、ドパルデューの独り舞台が見られる。
特に、ラストに至るまでの芝居が素晴らしい。
正に、独壇場だ。
本当に、泣きそうになる。
モリエールがシラノの詩を剽窃して、自分の戯曲の独白に使い、それが大当たりしたなんていう悪口もあるが、これは実話らしい。
シラノの最後のセリフは有名だ。
「C'est mon panache!」
日本語では、「俺の心意気だ」が定訳のようになっているが、どうだろうか。
細君も言っていたが、せっかくのフランス語のリズムも、日本語字幕にしてしまうと、かなり違った印象になってしまう。
かと言って、フランス語のまま理解出来るはずもないので、どうしようもないのだが。
まあ、しかし、ドパルデューの演技の力と、テンポの良い見せ場の数々で、2時間20分はあっという間に過ぎる。
カンヌ国際映画祭男優賞、アカデミー賞衣装デザイン賞受賞。

Cyrano de Bergerac Official Trailer #1 - GÉrard Depardieu Movie (1990) HD

『嵐が丘』を原書で読む(第24回)

(テキスト25ページ、5行目〜)

The hook was soldered into the staple, a circumstance observed by me, when awake, but forgotten.

hook(名)鉤(かぎ)、フック、自在鉤
solder(他)はんだづけする、はんだで修繕する
staple(名)(掛け金(hasp)、留め金(hook)などを受ける)輪形の受け金、ひじつぼ
circumstance(名)出来事、事実
observe(他)(~を)(観察によって)認める、目撃する(=notice)
when(接)~する時に、~時(時を表わす副詞節をつくる)

‘I must stop it, nevertheless!’ I muttered, knocking my knuckles through the glass, and stretching an arm out to seize the importunate branch: instead of which, my fingers closed on the fingers of a little, ice-cold hand!

must(助動)(いらだち・腹立たしさなどを表わして)~する必要がある
nevertheless(副)それにもかかわらず、それでも(=none the less)
mutter(他)低い声でぶつぶつ言う(+引用)
my(代)私の
knuckle(名)(通例the knuckles)(こぶしの)指関節部、げんこつ
through(前)(貫通・通過を表わして)~を突き破って
glass(名)窓ガラス
stretch(他)(手足などを)伸ばす、差し伸べる(出す)(out)
seize(他)(~を)(ぎゅっと・乱暴に)つかむ、握る、捕まえる
importunate(形)(人・要求など)うるさくせがむ、しつこい
branch(名)(木の)枝
instead of ~(前置詞的に)~の代わりに
which(代)(関係代名詞)(非制限的用法で/通例前にコンマが置かれる)(主格・目的格の場合)そしてそれは(を)
close(自)(手・腕などが)握る、つかむ、抱く(on)
ice-cold(形)(氷のように)冷たい

The intense horror of nightmare came over me; I tried to draw back my arm, but, the hand clung to it, and a most melancholy voice sobbed,
‘Let me in — let me in!’

intense(形)(感情など)熱烈な、強烈な
horror(名)恐怖
nightmare(名)悪夢
come over(感情・夜気などが)~を襲う、支配する
try(他)(~を)努力する、やってみる、(~しようと)する(+to do)
draw back(~を)引き戻す
clung(動)clingの過去形・過去分詞
cling(自)(~に)くっつく、くっついて離れない、ぴったりつく
to(前)(接触・結合・付加を表わして)~に、~へ
most(副)(通例the を用いないで)はなはだ、非常に(この語が修飾する形容詞が名詞の単数形とともに用いられる時は不定冠詞を伴う/この意味のmostが修飾する形容詞・副詞は話者の主観的感情・判断を表わす)
melancholy(形)憂鬱な、陰気な、もの悲しい
sob(自)すすり泣く、涙にむせぶ
let in(~を)入れる、通す ・Please let me in. 中に入れてください。

‘Who are you?’ I asked, struggling, meanwhile, to disengage myself.

ask(他)(物事を)聞く、尋ねる(+引用)
struggle(自)もがく、あがく、努力する(+to do) ・struggle to escape 逃れようともがく
meanwhile(副)(一方)その間、そうしている間に
disengage(他)(~ oneselfで)離れる
myself(代)(再帰的に用いて)(再帰動詞の目的語に用いて)(再帰動詞とともに全体で自動詞的な意味になる)

‘Catherine Linton,’ it replied, shiveringly (why did I think of Linton? I had read Earnshaw twenty times for Linton)—‘I’m come home, I’d lost my way on the moor!’

Catherine(名)キャサリン(女性名/愛称Cathy、Kate、Kitty)
Linton(名)リントン
reply(他)(~と)答える(目的語には答える内容がくるので、人称代名詞やletterなどの名詞は用いられない)(+引用)
shiveringly(副)<shiver(自)(恐怖・寒さで)震える
do(助動)(be以外の動詞の疑問文に用いて)
think of ~(案など)を思いつく
Earnshaw(名)アーンショウ(Emily BrontëのWuthering Heightsに登場する、主人公Heathcliffの養家の名)
twenty(形)(基数の20)多数の
time(名)(複数形で)倍
for(前)(対応)~に対して
I'm I amの短縮形
come(自)(人・ものが)(ある場所に)到着する、やってくる
home(副)わが家へ ・come home 帰宅する
I'd I hadの短縮形
lose(他)(道を)見失う、(道に)迷う ・lose one's way 道に迷う
way(名)(通例単数形で)(the ~、one's ~)行く道 ・lose one's way 道に迷う
moor(名)(英)荒れ地、荒野、ムア(イングランドスコットランドでheatherの生えた通例泥炭質の土地/特に、ライチョウ(grouse)の狩猟場)

As it spoke, I discerned, obscurely, a child’s face looking through the window — Terror made me cruel; and, finding it useless to attempt shaking the creature off, I pulled its wrist on to the broken pane, and rubbed it to and fro till the blood ran down and soaked the bed-clothes: still it wailed, ‘Let me in!’ and maintained its tenacious gripe, almost maddening me with fear.

as(接)(時を表わして)~している時、~したとたんに
discern(他)(~が)かろうじて見える(聞こえる)、(~を)どうにか認める
obscurely(副)<obscure(形)(音・形など)はっきりしない、ぼんやりした
look through ~ ~を通して見る
terror(名)(非常な)恐怖
make(他)(~を)(~に)する(+目+補)
cruel(形)(人・行為など)残酷な、冷酷な、無慈悲な、じゃけんな
find(他)(~が)(~であると)知る、感じる、わかる(+目+補)
useless(形)役に立たない、無用(無駄)な(⇔useful/pointless)
attempt(他)(~を)試みる、企てる(結果的な失敗を含意することが多い)
creature(名)(通例修飾語を伴って)人、やつ、女、子
off(副)(分離を表わして)分離して、とれて
its(代)それの、あれの、その
wrist(名)手首
onto(前)~の上へ((英)ではon toとすることもある)
broken(形)壊れた、砕けた、破れた
pane(名)窓ガラス(の1枚)
rub(他)(もの・ものの表面を)手などでこする
to and fro あち(ら)こち(ら)に
till(接)(動作・状態の継続の期限を表わして)~まで(ずっと)
run down 流れ落ちる
soak(他)(液体が)(~を)ずぶぬれ(びしょぬれ)にする
bedclothes(名)(複)寝具、夜具(=bedcovers)(敷きぶとんを除きベッドに使うシーツ・毛布類)
still(副)それでも(やはり)、なお(=nonetheless)
wail(他)(~を)嘆く、嘆き悲しむ(+引用)
maintain(他)(~を)持続する、維持する(=preserve)
tenacious(形)しっかり握って離さない
gripe→grip(名)(通例単数形で)つかむ(握る)こと
almost(副)(動詞を修飾して)もう少しで、すんでのところで、~するばかりに
madden(他)(人を)発狂させる
with(前)(原因を表わして)~のせいで、~のゆえに、~のために ・with fear 怖くて

‘How can I!’ I said at length.

say(他)(人に)(~と)言う、話す、述べる、(言葉を)言う(+引用)
at length ついに、ようやく

‘Let me go, if you want me to let you in!’

let ~ go(~を)行かせる
want(他)(人が)(人に)(~することを)望む、(人に)(~して)ほしいと思う(+目+to do)

The fingers relaxed, I snatched mine through the hole, hurriedly piled the books up in a pyramid against it, and stopped my ears to exclude the lamentable prayer.

relax(自)(緊張・力などが)緩む
snatch(他)(通例副詞句を伴って)(ものを)ひったくる、ひっつかむ
mine(代)私のもの(さす内容によって単数または複数扱いとなる)
through(前)(貫通・通過を表わして)(戸口・経路など)を通り過ぎて、~から
hurriedly(副)大急ぎで、あわてて、あわただしく
pile up(~を)積み重ねる
in(前)(配置・形状をなして)~をなして、~になって
pyramid(名)ピラミッド形のもの
against(前)~に立てかけて
stop(他)(穴・出口などを)埋める、ふさぐ ・stop one's ears 耳をふさぐ
exclude(他)(~の)入ることを拒む
lamentable(形)悲しい、悲しむべき
prayer(名)(通例単数形で)嘆願

I seemed to keep them closed above a quarter of an hour, yet, the instant I listened again, there was the doleful cry moaning on!

seem(自)(~と)見える、思われる、(~)らしい(+to do)
keep(他)(~を)ずっと(~の状態に)しておく(+目+補)
closed(形)(ドア・窓・蓋など)閉じた、閉鎖した(⇔open)
above(前)(基準・数量など)~を越える(て)
yet(接)それにもかかわらず、しかしそれでも、それなのに
instant(名)(the ~/接続詞的に)~した(する)瞬間に、~するやいなや(=minute)
there(副)(thereは形式上主語のように扱われるが、動詞の後に通例不特定のものや人を表わす主語が続く/「そこに」の意味はなく、日本語ではthere isで「~がある」の意になる)/(beを述語動詞として)
doleful(形)悲しげな、悲しい、憂いに沈んだ
cry(名)叫び(声)
moan(自)うめく、うなる
on(副)(動作の方向を表わして)前方へ、こちらの方に、~を先に向けて

‘Begone!’ I shouted, ‘I’ll never let you in, not if you beg for twenty years!’

begone(自)(命令法または不定法で)立ち去れ!
shout(他)(~を)大声で言う(+引用)
I'll I willの短縮形
will(助動)(意志未来を表わして)(1人称の主語に伴い、発話時の話者の意志を表わし、約束・諾否・主張・選択などを示して)~するつもりである、~しようと思う
never(副)(notよりも強い否定を表わして)決して~ない
not(副)(否定の文・動詞・節などの省略代用語として)
beg(自)(人に)(~してほしいと)懇願する
for(前)(時間・距離を表わして)~の間(ずっと)
twenty(形)(基数の20)20の、20個の、20人の

‘It's twenty years,’ mourned the voice, ‘twenty years. I’ve been a waif for twenty years!’

it's it isの短縮形
it(代)(非人称動詞(impersonal verb)の主語として)(特にさすものはなく、従って訳さないで文の形式的主語となる)/(時間・日時を漠然とさして)
mourn(他)悲しそうに言う
I've I haveの短縮形
waif(名)浮浪児、宿なし子
【参考文献】
Wuthering Heights (Penguin Classics)』Emily Brontë・著
嵐が丘(上) (光文社古典新訳文庫)小野寺健・訳
新英和中辞典 [第7版] 並装』(研究社)
リーダーズ英和辞典 <第3版> [並装]』(研究社)
リーダーズ・プラス』(研究社)

日本古典文学を原文で読む(第1回)ガイダンス

日本古典文学を学ぼう
僕は中学・高校時代、国語が得意科目でした。
定期試験で学年トップを獲ったことも何度かあります。
現代文が一番得意だったのですが、古文もまあまあでした。
実は、僕の実家が某巨大宗教団体の熱心な信者で、幼い頃から会合に連れて行かれては、日蓮の書いた文を原文で読むのを聞かされたりしていたので、古文にはなじみがあったのです。
中学時代は、学校の授業を聴いているだけで、特に他には何も勉強しなくても、古文のテストでは点を取れていたと思います。
高校に入ると、授業で本格的に古典文法を教わりました。
助動詞の活用は、無条件で丸暗記。
僕は英語も数学もさっぱりでしたが、国語は得意という自覚があったので、意地になって、完璧に覚えました(もちろん、今ではかなり忘れています)。
大学受験に関して、よく「学校の授業だけでは足りない」などと言われますが、古典文法に関しては、そんなことはないと思います。
今、僕の手元に、『精選 古典文法』(明治書院)という、高校の古典文法のテキストがありますが、ここに載っていることが、知識として必要な全てです。
考えてみれば、古典文法さえ学べば、1000年以上も昔の文学作品を原文で読めます。
古文は日本語ですから。
これは、スゴイことではないでしょうか。
例えば、高校の古典では、『源氏物語』を読みますが、諸外国では、普通の高校生が大昔の古典を学校で習うなどということは、なかなかないそうです。
僕の知り合いの、国文科出身の編集者は、「『源氏物語』くらい読めますよ。日本語ですから、何となく意味は分かります」と言っていました。
さて、僕も大学受験が近付いて来ると、人並みに「受験勉強をしなければ」という気分になります。
当時の僕は、駿台の参考書を集めるのにハマッており、古文も例外ではありませんでした。
今、僕の手元に、1990年、つまり、僕が高校3年生の時に発行された『古文入門』(駿台文庫)という参考書があります。
この本のカバーの袖に、当時刊行されていた駿台文庫の古文参考書の一覧が載っていますが、僕はそれを全部持っていました。
と言っても、「持っていた」だけで、「使った」訳ではありません。
当時の駿台の参考書全般に言えることですが、古文の参考書も、大学受験には高度過ぎました。
『古文入門』ですら、「入門」とはあるものの、難しく、僕は最初の数ページで放り出してしまったのです。
『古典文法入門』は最後まで読みましたが、練習問題は、動詞や助動詞の活用表を埋めるようなもので、この本に載っている程度のことは、学校の授業で習いました。
『古文読解教則本』も、ノートを作って、最後まで読み通したと思います。
助動詞・助詞・敬語を含んだ例文と現代語訳を362、並べたもので、英語で言うと、『基本英文700選』のような感じです。
これを全て覚えられれば、古典文法を全範囲、網羅出来ます。
ただ、暗記の苦手な僕は、覚えるところまでは行きませんでした。
これ以外の駿台の古文の参考書は、どれも趣味的な内容です。
国文科志望で、古文が大好きという受験生なら、入学後のことを考えて、目を通しておいてもいいのかも知れませんが。
普通の受験生は、私立文系でも、300点満点で、せいぜい30点位の配点しかない古文に、そこまで労力を割けるはずがありません。
例えば、『古典文学読解演習』という参考書があります。
その名の通り、古文の読解問題を集めた本ですが。
第一問の出典は、何と『古事記』と『日本書紀』です。
大学の国文科なら、『古事記』は必ず読むのでしょうが、大学入試で出題されるなんて、聞いたことがありません。
ただし、言い換えれば、古典文法さえ知っていれば、日本最古の文学作品も読めるということですが。
このように、余りにも受験を超越した内容なので、当時出版されていた駿台の古文の参考書は、現在では、いずれも絶版になっています(アマゾンの中古ではプレミアが付いていますが)。
唯一、生き残っているのが、『古文解釈の方法』という本です。
これは、当時の僕は持っていなくて、最近になって購入して、読んでいるのですが、非常に素晴らしい参考書だと思います。
古文が読めるということは、要するに、頭の中で現代語訳が出来るということです。
古文は日本語なので、現代語と共通の語や意味もたくさんあります。
問題になるのは、現代語とは違う部分です。
本書は、それを、どう見分ければ良いかが、具体的に解説されています。
考えてみれば、学校の授業では、助動詞の活用は丸暗記させられましたが、それを実際に文章を読む時にどう活用すれば良いかは、ほとんど教わりませんでした。
『古文解釈の方法』を読むと、それが分かります。
この本こそ、受験の時に読んでおけば良かったと、後悔しました。
文学史については、以前も書いたように、全く勉強しませんでした。
暗記が苦手なので。
同様に、古文単語も、全く覚えませんでした。
まあ、そんな調子でも、模試などではそれなりに点が取れていたので、何とかなったのです。
こうして、何とか大学受験を乗り切り、僕は第二志望だった都内の私大の文学部(夜間部)に進学しました。
この大学の文学部は、1年次は学科に分かれておらず、2年に進級する時に、自分の希望する学科に成績順で進学するというシステムでした。
1年次には、基礎科目で「国語」という必修科目がありました。
300ページくらいの、高校の国語の教科書のような共通テキストがあり、中身は、古代から近代までの日本文学のアンソロジーでした。
その中から、担当する先生の専門によって、授業で使う箇所が決められます。
僕は、1年生は一度留年していますが、その後、英文科に進級しているので、「国語」の単位も取っているはずです。
しかし、どんな先生で、どんな授業で、何の作品を読んだかなど、全く覚えていません。
何ということでしょう。
そのテキストも古本屋に売ってしまいました。
それを今、非常に後悔しています。
最近になって、英文学を学ぶ前に、その前提として、日本文学も一通り知っておくべきではないかという気持ちが、強く芽生えて来ました。
僕が在籍していた学部で、学科に進む前に、「国語」が必修だったのも、そういう意味があったのではないかという気がします。
実は先日、僕の行き付けの喫茶店で、そこのアルバイトの某難関大学在籍の女の子が、岩波文庫の『古事記』を読んでいるのを目撃して、大いに刺激されたというのも、多少はありますが。
(なお、世間では、新元号制定とやらで、やたら『万葉集』なんぞをありがたがって読み始める輩が急増しているようですが、僕はそういった連中に与するつもりは一切ありません。天皇制には、あくまで反対だからです。)
そこで、後悔しても仕方がないので、これから日本の古典文学を、少しずつ読んで行くことにしました。
テキストについて
文学史のテキストとしては、近代文学と同様、次のものを使うことにします。

はじめて学ぶ日本文学史 (シリーズ・日本の文学史)

はじめて学ぶ日本文学史 (シリーズ・日本の文学史)

初版は2010年。
編著者は榎本隆司氏(早稲田大学名誉教授)。
500ページ以上の大部の本ですが、1冊で上代から近代まで網羅されているのが特徴です。
通読するのは大変ですが、その都度、時代の概観や作家・作品の解説などを参照したいと思います。
ただし、この本はアンソロジー形式ではありません。
そこで、実際に読む原文は、別途調達します。
ここで読むのは、文庫で現在手に入るものに限ることにしました。
その方が入手し易いからです。
古典の代表的な作品の原文は、岩波文庫などから出ています。
と言っても、一つの作品を全部読んでいると、それだけで膨大な時間が掛かってしまうので、読むのは冒頭部分のみです。
読んで行く作品は、『詳説日本史』(山川出版社)に載っているものを基準にします。
何故、日本史の教科書かと言うと、文学史の教科書だと、細かくなり過ぎて、「代表作」でないものも多数、含まれるからです。
僕の細君は、大学受験の時に日本史を選択しましたが、国語の文学史の問題は、特に勉強はしなくても、日本史の知識だけで対応出来たと言っていました。
辞書について
古文は、現代文とは違うので、当然ながら、読むには古語辞典が必要です。
古語辞典には、大きく分けて、大人用(大学生以上)のものと、高校生向けのものがあります。
高校生向けのものは、現在では「全訳」(例文に全て現代語訳が付いている)が主流です。
ただ、僕が高校生の頃は、「全訳」は未だ、小学館の『全訳古語例解辞典』しか出ていませんでした。
僕の高校の推薦辞書は、この小学館の『全訳』と、角川の『古語辞典』でしたが、僕は両者のうち、特に深く考えず、角川の方を選びました。
この選択には、今でも後悔しています。
角川の古語辞典は、高校生にも一応配慮はしていますが、基本的には大人向けの辞書です。
高校生向けの「全訳」辞典と大人向けの古語辞典との最も大きな違いは、収録語数でしょう。
概ね、「全訳」は約2万語、大人向けの古語辞典は約4万語くらいです。
大学受験用の古文単語帳の一番語数の多いものでも、600語ほどしか載っていないので、高校生の古文学習に、そんなに語数の多い辞書が必要なはずがありません。
それよりも、例文に現代語訳が付いている方が、遥かに分かり易いでしょう。
古文を習い始めたばかりの高校生では、大人向けの辞書など使いこなせるはずがなく、ただ単語の意味を引くだけになってしまいます。
しかしながら、これから日本の古典文学を順番に読んで行くとなると、話しは別です。
なるべく語数の多い辞書でないと困ります。
昨今は、古典文学を取り巻く状況も厳しいのでしょうか。
僕が高校時代に使った角川の古語辞典は絶版になっています。
いや、それどころか、角川や小学館から出ていた『古語大辞典』も絶版です。
国文科の学生はどうするのでしょうか。
それはさておき、現状では、大人向けの語数の多い古語辞典で、高校生など初学者にも配慮しているのは、次の旺文社のものしかありません。
旺文社古語辞典 第10版 増補版

旺文社古語辞典 第10版 増補版

初版は1960年。
第十版増補版の発行は2015年。
編者は、松村明氏(東京大学名誉教授)、山口明穂氏(東京大学名誉教授)、和田利政氏(国学院大学名誉教授)。
売れ筋なのか、頻繁に改訂されているので、信用出来ます。
収録語数は4万3500。
巻頭の「この辞典のきまりと使い方」には、「この辞典は、高等学校における古典の学習に役だち、大学入試準備はもちろん、専門の大学生や古典に親しもうとする一般社会人にも利用しやすいように、編集したものである」とあります。
それでは、次回以降、具体的に作品を読んで行きましょう。
(なお、ネットの性質上、古文でも横書きになります。悪しからず、ご了承下さい。)
【参考文献】
精選古典文法』(明治書院
古文入門?探求・読解の着眼点 (駿台受験叢書)』桑原岩雄、関谷浩・共著(駿台文庫)
大学受験必修古典文法入門 (駿台受験シリーズ)』桑原岩雄、中島繁夫、関谷浩(駿台文庫)
古文読解教則本[改訂版]―古語と現代語の相違を見つめて (駿台受験シリーズ)』高橋正治・著(駿台文庫)
新・基本英文700選 (駿台受験シリーズ)』鈴木長十、伊藤和夫・共編(駿台文庫)
駿台受験叢書 古典文学読解演習 古典とともに思索を』高橋正治・著(駿台文庫)
古文解釈の方法 (駿台受験シリーズ)』関谷浩・著(駿台文庫)
詳説日本史B 改訂版 [日B309] 文部科学省検定済教科書 【81山川/日B309】笹山晴生佐藤信五味文彦、高埜利彦・著(山川出版社
全訳古語例解辞典』(小学館
角川新版古語辞典』(角川書店

『街の恋』

連休中は、ブルーレイで『街の恋』を見た。

1953年のイタリア映画。
監督は、フェデリコ・フェリーニミケランジェロ・アントニオーニ、カルロ・リッツァーニ、ディーノ・リージ、フランチェスコ・マゼッリ、チェーザレ・ザヴァッティーニアルベルト・ラットゥアーダ
音楽は、『アレキサンダー大王』のマリオ・ナシンベーネ
本作は、スター俳優を一切起用せずに、ドキュメンタリー・タッチやフィクションを交えて描かれたオムニバス映画である。
モノクロ、スタンダード・サイズ。
華やかなテーマ曲(しかし、音は曇っている)。
ナレーション「ビルと人が行き交う大都会。240万の男女が苦悩と共に生き、愛し合う。生き方や運命は十人十色だ。」
「主役は大都市に住む市民たち。彼らの記録。」
「色んな人たちの恋愛模様。恋愛を基にした記事は売れる。我々は調査してみた。」
ここで言う「大都会」とは、イタリアなので、ローマのことだ。
第一話「お金で買う愛」
監督はカルロ・リッツァーニ。
娼婦の話しである。
「街に立つ女性たちから何人か話しを聞いた。」
彼女達は、街を一晩中歩き回りながら客を探す。
警察の巡回を避けて。
シングル・マザーや、男に捨てられたとか、ほとんどの女性が似たような境遇。
僕の知り合いに、日本の性風俗やらAVやらの記事で有名なライターがいるが、彼の本にも同じような境遇の女性ばかり出て来る。
時代が変わり、国が変わっても、変わらないということか。
第二話「自殺未遂」
監督はミケランジェロ・アントニオーニ
自殺を働いた人々の話し。
婚約者を待つ女性。
彼女は、婚約者から本を持っているだけで暴力を振るわれる。
今で言うDVだな。
ちなみに、彼女の読んでいた本はチェーホフだとか。
彼女は妊娠してしまう。
が、婚約者は去ってしまった。
絶望した彼女は、車に飛び込む。
しかし、彼が戻って来て病院へ。
でも、彼とは結局、別れてしまう。
自殺をするくらいだから、不幸な人達ばかり。
娼婦もそうだったけど、なかなか重い。
第三話「3時間のパラダイス」
監督はディーノ・リージ
舞台はダンス・ホール。
出会いを求める人達で溢れ返っている。
男女お互いに相手を物色し、踊りの合間に口説く。
これは、そんなに暗い話しじゃない。
まあ、これも、形は変わっても、出会いを求める男女の姿は、いつの時代も変わらんだろう。
第四話「結婚相談所」
監督はフェデリコ・フェリーニ
この話しの主人公は、結婚相談所に興味を持って、調査をするという。
相談所で話しを聞くと、ここに来る女性たちのことを「彼女たちは真剣なんです。どんなお相手でも受け入れる」という。
主人公は、「友人が狼男のような奇病を持っているが、結婚すれば快復すると医者に言われた」と、とんでもないウソを言って、相手を探すように依頼する。
結婚相談所というのは、カネが掛かるところのようで、何だかんだと理由を付けては集金する。
人は何故、結婚相談所に行くのか?
ところが、狼男と結婚したいという女性が現れるんだな。
しかも、相手は真剣だった。
ヒドイ話しだな、全く。
第五話「カテリーナの物語」
監督はフランチェスコ・マゼッリ。
主人公の女性は、シチリアからローマへ出て、不法入国で逮捕され、その後、父親の分からない子供を産む。
育てられないので、子供は人に預ける。
だが、そんなに長期間は預かってもらえない。
仕事に就こうにも、身分証がないと就けない。
公的な施設を訪ねても、身分証がないと保護を受けられない。
身分証を発行してもらうために警察に行くと、前歴を調べられて、強制送還になってしまうから行けない。
悩んだ彼女は、とうとう子供を置き去りにしてしまう。
未だおむつをしているような子供なのに。
この話しが一番重い。
かわいそうで見ていられない。
第六話「イタリア人は見つめる」
監督はアルベルト・ラットゥアーダ
これは、特にストーリーはない。
ひたすら街を歩く若い女性と、それを見つめる男達が映し出される。
中には、ストーカーまがいなのもいる。
まあ、目の保養になるようにということだろう。
一番脳天気な内容。
最後に、ナレーションで「我々が追い求めるのは、身近にある現実のみ。」
「かつてない映像表現を徹底的に追求したのだ。」
とは言うものの、全体的にまとまりはないし、出て来るのがやっぱりちょっと訳ありな人達ばかりだから、本当の市井の人々を描いたとも言えないような気がする。
リアリズムという点でもどうだろう。
「かつてない映像表現」は言い過ぎかなあ。
まあ、フェリーニやアントニオーニが初期に参加しているから、注目されているのではないか。
僕は、『道』とか『崖』とか『カビリアの夜』は大好きだけどね。

L'amore in città (1953), Antonioni, Fellini, Risi, Lattuada, Zavattini, Maselli by Film&clips

『セルピコ』

連休中は、ブルーレイで『セルピコ』を見た。

セルピコ [Blu-ray]

セルピコ [Blu-ray]

1973年のアメリカ・イタリア合作映画。
監督は、『十二人の怒れる男』『狼たちの午後』『評決』の社会派シドニー・ルメット
製作は、『戦争と平和(1956)』『天地創造』『バーバレラ』『バラキ』『キングコング(1976)』の大プロデューサー、ディノ・デ・ラウレンティス
脚本は、『真夜中のカーボーイ』のウォルド・ソルト
編集は、『ゴッドファーザー PART II』『地獄の黙示録』のリチャード・マークス。
主演は、『ゴッドファーザー』『ゴッドファーザー PART II』『狼たちの午後』『スカーフェイス』『ゴッドファーザー PART III』の我らが大スター、アル・パチーノ
なお、僕は「好きな俳優は?」と訊かれたら、「アル・パチーノ」と答えることにしている(ちなみに、好きな女優はシャルロット・ゲンズブール)。
アル・パチーノは、『ゴッドファーザー』『セルピコ』『ゴッドファーザー PART II』『狼たちの午後』『ジャスティス』『ディック・トレイシー』『摩天楼を夢みて』でアカデミー賞にノミネートされているが、なかなか受賞出来なかった。
しかし、1993年、『セント・オブ・ウーマン/夢の香り』で、ようやく念願の主演男優賞を獲得する。
僕は、この映画を、当時、僕のアパートの隣の部屋に住んでいた高校時代の友人と観に行った。
そして、観終わった後に、アル・パチーノの演技に感服したのであった。
彼は、出演作を選んでいる。
セルピコ』に話しを戻す。
共演は、『新・猿の惑星』『レッズ』のM・エメット・ウォルシュ。
僕は、本作を10年くらい前に一度、DVDで見ているが、内容はおぼろげにしか覚えていなかった。
今回、廉価版でブルーレイが出たので、購入し、再見することにしたのである。
パラマウント映画。
カラー、ワイド。
サイレンの音が聞こえる。
1971年2月、ニューヨーク市警の警官フランク・セルピコアル・パチーノ)が撃たれた。
同僚の警官のしわざだという。
セルピコは恨まれていたからな」と彼の上司。
雨の中、セルピコを乗せたタクシーは走り、救急病院へ。
希望と使命感に燃えて警察学校を卒業した時のセルピコの回想。
現在へ。
地区総監グリーンが病室に見舞いに来る。
再び回想。
セルピコは最初、ブルックリンの82分署に配属された。
出勤するセルピコ
目付きが鋭い。
彼は自分の考えを貫くタイプであった。
事件が起きても、先輩は担当地区じゃないと行こうとしない。
セルピコは黒人の集団レイプの現場に駆け付ける。
全力で、逃げようとした犯人の一人を捕まえる。
被害者の黒人女性が証言する。
セルピコの先輩刑事は、黒人レイプ犯のキンタマを蹴り上げる。
暴力三昧である。
今なら大問題になるだろう。
相手が黒人だしな。
「お前もやれ」と促されたセルピコだが、暴力は忌避した。
セルピコは、黒人レイプ犯と手錠ナシでコーヒーを飲み、仲間の名前を聞き出す。
そして、非番の時に連中を見付け出すが、「応援を寄越せ」と頼んでも断られる。
仕方がないので、私服で犯人を逮捕する。
後に、無断だったので、「俺達に任せろ」と怒られてしまう。
組織内で、早くも自分の理想と現実の間に苦しむセルピコの姿が映し出される。
まあ、僕は警察じゃないけど、会社でも、仕事をしないヤツなんて幾らでもいるから、ここは大いに感情移入出来るところだ。
セルピコは、友人の靴修理屋へ行くが、ここで、仕事が忙しくて、友人達と食事をする時間も取れないことが示される。
鑑識局の勤務になり、セルピコは上司から、「指紋一つに時間を掛け過ぎだ」と注意される。
セルピコは母親に会いに行く。
ここで交わされるのは、どうやらイタリア語のようだ。
母親は、何かの足しにと、セルピコに貯金通帳を手渡す。
母親というのはありがたいものだ。
ある日、セルピコが帰宅すると、家の前で女の子が子犬を売っていた。
彼は5ドルで子犬を引き取る。
この子犬は長毛種で、後には大きく成長して、最後まで彼のパートナーであり続ける。
と言うより、この子犬だけがパートナーとして残るのだが。
切ないね。
セルピコは、向上心を満足させることと息抜きを兼ねて、ニューヨーク大学に通うようになった。
まあ、こんな腐った組織にいりゃあ、外で勉強したいと思うわな。
で、おそらくスペイン文学の講義だろう、セルバンテスの『ドン・キホーテ』の話しを教授がしているクラスで見掛けた女子大生をナンパして、自分のバイクに乗せる。
いいのか、警官がノー・ヘルでバイクに二人乗りして。
彼女はレズリーといい、バレエ・ダンサーであった。
セルピコも、彼女の影響で、バレエの勉強を始める(ヘタクソだが)。
ある夜、セルピコが署でトイレに行くと、窓から双眼鏡でノゾキをしている同僚がいた。
そこへ、たまたまやって来た上司に、セルピコはホモと間違えられてしまう。
これが、後に禍根を残すのだが。
まあ、現在では一見、LGBTに対する理解が深まったように見えるが、根底には、差別意識が根強く残っていると思う。
セルピコは、「あそこにいても未来はない。転属したい」と強く望むようになる。
彼は、レズリーとパーティーへ出掛けた。
彼女が友人達にセルピコのことを「彼は刑事よ」と紹介すると、皆に引かれる。
余談だが、このパーティーの雑談の中で、ある女の子が「日本の文化や絵画は細かく様式化され過ぎ」と語る。
転属先で最初、セルピコは上司から「ヒゲを剃って髪を切れ」と言われるが、「俺達はもっと町へ出て話しをすべきだ。そのためには、この格好じゃないと溶け込めない」と言うと認められる。
セルピコは同僚に「俺は刑事になりたい」と語るが、「ウソだろ」と一笑に付される。
ある日、セルピコが黒人の泥棒を見掛けて、捕まえようとしたら、同僚に警告ナシで発砲される。
「俺は警官だ!」
「その格好で分かるかよ!」
発砲した警官は、問題になることを避けるため、「この犯人を自分が捕まえたことにしてくれ」とセルピコに頼む。
セルピコは仕方なく認める。
硬直した組織内の論理だな。
セルピコは、私服刑事になるための訓練を受け始める。
マリファナを嗅ぎ分けるために、試しに吸わせてみる講習会なんかがある。
そこで、ブレアというプリンストン大学出身の同僚と仲良くなる。
訓練が終わると、セルピコは93分署に、政治に関心があったブレアは、コネでニューヨーク市長直属の調査部に配属されることになった。
セルピコは、ブレアから「町を浄化するために、一緒に組まないか」と誘われる。
ある夜、セルピコはレズリーから「あなたが結婚すると言わないから、私は別の男と結婚する」と告げられる。
ブルックリン93分署に配属された初日、セルピコは、ユダヤ人のマックスからとして、現金300ドルを渡される。
どう処理したら良いか分からないので、ブレアに相談し、調査部長に報告すると、「このことは忘れろ」と言われる。
セルピコは、この件で転属を余儀なくされる。
何度も転属して、大変だ。
その頃、自宅の隣で働いていたローリーに声を掛け、恋人にする。
今度は、ブロンクスの第7分署へ。
ここで、昔の同僚と再会し、「ホシを挙げに行こう」と誘われる。
車の中で、セルピコは同僚から「お前はカネを受け取らないから、信用できない」と言われる。
この同僚は、ギャンブルの金を幾らか受け取っているのであった。
最初から、ワイロまみれの汚い職場であることが示される。
腐敗堕落している。
けしからん!
セルピコは、ローリーに「俺は警官に憧れていた。しかし、カネをもらわないと悪人か?」とグチる。
彼は新しい相棒と組まされ、集金の仕事を担当させられる。
要するに、ワイロの回収であった。
同僚は、黒人を車で追い回し、「ワイロを払わなければパクるぞ」と恐喝する。
そうして、そのワイロでいい部屋に住んでいた。
それを見て、セルピコは心底、呆れる。
そんな時、警察のトップから「信頼できる男が現われた。情報を署内で集めよ」という指令がセルピコに下される。
しかし、待てど暮らせど、委員長から連絡がない。
ここでは、足を洗おうとしても仲間から責められるので、誰もワイロを受け取ることを止められないのであった。
セルピコの立場は次第に孤立する。
しびれを切らしたセルピコとブレアは、市長に訴えようとするが、「警察を敵に回せない」として、相手にしてもらえなかった。
さあ、これからどうなる?
後半は、いよいよ大変な展開になる。
まあ、結末は最初に示されている通り、セルピコは同僚にハメられて、撃たれてしまうのだが。
市民を守るべき警察の内部が、ここまで腐り切っているのを見せられると、怒りがふつふつと沸いて来る。
正義を貫くセルピコが、この腐った組織の中では悪人なのだ。
告発するのは大変な勇気が要っただろうし、アル・パチーノ演ずるセルピコのヒーロー振りは、称賛せずにはいられない。
本作は実話の映画化である。
映画化された当時は、未だ記憶に新しい事件だったから、この映画自体を製作するのも大変だっただろう。
最後までぐいぐいと見せる、社会派映画の傑作である。
さすがシドニー・ルメットだ。

SERPICO - Trailer ( 1973 )

「スキーピオーの夢」を原文で読む(第22回)

(テキスト18ページ、17行目〜)

(29) Hanc tū exerce in optimīs rēbus!

hic hanc hoc(指示代名詞)これ、この人
(人称代名詞)(二人称)あなた、きみ、おまえ
exerceō -ēre -ercuī -ercitum(他)(権力などを)行使する
in(前)(+奪格)(空間的)~の中に、~において、~に
optimus(形)(最上級)最もよい(すぐれた)、最高の
rēs reī(女)仕事、業務

Sunt autem optimae cūrae dē salūte patriae, quibus agitātus et exercitātus animus vēlōcius in hanc sēdem et domum suam pervolābit,

sum esse fuī(自)(繋辞として)~である
autem(接)さらに、そのうえ
cūra -ae(女)注意、配慮、関心(de 物・事の奪格)
(前)(+奪格)(関連・限定)~に関して、~について
salūs -ūtis(女)無事、安全
patria -ae(女)祖国、故郷
quī quae quod(代)(関係代名詞)(連結詞として)=et is、sed isなど
agitō -āre -āvī -ātum(他)(反復)(あちこちへ)追いたてる
et(接)~と(そして)~
exercitō -āre -āvī -ātum(他)(反復)訓練する、鍛える
animus -ī(男)(corpus 肉体に対する)精神
vēlōciter(副)早く、速やかに
in(前)(+対格)(空間的)~へ、~に向かって、~の方へ、~の中へ
hic haec hoc(形)(指示詞)この、ここの、ここにある
sēdēs -is(女)住居、住まい、居所
domus -ūs(女)家、住居
suus -a -um(所有形容詞)(再帰)自分(たち)の、彼(彼女、それ、彼ら、それら)(自身)の
pervelō -āre -āvī -ātum(自)飛んで行く、飛びまわる(in 物・事の対格)

idque ōcius faciet, sī iam tum cum erit inclūsus in corpore, ēminēbit forās, et ea quae extrā erunt contemplans quam maximē sē ā corpore abstrahet.

is ea id(代)(指示詞)彼、彼女、それ
-que(前接辞)(2語を並列する場合、2番目の語に付ける/語群や文の場合はその先頭の語に付ける)~と~、また、そして
ōcior -ior -ius(形)(比較級)よりすばやい(迅速な)
faciō -cere fēcī factum(他)する、行なう
(接)もし~ならば/(+直説法)(単純な可能性)
iam→jam(副)すでに、もう
tum(副)その時(に)、その際(に)、その当時
cum(接)(+直説法)(真に時を示す)~の時に
inclūdō -ere -clūsī -clūsum(他)囲む、閉じ込める(+物・事の奪格 in 物・事の対格)
corpus -poris(中)身体、肉体
ēmineō -ēre -minuī(自)突出する
forās(副)戸外に、外に
contemplor -ārī -ātus sum(他)(形式受動相)熟考する、考察する
quam(副)(関係詞)(+最上級)できるだけ、なるべく
maximē(副)(最上級)非常に、きわめて ・quam maximē できるだけ多く、最大限に
suī再帰代名詞)(属格)(対格:sē)
ā(前)(+奪格)~から、~より
abstrahō -ere -traxī -tractum(他)(力ずくで)引き離す、ひったくる、引きずっていく(a 物・事の奪格)

Namque eōrum animī quī sē corporis voluptātibus dēdidērunt, eārumque sē quasi ministrōs praebuērunt, impulsūque libīdinum voluptātibus oboedientium deōrum et hominum iūra violāvērunt, corporibus ēlapsī circum terram ipsam volūtantur, nec hunc in locum nisi multīs exagitātī saeculīs revertuntur.”

namque(接)もちろん、確かに
voluptās -ātis(女)喜び、楽しみ、満足
dēdō -ere didī -ditum(他)引き渡す、ゆだねる(+人の与格+物・事の対格)
quasi(副)いわば
minister -trī(男)下僕、召使
praebeō -ēre -buī -bitum(他)差し出す、差しのべる
impulsus -ūs(男)押すこと、打撃、衝撃
libīdō -dinis(女)欲望、願望
oboediō -īre -īvī -ītum(自)服従する、従順である(+与格)
deus -ī(男)(複数与格:deōrum)神
homō -minis(男)(女)人、人間
jūs jūris(中)法、法律
violō -āre -āvī -ātum(他)(条約などを)破る、犯す
ēlābor -bī -lapsus sum(自)(形式受動相)すべり出る、すべり落ちる
circum(前)(+対格)~のまわりに
terra -ae(女)地球
ipse -a -um(強意代名詞)自ら、自身
volūtō -āre -āvī -ātum(他)(反復)転がす
nec(副)~でない(=non)
locus -ī(男)場所、位置
nisi(接)(もし)~でなければ
multus -a -um(形)多数の、多くの、豊富な
exagitō -āre -āvī -ātum(他)悩ます、苦しめる
saeculum -ī(中)世代
revertor -vertī -versus sum(自)(形式受動相)引き返す、帰る

Ille discessit; ego somnō solūtus sum.’

ille illa illud(代)(指示詞)あれ、それ、あの人、その人、彼、彼女
discēdō -ere -cessī -cessum(自)立ち去る、遠ざかる
egō(人称代名詞)(一人称)私
somnus -ī(男)睡眠、眠り
solvō -ere solvī solūtum(他)解放する、自由にする
【参考文献】
ラテン語を読む キケロ―「スキーピオーの夢」』山下太郎・著(ベレ出版)
羅和辞典 <改訂版> LEXICON LATINO-JAPONICUM Editio Emendata水谷智洋・編(研究社)

『カンタベリー物語』を原文で読む(第6回)

(テキスト6ページ、7行目~)

(The Prioress)

prioress(名)(しばしばPrioress)女子小修道院

Ther was also a Nonne, a Prioresse,
That of hir smylyng was ful symple and coy;
Hir gretteste ooth was but by Seint Loy;
And she was clepyd madame Eglentyne.

Ther→There
there(副)(thereは形式上主語のように扱われるが、動詞の後に通例不特定のものや人を表わす主語が続く/「そこに」の意味はなく、日本語ではthere isで「~がある」の意になる)(beを述語動詞として)
Nonne→Nun
nun(名)修道女、尼僧
Prioresse→Prioress
that(代)(関係代名詞)(人・ものを表わす先行詞を受けて通例制限用法で)(~する(である))ところの/(主語として)
of(前)(関係・関連を表わして)~の点において、~に関して、~について
hir→her(代)彼女の
smylyng→smiling
ful→full(副)(形容詞・副詞を修飾して)まったく、非常に
symple→simple(形)純真な、無邪気な
coy(形)(若い娘・女の態度が)恥ずかしそうなふりをする(=demure)
gretteste→greatest
great(形)崇高な、深遠な
ooth→oath(名)誓い、誓約、誓言
but(副)ただ、ほんの、~だけ
by(副)(誓言・祈願を表わして)(神)のみ名にかけて、(神に)誓って
Seint→Saint
saint(名)聖人、聖徒、聖者(生前高徳であったため死後聖人の列に加えられた人、または殉教者などを呼ぶ尊称/しばしばまたは慣用的にSt.と略して名に冠しSt. Peter(聖ペテロ)、St. Thomas(聖トマス)のように用いる)
Loy→Eligius
clepyd→called
call(他)(人を)(~と)呼ぶ、称する(+目+補)
madame(名)夫人、奥様(フランスで通例既婚女性に、英国で外国人女性に対する呼び掛け/単独でまたはその姓・称号の前につけて用いる)
Eglentyne→Eglentine

Ful wel she soong the servyce dyvyne,
Entuned in hir nose ful semely;
And Frenssh she spak ful faire and fetisly,
After the scole of Stratford at the Bowe,
For Frenssh of Parys was to hire unknowe.

wel→well(副)上手に、うまく
soong→sang
sing(他)(~を)歌うように言う、唱える
servyce→service(名)礼拝(の式)、お勤め
dyvyne→divine(形)神聖な ・the divine service 礼拝式、勤行(ごんぎょう)
Entuned→Intoned
intone(自)詠唱する(=chant)
in(前)(道具・材料・表現様式などを表わして)~で、~でもって、~で作った
semely→seemly(副)魅力的に
Frenssh→French(名)フランス語
spak→spake(動)(古)speakの過去形
speak(他)(国語を)話す、しゃべる
faire→fair(副)きれいに、りっぱに
fetisly→elegantly(副)上品に、優雅に
after(前)(模倣を表わして)~に従って、にならって、にちなんで、~の流儀の
scole→school(名)(生活などの)流儀
Stratford ストラトフォード
Bowe→Bow ボウ
for(接)(通例コンマ、セミコロンを前に置いて、前文の付加的説明・理由として)という訳は~だから(=as、since)
Parys→Paris(名)パリ(フランスの首都)
to(前)(行為・作用の対象を表わして)~にとっては、~には
hire→her
unknowe→unknown(形)未知の、不明の、未詳の(to)

At mete wel ytaught was she with alle:
She leet no morsel from hir lippes falle,
Ne wette hir fyngres in hir sauce deepe;
Wel koude she carye a morsel and wel keepe
That no drope ne fille upon hir brist.

at(前)(時の一点を表わして)~に ・at dinner time 正餐(せいさん)時に
mete→meat(名)(古)食事
ytaught→taught
teach(他)(仕方を)~に教える、仕込む、ならす、身につけさせる
alle→all
with all→moreover(副)そのうえ、さらに(=furthermore、in addition)
leet→let(他)(容認・許可を表わして)(人・ものなどに)(~)させる(+目+原形)
morsel(名)(食物の)ひと口、一片
lippes→lips
lip(名)唇
falle→fall
ne→nor(接)(否定の節・文の後に用いて)~もまた~ない(「nor+動詞+主語」の倒置が起きる)
wette→wetted
wet(他)(~を)ぬらす、湿す
fyngres→fingers
in(前)(行為・動作の方向を表わして)~の中に
sauce(名)ソース
deepe→deep(副)不覚
koude→could
carye→carry
well(副)十分に、よく(=thoroughly)
keepe→keep(他)(~を)ずっと(~の状態に)しておく、保つ
that(接)(目的を表わして)~するように、~せんがために
dropedrop(名)(a ~/否定文で)少量、少し
fille→fell
brist→breast(名)胸

In curteisye was set ful muchel hir list.

in(前)(範囲を表わして)~において、~内で
curteisye→courtesy(名)礼儀(正しさ)、丁重、いんぎん、親切
set(他)(~に)(価値を)置く
muchel→much(副)(動詞を修飾して)おおいに、たいそう、非常に
list(名)(古)望み、好み

Hir over-lyppe wyped she so cleene
That in hir coppe ther was no ferthyng seene
Of grece, whan she dronken hadde hir draghte.

over-lyppe→upper lip(名)うわくちびる、上唇
wyped→wiped
wipe(他)(~(の表面)を)ふく、ふいて(~に)する(+目+補) ・wipe ~ clean ~をきれいにふく
so(副)(程度・結果を表わして)(so ~ that ~で)(順送りに訳して)非常に~なので~
cleene→clean
that(接)(副詞節を導いて)(so ~ thatの形で程度・結果を表わして)(非常に)~なので、~(する)ほど
coppe→cup
ferthyng→farthing(名)(a ~/否定文に用いて)わずか、少し
seene→seen
of(前)(分量・内容を表わして/数量・単位を表わす名詞を前に置いて)~の
grece→grease(名)(柔らかい)獣脂、脂(あぶら)
whan→when(接)~する時に、~時(時を表わす副詞節をつくる)
dronken→drunk
hadde→had
draghte→draft(名)ひと息に飲むこと(量)、ひと口 ・drink at a draft(ひと息に)ぐいと飲む

Ful semely after hir mete she raghte.

after(前)(目的・追求を表わして)~のあとを追って、~を求めて、~を追求して
meat(名)(古)(飲み物と区別して)食べ物
raghte→reached
reach(自)(副詞句を伴って)(ある目的で)手(腕)を伸ばす(=stretch)

And sikerly she was of greet desport,
And ful plesaunt, and amyable of port,
And peyned hire to countrefete chiere
Of court, and been estatlich of manere,
And to been holden digne of reverence.

sikerly→certainly
of(前)(of+名詞で形容詞句をなして)~の
greet→great(形)(能力・価値・重要性など)偉大な、すぐれた、卓越した
desport→deportment(名)(人前での)態度、ふるまい、行儀
plesant→pleasant(形)(人・態度など)快活な、陽気な
amyable→amiable(形)(人・気質など)愛想のよい、気だての優しい
port(名)態度、ふるまい
peyned→pained
pain(他)(人を)心痛させる、悲しませる
countrefere→counterfeit(他)模造する、まねる、似せる
chiere→cheer/manner(名)(複数形で)行儀、作法
court(名)宮廷、宮中、王室
estatlich→stately(形)威厳のある、堂々とした
manere→manner(名)(a ~、one's ~)態度、物腰、様子、挙動
holden→held
hold(他)(~と)思う、考える(+目+補)
digne→worthy(形)(~に)値して、ふさわしくて(⇔unworthy)
reverence(名)(深い尊敬・愛情をもった)崇敬、尊敬

But for to speken of hir conscience,
She was so charitable and so pitous
She wolde wepe, if that she sawe a mous
Caught in a trappe, if it weere deed or bledde.

for(前)(目的・意向を表わして)~のために、~を目的として
speken→speak
conscience(名)(廃)(心の中の)考え、気持 ・speak one's conscience 自分の考えを率直に話す
charitable(形)(人を判断するのに)寛大(寛容)な(⇔uncharitable)
pitous→piteous(形)(古)情け深い
wolde→would(助動)(仮定法(叙想法)で用いて)(現在または未来の事柄について帰結節で無意志の仮定を表わして)~(する)だろう
wepe→weep(自)(涙を流して)泣く
if that→if
sawe→saw
see(他)(~を)見る、(~が)見える(+目+過分)
mous→mouse
trappe→trap(名)(鳥獣などを捕らえる)わな、落とし ・catch an animal in a trap わなで動物を捕らえる
weere→were
deed→dead
bledde→bled(動)bleedの過去形・過去分詞
bleed(自)出血する

Of smale houndes hadde she that she fedde
With rosted flessh, or mylk and wastel-breed.

of(前)(目的格関係を表わして)~を、~の
smale→small
houndes→hounds
hound(名)(通例複合語で)猟犬
feddefed
with(前)(材料・中身を表わして)~で
rosted→roasted
roast(他)(肉などを)(オーブンなどで輻(ふく)射熱を用いて)焼く、ローストする ・roast beef 牛肉を焼く
flessh→flesh(名)(人間・動物の)肉
mylk→milk
wastel-breed→expensive fine white bread
expensive(形)高価な、費用のかかる(⇔inexpensive)
fine(形)(品質の)上等な
white bread(名)白パン(精製した小麦粉で作る)

But soore wepte she if oon of hem were deed,
Or if men smoot it with a yerde smerte;
And al was conscience and tendre herte.

soore→sorely(副)ひどく、はなはだしく、非常に
wepte→wept(動)weepの過去形・過去分詞
oon→one(代)(単数形で)(特定の人(もの)の中の)一つ、1個、一人(of)
of(前)(部分を表わして)~の中の
hem→them
man(名)(無冠詞で総称的に)(動物と区別して)人、人間
smoot→smote(動)smiteの過去形
smite(他)(~を)(~で)打つ、強打する(with)
with(前)(道具・手段を表わして)~を用いて、~で
yerde→yard/stick
smerte→smartly(副)すばやく
al→all(代)(単数扱い)すべて(のもの)、万事
conscience(名)良心、道義心、善悪の観念
tendre→tender(形)(他人に対して)思いやりがあって優しい
herte→heart(名)(感情、特に優しい心・人情が宿ると考えられる)心、感情

Ful semely hir wympel pynched was,
Hir nose tretez, hir eyen greye as glas,
Hir mouth ful smal, and therto softe and reed.

wympel→wimple(名)(中世に女性が用いたが、現在では修道女が用いる)ベール
pynched→pinched/pleated
pleat(他)(~に)ひだをとる(つける)
tretez→shapely(形)(女性の体・脚が)かっこうのよい、姿のよい、均整のとれた
eyen→eyes
greye→grey/gleaming
gleam(自)きらめく
as(接)(様態・状態を表わして)~のように
glas→glass
smal→small
thereto(副)なおそのうえに
softe→soft
reed→red

But sikerly she hadde a fair forheed;
It was almoost a spanne brood, I trowe;
For, hardily, she was nat undergrowe.

have(他)(部分・属性として)(特徴・性質・能力などを)もっている
fair(形)(古)(女性が)美しい
forheed→forehead(名)額(ひたい)、前額部(=brow)(人間の感情・性格を示す部分とされている)
almoost→almost(副)(形容詞・副詞を修飾して)だいたい、ほとんど
spannne→span(名)スパン(親指と小指とを張った長さ/通例9インチ、23センチ)
brood→broad(形)(数量を示す語句を伴って)幅が~の ・5 feet broad 幅5フィート
trowe→believe(他)(~と)思う、信じる(+that)
hardily→certainly
nat→not
undergrowe→undergrown(形)発育不十分の

Ful fetys was hir cloke, as I was war.

fetys→elegant(形)(人・行動・服装・場所など)上品な、優雅な、しとやかな
cloke→cloak(名)(ゆったりとした)そでなしの外套(がいとう)、マント
as(代)(関係代名詞)(前後の主節全体を先行詞として、非制限的に用いて)それは~だが
war→aware(形)(~に)気づいて、(~を)知って(=conscious)(⇔unaware)(+that)

Of smal coral aboute hir arm she bar
A peyre of bedes, gauded al with greene,
And theron heeng a brooch of gold ful sheene,
On which was first writen a crowned A,
And after Amor vincit omnia.

coral(名)サンゴ
aboute→about(前)~の周りに、~を巡って
bar→bare(動)bearの過去形
bear(他)(武器・マーク・痕跡(こんせき)などを)身につける、帯びる
peyre→pair
bedes→beads
bead(名)ビーズ、ガラス玉、数珠(じゅず)玉 ・a string of beads 一連のビーズ
gauded→adorned
adorn(他)(美しい人・ものを)(さらに美しいもので)飾る、装飾する(with)
all(副)まったく、すっかり
greene→green
theron→thereon(副)そのうえに
heng→hung
hang(自)(副詞句を伴って)かかる、ぶら下がっている、垂れ下がる
brooch(名)ブローチ、襟止め、胸飾り
sheene→sheeny(形)ぴかぴかの、光沢(つや)のある
which(代)(関係代名詞)(非制限的用法で/通例前にコンマが置かれる)(主格・目的格の場合)そしてそれは(を)
first(副)(序数の第1番)(second、third(第二(三)に)と列挙する時に文頭に用いて)まず第一に、最初に(=firstly)
writen→written
crowned(形)冠飾のある
A(名)エイ(英語アルファベットの第1字)
after(副)(順序を表わして)あとに
Amor vincit omniaラテン語)Love conquers all.
conquer(他)(競争相手などに)勝つ、勝利を得る

Another Nonne with hire hadde she,
That was hire chapeleyne, and preestes thre.

have(他)(ある関係を表わして)(肉親・友人など)いる、(~が)ある
chapeleyne→chaplain(名)来は移動勤務の牧師(大邸宅・学校・病院などの礼拝堂所属)
preestes→priests
priest(名)(特にカトリックの)司祭
thre→three(形)(基数の3)3の、3個の、3人の
【参考文献】
原文対訳「カンタベリィ物語・総序歌」』苅部恒徳、笹川寿昭、小山良一、田中芳晴・編・訳・注(松柏社
カンタベリー・テールズ市河三喜、松浪有・編注(研究社)
新英和中辞典 [第7版] 並装』(研究社)
リーダーズ英和辞典 <第3版> [並装]』(研究社)
リーダーズ・プラス』(研究社)

『ヴェニスの商人』を原書で読む(第2回)

WILLIAM SHAKESPEARE

Shakespeare, William(名)シェイクスピア(1564-1616/英国の劇作家・詩人)

The Merchant of Venice

The Merchant of Veniceベニスの商人」(Shakespeare作の喜劇)
(テキスト3ページ、1行目~)

The Characters in the Play

character(名)(小説などの)人物、(劇の)役
in(前)(範囲を表わして)~において、~内で
play(名)劇、戯曲、脚本

The DUKE of Venice

duke(名)(しばしばDuke/称号にも用いて)公爵
Venice(名)ベニス、ベネチア(イタリア北東部の港市)

ANTONIO, a merchant of Venice

Antonio アントーニオー(Shakespeare, The Merchant of Veniceに登場する青年貿易商)
merchant(名)商人

BASSANIO, his friend, suitor of Portia

Bassanio バッサーニオ(Shakespeare, The Merchant of Veniceに登場する青年/Portiaに求婚する)
his(代)彼の
suitor(名)(男性の)求婚者
Portia(名)ポーシャ(Shakespeare作「ベニスの商人」の女主人公)

GRATIANO friends of Antonio and Bassanio
SALERIO
SOLANIO

Gratiano(名)グラシアーノ(Shakespeare, The Merchant of Venice中の、AntonioとBassanioの友人の一人でおしゃべりな男/Portiaの侍女Nerissaと結婚する)
Salerio(名)サレリオ(Shakespeare, The Merchant of Venice中の、AntonioとBassanioの友人の一人)
Solanio(名)ソラーニオ(Shakespeare, the Merchant of Veniceに登場する端役)

LORENZO, in love with Jessica

Lorenzo ロレンゾ(男子名)
in(前)(状態を表わして)~の状態に(で)
love(名)(異性に対する)恋愛、恋
with(前)(感情・態度の対象を導いて)~に対して、~に
Jessica(名)ジェシカ(女性名)

LEONARDO, servant of Bassanio

Leonardo レオナード(男子名)
servant(名)召し使い、使用人(=domestic)

SHYLOCK, a Jew of Venice

Shylock(名)シャイロックShakespeareベニスの商人」中の冷酷なユダヤ人の金貸し)
Jew(名)ユダヤ

JESSICA, his daughter

TUBAL, a Jew of Venice, Shylock's friend

Tubal(名)テューバル(Shakespeare, The Merchant of Veniceに出てくるShylockの友人のユダヤ人)

LAUNCELOT Gobbo, servant of Shylock

Gobbo ゴッボー Launcelot ~(Shakespeare, The Merchant of Venice中の道化/苛酷なShylockを見捨ててBassanioのもとに走る)

Old GOBBO, father of Launcelot

PORTIA, the Lady of Belmont

Lady(名)(姓または領地名の前につけて)女侯爵(女伯爵、女子爵、女男爵)または侯爵(伯爵、子爵、男爵)夫人の略式の敬称
Belmont ベルモント

NERRISA, Portia's waiting-woman

Nerissa ネリッサ(Shakespeare, The Merchant of Veniceの中で、Gratianoと結婚するPortiaの侍女)
waiting(形)仕える ・a waiting maid 侍女、腰元

The Prince of MOROCCO suitors of Portia
The Prince of ARRAGON

prince(名)(しばしばPrince)(大国に守られた公国・小国の)王、君主、公
Morocco(名)モロッコ(アフリカ北西部の王国/首都Rabat)
Arragon→Aragon(名)アラゴン(スペイン北東部のフランスとの国境地方/もと王国)

BALTHASAR servants of Portia
STEPHANO

Balthasar→Balthazar(名)バルサザール(男子名)
Stephano(名)ステファノー(Shakespeare, The Merchant of Venice中の、Portiaの召使)

SERVINGMAN

servingman(名)(古)奉公人、従者

MESSENGER

messenger(名)使いの者、使者

Antonio's MAN

man(名)召し使い、下男

CLERK

clerk(名)(官庁・法廷の)書記、事務官、下院事務総長(=clerk of the House)

Magnificoes of Venice, officers of the Court of Justice, a gaoler, musicians, servants and other attendants

magnifico(名)(昔のベネチア共和国の)貴族
officer(名)(しばしば修飾語を伴って)(~)役人、(~)官、(~)吏
court(名)法廷、裁判所 ・a court of justice 法廷、裁判所
justice(名)司法、裁判
gaoler(名)(英)=jailer(名)(拘置所・刑務所の)看守
musician(名)音楽家、(特に)演奏家、ミュージシャン
attendant(名)付き添い人、随行
【参考文献】
The Merchant of Venice (Penguin classics) (English Edition)
新訳 ヴェニスの商人 (角川文庫)河合祥一郎・訳
新英和中辞典 [第7版] 並装』(研究社)
リーダーズ英和辞典 <第3版> [並装]』(研究社)
リーダーズ・プラス』(研究社)

『赤い航路』

連休中は、『赤い航路』をブルーレイで見た。

赤い航路 Blu-ray

赤い航路 Blu-ray

1992年のフランス・イギリス合作映画。
監督は、『ローズマリーの赤ちゃん』『チャイナタウン』の巨匠ロマン・ポランスキー
音楽は、『炎のランナー』のヴァンゲリス
撮影は、『続・夕陽のガンマン』『ウエスタン』『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』のトニーノ・デリ・コリ。
出演は、ヒュー・グラントクリスティン・スコット・トーマスピーター・コヨーテエマニュエル・セニエ
この作品は、ちょうど僕が大学に入学した年に公開された。
僕は、「ロマン・ポランスキーの作品だから」という理由で観に行った記憶がある。
しかし、「官能的な作品だった」ということ以外、内容は全く覚えていなかった。
今回、改めて見返してみて、「こんな衝撃的な作品だったのか」とショックを受けた。
一緒に見た細君には、「こんなスゴイ映画をどうして覚えていないの?」と言われた。
まあ、いつものことだが。
カラー、ワイド。
洋上。
嵐の前の静けさのようなテーマ曲。
イギリス人のナイジェル(ヒュー・グラント)とフィオナ(クリスティン・スコット・トーマス)の夫婦は、結婚7年目の記念でイスタンブールへ向けて豪華客船でのクルーズ旅行中であった。
フィオナがトイレに行くと、体調の悪そうな若い女性がいる。
吐いたりしたので、船上で休ませる。
なお、本作のセリフは英語。
ナイジェルは一人でバーへ。
セクシーな女性が壇上で踊っている。
その女性がナイジェルの隣に座る。
実は、先ほどトイレで倒れていた女性であった。
ナイジェルは話し掛けるが、彼の話しがつまらないので、女性は行ってしまう。
彼が船上で一人、海を眺めていると、車椅子の中年男が話し掛けて来る。
「彼女に気を付けろ。男を破滅させる。私は彼女の夫だ。妻とファックしたいんだろ?」
男はアメリカ人でオスカー(ピーター・コヨーテ)、その妻はフランス人でミミ(エマニュエル・セニエ)といった。
昨今と違ってバリア・フリーではない船内を、車椅子を押して、オスカーの船室へ行くナイジェル。
オスカーとミミは、何故か夫婦別々の船室だという。
オスカーは、初対面のナイジェルに、夫婦の出会いについて語り始める(ここから回想)。
数年前のパリ。
オスカーは作家志望だったが、親からの遺産を受け、パリで暮らしていた。
ある日、96番バスの中で新聞(『インターナショナル・ヘラルド・トリビューン』)を読んでいると、車掌が検札にやって来る。
オスカーは、隣の席に座っていた若い娘がキップを持っていなかったので、こっそりと自分のキップを渡す。
バスを降りた後も、は彼女のことが頭から離れなかった。
それから、彼は96番バスに乗って、パリ中を彼女を求めて捜し回る。
ある時、洋服屋若い女性店員をナンパして、食事に行くと、レストランの店員が例の彼女であった。
オスカーは彼女を食事に誘う。
アジア人の給仕のなまったフランス語を二人で笑う。
なまった外国語を笑うというのは、大変失礼な行為なのだが、本作にはそういう部分が多々、見受けられる。
公園で飲むミネラル・ウォーターはコントレックス
エッフェル塔や、先日、消失したノートルダムの尖塔なんかが見られる。
さすがパリだ。
で、オスカーはミミを自分の部屋に連れて来る。
抱き合う二人。
それから三日間、ヤリまくった。
まあ、そういう時期はあるわな。
オスカーは、ミミと離れたくなくて、彼女に仕事を辞めさせる。
彼は、彼女こそ「運命の女だ」と確信する。
遊園地でのデートの後、オスカーの部屋で激しく踊るミミ。
シースルーの衣装で官能的な彼女。
で、ここで現在に戻る。
オスカーの語りの赤裸々さに、辟易しているナイジェル。
自分の船室に戻る。
翌日、ナイジェルがフィオナにオスカーのことを話すと、彼女も呆れている。
しかし、ナイジェルとフィオナが食堂へ行くと、オスカーと鉢合わせする。
仕方がないので、一緒に食事をすることになる。
ミミは最初、別行動であったが、合流する。
テーブルの下で、ナイジェルに足を絡ませ、挑発するミミ。
オスカーは、ナイジェルを誘って、話しの続きを聞かせる。
オスカーがミミの尿を飲んだ話しを聞かされ、ナイジェルは「聞いてられない」と呆れる。
そう言えば、某Jニーズの人気グループAのMメンバーは、愛人であったAV女優のAから尿を飲まされていたというので話題になったな。
で、オスカーとミミはSMショップに行く。
尿を飲まされて、自分の中のM性に目覚めたオスカーは、「美女にいたぶられる喜びを味わってみたい」と願っている。
二人は数週間、部屋にこもって、SMプレイにふける。
が、やがて、それにも飽きる。
性欲だけの結び付きが一巡すると、相手の内面を見始めるんだな。
そこで、オスカーははたと気付く。
ミミは言った。
「私の英語力じゃ、あなたの作品の内容は理解できない。」
まあ、ミミはフランス人だから、日常会話程度の英語力しかないということだ。
それだけでも大したものだと思うが。
フレンチ・コネクション2』なんかを見ると、フランスでは全く英語が通じていなかったからね。
多少、時代は違うが。
昨今は、もう少し事情が違っているかも知れないが。
フランス人の国語愛は世界一だからな。
日本人も見習った方がいい。
日本人は、自分達が世界一の英語ベタだと卑下し過ぎだ。
外国語なんだから、難しいのは当たり前である。
日本では、すぐ英会話のことばかり話題になるが、本作の例でも分かるように、本を読むのはもっと難しい。
もっとも、ポランスキー自身はかなり語学に堪能らしいが。
いかん、話しが逸れた。
自分の書いている小説の内容すら理解してくれないので、オスカーは次第にミミのことが疎ましくなる。
まあ、出版の見込みのない小説ばかり書いている作家志望者だから、せめて自分の近しい人には認めて欲しいわな。
こう言っちゃ何だが、やはりカラダの相性だけじゃなくて、オツムの程度も一致していないと、カップルというのはうまく行かんということか。
で、彼女との生活に息が詰まり始めたオスカーは、アメリカ人の友人のところに彼女を連れ出す。
友人は出版業界関係者だが、ウェイトレス出身のミミは、知的な話しに付いて行けない。
それどころか、オスカーが他の女性と話していると、(たとえ仕事の話しであっても)嫉妬したりする。
まあ、こういうことはよくあることだが。
余談だが、オスカーは、タバコはジタンを吸っている。
如何にもフランスかぶれだ。
僕が以前の会社で同僚だったフランス語学科出身の人にジタンを勧めると、喜んで吸っていたな。
で、嫉妬したミミは、同席していた黒人ダンサーと一緒に踊り出す。
しかも、官能的に。
怒って帰宅したオスカーは、自室で一人、テレビを見ている。
ちなみに、この時、テレビに映っているのは、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』(セルジオ・レオーネ監督)だ。
ロバート・デ・ニーロの顔が一瞬、映る。
帰って来たミミは、「私にはあなたしかいないの」と泣いてオスカーにすがり付く。
オスカーは、先の黒人ダンサーとのダンスを「ファック同然の踊りだった」となじる。
オスカーのミミに対する情熱は次第に薄れ、SMプレイも噛み合わなくなる。
ここで再び現在に戻り、ナイジェルがうんざりしている所へ、ミミが船室に戻って来る。
ナイジェルは部屋を後にするが、ミミのことが気になる。
ナイジェルが自分の部屋に戻ると、フィオナが焼いている。
まあ、女の勘は鋭いからな。
二人は船上へ出る。
寒いので、ナイジェルがフィオナのコートを取りに部屋へ戻ろうとすると、ミミが彼のことを誘惑した。
フィオナにウソをついて、ミミの誘いに乗るナイジェル。
しかし、ミミの部屋に行ってみると、ベッドで待っていたのは、何とオスカーだった。
「エイプリルフール~!」とおどけるオスカーとミミ。
夫婦に騙されたことに頭に来たナイジェルであったが、オスカーが諭す。
「私は妻を抱けないから、浮気は認めている。ただし、私の認めた男限定だ。」
さあ、これからどうなる?
本作は、前半は官能的な描写が続くので、官能映画扱いをされている。
が、後半はミミに感情移入してしまう。
後半は、官能描写はすっかり影を潜め、精神面の描写が中心になる。
これが、非常によく出来ている。
長く付き合った男と女なら、(ここまで極端でなくても)これに似た場面は少なからず経験しているだろう。
世間によくある薄っぺらい恋愛映画と違い、男女の精神的な結び付きを、ここまで深く掘り下げた映画はなかなかないのでは。
そして、とんでもない結末を迎える。
なお、エマニュエル・セニエポランスキーの奥さんである。
自分の奥さんに、よくこんな役をやらせたものだ。
最後にまたまた、語学絡みの余談を一つ。
後半に、オスカーとミミの大ゲンカがある。
オスカー「英語が苦手なら母国語で話せ!」
ミミ「8年もパリにいてあの程度のフランス語力。英語も下手だから本が出せない!」
まあ、これでオスカーがブチ切れるのだが。
この会話でも分かるように、如何に語学が難しいか。
英語とフランス語は同じインド・ヨーロッパ語族で、英単語の7割はフランス語起源だと言われている。
それで、8年間住んでいても、なかなかマスター出来ないのだから。
ましてや、日本語と英語は、言語系統的には、全く別である。
それで、現地にも行かず、学校で週何時間か習ったくらいで、マスター出来る訳がない。
それを逆手に取った、よくある英会話学校の勧誘(「学校英語じゃ話せるようにならない」)なんか、詐欺そのものである。

Bitter Moon - Trailer

イギリス文学史I(第5回)『カンタベリー物語』(その2)

原文読解
それでは、『カンタベリー物語』の冒頭部分(総序の歌 ※一部)を読んでみましょう。
下に、「原文」「現代英語」「日本語訳」を記しました。
「現代英語」には、語注も付けてあります。
ほとんどの英文科の学生は中英語を学んでおらず(僕も独学です)、また、イギリス文学史を学ぶにあたって、中英語を学ぶことは前提ではないと思うので、現代英語で読めば良いと思うからです。
ですので、原文は、あくまで参考のために載せました。

GEOFFREY CHAUCER

Chaucer, Geoffrey(名)チョーサー(1340?-1400/英国の詩人)

The Canterbury Tales

Canterbury Tales(名)(複)(the ~)「カンタベリー物語」(中期英語で書かれたGeoffrey Chaucer作の未完の(主に)韻文物語集)

(原文)
(テキスト3ページ、1行目~)
THE GENERAL PROLOGUE

(現代英語)
(テキスト3ページ、1行目~)
THE PROLOGUE

prologue(名)(文学作品の)序文、序言、序詞

(日本語訳)
総序の歌

(1)

Whan that Aprill with his shoures soote
The droghte of March hath perced to the roote,
And bathed every veyne in swich licour
Of which vertu engendred is the flour,
Whan Zephirus eek with his sweete breeth
Inspired hath in every holt and heeth
The tendre croppes, and the yonge sonne
Hath in the Ram his halve cours yronne,
And smale foweles maken melodye,
That slepen al the night with open eye —
So priketh hem nature in hir corages —
Than longen folk to goon on pilgrimages,
And palmeres for to seken straunge strondes,
To ferne halwes, kouthe in sondry londes;
And specially from every shires ende
Of Engelond to Caunterbury they wende,
The holy blisful martyr for to seke
That hem hath holpen whan that they were seeke.

When in April the sweet showers fall
And pierce the drought of March to the root, and all
The veins are bathed in liquor of such power
As brings about the engendering of the flower,
When also Zephyrus with his sweet breath
Exhales an air in every grove and heath
Upon the tender shoots, and the young sun
His half-course in the sign of the Ram has run,
And the small fowl are making melody
That sleep away the night with open eye
(So nature pricks them and their heart engages)
Then people long to go on pilgrimages
And palmers long to seek the stranger strands
Of far-off saints, hallowed in sundry lands,
And specially, from every shire's end
Of England, down to Canterbury they wend
To seek the holy blissful martyr, quick
To give his help to them when they were sick.

when(接)~する時に、~時(時を表わす副詞節をつくる)
in(前)(時間を表わして)~(のうち)に、~の間、~中
sweet(形)優しい、親切な
shower(名)にわか雨
fall(自)(雨・雪などが)降る
pierce(他)(~を)突き通す、突き刺す
drought(名)旱魃(かんばつ)、日照り、水がれ
to(前)(方向を表わして)(到達の意を含めて)~まで、~へ、~に
root(名)(植物の)根(地下茎・球根・塊根・根茎などを含む)
all(形)(複数名詞の前に置いて)あらゆる、すべての、みな
vein(名)(葉の)葉脈
bathe(他)(~を)(~に)浸す(in)
liquor(名)溶液
such(形)(such ~ asで)~のような
power(名)力
as(代)(関係代名詞)(such、the sameまたはasを先行詞に含んで、制限的に用いて)~のような
bring about(~を)引き起こす、もたらす
engender(他)(事態・感情などを)生ずる、発生させる
of(前)(目的格関係を表わして)(しばしば動作名詞または動名詞に伴って)~を、~の
Zephyrus(名)ゼピュルス(西風の神)
with(前)(材料・中身を表わして)~で
his(代)彼の
sweet(形)香りのよい
breath(名)(a ~)(風の)そよぎ
exhale(他)(息などを)吐き出す(⇔inhale)
grove(名)(散策などに適した下生えのない)小さい森、木立
heath(名)ヒース(ツツジ科の常緑低木が主になっている植生)
tender(形)(肉など)柔らかい(⇔tough)
shoot(名)新芽、若枝
half(形)半分の、2分の1の
course(名)進路
sign(名)宮(きゅう)(黄道(こうどう)12区分の一つ)
ram(名)(the Ram)牡羊座
run(自)(副詞句を伴って)(進路などが)(ある方向に)広がる、延びる
fowl(名)(古)鳥
make(他)(詩・文章などを)創作する、著わす
melody(名)曲、歌、調べ
that(代)(関係代名詞)(人・ものを表わす先行詞を受けて通例制限用法で)(~する(である))ところの(先行詞がもの・人を表わす場合で、最上級の形容詞、all
the、the only、the same、the veryなどの制限的語句を含む時、および、先行詞が疑問代名詞やall、much、little、everything、nothingなどの時に多く用いられる傾向があるが、絶対的なものではない)/(主語として)
sleep(他)眠って(時を)過ごす ・sleep the day away 1日を眠って過ごす
away(副)(行動の連続を表わして)絶えず、せっせと
with(前)(様態の副詞句を導いて)~を示して、~して
prick(他)(~を)ちくちく(ひりひり)させる
their(代)彼ら(彼女ら)の
heart(名)(感情、特に優しい心・人情が宿ると考えられる)心、感情
engage(他)(注意・興味などを)引く
long(自)(~が)(~することを)熱望する(+to do)
go on ~ ~しに行く
pilgrimage(名)巡礼の旅、聖地詣(もう)で ・go on a pilgrimage 聖地詣でに出かける
palmer(名)(パレスチナの)聖地巡礼者(記念にシュロの枝(葉)で作った十字架を持ち帰った)、(一般に)巡礼
seek(他)(古)(~を求めて)(場所へ)行く
strand(名)(海・湖・川などの)岸、浜
far-off(形)はるかかなたの ・a far-off land はるかな土地
saint(名)聖人、聖徒、聖者(生前高徳であったため死後聖人の列に加えられた人、または殉教者などを呼ぶ尊称)
hallowed(形)神聖化された、神聖な ・hallowed ground 霊地
sundry(形)種々様々の、雑多な
land(名)国、国土
specially(副)特に
shire(名)州
end(名)(細長いものの)端、末端、先端 ・from end to end 端から端まで
England(名)イングランド(Great Britain島のScotlandとWalesを除いた部分)
down(副)(北から)南へ(に) ・go down to London from Edinburgh エジンバラからロンドンへ下る
Canterbury(名)カンタベリーイングランドKent州の都市/英国国教総本山(Canterbury Cathedral)の所在地)
wend(自)(古)進む、行く
holy(形)神聖な、聖なる
blissful(形)至福の
martyr(名)(特にキリスト教の)殉教者
quick(形)(~するのが)早くて(⇔slow)(+to do)
give(他)(人・物事が)(~に)(利益・損害などを)(結果として)与える、もたらす(to)
help(名)助け、救助 ・give one's help 助ける、手伝う

四月がそのやさしきにわか雨を
三月の旱魃の根にまで滲みとおらせ、
樹液の管ひとつひとつをしっとりと
ひたし潤し花も綻びはじめるころ、
西風もまたその香しきそよ風にて
雑木林や木立の柔らかき新芽に息吹をそそぎ、
若き太陽が白羊宮の中へその行路の半ばを急ぎ行き、
小鳥たちは美わしき調べをかなで
夜を通して眼をあけたるままに眠るころ、
――かくも自然は小鳥たちの心をゆさぶる――
ちょうどそのころ、人々は巡礼に出かけんと願い、
棕櫚の葉もてる巡礼者は異境を求めて行かんと冀う、
もろもろの国に知られたる
遥か遠くのお参りどころを求めて。
とりわけ英国各州の津々浦々から
人々はカンタベリーの大聖堂へ、昔病めるとき、
癒し給いし聖なる尊き殉教者に
お参りしようと旅に出る。

(2)

Bifel that in that sesoun on a day,
In Southwerk at the Tabard as I lay,
Redy to wenden on my pilgrimage
To Caunterbury with ful devout corage,
At night was come into that hostelrye
Wel nine and twenty in a compaignye
Of sondry folk, by aventure yfalle
In felaweshipe, and pilgrimes were they alle,
That toward Caunterbury wolden ride.

It happened in that season that one day
In Southwark, at The Tabard, as I lay
Ready to go on pilgrimage and start
For Canterbury, most devout at heart,
At night there came into that hostelry
Some nine and twenty in a company
Of sundry folk happening then to fall
In fellowship, and they were pilgrims all
That towards Canterbury meant to ride.

it(代)(形式主語としてあとにくる事実上の主語の不定詞句・動名詞句・that節などを代表して)
happen(自)(非人称のitを主語として)たまたま(~で)ある(+that)
that(形)(指示形容詞)(対話者同士がすでに知っているもの・人・量をさして)あの(⇔this)
season(名)(通例修飾語を伴って)(~の)時季、時節、季節
that(接)(名詞節を導いて)(~)ということ/(主語節を導いて)
one(形)(基数の1)(時を表わす名詞の前に用いて)ある ・one day(過去か未来の)ある日
day(名)(副詞的に)~日 ・one day(過去の)ある日
in(前)(場所・位置・方向などを表わして)~において、~で ・in London ロンドンで(に)
Southwark(名)サザーク(Londonの自治区でThames川の南岸地域)
tabard(名)(the Tabard)陣羽織亭(LondonのSouthwarkにあった旅亭で、Chaucerが描いたようにCanterbury詣での巡礼が集まった店)
as(接)(時を表わして)~している時、~したとたんに
lie(自)(副詞句を伴って)(古)宿泊する
ready(形)用意が整って、準備ができて(+to do)
start(自)出発する ・start for ~に向けて出発する
for(前)(目的地・行き先を表わして)~へ向かって、~へ行くために(の) ・start for ~に向けて出発する
most(副)(通例theを用いないで)はなはだ、非常に(この意味のmostが修飾する形容詞・副詞は話者の主観的感情・判断を表わす)
devout(形)信心深い
at heart 心(気)にかけて
at night 夜に、夜間(に)
there(副)(thereは形式上主語のように扱われるが、動詞の後に通例不特定のものや人を表わす主語が続く/「そこに」の意味はなく、日本語ではthere isで「~がある」の意になる)(述語動詞にseem、appear、come、liveなどを用いて)
come into ~ ~に入る
hostelry(名)(古)宿屋
some(形)(不明または不特定のものまたは人をさして)(単数形の可算の名詞を伴って)何かの、ある、どこかの
nine(代)(基数の9)(複数扱い)9つ、9個、9人
twenty(代)(基数の20)(複数扱い)20個(人)
in(前)(状態を表わして)~の状態に(で)
company(名)(人・ペットが相手として)一緒にいること、同席、同伴 ・in a person's company
folk(名)(複数扱い)人々
happen(自)偶然(たまたま)(~)する(+to do)
fall(自)(~の状態・関係に)なる、陥る(in)
fellowship(名)仲間であること、仲間意識、連帯感
pilgrim(名)巡礼者、霊場参拝者
all(代)(複数扱い)(同格にも用いて)だれも、みな(通例代名詞の場合に用いる)
towards(前)=toward
mean(他)(~する)つもりである(+to do)
ride(自)(しばしば副詞句を伴って)馬に乗る、乗馬する

そんな季節のある日のこと、こんなことが起こりました。
じつは、わたしはとても敬虔な気持からカンタベリーへ念願の巡礼に出かけようと、サザー句の陣羽織屋に泊っておりました。
ところが夜になるとその旅籠屋に二十九人もの人たちが一団となってどやどやと入りこんできました。
この人たちはいろいろな階級の人たちで、ふとしたことから仲間になった連中でした。
彼らはみんな巡礼さんでカンタベリーへ馬に乗ってお参りしようというわけでした。

(3)

The chambres and the stables weren wide,
And wel we weren esed atte beste;
And shortly, whan the sonne was to reste,
So hadde I spoken with hem everichon
That I was of hir felaweshipe anon,
And made forward erly for to rise,
To take oure wey theras I yow devise.

The rooms and stables of the inn were wide;
They made us easy, all was of the best.
And, briefly, when the sun had gone to rest,
I'd spoken to them all upon the trip
And was soon one with them in fellowship,
Pledged to rise early and to take the way
To Canterbury, as you heard me say.

room(名)(ホテルの)部屋
stable(名)(しばしば複数形で)馬(小)屋、家畜小屋
inn(名)(通例階下で飲食店・居酒屋を兼ねた旧式の二階建ての)小旅館、小ホテル、宿屋(現在でもいなかにあり、またホテル・レストランの名にも用いられる)
wide(形)(面積が)広い、広大な
make(他)(~を)(~に)する(+目+補)
easy(形)安楽な、気楽な、楽な(⇔uneasy)
all(代)(単数扱い)すべて(のもの)、万事
of(前)(of+名詞で形容詞句をなして)~の
best(名)(the ~)最上、最善
briefly(副)簡単に、手短に(時に文修飾)
go(自)(~の状態に)なる、陥る(to)
to(前)(限度・程度・結果などを表わして)~に至るまで、~するほどに
rest(名)(ひと時の)休み、休憩、休息
I'd I hadの短縮形
to(前)(行為・作用の対象を表わして)~に対して、~に
on(前)(関係を表わして)~について、~に関する
one(代)(総称人称として/複数形なし)(一般的に)人、世人、だれでも
with(前)(感情・態度の対象を導いて)~に対して、~に ・be in love with ~と恋仲だ
pledge(他)(~に)(~を)誓約する(+to do)
take(他)(道・進路などを)たどる ・take the way 道を通る
way(名)(通例単数形で)(the ~、one's ~)行く道 ・take the way 道を行く
as(代)(関係代名詞)(前後の主節全体を先行詞として、非制限的に用いて)それは~だが
hear(他)(~が)聞こえる、(~を)聞く(+目+原形)
say(他)(人に)(~と)言う、話す、述べる、(言葉を)言う(+that)/(+wh.)

寝る部屋も広ければ厩も広うございましたし、それにわたしたちは最上のもてなしを受けました。
そこで手短に申しますと、太陽が休みについたころ、
わたしはこの人たちの誰彼となくつい話しこんでしまいました。
それですぐこの人たちと仲間になり、明朝はやく起きて今申し上げました目的地へ一緒に出かけようという約束をいたしました。

(4)

But nathelees, whil I have time and space,
Er that I ferther in this tale pace,
Me thinketh it acordant to resoun
To telle yow al the condicioun
Of ech of hem, so as it semed me,
And whiche they weren and of what degree,
And eek in what array that they were inne;
And at a knight than wol I first biginne.

But none the less, while I have time and space,
Before my story takes a further pace,
It seems a reasonable thing to say
What their condition was, the full array
Of each of them, as it appeared to me,
According to profession and degree,
And what apparel they were riding in;
And at a Knight I therefore will begin.

none the less=nonetheless(副)それでもなお、それにもかかわらず(=nevertheless)
have(他)(用事・時間などを)もっている、与えられている ・have time 時間がある
time(名)暇、余暇 ・have time 時間がある
space(名)(通例単数形で)(時に)間、時間
before(接)~より前に、(~する)に先だって、~しないうちに
my(代)私の
story(名)話、うわさ話、所説
take(他)(形・性質などを)とる
further(形)もっと程度の進んだ
pace(名)(単数形で)(仕事・生活などの)速度、ペース、テンポ(=speed)
it(代)(非人称動詞(impersonal verb)の主語として)(特にさすものはなく、従って訳さないで文の形式的主語となる)(seem(appear、happen、etc.)that ~の主語として)
seem(自)(itを主語として)(~には)(~のように)思われる
reasonable(形)(思考・行動など)合理的な、理にかなった、筋の通った、正当な ・It is reasonable to do ~するのは合理的である
thing(名)(無形の)こと、事(柄)、事件
what(代)(疑問代名詞)(間接疑問の節や+to doの形で)
condition(名)(古)身分、地位、境遇
full(形)(数・量を表わす語とともに用いて)まる(まる)
array(名)(通例単数形で)たくさんの(多様な)もの(人)の集まり
of(前)(分量・内容を表わして/数量・単位を表わす名詞を前に置いて)~の
each(代)各自、おのおの(of)
of(前)(部分を表わして)~の中の
as(接)(様態・状態を表わして)~のように
appear(自)(itを主語として)(~には)(~と)思える、どうも~らしい(+to+代名+that)
according to ~(前置詞的に)~に従って(応じて)、~しだいで
profession(名)(特に頭脳を用いる)職業、専門職
degree(名)学位、称号
what(形)(疑問形容詞)何の、何という、どんな、いかほどの
apparel(名)(きらびやかな)衣装、服装
in(前)(着用を表わして)~を着て、身につけて
and(接)(話題を変えたり始めたりする時に)(それ)では、さて
at(前)(場所・位置の一点を表わして)(出入りの点などを表わして)~から ・begin at ~から始める
knight(名)(中世の)騎士
therefore(副)それゆえに、従って、それ(これ)によって(=consequently)
will(助動)(意志未来を表わして)(1人称の主語に伴い、発話時の話者の意志を表わし、約束・諾否・主張・選択などを示して)~するつもりである、~しようと思う
begin(自)(人が)(~から)始める(at)

ですが、まだ時間もありますあいだ、さらにこのお話を進めてゆきますまえに、
皆様にこの人たちのそれぞれの階級を全部、どんな人柄で、どんな身分の出で、
またどんな服装をしていたか、わたしの目にうつったままお話しするとよろしいのではないかと思われます。
ではまず、騎士から始めるといたしましょう。

(5)

A KNIGHT ther was, and that a worthy man,
That fro the time that he first bigan
To riden out, he loved chivalrye,
Trouthe and honour, fredom and curteisye.

There was a Knight, a most distinguished man,
Who from the day on which he first began
To ride abroad had followed chivalry,
Truth, honour, generousness and courtesy.

there(副)(thereは形式上主語のように扱われるが、動詞の後に通例不特定のものや人を表わす主語が続く/「そこに」の意味はなく、日本語ではthere isで「~がある」の意になる)/(beを述語動詞として)
knight(名)(中世の)騎士(封建時代に名門の子弟がpageからsquireに昇進し武功を立ててknightとなった/ナイトに就任する儀式をaccoladeといい、土地と黄金の拍車(spurs)を下賜された)
most(副)(通例theを用いないで)はなはだ、非常に(この語が修飾する形容詞が名詞の単数形とともに用いられる時は不定冠詞を伴う/この意味のmostが修飾する形容詞・副詞は話者の主観的感情・判断を表わす)
distinguished(形)(態度など)気品のある、上品な
man(名)(修飾語句を伴って)(特定の仕事・性格などの)男性
who(代)(関係代名詞)(非制限的用法で/通例前にコンマが置かれる)そしてその人は
from(前)(空間・時間などの起点を表わして)~から
on(前)(日・時・機会を表わして)~に
which(代)(関係代名詞)(制限的用法で)~する(した)(もの、事)(通例「もの」を表わす名詞を先行詞とする形容詞節をつくる)/(目的格の場合)
first(副)(通例動詞の前に用いて)初めて
begin(他)(~し)始める、(~し)だす(+to do)
ride(自)(しばしば副詞句を伴って)馬に乗る、乗馬する
abroad(副)国外へ(に)、海外へ(に)(=overseas/⇔at home)
follow(他)(人(の説・教え・主義)を奉ずる
chivalry(名)(中世の)騎士道、騎士道精神(忠君・勇気・仁愛・礼儀などをモットーとし婦人を敬い弱きを助ける)
honour(名)(英)=honor(名)名誉、栄誉
generousness(名)<generous(形)寛大な、思いやりのある
courtesy(名)礼儀(正しさ)、丁寧、いんぎん、親切

一人の騎士がおりました。
それも立派なお方で、遠征にはじめて出かけて以来、騎士道を尊び、真実と名誉、寛容と礼儀を愛していました。

(6)

Ful worthy was he in his lordes werre,
And therto hadde he riden, no man ferre,
As wel in Cristendom as hethenesse,
And evere honoured for his worthinesse.

He had done nobly in his sovereign's war
And ridden into battle, no man more,
As well in Christian as in heathen places,
And ever honoured for his noble graces.

do(自)(well、rightなどの様態の副詞または副詞節を伴って)ふるまう
nobly(副)りっぱに、堂々と
in(前)(範囲を表わして)~において、~内で
his(代)彼の
sovereign(名)主権者、元首、君主、国王(=monarch)
battle(名)(特定地域における組織的な)戦い、戦闘
no more それ以上(もはや、二度と)~しない
as well as ~ ~はもちろん、~も~も
in(前)(場所・位置・方向などを表わして)~において、~で ・in London ロンドンで(に)
Christian(形)キリスト教
heathen(形)異教徒の、異教の(=pagan)
place(名)地域、地方
ever(副)いつも、常に、始終/(肯定文で)
honour(動)(英)=honor(他)(人に)名誉(光栄)を与える
for(前)(敬意を表わして)~を記念して、~のために
noble(形)高潔な、気高い、崇高な
grace(名)(動作・態度・物言いなどの)優美、優雅、気品、しとやかさ、上品

主君の戦いにとても勇敢にたたかいました。そのうえ、異教の国はもとよりキリスト教国にも遠征に出かけました。
だれもこの騎士よりは遠くへ行った者もないくらい。そしていつもその勇気のゆえに名誉を与えられておりました。

(7)

At Alisaundre he was whan it was wonne;
Ful ofte time he hadde the bord bigonne
Aboven alle nacions in Pruce;
In Lettow hadde he reised and in Ruce,
No Cristen man so ofte of his degree.

When we took Alexandria, he was there.
He often sat at table in the chair
Of honour, above all nations, when in Prussia.
In Lithuania he had ridden, and Russia,
No Christian man so often, of his rank.

when(接)~する時に、~時(時を表わす副詞節をつくる)
take(他)(とりで・都市などを)占領する、奪取する
Alexandria(名)アレクサンドリア(エジプト北部、ナイル川河口の海港/Alexander大王が建設したヘレニズム文化の中心地)
at the table 食卓について ・sit at the table 食卓につく
of(前)(of+名詞で形容詞句をなして)~の
all(形)(複数名詞の前に置いて)あらゆる、すべての、みな
nation(名)民族、種族
Prussia(名)プロイセンプロシア(ドイツ北部にあった旧王国)
Lithuania(名)リトアニアバルト海沿岸の共和国/首都Vilnius)
Russia(名)(1917年以前の)ロシア帝国(1917年の革命で滅亡/首都St. Petersburg)
Christian(形)キリスト教徒の
so(副)(程度を表わして)それ(これ)ほど、そんな(こんな)に、これくらい
rank(名)階級、等級、(社会的な)地位

アレクサンドリアが占領されたとき、彼はちょうどそこにおりました。
プロシアではすべての外国の騎士たちをさしおいて、たびたび食卓の最上席につきました。
リトアニアにも遠征に出かけました。またロシアにも征きました。
同じ階級のキリスト教徒の騎士たちでこんなにたびたび遠征したものはありませんでした。

(8)

In Gernade at the seege eek hadde he be
Of Algezir, and riden in Belmarye;
At Lyeys was he and at Satalye
Whan they were wonne, and in the Grete See
At many a noble armee hadde he be.

When, in Granada, Algeciras sank
Under assault, he had been there, and in
North Africa, raiding Benamarin;
In Anatolia he had been as well
And fought when Ayas and Attalia fell,
For all along the Mediterranean coast
He had embarked with many a noble host.

Granada(名)グラナダ(スペイン南部の都市/Alhambra宮殿などの遺跡で有名)
Algeciras アルへシラス(スペイン南西部Gibraltar海峡のAlgeciras湾に面する港町)
sink(自)(通例副詞句を伴って)(地盤・建物などが)(~に)沈下する、陥没する
under(名)急襲、強襲
north(形)(しばしばNorth)北部の、北国の ・North Africa 北アフリカ
raid(他)(場所を)急襲(奇襲、空襲)する
Anatolia(名)アナトリア小アジア(=Asia Minor)
as well なお、そのうえ、おまけに
fall(自)(要塞(ようさい)・都市などが)(敵などの手に)落ちる、陥落する
for(前)(目的地・行き先を表わして)~へ向かって、~へ行くために(の)
all(代)(単数扱い)すべて(のもの)、万事
Mediterranean(形)地中海の
coast(名)(大陸・大きな島などの)海岸、沿岸
embark(自)船出する(for)
many(形)(many aに単数形の名詞・動詞を伴って/単数扱い)数々の、多数の
host(名)(客をもてなす)主人(役)、ホスト(役)

またこの騎士はアルゼシラスの包囲戦のおり、グラナダにいたこともありました。そしてベンマリンでも戦いました。
アイアスやアタリアが占領されたときにもそこにおりました。
そして地中海では名高い遠征に多く加わったということでありました。

(9)

At mortal batailles hadde he been fiftene,
And foghten for oure feith at Tramissene
In listes thries, and ay slain his foo.

In fifteen mortal battles he had been
And jousted for our faith at Tramissene
Thrice in the lists, and always killed his man.

fifteen(形)(基数の15)15の、15個の、15人の
mortal(形)はなはだしい、大変な
battle(名)(個々の戦闘)
joust(自)馬上槍試合をする
our(代)我々の、私たちの
faith(名)信仰
thrice(副)三たび、3倍
list(名)(the lists)(中世の槍試合場の周囲に作った)矢来(やらい)

必死の激戦に加わったことも十五たびもありましたし、アルジェリアでわが信仰を守るために三度も一騎打ちの勝負をし、そのたびに敵を倒しました。

(10)

This ilke worthy knight hadde been also
Somtime with the lord of Palatye
Again another hethen in Turkye,
And everemoore he hadde a soverein pris.

This same distinguished knight had led the van
Once with the Bey of Balat, doing work
For him against another heathen Turk;
He was of sovereign value in all eyes.

this(形)(指示形容詞)この/(対話者同士がすでに知っているもの(人)をさして)
same(形)(this、that、these、thoseに続いて)例の、あの、その、~とかいう
distinguished(形)すぐれた、抜群の(=illustrious)
lead(他)(~を)率いる
van(名)(軍隊・艦隊の)前衛、先頭、先陣(⇔rear)
once(副)昔(ある時)、かつて(は)
bey(名)(オスマントルコの)地方長官
another(形)別の、ほかの
Turk(名)(特にオスマン帝国の)トルコ人
of value 価値のある、貴重な
sovereign(形)最上(至高)の
eye(名)(an ~、one's ~)目的、意図

この勇敢な騎士は、またときに、パラティアの主君の味方になってトルコの別の異教徒と戦ったこともありました。
そしていつも最高の栄誉を与えられておりました。

(11)

And though that he were worthy he was wis,
And of his port as meke as is a maide,
Ne nevere yet no vileinye he saide
In al his lif unto no maner wight.
He was a verray parfit gentil knight.

And though so much distinguished, he was wise
And in his bearing modest as a maid.
He never yet a boorish thing had said
In all his life to any, come what might;
He was a true, a perfect gentle-knight.

much(副)(過去分詞を修飾して)大変に、非常に、大いに
wise(形)(人・行動など)賢い、賢明な、思慮深い、分別のある(⇔foolish)
bearing(名)(またa ~)態度
modest(形)謙遜(けんそん)な、謙虚な、慎み深い(⇔immodest)
as(接)(様態・状態を表わして)~のように
never(副)(notよりも強い否定を表わして)決して~ない
boorish(形)野卑(粗野)な、やぼな、がさつな
thing(名)(無形の)こと、事(柄)、事件
in(前)(時間を表わして)~(のうち)に、~の間、~中 ・in one's life 自分の生涯で
to(前)(行為・作用の対象を表わして)~に対して、~に
any(代)(否定文で、any of ~の形か既出名詞の省略の形で用いて)何も、だれも
come what may 何事があろうと
true(形)本当の、正真正銘の
perfect(形)申し分のない、満足のゆく、理想的な
gentle(形)(態度など)もの柔らかな、上品な

この騎士は勇敢ではありましたが、さらに、思慮深い人でもありました。
そして態度物腰といったらそれこそ乙女のようにやさしいものでした。
ほかの人に向かって騎士にふさわしくない野卑な言葉なぞそれこそ生涯に一度だって言ったことはありません。
彼は真実の、申し分のない、気品のある騎士でありました。

(12)

But for to tellen yow of his array,
Hise hors were goode but he was nat gay.

Speaking of his equipment, he possessed
Fine horses, but he was not gaily dressed.

speaking of ~ ~について言えば、~の話のついでだが、~と言えば
equipment(名)(ある目的のための)備品、接尾、装具、用品
possess(他)(資産などを)所有する
fine(形)すばらしい、見事な、りっぱな
not(副)(述語動詞・文以外の語句を否定して)
gaily(副)派手に、華やかに ・a gaily dresses girl 華やかに着飾った少女
dressed(形)(~の)服装をして(身じたくをして)

それはそうと、この騎士のいでたちのことを申し上げてみましょう。
彼の乗る馬は立派な馬でしたが、当の本人は派手な服装ではありませんでした。

(13)

Of fustian he wered a gipoun,
Al bismotered with his habergeoun,
For he was late ycome from his viage,
And wente for to doon his pilgrymage.

He wore a fustian tunic stained and dark
With smudges where his armour had left mark;
Just home from service, he had joined our ranks
To do his pilgrimage and render thanks.

fustian(形)ファスチアン綿布の
tunic(名)チュニック/警官・軍人などの制服の短い上着
stain(他)(~で)(~に)しみをつける(with)
dark(形)(色彩が)薄黒い、黒ずんだ
with(前)(材料・中身を表わして)~で
smudge(名)よごれ、しみ
where(副)(関係副詞)(制限的用法で)~する、~した(場所、場合など)(「場所」「場合」を表わす名詞を先行詞とする形容詞節をつくる)
armour(名)よろいかぶと、甲冑(かっちゅう)
leave(他)(傷跡・感情・疑問などを)残す
mark(名)(本来の形や色を傷つけたりよごしたりする)跡、傷跡
home(副)(自宅・自国へ)帰って
service(名)勤務、奉職、勤め、勤続
join(他)(人・団体に)加わる、加入する、(~の)仲間になる
rank(名)(組織・グループの)メンバーたち、同類、仲間 ・join the ranks of ~の中に加わる
pilgrimage(名)巡礼の旅、聖地詣(もう)で
render(他)(人・神などに)(感謝を)ささげる
thank(名)(複数形で)感謝、謝辞

木綿と麻の荒いファスティアン布の胴着を着ておりました。
しかもそれは鎖帷子のためすっかり汚れておりました。
実は先ごろ遠征から帰ったばかりで、すぐにお礼参りの巡礼へ出かけてきたからでした。

(14)

With him ther was his sone, a yong SQUIER,
A lovere and a lusty bacheler,
With lokkes crulle as they were leid in presse;
Of twenty yeer of age he was, I gesse.

He had his son with him, a fine young Squire,
A lover and cadet, a lad of fire
With locks as curly as if they had been pressed.
He was some twenty years of age, I guessed.

have(他)(ある関係を表わして)(肉親・友人などが)いる、(~が)ある
fine(形)(外観・形状など)押し出しのりっぱな ・a fine young man ハンサムな青年
squire(名)騎士の従者
lover(名)恋人、愛人(単数の時は通例男)
cadet(名)末の息子
lad(名)若者、少年、若いの、にいちゃん(⇔lass)
fire(名)熱情、熱烈さ
with(前)(所持・所有を表わして)~を持って(た)、~のある ・a woman with long hair 長い髪の女
lock(名)(ひと房の)巻き毛、たれ髪
as(副)(通例as ~ as ~で、形容詞・副詞の前に置いて)(~と)同じ程度に、同様に、同じくらい(as ~ as ~で前のasが指示副詞、後のasは接続詞)
curly(形)巻き毛の、カールした(⇔straight)
as if まるで~であるかのように(as if節中では仮定法を用いる)
press(他)(ものを)押して平らにする
some(副)(数詞の前に用いて)約
twenty(形)(基数の20)20の、20個の、20人の
of(前)(関係・関連を表わして)~の点において、~に関して、~について ・He's twenty years of age. 彼は20歳だ。
guess(他)(なんとなく)(~だと)思う(+that)

騎士には息子の若い近習が従っておりました。
恋をしている、見るからに元気のいい若者でした。
髪はまるでこてでもかけたように巻き毛になっておりました。
年のころは二十歳くらいだったでしょうか。

(15)

Of his stature he was of evene lengthe,
And wonderly delivere and of greet strengthe;
And he hadde been somtime in chivachye
In Flaundres, in Artois and Picardye,
And born him wel, as of so litel space,
In hope to stonden in his lady grace.

In stature he was of a moderate length,
With wonderful agility and strength.
He'd seen some service with the cavalry
In Flanders and Artois and Picardy
And had done valiantly in little space
Of time, in hope to win his lady's grace.

in(前)(性質・能力・芸などの分野を限定して)~において、~が
stature(名)(人の)身長、背丈
moderate(形)(量・大きさ・程度・質など)適度の、中くらいの、並の
length(名)丈(たけ)
with(前)(様態の副詞句を導いて)~を示して、~して
wonderful(形)不思議な、驚くべき、驚嘆すべき
agility(名)機敏、軽快さ
strength(名)強さ、強いこと、力、体力
He'd→He had
see(他)(~を)経験する、(~に)遭遇する
cavalry(名)(集合的/単数または複数扱い)騎兵隊
Flanders(名)フランドル、フランダース(ベルギー北西部の5州とフランス北部の小地域を含み北海に臨む地方)
Artois アルトア(フランス北部の旧州)
Picardy ピカルディー(フランス北部の地方・旧州/第一次大戦の激戦地)
valiantly(副)<valiant(形)りっぱな、すぐれた、価値のある
in(前)(時間を表わして)~(のうち)に、~の間、~中
little(形)(時間・距離など)短い(⇔long)
space(名)(通例単数形で)(時の)間、時間 ・in such a short space of time そんなに短い時間で
in(前)(状態を表わして)~の状態に(で)
hope(名)期待(+to do)
win(他)(名声・称賛・信頼などを)得る、博する
lady(名)貴婦人
grace(名)(上の立場の人が示す)親切、好意、思いやり

背丈はほぼ中背でおどろくほど敏捷、それにたいへん力もありました。
彼はすでにフランドル地方やアルトワやピカルディに遠征に出かけたこともありました。
そして貴婦人の愛顧を得たいと短い期間に立派な振舞いをいたしました。

(16)

Embrouded was he, as it were a meede,
Al ful of fresshe floures white and reede.

He was embroidered like a meadow bright
And full of freshest flowers, red and white.

embroider(他)(布などに)刺繍(ししゅう)する
like(前)~のような、~に似た
meadow(名)(特に低地帯の干し草を作る)牧草地、草地
bright(形)(色が)あざやかな、さえた(⇔dull)
of(前)(目的格関係を表わして)(形容詞に伴って)~を
fresh(形)(色が)明るい、鮮明な

彼の衣服はちょうど白や赤の新鮮な花いっぱいの牧場のように、きれいに刺繍がしてありました。

(17)

Singinge he was, or floitinge, al the day;
He was as fressh as is the monthe of May.

Singing he was, or fluting all the day;
He was as fresh as is the month of May.

flute(自)フルートを吹く
all the day 一日中、終日
fresh(形)生き生きして、元気のいい、はつらつとして

ひねもす歌をうたい、笛を吹いておりました。
彼はまさに五月の季節のように目ざめるばかりに新鮮でした。

(18)

Short was his gowne, with sleves longe and wide;
Wel koude he sitte on hors and faire ryde.

Short was his gown, the sleeves were long and wide;
He knew the way to sit a horse and ride.

gown(名)(大学教授・学生・市長・裁判官・弁護士・聖職者などの着る黒の)職服、正服、法服、式服
sleeve(名)(衣服の)そで、たもと
way(名)やり方、手段(+to do)
sit(他)(馬に)乗る、乗りこなす

上衣は短く、袖は長くたっぷり広い仕立てでありました。
彼は馬に乗って上手に御するすべを心得ておりました。

(19)

He koude songes make and wel endite,
Juste and eek daunce, and wel purtreye and write.

He could make songs and poems and recite,
Knew how to joust and dance, to draw and write.

make(他)(詩・文章などを)創作する、著わす
recite(自)暗唱(朗唱)する
know(他)(~を)知る、知っている、(~が)わか(ってい)る(+wh.)
how(副)(疑問詞)(方法・手段を尋ねて)(to doまたは節を導いて)(~する)しかた
draw(自)(~で)絵を描く、製図する
write(自)著述する、著作する

歌を作曲し、歌詞をつくることから、馬上槍試合をしたり、また踊ったり、絵を描いたり、物を書いたりする才能に恵まれておりました。

(20)

So hoote he lovede, that by nightertale
He slepte namoore than dooth a nightingale.

He loved so hotly that till dawn grew pale
He slept as little as a nightingale.

love(自)愛する、恋をする
so(副)(程度・結果を表わして)(so ~ that ~で)(順送りに訳して)非常に~なので~
hotly(副)猛烈に、激しく
that(接)(副詞節を導いて)(so ~ thatの形で程度・結果を表わして)(非常に)~なので、~(する)ほど
till(接)(否定語の後に用いて)~までは(~しない)、~になって初めて(~する)
dawn(名)夜明け、あけぼの、暁(=daybreak)
grow(自)(次第に)(~に)なる(+補)
pale(形)明るい(色の)(=light/⇔dark)
sleep(自)眠る
little(副)(aをつけないで否定的用法で)ほとんど~しない
nightingale(名)(鳥)サヨナキドリ、ナイチンゲールツグミに似たヨーロッパ産の小鳥/ウグイスより大型/雄は春に夕方から夜ふけまで美しい声で鳴く)

彼はじつに熱烈に恋をして、夜は小夜鳴鳥ほどにも眠らぬという有様でした。

(21)

Curteis he was, lowely and servysable,
And carf biforn his fader at the table.

Courteous he was, lowly and serviceable,
And carved to serve his father at the table.

courteous(形)礼儀正しく思いやりのある、丁重な
lowly(形)謙虚な
serviceable(形)使える、役に立つ
carve(自)肉を切り分ける
serve(他)(人・料理店などが)(飲食物を)(食卓に)出す

彼は宮廷の礼儀作法をまもり、腰が低く、奉仕の心に燃えていました。
食卓では騎士である父のまえで肉を切って差し上げました。

(22)

A YEMAN hadde he (and servantz namo
At that time, for him liste ride so),
And he was clad in coote and hood of grene.
A sheef of pecok arwes, bright and kene,
Under his belt he bar ful thriftily —
Wel koude he dresse his takel yemanly;
His arwes drouped noght with fetheres lowe —
And in his hand he bar a mighty bowe.

There was a Yeoman with him at his side,
No other servant; so he chose to ride.
This Yeoman wore a coat and hood of green,
And peacock-feathered arrows, bright and keen
And neatly sheathed, hung at his belt the while
— For he could dress his gear in yeoman style,
His arrows never drooped their feathers low —
And in his hand he bore a mighty bow.

yeoman(名)(昔、王家・貴族に仕えた高位の)従者
side(名)(通例単数形で)(人の)かたわら、そば、わき ・at one's side ~のそばで
servant(名)召し使い、使用人(=domestic)
choose(他)(~しようと)決める(+to do)
coat(名)上着、ジャケット
hood(名)(コートなどの)フード、ずきん
green(名)緑色
peacock(名)(鳥)(特に雄の)クジャク(美しい大きな羽を広げることで知られ、見えを張ることのイメージを持つ)
feathered(形)羽根飾りのある
arrow(名)矢
keen(形)(先端・刃物など)鋭い、鋭利な(⇔dull、blunt)
neatly(副)きちんと、こぎれいに
sheathe(他)(~を)さやに納める
belt(名)(通例腰の周りにつける)ベルト、帯
the while(副詞句として)同時に
for(接)(通例コンマ、セミコロンを前に置いて、前文の付加的説明・理由として)という訳は~だから(=as、since)
dress(他)(~を)美しく飾る
gear(名)(通例修飾語を伴って)(特定の用途に用いる)用具(一式)、道具(ひとそろい)、装備
in(前)(方法・形式を表わして)~で、~をもって
style(名)やり方、スタイル、方式、流儀
droop(他)(首・顔・目などを)たらす、伏せる、うつむける
their(代)彼ら(彼女ら)の
feather(名)矢羽根、矢はず
low(副)低く
bear(他)(武器・マーク・痕跡(こんせき)などを)身につける、帯びる
mighty(形)(人・ものが)力強い、強力な、強大な
bow(名)弓

騎士は一人の楯持をつれておりました。
その折はそれ以上、家来をつれていませんでした。そんな旅が騎士の気に入っていたからでした。
この楯持は緑の上衣と頭巾をつけていました。
彼は孔雀の羽のついた、輝く鋭い矢を一束、帯皮の下につけていましたが、それがまたぴったりとあっていました。
楯持にふさわしくその矢を立派に整えるわざを彼はよく心得ておりました。
その矢は羽毛がおしつぶされて垂れ下がったりしてはいませんでした。
手には強弓をたずさえていました。

(23)

A not-heed hadde he, with a broun visage;
Of wodecraft wel koude he al th'usage.
Upon his arm he bar a gay bracer,
And by his side a swerd and a bokeler,
And on that oother side a gay daggere,
Harneised wel and sharp as point of spere;
A Cristofre on his brest of silver shene.
An horn he bar, the bawdrik was of grene.

His head was like a nut, his face was brown.
He knew the whole of woodcraft up and down.
A saucy brace was on his arm to ward
It from the bow-string, and a shield and sword
Hung at one side, and at the other slipped
A jaunty dirk, spear-sharp and well-equipped.
A medal of St Christopher he wore
Of shining silver on his breast, and bore
A hunting-horn, well slung and burnished clean,
That dangled from a baldrick of bright green.

nut(名)頭
face(名)顔色、顔つき
brown(形)(皮膚が)浅黒い
whole(名)(the ~)全部、全体(of)
woodcraft(名)森林(山)の知識、山林技術(山林での狩猟・野営・通過・生活法など)
up and down 上下に
saucy(形)(ものが)気のきいた、粋(いき)な、しゃれた
brace(名)(廃)よろいの腕の部分
on(前)(付着・所持を表わして)~にくっつけて、~の身につけて
ward(他)(危険・打撃などを)かわす、防ぐ、避ける
from(前)(抑制・防止などを表わして)~から
bowstring(名)弓のつる
shield(名)盾(たて)(矢・槍(やり)・刀などを防ぐための昔の武具)
sword(名)剣、刀
one(形)(another、the otherと対照的に)一片の、片方の
other(代)(the ~)(二つのうちの)ほかの一方(の人)、他方
slip(他)(副詞句を伴って)(指輪などを)そっとはめる(はずす)
jaunty(形)(服装が)いきな、スマートな
dirk(名)(海軍士官候補生の)短剣
spear(名)槍(やり)、投げ槍
well-「よく、十分に」の意の連結形(過去分詞と結合して複合形容詞を造る)
equip(他)(船・軍隊に)(必要な道具・装置を)装備する、(~に)備え付ける(しばしば受身)
medal(名)(聖職者などを形どった)メダル状のもの
St.(略)聖~、セント~/(聖人・使徒名などにつける)
Christopher, Saint(名)聖クリストフォロス(?-?250/小アジアの殉教者/旅人の守護聖人で、祝日7月25日)
of(前)(材料を表わして)~で(作った)、~から(成る)
shining(形)光る、輝く、ぴかぴかする
breast(名)胸
hunting horn(名)狩猟用らっぱ
well(副)上手に、うまく
slung(動)slingの過去形・過去分詞
sling(他)(通例副詞句を伴って)つり下げる、ぶら下げる、つり包帯でつる(しばしば受身)
burnish(他)(金属を)磨く、光らせる
clean(副)きれいに(なるように)
that(代)(関係代名詞)(人・ものを表わす先行詞を受けて通例制限用法で)(~する(である))ところの/(主語として)
dangle(自)ぶら下がる
baldrick→baldric(名)(昔の)飾り帯(肩から斜めに腰へかけて剣をつる革帯)

頭はざんぎり頭で顔は褐色に日焼けしていました。
森の狩猟のことならそのじっさいのやり方をじつによく知っていました。腕には派手な弓懸けをつけ、脇には剣と小ぶりの楯をつけていました。
そしてまた一方のがわには、立派な装飾をほどこした、槍の穂先のように鋭い、派手な短剣を下げていました。胸の上には美しい銀製の、クリストファー聖人をかたどったブローチが下がっておりました。
彼はまた狩りの角笛をもっていました。その吊り革の肩帯は緑色でした。

(24)

A forster was he soothly, as I gesse.

He was a proper forester, I guess.
(Nevill Coghill・訳)

proper(形)(目的・状況などにかなって)適切な、ふさわしい(=correct)
forester(名)森林官、林務官、森林管理者、森林警備(監視)員

この楯持はじつに森の狩猟番らしい男だと私には思えました。
(桝井迪夫・訳)

【参考文献】
The Canterbury Tales: (original-spelling edition) (Penguin Classics)
The Canterbury Tales (Penguin Classics)』Nevill Coghill・訳
完訳 カンタベリー物語〈上〉 (岩波文庫)』桝井迪夫・訳
新英和中辞典 [第7版] 並装』(研究社)
リーダーズ英和辞典 <第3版> [並装]』(研究社)
リーダーズ・プラス』(研究社)
新英和大辞典 第六版 ― 並装』(研究社)