『みずうみ(湖畔、インメンゼー)』を原文で読む(第10回)

(テキスト18ページ、2行目〜)

„Nach Indien, nach Indien!“ sang er und schwenkte sich mit ihr im Kreise, daß ihr das rote Tüchelchen vom Halse flog.

nach(前)(3格とともに)(方向・目標)~(の方)へ、~に向かって(英:to)
Indien(中)(国名)インド(共和国)(首都はニューデリー
singen(他)(歌など4格を)歌う(過去:sang)(過分:gesungen)(完了:haben)
schwenken再帰)旋回する、回転する(完了:haben)
mit(前)(3格とともに)~と(いっしょに)(英:with)
in(前)(方法・様態)(3格と)~で
der Kreis(男)円、円周(英:circle)(複:Kreise)
dass(接)(従属接続詞/動詞の人称変化形は文末)(結果)その結果~、そのため~
rot(形)赤い、赤色の(英:red)(比較:röter)(最上:rötest)
das Tuch(中)(さまざまな用途のために加工された)布(英:cloth)(複:Tücher)
~el(名詞につけて中性の縮小名詞をつくる/幹母音の変音を伴う)(→-chen)「小さい。かわいい」の意
~chen(中性の縮小名詞をつくる接尾/幹母音がa、o、u、auの場合は変音する)(小・親愛・軽蔑)
von(前)(3格とともに)(2格・所有代名詞の代用)~の(英:of)
der Hals(男)首、首すじ(英:neck)(複:Hälse
fliegen(自)(旗・髪などが)はためく、なびく(過去:flog)(過分:geflogen)(完了:sein)

Dann aber ließ er sie plötzlich los und sagte ernst:

dann(副)それから、そのあと(英:then)
aber(接)(並列接続詞)(相反・対比)しかし、けれども、だが(英:but)
los|lassen(他)離す(過去:ließ ~ los)(過分:losgelossen)(完了:haben) ・du lässt ~ los、er lässt ~ los
plötzlich(副)突然、急に、不意に(英:suddenly)
sagen(他)(事4格を)言う、述べる(英:say)(過去:sagte)(過分:gesagt)(完了:haben)/(引用文とともに)
ernst(形)まじめな、真剣な(英:serious)(比較:ernster)(最上:ernstest)

„Es wird doch nichts daraus werden; du hast keine Courage.“

es(代)(人称代名詞)(形式的な主語として)(自動詞の受動文および再帰的表現で)
werden(助動)(未来の助動詞)(他の動詞の不定詞とともに未来形をつくる)(未来・推量)~だろう(過去:wurde)(過分:geworden)(完了:sein) ・du wirst、er wird
doch(接)(並列)しかし、だが(→aber)
nichts(代)(不定代名詞/無変化)何も~ない(英:nothing)
daraus(副)(werden、machenとともに)daraus werden それが~になる
werden(自)(~に)なる(英:become)(過去:wurde)(過分:geworden)(完了:sein) ・du wirst、er wird/(非人称のesを主語として)
kein(冠)(否定冠詞)一つも(少しも)~ない、一人も~ない(英:no、not a)
die Courage(女)勇気、大胆さ(=Mut)(複:なし)

 ――„Elisabeth! Reinhard!“ rief es jetzt von der Gartenpforte.

Elisabeth(女名)エリーザベト(複:なし)
Reinhard(男名)ラインハルト(複:なし)
rufen(他)(~と)叫ぶ、大声で言う(過去:rief)(過分:gerufen)(完了:haben)
es(代)(人称代名詞)(形式的な主語として)(主語を明示しないで出来事に重点を置く表現で)
jetzt(副)(過去形の文で)そのとき、今や(英:now)
von(前)(3格とともに)(空間的な起点)~から(英:from)
der Garten(男)庭、庭園(英:garden)(複:Gärten)
die Pforte(女)(小)門、木戸、通用門(英:gate)(複:Pforten)

„Hier! Hier!“ antworteten die Kinder und sprangen Hand in Hand nach Hause.

hier(副)(空間的に)ここに、ここで(英:here)/Hier!(名前を呼ばれて)はい
antworten(他)(事4格と)答える、返事する(過去:antwortete)(過分:geantwortet)(完了:haben) ・du antwortest、er antwortet
das Kind(中)子供(英:child)(複:Kinder)
springen(自)(~へ)駆けつける、急いで行く(過去:sprang)(過分:gesprungen)(完了:sein)
die Hand(女)手(英:hand)(複:Hände)/(前置詞とともに)Hand in Hand 手に手を取って、いっしょに
das Haus(中)家、建物(英:house)(複:Häuser)/(nach Hauseまたはnachhauseの形で)nach Hause gehen(またはkommen)家へ帰る、帰宅する、帰郷する
【参考文献】
みずうみ (対訳シリーズ)』中込忠三、佐藤正樹・編(同学社)
アポロン独和辞典』(同学社)
新コンサイス独和辞典』(三省堂
新現代独和辞典』(三修社

フランス語を学ぼう

フランス語を学ぼう
僕には、昔からフランス文化への憧れがありました。
思い起こせば、高校1年の頃、太宰治にハマりまして。
この太宰の出身校(ただし、中退)が東京帝国大学文学部仏文科だというので、「大学は仏文科に進むぞ」と、漠然と思ったのでした。
実は、仏文科が何をするところなのかも、よく知らなかったのですが。
(そして、太宰が実はフランス語を学んでおらず、教授のコネで仏文科に入れてもらったということも、遥か後に知ることになるのですが。)
続いて、高校2年の時、確か『AERA』だったと思うのですが、『小さな泥棒』という映画の紹介記事を、たまたま目にしました。
主演はシャルロット・ゲンズブール
僕は、この記事の小さな写真で、彼女のことが大変気になりました。
当時、僕の出身地である京都には「朝日シネマ」というミニシアターがあり、東京で公開されたフランス映画などを、半年遅れくらいで上映していたのです。
そして、『小さな泥棒』も朝日シネマで上映されるということで、僕はいそいそと出掛けました。
映画を観て、簡単に言うと、僕は彼女に恋してしまったのです。
彼女の写真集やCDなども買いました。
CDを聴きながら、全く分からないフランス語の音マネをし、歌詞カードを見ては、「大学に入学したら、フランス語を勉強しよう」と思ったものでした。
高校の卒業文集にも、僕が尊敬する映画監督であるスタンリー・キューブリックと共に、彼女のことを書いています。
ちなみに、今でも、昔ほどの思い入れはありませんが、「好きな女優は?」と訊かれたら、「シャルロット・ゲンズブール」と答えますね(ちなみに、好きな俳優はアル・パチーノ)。
まあ、彼女も今や、カンヌ映画祭の女優賞なんかも獲って、押しも押されもせぬ大女優です。
という訳で、僕は、大学は仏文科のある文学部を受験したのですが。
結局、二浪したものの、第一志望には不合格で、第二志望(夜間部)に入学しました。
そこは文学部だったのですが、仏文科はありませんでした。
ただし、年度によっては、2年次に進級する時に、昼間部への転部試験を受けられると聞きました。
仏文科に空きがあるかどうかは分かりませんが。
そこで、転部試験のことも念頭に、また、それ以前に、憧れのフランス文化に触れたいという思いで、第二外国語は、当然のようにフランス語を選択しました。
ところが、僕はフランス語の授業に、最初の1回しか出席しませんでした。
正確に言えば、バイトと映画と酒に夢中で、大学に通うことそのものに挫折したのですが。
もちろん、フランス映画はさんざん観ましたし、シャルロットから始まって、フレンチ・ポップスなどもよく聴いてはいました。
でも、最終的に大学は中退してしまったのです。
その後、社会人になってしばらく経ってから、大学を中退したことを後悔し、再度、勉強し直そうと、日大通信に編入します。
ただ、外国語は、その頃、旧制高校文化に関心があったのと、当時、仲の良かった女の子(現・細君)が大学ではドイツ語選択だったということで、僕もドイツ語を選びました。
ドイツ語の方は、その後、独学で『若きウェルテルの悩み』を原書で読破したので、マスターしたとは到底言えないものの、自分では納得しています。
しかしながら、フランス語のことは、キレイさっぱり忘れていました。
たった1時間だけ大学の授業を受けてから四半世紀。
つい先日のことですが、仕事の後で、付き合いのある編集者の方と飲みに行きました。
その方は、僕と同じ学部の出身ということで、学生時代の話しなどで盛り上がったのですが。
「好きな女優は誰ですか?」と訊かれたので、僕は、例によって、「シャルロット・ゲンズブールです」と答えました。
それから、フランス映画の話しなどをひとしきりしたのですが、そうしているうちに、忘れていたフランス文化への関心がムクムクとよみがえって来たのです。
「よし、フランス語を勉強しよう!」
そう決意した翌日、僕は新宿の紀伊国屋語学書コーナーへ、辞書と参考書を購入しに向かったのでした。
フランス語入門書について
事前に、アマゾンで検索すると、フランス語の初級文法書で、売れ筋のものは3点ありました。
一つ目は、『フラ語入門、わかりやすいにもホドがある!(CD付・改訂版)』清岡智比古・著(白水社)。
これは、タイトルがふざけ過ぎているのと、練習問題がないとのことで、除外しました。
確かに、フランス語の文法概念には、英語にはないものもあり(特に時制)、初心者にはとっつき難いかも知れません。
とは言え、しょせんは同じインド・ヨーロッパ語族なので、日本語と比べると、遥かに似ています。
ですから、わざわざ話し言葉でくだけた説明を受けなくても、普通に解説してくれれば理解出来るでしょう。
僕は、それでドイツ語もラテン語も勉強しました。
それに、文法学習において、練習問題は重要です。
説明を聞いて分かったつもりになっても、練習問題を解いてみると、全然理解していなかったということが、よくあるからです。
二つ目は、『これならわかるフランス語文法 入門から上級まで』六鹿豊・著(NHK出版)。
これは、500ページ以上もある大部の参考書ですが、「入門から」とうたっているにも関わらず、「発音」の章がないので、やはり除外しました。
フランス語は、発音が非常に難しいです。
僕は、会話には全く興味がなく、フランス文学を原書で読みたいと思っているのですが、それでも発音が重要なのは言うまでもありません。
文法学習が終わってからも、後々、折に触れて参照するはずの文法書に、発音の章がないというのは、致命的です。
という訳で、結局、次の本を選びました。

増補改訂版 新・リュミエール―フランス文法参考書

増補改訂版 新・リュミエール―フランス文法参考書

初版は2013年(増補改訂版)。
著者は、森本英夫(大阪市立大学甲南女子大学名誉教授)氏、三野博司(奈良女子大学名誉教授、放送大学特任教授)氏。
この参考書は、改訂される前の初版は1992年とのことで、伝統のある本です。
僕が大学で受けたフランス語のガイダンスでも、先生がこの本を薦めていました。
実際に使ってみると、少し章分けが細か過ぎたり、練習問題に、未だ習っていない文法事項が出て来たりもしますが。
それでも、初級文法の必要事項を網羅した、良い参考書だと思います。
語学学習の基本は、こうした定番的な文法書(英語で言えば、『フォレスト』のような)を、まずは一通り終えることだと思います。
僕は、昨年(2018年)の12月から今年(2019年)の2月中旬まで、2ヵ月強の間、毎日、仕事が終わった後に、会社の近くの喫茶店に寄って、本書に取り組みました。
辞書について
学習用の仏和辞典(英語で言えば、『クラウン』『アンカー』『ライトハウス』などに当たる)については、売れ筋のものが3点あります。
『クラウン仏和辞典』(三省堂)、『プチ・ロワイヤル仏和辞典』(旺文社)、『ディコ仏和辞典』(白水社)です。
このうち、『プチ・ロワイヤル』と『ディコ』は、僕が受けたフランス語のガイダンスでも、先生が薦めていたような気がします(『クラウン』を何故、薦めていなかったのかは分かりません)。
これらは、3万語から5万語程度の収録語数があり、第二外国語として2年間学ぶ、つまり、初級文法から中級の講読までは使えるように作られているはずです。
ほかに、入門用の辞書として、『パスポート初級仏和辞典』(白水社)や『ベーシック・クラウン仏和・和仏辞典』(三省堂)などがあります。
これらは、初級文法の教科書だけを学んでいるうちは良いのですが、実際に講読の授業が始まると、語彙数が少ないので、すぐに使えなくなるでしょう。
ですので、本格的にフランス語を学びたいなら、避けた方が無難です。
僕は、上述の学習用仏和辞典のうち、一番伝統があるという理由で、『クラウン』を選びました。
クラウン仏和辞典 第7版

クラウン仏和辞典 第7版

初版は2015年(第7版)。
ただし、改訂前の初版が発行されたのは1978年で、日本で最初の学習仏和辞典です。
実際に使ってみると、例えば、カナ発音表記が重要語にしかないとか、該当英単語が一部にしか記されていないとか、不便な点はあります。
また、ドイツ語と比べて、フランス語は動詞の活用が複雑なので、結局、巻末の活用表や文法書を参考しなければなりません。
まあ、これは辞書のせいではないのでしょうが。
英語に比べれば、選べる辞書の種類は少ないですが、それでも、ドイツ語と並ぶ第二外国語の王者(もっとも、今では中国語や韓国語も人気なのでしょうが)なので、たくさんのものが発行されています。
単語集について
単語集については、僕は否定派です。
ただ単に単語と意味が羅列してあるだけで、あんなものでは、到底覚えられません。
例文も、あったとしても一文くらいで、多義語になると、全く足りないでしょう。
結局は、辞書を引きながら、出会ったものを一つ一つ覚えて行くしかありません。
もし、単語集に意味があるとすれば、リストとしてのみでしょう。
例えば、初心者向けの単語集なら、初級に必要な約1500の単語が、一体どれとどれなのかが分かります。
ですから、単語集を買ったら、載っている単語について、辞書にアンダーラインを引いておくと、どれが重要語なのか、ひと目で分かって便利です。
もっとも、そんなことをしなくても、ほとんどの学習辞典では、重要語は色刷りにしたり、大きな活字を使ったりしていますが。
なお、仏検などの検定用単語集は、範囲が偏っていて、その試験を目指す人にしか役に立ちません。
アマゾンによると、単語集の売れ筋は、次のものだそうです。
CDブック これなら覚えられる!  フランス語単語帳

CDブック これなら覚えられる! フランス語単語帳

初版は2008年。
著者は、六鹿豊(元・白百合女子大学教授)氏。
ただし、単語集については、僕は実際に使っていないので、何とも言えません。
さあ、それでは、上に紹介した本を使って、フランス語を学びましょう!

『恐怖の岬』

この週末は、ブルーレイで『恐怖の岬』を見た。

1962年のアメリカ映画。
監督は、『ナバロンの要塞』『猿の惑星・征服』『最後の猿の惑星』の巨匠J・リー・トンプソン
音楽は、『地球の静止する日』『ハリーの災難』『間違えられた男』『知りすぎていた男』『めまい』『シンドバッド七回目の航海』『北北西に進路を取れ』『サイコ』『鳥』『マーニー』『タクシードライバー』のバーナード・ハーマン
主演は、『大いなる西部』『ナバロンの要塞』『西部開拓史』『アラバマ物語』『オーメン』の大スター、グレゴリー・ペック
共演は、『眼下の敵』『史上最大の作戦』のロバート・ミッチャム、『十二人の怒れる男』『サイコ』『ティファニーで朝食を』『トラ・トラ・トラ!』『大統領の陰謀』のマーティン・バルサム、『アパートの鍵貸します』のジャック・クルーシェン、『女王陛下の007』『戦略大作戦』のテリー・サバラス、『理由なき反抗』のエドワード・プラット。
なお、本作のリメイクがマーティン・スコセッシ監督、ロバート・デ・ニーロ主演の『ケープ・フィアー』である。
僕は見ていないが、公開当時、大変話題になっていたことを覚えている。
当時は、カタカナなので全く気付かなかったが、「恐怖の岬」って「cape fear」じゃないか。
ユニヴァーサル映画。
モノクロ、ワイド。
不安げなテーマ曲から始まる。
葉巻を加えたマックス・ケイディロバート・ミッチャム)という男が、弁護士のサム・ボーデン(グレゴリー・ペック)を訪ねて法廷にやって来る。
サムをじっと見つめるマックス。
駐車場で、サムに声を掛ける。
サムは、マックスのことを一瞬思い出せない。
「お宅には美人の奥さんと娘さんがいるんだろ」と不気味な言葉を吐くマックス。
サムは帰宅し、妻のペギー、一人娘のナンシーとボーリングに出掛ける。
ボーリング場にもマックスがいる!
気味が悪い。
サムは彼に気付いて、声を掛けた。
マックスは「先生の家族を見ておきたくてね」などとのたまう。
サムは、友人である警察署長マーク・ダットン(マーティン・バルサム)に電話をする。
「ヤツが神経戦を仕掛けて来た。」
サムはマークに会う。
マックスは、かつて女性に暴行し、サムが法廷で証言したために有罪になったと、彼のことを恨んでいた。
ここで、マックスが無実の罪で有罪になったのならば、弁護士を恨むのも分かるのだが。
本作のマックスの描写を見ている限り、明らかに性犯罪者として描かれている。
かと言って、サムがヒーローかと言うと、そうでもなく、なかなか強引な弁護士である。
マークは、マックスの住所が「波止場」と登録されていると聞いて、「放浪罪で引っ張れ」と命じる。
「放浪罪」って、そんな罪があるのか!
じゃあ、僕が休みの日に調布駅前をブラブラしていたら、駅前交番のポリスマンが僕を逮捕出来るのか!
まあ、僕の住所は「波止場」ではないが。
本作は、警察権力の横暴にも一石を投じている。
警察は、解釈の仕様によって、如何様にも一般市民を逮捕出来る。
僕だって、いつ何時、逮捕されるか分からない。
まあ、今のところ、逮捕されたことはないが。
しかも、日本の場合、いったん逮捕されてしまうと、99パーセント有罪になる。
こんなことが許されるのだろうか!
もちろん、本作のマックスは明らかな犯罪者なのだが。
それにしても、警察の微罪による別件逮捕も目に余る。
ここまで、主要キャストを実に手際良く紹介している。
で、マックスが酒場で飲んでいると、警察がやって来て、彼は連行されてしまう。
警察署でサムが登場すると、マックスは「Well, well, well!」と迎える。
逮捕時、マックスの所持金は7ドルであったが、銀行には5400ドルの預金があった。
「俺はずっと居座るからな!」とマックス。
「私の家には近付くな!」とサム。
翌日、マックスは釈放された。
そりゃそうだろう。
「放浪罪」なんかで、カルロス・ゴーンみたいに何ヵ月も拘留されたら、たまらん。
一方、サムの家では、飼い犬が倒れていた。
急いで車で獣医のところへ向かうサム。
しかし、手遅れであった。
ストリキニーネによって毒殺されたようである。
泣くナンシー。
サムは、当然のことながら、マックスの仕業ではないかと疑う。
サムは、ペギーとナンシーにマックスのことを打ち明ける。
しかし、「人権があるから、見込みでは逮捕出来ない。」
これは当然のことで、本作では、明らかにマックスが犯罪者であるから、警察が手出し出来ないのが歯がゆいと観客も思うのだが。
もし、怪しいだけで逮捕出来るのなら、この国は罪のない一般市民が次から次へと逮捕される恐怖国家になってしまう。
スケベそうな男性が、「痴漢しそうだから」という理由だけで逮捕されるなら、全国の男性は、満員電車で通勤出来なくなってしまう。
もっとも、結果的に、電車がガラガラになって、痴漢は減るのかも知れないが。
夜、ペギーが目覚めると、サムがいない。
不安になって探すと、サムは外で警察と話していた。
おびえるペギー。
翌日、マークがサムを呼び出し、「マックスが弁護士を雇った」と告げる。
この弁護士は悪徳弁護士として名高いらしいが、彼が繰り出すマックスの微罪逮捕の数々を聞くと、僕は到底、この弁護士を悪徳だとは思えない。
むしろ、サムとマークが、弁護士と警察という権力を利用して、一般市民を貶めようとしているように見える。
サムはマークに抗議するが、マークは「公然たる行為がないと、私は動けん」と答える。
何度も言うが、当たり前田のセンターだ。
マークはサムに「私立探偵を雇え」と言う。
マックスは、酒場でナンパした女性とドライブしていた。
それを尾行する私立探偵チャーリー・シーバース(テリー・サラバス)。
で、マックスが女性とホテルへ入ると、シーバースは警察に電話をし、「わいせつ行為でパクれる」と。
いやいや、待てよ。
そうしたら、ラブホテルに入ったカップル(のうち、しかも男の方だけ)は全員逮捕じゃないか!
合意があれば、わいせつ行為をしても何ら問題はない。
でなければ、人類は絶滅してしまう。
問題なのは、合意がない場合だけだ。
もっとも、児童買春の場合は、同意があるにも関わらず、悪いのは一方的に買った側(ほとんどは男性)で、売った側の女性は、未成年というだけで、金銭を受け取っているのに、「被害者」という扱いになるが。
本作では、明らかに女はマックスに誘われて、喜んでデートに応じている。
ホテルに入ったのも、同意の上とみなせるのではないか。
彼女はベッドに下着姿で横たわっているし。
でも、警察がやって来るんだな。
すると、さっきまでマックスにしなだれかかっていた女が、暴力をうずくまっている。
どうやら殴られたようである。
当時の検閲の問題で、はっきりとは言えないのだろうが、彼女は強姦されたことになっている。
これは、現代の感覚だと、ちょっと無理があると思う。
ドメスティック・バイオレンスが問題になるなら分かるが。
女は詳細を話したがらない。
シーバースがやって来て、「ヤツを告訴しないか」と言うが、女は首を縦に振らない。
要するに、被害者なのに、法廷で性暴力の詳細を証言しなければならないのが耐えられないのだ。
これはまた別の問題提起で、現代でも、性犯罪が親告罪であると、なかなか女性の方から訴え難いのは、これが理由だろう。
最近でも、真相は分からないので、軽々しいことは言えないが、某アイドル・グループみたいに、もみ消されたりもする。
女性は被害者なのに、女性の方が更に立場が悪くなる。
女性が解放されていなかった当時なら、もっとそうだろう。
さて、サム一家が自家ヨットに乗ろうとして波止場に来ている。
昨今の日本と違い、当時のアメリカの弁護士はヨットを所有出来るような上流階級であったようだ。
で、ナンシーが一人になったのを、じっと見つめているマックス。
手にはバドワイザーの缶。
サムが「何をしている?」と声を掛ける。
「ビールを飲んでいる。それが法律違反か?」とマックス。
「あの娘もカミさん同様に、味は良さそうだ」とのたまうマックスに、殴り掛かるサム。
だが、マックスは手出ししない。
これこそ、サムの方が暴行罪で逮捕される案件ではないのか。
しかも、サムはマックスを襲わせるために、暴力団を雇ったりしている。
如何に明らかな犯罪者が相手だとしても、余りにもダーティーではないか。
グレゴリー・ペックが男前だから許されるのかも知れないが、僕はとても感情移入出来ないね。
で、別の日。
ナンシーの学校帰り。
ペギーが毎日、車で迎えに来ているのだが。
たまたまその日は、車のところにナンシーが行っても、ペギーがいなかった。
不安になるナンシー。
彼女が車に乗って待っていると、マックスが現われる。
逃げるナンシー。
追って来るマックス。
ナンシーは校内へ。
更に追って来るマックス。
恐怖で校外へ飛び出したナンシーは、車とぶつかってしまった。
何とか無事だったものの、さあ、これからどうなる?
本作には、上述のように、問題点が多数ある。
結末の回収の仕方も、当時のハリウッド映画の限界なんだろうけど。
ただ、荒削りながらも、サスペンス映画としての要素は多分にあり、マーティン・スコセッシがリメイクしたがったのも分からなくもない。

Cape Fear (1962) Trailer

日本近代文学を文庫で読む(第1回)ガイダンス

日本近代文学を学ぼう
僕は、これまでの半生において、ロクに本を読んで来ませんでした。
小学校2年生の時、母親に初めて駅前の書店に連れて行かれてからは、毎日、学校帰りに立ち読みに寄っては店主に追い返される日々。
でも、読んでいたのは、主に雑誌や、当時、学研や小学館などから出ていた漫画版の雑学本などです。
初めて日本近代文学に触れたのは、小学校4年生の時、母に買ってもらった夏目漱石の『吾輩は猫である』でした。
母が小学生の頃、漱石の『猫』や『坊っちゃん』を夢中になって読んだから、「あんたも読みよし」ということでです。
もちろん少年版で、文章は原文どおりだったと思いますが、上・下巻に分かれており、最初は上巻だけを買い与えられました。
「上巻を読み終わったら下巻も買うたげる」とのことで、確か、上巻は読み終えたと思うのですが、結局、下巻は買ってもらえませんでした。
理由は、今となっては思い出せませんが、多分、忘れていたのでしょう。
少し飛びますが、高校1年生の時、全国の多くの高校生と同様、国語の授業で芥川龍之介の『羅生門』を読みました。
それから、芥川の作品を読んでみようと思い立ち、新潮文庫から出ていたものを何冊か読みましたが、それっきりでした。
同じ頃、高校生にありがちですが、太宰治にハマりました。
学校の図書館で、筑摩書房から出ていた全集を1巻から順に借りて、全巻(10巻)読破したのです。
後にも先にも、文学作品の全集を読破したのは、これ一度きり。
太宰は読みやすかったですし、この年代特有の鬱々とした気分に響くものがありました。
夏休みには、『人間失格』で読書感想文を書いて賞をもらったりして、ちょっと有頂天でした。
数学の授業中に太宰を読んでいて、「だから君はダメなんだ!」と本を取り上げられたこともありましたが。
何せ、数学は赤点だったもので。
ただ、それ以外に、特に日本近代文学を積極的に読んだ記憶はありません。
国語の教科書の巻末に載っている文学史の年表を見て、「ここに載っている作品を全部読もう」などと思ったこともありますが、当然ながら挫折しました。
高校時代は、学校図書館での本の貸し出し冊数は年間100冊くらいで、学年の3本指には入っていましたから、本を読まなかった方ではないと思います。
もっとも、学年1位の生徒は300冊くらい借りていたそうなので、越え難い壁がありました。
当時、読んで印象に残っている本は、講談社現代新書の『全学連全共闘』や『60年安保闘争』などです。
高校2年生の夏休みには、生まれて初めて上京して、東大の安田講堂を見に行ったりしました。
さて、高校も3年生になり、進路を決める時期です。
僕は、学校の成績はクラスでビリから2番目と、壊滅的でしたが、国語の成績だけは学年でトップだったので、当然のように文学部を目指すことにしました。
僕の第一志望だった私立大学の文学部の国語では、現代文・古文・漢文とも、毎年必ず1問ずつ文学史の問題が出題されていたのですが。
怠惰な僕は、文学史の対策を一切行ないませんでした。
唯一、当時人気講師だった代々木ゼミナールの田村秀行先生が薦めていた奥野健男氏の『日本文学史』(中公新書)を読んだくらいです。
奥野氏は太宰の評論で著名な方で、文庫の巻末の解説などもよく書かれていたので、馴染みはありました。
しかし、僕は作家と作品名はともかく、あのナントカ派というのを、興味もなかったので、全く覚えられませんでした。
ですから、この本を読んでも、何が書いてあったのか、ほとんど記憶に残っていません。
進学校だと、例えば、明治書院の『精選 日本文学史』のような、文学史のテキストを使うようです。
今、僕の手元にもありますが、ずいぶんと細かい事柄まで書かれていて、記憶力の悪い僕には、到底覚えられませんね。
僕が大学に入ってから出た『田村の「本音で迫る文学史」』(大和書房)は、読みやすくて面白い本でしたが、今では絶版になっているようです。
そんな訳で、文学史については、古文・漢文も含めて、ほとんど勉強せずに受験に挑みました。
結局、二浪しましたが、第一志望には3年連続で不合格で、第二志望に進学します。
都内の私大の文学部です。
僕が入学したのは1993年で、当時のシラバスを見ると、一般教養科目で「文学」という授業がありました。
国文科の先生が担当です。
確か、僕も選択したような気がするのですが、授業に出席した記憶がほとんどありません。
僕は学生時代、バイトと映画と酒に明け暮れて、ほとんど学校に行っていないのです。
僕の在籍していた学部では、1年生の時の成績で、2年生に進級する時に所属する学科が決まるのですが、僕は入学初年度はほとんど単位を取っていなかったので、留年しました。
2回目の1年生は、さすがに心を入れ替えたので、今度は進級出来ました。
その時に、文学の授業も再履修したような気がするのですが。
どうも記憶が曖昧で、シラバスを見ると、95年度の授業を受けたのではないかという気がします。
と言うのが、シラバスには、主に鴎外と漱石の作品を読むと書かれているのです。
教科書には、授業を担当された先生が書かれた『鴎外と漱石』という本が指定されています。
僕が受けた授業では、最初のガイダンスで、先生が「鴎外と漱石の作品を読んで行きます」と仰ったような記憶があるのです。
まあ、もう四半世紀前のことなので。
しかしながら、情けないことに、僕は学生時代、ロクに日本近代文学を読みませんでした。
いや、日本近代文学だけではありませんが。
進学したのが英文科だからというのもありますが、だからと言って、英文学も全く読んでいません。
結局、大学は7年在籍して、中退してしまいます。
社会人になってすぐの頃は、何も感じませんでしたが、30歳代になると、じわじわと自らの不勉強さを省みるようになりました。
それで、突然、漱石の作品を幾つか読んでみたり。
日々の忙しさに負けて、なかなか継続しなかったのですが。
ところが、ある時、水村美苗氏の『日本語が亡びるとき』を読んで、衝撃を受けます。
こんなにも深く、日本文学を読み解こうとしている人がいるのかと。
僕も、せめて日本近代文学の代表作くらいは一通り読んでおかなければ、と思ったのです。
日本人のアイデンティティーとして。
たとえ英文科の学生であったとしても、英文学を学ぶ前に、その前提として近代日本文学の教養は必要だと思うのです。
テキストについて
そこで、これから、日本近代文学の代表作を少しずつ読んで行きたいと思います。
羅針盤となる国文学史のテキストとしては、前述の高校生向けのものでも良いのですが、どうしても事項の羅列になってしまうので、ここでは、もう少し本格的な大学生向けのものを選んでみましょう。
いかに文学部が衰退しているとは言っても、国文科はさすがに最もポピュラーな学科なので、国文学史のテキストも無数に出版されています。
ところが、1冊で上代から近代まで網羅しているものは多くありません。
日本文学は、英文学とは違い、学生が高校までで多数の作品(少なくとも、作品名)に触れているため、多くの大学の国文科の国文学史の授業は、時代ごとに詳しい内容を扱うようになっています。
そのため、国文学史のテキストも、ほとんどが時代ごとに分かれているのです。
1冊もので、僕の近所の調布市立図書館にもあるようなポピュラーなもので、かつ、新刊書店で流通しているものとなると、次の本しか見当たりませんでした。

はじめて学ぶ日本文学史 (シリーズ・日本の文学史)

はじめて学ぶ日本文学史 (シリーズ・日本の文学史)

初版は2010年。
編著者は榎本隆司氏(早稲田大学名誉教授)。
500ページ以上の大部の本ですが、1冊で上代から近代まで網羅されています。
偶然ですが、僕は、このシリーズの『イギリス文学史』や『アメリカ文学史』も持っているので、親しみ易いのです。
通読するのは大変ですが、その都度、時代の概観や作家・作品の解説などを参照したいと思います。
それから、ここで読むのは、文庫で現在手に入るものに限ることにしました。
その方が入手し易いからです。
もっとも、日本文学の「代表作」ですから、ほとんど複数の文庫版があると思いますが。
僕の手元に、早稲田大学教育学部の2012年度の教科書目録があります。
それによると、同学部の名物教授である石原千秋先生の「文学の近代」という授業では、岩波文庫版の『舞姫うたかたの記』『にごりえたけくらべ』『金色夜叉(上・下)』『破戒』『蒲団』『浮雲』『小説神髄』などが教科書として指定されていますが、そんなイメージです。
本来なら、学生の内に、日本近代文学の代表作など、一通り読んでおくべきなのでしょうが。
後悔しても仕方がないので、今から読みましょう。
読んで行く作品は、『詳説日本史』(山川出版社)に載っているものを基準にします。
何故、日本史の教科書かと言うと、文学史の教科書だと、細かくなり過ぎて、「代表作」でないものも多数、含まれるからです。
それでは、次回以降、具体的に作品を読んで行きましょう。
【参考文献】
日本文学史―近代から現代へ (中公新書 (212))奥野健男・著
精選日本文学史』(明治書院
田村の〈本音で迫る文学史〉 (受験面白参考書)』田村秀行・著(大和書房)
1993年度 二文.pdf - Google ドライブ
1995年度 二文.pdf - Google ドライブ
鴎外と漱石―終りない言葉』佐々木雅発・著(三弥井書店
増補 日本語が亡びるとき: 英語の世紀の中で (ちくま文庫)水村美苗・著
詳説日本史B 改訂版 [日B309] 文部科学省検定済教科書 【81山川/日B309】笹山晴生佐藤信五味文彦、高埜利彦・著(山川出版社

『ルシアンの青春』

この週末は、ブルーレイで『ルシアンの青春』を見た。

ルシアンの青春 Blu-ray

ルシアンの青春 Blu-ray

1973年のフランス映画。
監督・脚本は、『恋人たち』『鬼火』『好奇心』の巨匠ルイ・マル
撮影は、『続・夕陽のガンマン』『ウエスタン』『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』のトニーノ・デリ・コリ。
編集は、『好奇心』のシュザンヌ・バロン。
主演はピエール・ブレーズ。
第二次大戦を舞台にした、ユダヤ人が出て来る映画と聞いたから、勝手に『さよなら子供たち』みたいな映画かと思っていたら、全然違っていた。
「ルシアンの青春」というから、甘ったるい青春映画かと思ったら、これもまた全く違っていた。
主人公ルシアンは、勘違い大馬鹿野郎である。
でも、誰でも若い時は何にも考えず、ただ流されるままに生きているということもある。
それに、あまりにも時代が悪過ぎたということもある。
そういう意味では、ルシアンも戦争の被害者ではあるだろう。
本作が描いているのは、フランスの恥部である。
こういう映画が評価されるのは、この国の懐の深さだろう。
戦争には当然、被害者としての側面と加害者としての側面がある。
日本だと、加害者としての側面を描こうとすると、すぐに「自虐史観だ!」とネトウヨが騒ぎ出すが。
カラー、ワイド。
「1944年6月、フランス南西部のとある小さな町で」という字幕。
要するに、連合軍が反撃を開始した頃だ。
農家の一人息子で17歳のルシアン(ピエール・ブレーズ)は、病院で清掃夫として働いている。
パチンコで木に止まっている鳥を打ち落としたりする野生児。
自転車を漕いで野道を走るルシアン。
軽妙なテーマ曲。
自宅に着くと、知らない家族が食事をしている。
要するに、自宅が人手に渡ったんだな。
さらに、父親はドイツ軍の捕虜となり、母親は村長の情婦となっていた。
どうでもいいが、フランスでは17歳の少年が朝から自宅でワインを飲むんだな。
ルシアンは、父親のライフルを持ち出して、ウサギを撃ったりする。
この腕が、後々役立つこともあるのだが。
ルシアンは学校へ行く。
着いて見ると、授業中。
田舎の学校だけあって、色々な年齢の生徒が一緒の教室で授業を受けている。
と言っても、ルシアンは既にこの学校を辞めていた。
学校の先生が実はレジスタンスの隊長で、ルシアンは先生に「レジスタンスに入りたい」と頼むが、拒絶される。
もっとも、ルシアンに大した考えがなかったことはすぐに分かる。
ルシアンは、庭でニワトリを追い掛け、捕まえて、素手で首を落とし、羽をむしって食べる。
これも、後の伏線だが。
ルシアンは、単に病院勤めがイヤになっていただけだった。
この頃、町にはドイツ軍がウロウロしていて、フランスの人々は、彼らを見掛けると直ちに物影に隠れた。
その夜、ルシアンがホテルの前でぼんやりと立っていると、一人の男に「スパイか」と声を掛けられ、中に連れて行かれる。
ホテル内では、パーティーが行なわれていた。
実は、ここはゲシュタポの本部で、その手先となったフランス人達が集まる場所であった。
自転車競走で有名な元選手のアンリに「飲んでけ」と言われ、ルシアンはいい気になって酒をあおる。
散々飲まされたルシアンは、学校の先生が偽名を使ってレジスタンスの隊長をやっているなどと、軽々しく喋ってしまう。
言ってみれば、共産党員が自民党の本部で党の秘密をペラペラと明かしてしまうようなものだが。
けれども、ルシアンは、レジスタンスもゲシュタポも、何なのかよく分かっていないようだ。
案の定、二日酔いで目覚めたルシアンは、アスピリンと共に栄養価たっぷりの朝食を勧められる。
そこへ、学校の先生が手錠をして連行されて来る。
先生はルシアンをなじるが、ルシアンは自分のせいだとはそれほど思っていないだろう。
ここには、毎日密告の手紙が何百通も届く。
しかし、ルシアンは彼らの華やかな生活に憧れて、仲間に加わることにした。
この辺が、特に考えもなく流されるままに生きる若者という感じだが。
それが彼の人生にとって重大な意味を持ってしまうのは、時代のせいなのだろう。
そもそも、現代でも、職業の選択なんて、ほぼ偶然の産物だ。
たまたま目の前にその仕事があったから、就いたに過ぎない。
ルシアンは銃の腕前がいいので、そこを買われた。
まあ、狩りをしていたからな。
ある日、ルシアンは仕立て屋のオルンの家へ連れて行かれる。
彼は金持ちのユダヤ人だ。
採寸をして、スーツを誂えると。
しかも、オルンに対しては、「もっとカネを払え」と。
しかし、こんなことをしている間にも、戦況は(ドイツにとって)次第に深刻になりつつあった。
ルシアンが本部に戻ると、例の先生が風呂桶の水に顔をつけて拷問されている。
ルシアンは秘かに通じ合っているお手伝いの女の部屋へ。
彼女はルシアンにささやく。
「戦争はアメリカが勝つわ。」
ゲシュタポの手口は、例えば次のようなものだ。
「ドイツ軍に脚をやられた」と言って、男が医者に手当てを求める。
しかし、実はケガというのはウソで、男はゲシュタポであった。
ルシアンが銃で医者を脅している間、連中は酒を飲みながら尋問し、調度品を奪う。
医者の息子が1年掛けて作ったという大きな船の模型を無惨に破壊し、自白を迫る。
まさに、フランス人にとっては、こうまでして卑劣な敵の軍門に下りたくはないだろう。
それでも、ルシアンはある種の権力を手に入れたことで、どんどん増長して行く。
「自分は何でも出来る」という、変な万能感を得てしまう。
若くて、頭も良くないルシアンには、状況を客観的に見ることが出来ないんだな。
それに、平時ならこういうことは起こらないだろうが、歪んだ力関係が出来上がっている時代だった。
何か、ルシアンの勘違いっぷりで、手塚治虫の『ユフラテの樹』を思い出した。
ルシアンは、オルンの家に仕立て上がった服を受け取りに行く。
「あんたはユダヤ人か?」と尋ねると、オルンは「ノン」と答える。
オルンには、フランスという名の美しい娘がいた。
彼女に目を付けるルシアン。
だが、オルンはゲシュタポの手先に娘を紹介したくない。
ルシアンはオルンからカネを回収する。
嘆くオルン。
フランスは買い出しに出掛けていた。
戦後の日本のヤミ市を思い起こさせるような長蛇の列に並んでいるフランス。
そこを通り掛かったルシアンは、フランスを見付けると、彼女の手を引いて先頭に連れて行く。
ブーブー文句を言う、並んでいる人々。
フランスも「あんた、あんまりだわ」と怒る。
が、そこでピストルを懐から取り出し、「ドイツ警察だ」と人々に告げる。
何という職権乱用。
しかも、未だ若くて女の扱い方も知らないルシアンは、こうすれば、彼女が自分になびくとでも思ったのだろう。
まあ、今の日本でも、受験勉強を必死で頑張って東大に入った男が、女の子の前で模試の偏差値を自慢する何ていう話しを聞くが。
まあ、でも、若い時はこんなもんだよな。
僕も散々、恥ずかしい思いをした。
で、ルシアンは「お嬢さんに会いに来た」と、オルンの家を訪ねる。
贈り物として、押収品の「最高級のシャンパン(実は模造品)」を半ダース、持って来た。
先の一件でルシアンを快く思わないフランスは、シャンパンが好物にも関わらず、飲もうとしない。
もっと露骨なのは、フランスの祖母(オルンの母親)で、ルシアンが「ティーカップに」注いだシャンパンを、口も付けずに捨てる。
オルン一家はパリ出身の裕福な家庭。
一方、ルシアンは田舎の農家出身だから、高級なシャンパンなど、飲んだことはおろか、見たこともないのだろう。
この対比は、滑稽でもあり、哀しくもある。
一種の階級闘争である。
家の中に、重苦しい雰囲気が漂う。
しかし、ようやくフランスも打ち解けて来て、ルシアンと話し始める。
学校を辞めたというルシアンに、何の気なく「何の勉強をしていたの?」と尋ねるフランス。
このひと言が、ルシアンの隠していたコンプレックスを爆発させる。
「僕は君達を逮捕できる!」と叫び出すルシアン。
いつの時代も、学歴コンプレックスというのは根深いものだ。
永山則夫みたいに、殺人にまで至る者もいる。
僕も、大学中退(実質高卒)だから、その気持ちは痛いほど分かる。
そこへ、家主が家賃の値上げを通告に来る。
それを、「ドイツ警察だ!」と、例の調子で追い出すルシアン。
家主は「ゲシュタポを家に迎えているとは!」と吐き捨てて、立ち去る。
ここまでが前半。
後半も、時代に翻弄されるルシアン達の姿が、冷徹に描かれる。
運命と言ってしまえばそうなんだろうけど、余りにも痛々しい。
最後に、ルシアンはお休みの挨拶を「Gute Nacht」とドイツ語で言う。
彼は、魂をドイツに売ってしまったのか。
まあ、こんな歴史があったから、フランスとドイツは仲が悪いわな。
大体、世界中どこでも、隣国同士は仲が悪い。
日本と韓国も然り。
かと言って、「仲が悪くなければならない」ということではない。
仲良くした方がいいに決まっている。
どうして、ネトウヨという人種は、そんな簡単なことすら分からないのだろうか。

Lacombe Lucien (1974) Bande Annonce VF [HD]

『嵐が丘』を原書で読む(第22回)

(テキスト23ページ、1行目〜)

I began to dream, almost before I ceased to be sensible of my locality.

begin(他)(~し)始める、(~し)だす(+to do)
dream(自)夢を見る
before(接)~より前に、(~する)に先だって、~しないうちに
cease(他)(次第に)(~)しなくなる(+to do)
sensible(形)(~に)感づいて、(~を)意識して(of)
of(前)(目的格関係を表わして)(形容詞に伴って)~を
my(代)私の
locality(名)位置関係、土地勘

I thought it was morning; and I had set out on my way home, with Joseph for a guide.

think(他)(~と)思う、考える(+that)
it(代)(非人称動詞(impersonal verb)の主語として)(特にさすものはなく、従って訳さないで文の形式的主語となる)(時間・日時を漠然とさして)
set out(~に)出発する(=set off)(on)
on one's way(~へ)行く道で
home(副)わが家へ ・on one's way home 帰途に(帰る途中で)
Joseph(名)ジョーゼフ(男性名/愛称Jo、Joe)
for(前)(資格・属性を表わして)~(だ)として、~と
guide(名)(観光客・博物館・山などの)案内人、ガイド

The snow lay yards deep in our road; and, as we floundered on, my companion wearied me with constant reproaches that I had not brought a pilgrim’s staff: telling me I could never get into the house without one, and boastfully flourishing a heavy-headed cudgel, which I understood to be so denominated.

lie(自)(副詞句を伴って)(ものが)横たわっている、ある
yard(名)ヤード、ヤール(長さの単位/3 feet、36 inches、0.91144 m)
deep(形)深さが~の
our(代)我々の、私たちの
as(接)(時を表わして)~しながら
flounder(自)(副詞句を伴って)もがきながら進む
on(副)(動作の継続を表わして)どんどん、絶えず、ずっと
companion(名)連れ
weary(他)(人を)退屈させる、あきあきさせる、うんざりさせる(with)
with(前)(原因を表わして)~のせいで、~のゆえに、~のために
constant(形)絶えず続く(繰り返される)、恒常的な、不断の
reproach(名)非難の言葉
that(接)(名詞節を導いて)(~)という/(同格節を導いて)
pilgrim(名)巡礼者、霊場参拝者
staff(名)つえ、棒、こん棒
tell(他)(人に)(~を)話す、告げる、語る、言う、述べる(+目+that)
could(助動)(過去形の主節の時制の一致により従属節中のcanが過去形に用いられて)~できる、~してよい
never(副)(notよりも強い否定を表わして)決して~ない
get into ~ ~(の中)に入る
without(前)~がなければ
one(代)(既出の可算名詞の反復を避けて)(その)一つ、それ
boastfully(副)自慢そうに
flourish(他)(~を)(注意を引くために)振る、振り回す
headed(形)(複合語で)頭が~の、~頭の
cudgel(名)(武器または懲罰用の)こん棒
which(代)(関係代名詞)(非制限的用法で/通例前にコンマが置かれる)(主格・目的格の場合)そしてそれは(を)
understand(他)(~と)解釈する、判断する(+目+to be 補)
so(副)(様態を表わして)(前出の名詞・形容詞などに代わって)そう
denominate(他)(~を)(~と)称する、呼ぶ

For a moment I considered it absurd that I should need such a weapon to gain admittance into my own residence.

for(前)(時間・距離を表わして)~の間(ずっと)
consider(他)(~を)(~だと)みなす、考える(+目+補)
it(代)(形式目的語としてあとにくる事実上の目的語の不定詞句・動名詞句・that節などを代表して)
absurd(形)ばかげた、おかしな、こっけいな(=ridiculous)
that(接)(名詞節を導いて)(~)ということ/(目的語節を導いて)/(主語節を導いて)
should(助動)(仮定法で)(遺憾・驚きなどを表わす主節に続くthat節、またはI'm surprised、I regretなどに続くthat節に用いて)~する(のは、とは)
need(他)(~を)必要とする、(~する)必要がある
weapon(名)武器、兵器、凶器
gain(他)(役立つもの・望ましいものを)(努力して)得る、手に入れる(⇔lose)
admittance(名)入場、入場許可
residence(名)(特に、大きくりっぱな)住宅、邸宅

Then, a new idea flashed across me.

flash(自)(副詞句を伴って)(機知・考えなどが)急に浮かぶ(across)
across(前)~を横切って、~を渡って、~に渡して

I was not going there; we were journeying to hear the famous Jabez Branderham preach from the text — ‘Seventy Times Seven;’ and either Joseph, the preacher, or I had committed the ‘First of the Seventy First,’ and were to be publicly exposed and excommunicated.

journey(自)旅をする、旅行する
hear(他)(~が)聞こえる、(~を)聞く(+目+原形)
preach(自)(~に)説教をする
from(前)(出所・起源・由来を表わして)~から(来た、取ったなど)
text(名)(説教の題目などに引用する)聖書の原句、聖句
seventy(名)(基数の70)(通例無冠詞)70
time(名)(複数形で)倍
seven(名)(基数の7)(通例無冠詞)7(神秘的な数として完全または多数の意味を表わすことがある)
either(副)(either ~ or ~で相関接続詞的に)~かまたは~か(どちらでも、いずれかを)
preacher(名)説教者、伝道者
commit(他)(罪・過失などを)犯す
first(代)(通例the ~)(~する)最初の人(もの)
seventy(形)(基数の70)70の、70個の、70人の
be(自)(be+to doで)(運命を表わして)~する運命である(通例過去形で用いる)
publicity(副)公に、公然と
expose(他)(人の)秘密(実態(など))を明らかにする
excommunicate(他)(人を)破門する

We came to the chapel — I have passed it really in my walks, twice or thrice: it lies in a hollow, between two hills — an elevated hollow — near a swamp, whose peaty moisture is said to answer all the purposes of embalming on the few corpses deposited there.

come(自)(人・ものが)(ある場所に)到着する、やってくる(to)
to(前)(方向を表わして)(到達の意を含めて)~まで、~へ、~に
chapel(名)(キリスト教の)礼拝堂、チャペル(教会の礼拝堂のほか、学校・病院・大邸宅などに設けられたものを言う)
pass(他)(~を)通り過ぎる、通り越す
really(副)実際には、実のところ、実際
in(前)(時間を表わして)~(のうち)に、~の間、~中
walk(名)散歩
thrice(副)三たび、3倍
lie(自)(副詞句を伴って)(~に)位置する、ある
hollow(名)くぼ地、盆地
two(形)(基数の2)2の、2個の、二人の
elevated(形)高められた、高い
near(前)(ある状態への接近を表わして)~に近く、~しかけて
swamp(名)低湿地、沼地
whose(代)(関係代名詞)(非制限的用法で/通例前にコンマが置かれる)そしてそのものの
peaty(形)泥炭の
moisture(名)湿気、湿り、水分、(空気中の)水蒸気
say(他)(be said to doで)(~だと)言われている
answer(他)(目的・要件などに)かなう、合致する(=satisfy)
all(形)(複数名詞の前に置いて)あらゆる、すべての、みな
purpose(名)目的、意図(of)
of(前)(同格関係を表わして)~という、~の、~である
embalm(他)(死体に)防腐保蔵処置を施す(古くはスパイス・香料などを詰めて、現在では血管に防腐剤を注入するなどして)
on(前)(動作の対象を表わして)~に対して、~に当てて
corpse(名)(特に人間の)死体、死骸(しがい)(=body)
deposit(他)(ものを)(特定の場所に)置く

The roof has been kept whole hitherto, but, as the clergyman’s stipend is only twenty pounds per annum, and a house with two rooms, threatening speedily to determine into one, no clergyman will undertake the duties of pastor, especially as it is currently reported that his flock would rather let him starve than increase the living by one penny from their own pockets.

keep(他)(家・庭などを)(よい状態で)維持する、手入れする
whole(副)一つのものとして
hitherto(副)今までのところは(まだ)
as(接)(原因・理由を表わして)~だから、~ゆえに
clergyman(名)(キリスト教の)聖職者
stipend(名)(牧師の)俸給
only(副)(数量を修飾して)わずか、ほんの~だけ
twenty(形)(基数の20)20の、20個の、20人の
pound(名)ポンド(英国の通貨単位)
per annum(副)1年につき、1年ごとに
house(名)(特定の目的のための)建物
with(前)(所持・所有を表わして)~を持って(た)、~のある
two(形)(基数の2)2の、2個の、二人の
threaten(他)(~の)恐れがある、(~し)そうである(+to do)
speedily(副)速く、急いで、速やかに
determine(自)決定する
into(前)(変化・結果を表わして)~に(する、なる)(通例ある物が別の物に形や状態を変えることを表わす)
one(代)(既出の可算名詞の反復を避けて)(その)一つ、それ
will(助動)(主語の意志を表わして)(願望・主張/固執・拒絶などを示して)(~しようと)欲する、(あくまでも)~しようとする
undertake(他)(仕事・義務・責任などを)引き受ける、請け負う
duty(名)義務、本分
pastor(名)牧師((英)では特に英国国教会以外の新教牧師にいう)
especially(副)特に、とりわけ
it(代)(形式主語としてあとにくる事実上の主語の不定詞句・動名詞句・that節などを代表して)
currently(副)現在(は)、今のところ、目下
report(他)(~を)報告する、報じる、伝える(+that)
his(代)彼の
flock(名)(キリスト教会の)信者、会衆
would(助動)(仮定法(叙想法)で用いて)(強い願望・選択を表わして)~したいと思う
rather(副)(would rather ~ than ~で)(~よりは)いっそ~したほうがよい
let(他)(使役を表わして)(人に)(働きかけて)(~)させる(+目+原形)
starve(自)飢え死にする、餓死する
than(接)(rather、soonerなどを伴って)~するより(むしろ)、するくらいなら(いっそ)
increase(他)(数量・程度などの点で)(~を)増す、ふやす(⇔diminish、lessen)
living(名)聖職禄(ろく)
by(前)(程度・比率を表わして)(いくら)だけ
penny(名)ペニー
their(代)彼ら(彼女ら)の
pocket(名)所持金、資力、金銭

However, in my dream, Jabes had a full and attentive congregation: and he preached — good God — what a sermon! divided into four hundred and ninety parts — each fully equal to an ordinary address from the pulpit — and each discussing a separate sin!

in(前)(範囲を表わして)~において、~内で
have(他)(ある関係を表わして)(肉親・友人などが)いる、(~が)ある
full(形)たくさんの、豊かな、たっぷりの
attentive(形)謹聴する
congregation(名)(集合的/単数または複数扱い)(礼拝に集まる)会衆
preach(他)(福音などを)説教する、説く
good(形)(強い感情や驚きなどを表わす句に用いて)Good God! おやおや!、これは驚いた!
God(名)(感嘆・のろい・祈願などに用いて)Good God! おお神よ!、ええ本当!、まさか!、おお痛っ!、ああ困った!、けしからん!、悲しいかな!(驚き・苦痛・怒り・悲しみなど)
what(形)(疑問形容詞)(感嘆文に用いて)何という(この構文ではしばしば主語と述語動詞を省略する)
sermon(名)説教 ・preach a sermon 説教する
divide(他)(ものを)(~に)分類する、類別する(into)
four(形)(基数の4)4の、4個の、4人の
hundred(形)100の、100個の、100人の(通例a、anまたはone、fourなどの数詞がつく)
ninety(形)(基数の90)90の、90個の、90人の
part(名)(書物・戯曲・詩などの)部、編、巻
each(代)各自、おのおの
fully(副)十分に、完全に
equal(形)(数量・程度など)等しい、相等しい(to)
to(前)(比較を表わして)~に比べて、~より
ordinary(形)普通の、通常の(⇔special)
address(名)演説、講演
pulpit(名)(the ~)説教師、牧師
separate(形)別の、同じでない、異なる、独自の(=different)
sin(名)(宗教・道徳上の)罪、罪業

Where he searched for them, I cannot tell; he had his private manner of interpreting the phrase, and it seemed necessary the brother should sin different sins on every occasion.

search(自)(副詞句を伴って)(人・ものを)(丹念に)捜す、捜し求める(捜し求めるものが前置詞forの目的語となる)(for)
for(前)(獲得・追求・期待の対象を表わして)~を得るために(の)、~を(求めて)
tell(他)(can、couldなどを伴って)(~を)知る、わかる(+wh.)
have(他)(部分・属性として)(特徴・性質・能力などを)もっている
private(形)個人の(⇔public)
interpret(他)(~を)解釈する、説明する
phrase(名)成句、熟語、慣用句、決まり文句
it(代)(非人称動詞(impersonal verb)の主語として)(seem that ~の主語として)(thatは略されることがある)
seem(自)(~と)見える、思われる、(~)らしい(+補)
brother(名)同信の友、同一教会員
should(助動)(必要・当然などを表わす主節に続くthat節に用いて)~する(のは)
sin(他)(罪悪を)犯す
on(前)(日・時・機会を表わして)~に
occasion(名)(しばしばon ~occasionの形で)(特定の事が起こった(起こる))時、場合、折

They were of the most curious character — odd transgressions that I never imagined previously.

of(前)(of+名詞で形容詞句をなして)~の
most(副)はなはだ、非常に
curious(形)不思議な、奇異な、変な
odd(形)変な、風変わりな、妙な
transgression(名)(宗教・道徳上の)罪
that(代)(関係代名詞)(人・ものを表わす先行詞を受けて通例制限用法で)(~する(である))ところの/(他動詞・前置詞の目的語として)
previously(副)以前に(は)、前もって

Oh, how weary I grow.

oh(間)(しばしば直後にコンマや!などを従える)(驚き・恐怖・苦痛・願望・反応・了解などを表わして)ああ!、おお!、おや!
how(副)(疑問詞)(感嘆文に転用して)まあ何と、いかに
weary(形)疲れた、疲労した
grow(自)(次第に)(~に)なる

How I writhed, and yawned, and nodded, and revived!

writhe(自)(人が)(苦痛などで)もがく、のたうち回る
yawn(自)あくびをする
nod(自)こっくりする、うとうとする、居眠りする
revive(自)生き返る、よみがえる、回復する

How I pinched and pricked myself, and rubbed my eyes, and stood up, and sat down again, and nudged Joseph to inform me if he would ever have done!

pinch(他)(体の一部を)つねる、つまむ、はさむ
prick(他)(~を)(針の先などで)ちくりと刺す、突く、(突いて)穴をあける、(穴をあけて)つぶす
myself(代)(再帰的に用いて)(一般動詞の目的語に用いて)私自身を(に)
rub(他)(もの・ものの表面を)手などでこする
stand up 立ち上がる
down(副)座って(⇔up) ・sit down 座る
nudge(他)(注意を引くためひじで)(人を)軽く突く(押す)
inform(他)(人に)通知する、知らせる
ever(副)(条件文に用いて)いつか、いずれ
do(自)(代動詞としてbe以外の動詞の反復を避けるのに用いて)(同一の動詞(およびそれを含む語群)の反復を避けて)
【参考文献】
Wuthering Heights (Penguin Classics)』Emily Brontë・著
嵐が丘(上) (光文社古典新訳文庫)小野寺健・訳
新英和中辞典 [第7版] 並装』(研究社)
リーダーズ英和辞典 <第3版> [並装]』(研究社)

「スキーピオーの夢」を原文で読む(第20回)

(テキスト17ページ、20行目〜)

(27) Nam quod semper movētur, aeternum est;

nam(接)もちろん、確かに
quī quae quod(代)(関係代名詞)(+直説法)(事実関係)~するところの(人・もの)
semper(副)常に、いつでも
moveō -ēre mōvī mōtum(他)(再帰、受動、自)動く
aeternus -a -um(形)永遠の

quod autem mōtum adfert alicuī quodque ipsum agitātur aliunde, quandō fīnem habet mōtūs, vīvendī fīnem habeat necesse est.

autem(接)しかし、これに反して、他方では
mōtus -ūs(男)運動、動き
adfert→affert
afferō affere attulī allātum(他)ひき起こす、生じさせる、もたらす(+人の与格+物・事の対格)
aliquis -qua -quid(不定代名詞)何か、あるもの
-que(前接辞)(2語を並列する場合、2番目の語に付ける/語群や文の場合はその先頭の語に付ける)~と~、また、そして
ipse -a -um(強意代名詞)自ら、自身
agitō - āre - āvī - ātum(他)(反復)(あちこちへ)追いたてる
aliunde(副)他の人(もの)から
quandō(副)(関係詞)~の時に
nis -is(男)(女)終わり、結末
habeō -ēre habuī habitum(他)持つ、所有する
necesse(不変化形容詞)necesse esse 必然である、~ねばならぬ(+不定法)

Sōlum igitur quod sē ipsumē movet, quia numquam dēseritur ā sē, numquam nē movērī quidem dēsinit;

sōlus -a -um(形)一人の、単独の
igitur(接)したがって、それゆえに
suī再帰代名詞)(属格)(対格&奪格:sē)彼(彼女・それ・彼ら・それら)自身
moveō -ēre mōvī mōtum(他)動かす
quia(接)(~というのは)~だから
numquam(副)決して~ない
dēserō -ere -seruī -sertum(他)見捨てる、見放す
ā(前)(+奪格)~によって
(副)(語句を否定して)~しない、~でない ・ne ~ quidem 決して~でない、~でさえない
quidem(副)確かに、全く ・ne ~ quidem ~(で)さえない、決して~(で)ない
dēsinō -ere -siī -situm(他)中止する、やめる(+直説法)

quīn etiam cēterīs quae moventur hic fons, hoc principium est movendī.

quīn(副)いやそれどころか、いやむしろ
etiam(副)さらに、そのうえ
cēterus -a -um(形)その他の、それ以外の、残りの
hic haec hoc(代)これ、この人
fons fontis(男)起源、根源
principium -ī(中)基礎、起源

Principiī autem nulla est orīgō; nam ex principiō oriuntur omnia, ipsum autem nullā ex rē aliā nascī potest;

nullus -a -um(形)ない
orīgō -ginis(女)始まり、起こり、出現
nam(接)というのも、なぜなら
ex(前)(+奪格)(由来・系統)~から、~に由来する
ominis -is -e(形)(複)すべての、あらゆる
rēs reī(女)物、物事、事柄
alius -a -ud(形)他の、別の
nascor -scī nātus sum(自)(形式受動相)生ずる、起こる、発生する
possum posse potu ī(他)(~することが)できる(+不定法)

nec enim esset id principium quod gignerētur aliunde;

nec(副)~でない(=non)
enim(接)(先行する発言を保証・裏付けして)確かに、もちろん
is ea id(代)(指示詞)彼、彼女、それ
quī quae quod(代)(関係代名詞)(+接続法)(譲歩)~けれども、~とはいえ
gignō -ere genuī genitum(他)(受動)生まれる

quodsī numquam orītur, nē occidit quidem umquam.

quod(接)(しばしばsi(quodsiとも書かれる)、nisi、quiaなどと)そして(それゆえに)、しかし
orior -īrī ortus sum(自)(形式受動相)(事が)起こる、生ずる、発生する
(副)(語句を否定して)~しない、~でない ・ne ~ quidem 決して~でない、~でさえない
occidō -ere -cidī -cāsum(自)破滅(滅亡)する、崩壊する
umquam(副)いつか、ある時、かつて/(主に否定・疑問・条件文で)non umquam 決して~ない

Nam principium exstinctum nec ipsum ab aliō renascētur, nec ex sē aliud creābit, sīquidem necesse est ā principiō orīrī omnia.

exstinguō -ere -stinxī -stinctum(他)(受動)死ぬ
nec, neque(接)neque ~ neque ~でもなく~でもない
ab(前)(+奪格)(abは母音とhの前で)~から、~より
renascor -scī -nātus sum(自)(形式受動相)再び生まれる、生まれ変わる
creō -āre - āvī - ātum(他)(自然が)つくり出す、産出する
sīquidem(接)もし本当に~ならば
necesse(不変化詞)(形)(中)必然の、避けられない、やむをえない(+不定法)
ā(前)(+奪格)~から、~より

Ita fit ut mōtūs principium ex eō sit quod ipsum ā sē movētur;

ita(副)それゆえ
fīō fierī factus sum(自)なる(ut+接続法)
ut(副)(関係詞)(ita,、sicと呼応して)~のように、そのように

id autem nec nascī potest nec morī;

morior morī mortuus sum(自)(形式受動相)衰える、消滅する

vel concidat omne caelum omnisque nātūra et consistat necesse est, nec vim ullam nanciscātur quā ā prīmō impulsa moveātur.

vel(接)それとも、あるいは
concidō -ere -cidī(自)倒れる、くずれ落ちる
omnis -is e(形)(単数)全体の
caelum -ī(中)空、天
nātura -ae(女)自然
et(接)~と(そして)~
consistō -ere -stitī -stītum(自)止まる、やむ、終わる
vīs(対格:vim)(女)(人・動物・自然の物理的な)力、強さ、勢い
ullus -a -um(形)(指小辞)(主に否定・仮定・疑問文で)(誰か、何か)ある
nanciscor -scī nactus sum(他)(形式受動相)(起動)手に入れる、獲得する
quī quae quod(代)(関係代名詞)(+接続法)(傾向・結果)~のような
prīmum -ī(中)最初の部分、初め ・a primo 最初から
impellō -ere -pulī -pulsum(他)促す、駆り立てる
【参考文献】
ラテン語を読む キケロ―「スキーピオーの夢」』山下太郎・著(ベレ出版)
羅和辞典 <改訂版> LEXICON LATINO-JAPONICUM Editio Emendata水谷智洋・編(研究社)

『カンタベリー物語』を原文で読む(第4回)

(テキスト4ページ、25行目~)

(The Squire)

squire(名)騎士の従者

With hym ther was his sone, a yong Squyer,
A lovere and a lusty bachiler,
With lokkes crulle as they weere leyd in presse.

hym→him
ther→there(副)(thereは形式上主語のように扱われるが、動詞の後に通例不特定のものや人を表わす主語が続く/「そこに」の意味はなく、日本語ではthere isで「~がある」の意になる)(beを述語動詞として)
his(代)彼の
sone→son
yong→young
Squyer→Squire
lovere→lover(名)恋人、愛人(単数の時は通例男)
lusty(形)(声など)元気いっぱいの、高い
bachiler→bachelor(名)(中世の他の騎士に従う)若い騎士、騎士見習、近習騎士
with(前)(所持・所有を表わして)~を持って(た)、~のある
lokkes→locks
lock(名)(複数形で)頭髪
crulle→curled(形)巻き毛の
as(接)(様態・状態を表わして)~のように
weere→were
leyd→laid
lay(他)(押して)平らにする
in(前)(道具・材料・表現様式などを表わして)~で、~でもって、~で作った
presse→press(名)(単数形で)(衣服の)アイロンかけ、プレス

Of twenty yeer he was of age, I gesse.

of(前)(of+名詞で形容詞句をなして)~の
twenty(形)(基数の20)20の、20個の、20人の
yeer→years
year(名)(数詞の後で)~歳 ・She's twenty years of age. 彼女は20歳です。
of(前)(関係・関連を表わして)~の点において、~に関して、~について ・He's twenty years of age. 彼は20歳だ。
gesse→guess(他)(なんとなく)(~だと)思う(+that)

Of his stature he was of evene lengthe,
And wonderly delyvere, and of greet strengthe.

stature(名)(人の)身長、背丈 ・be of short stature 背が低い
evene→even(形)単調(平凡)な
lengthe→length(名)丈(たけ)
wonderly→wonderfully(副)不思議に(も)、驚くほど
delyvere→deliver(形)敏速な(=quick、agile)、活発な(=avtive)
greet→great
strengthe→strength

And he hadde been somtyme in chivachye
In Flaundres, in Artoys, and Pycardye,
And born hym wel, as in so litel space,
In hope to stonden in his lady grace.

hadde→had
somtyme→sometime(副)ある時、以前、かつて
in(前)(所属・職業を表わして)~して、~に ・in the army 入隊して
chivachye→cavalry(名)(集合的/単数または複数扱い)騎兵隊
in(前)(場所・位置・方向などを表わして)~において、~で ・in London ロンドンで(に)
Flaundres→Flanders(名)フランドル、フランダース(ベルギー北西部の5州とフランス北部の小地域を含み北海に臨む地方)
Artoys→Artois アルトア(フランス北部の旧州)
Picardye→Picardy ピカルディー(フランス北部の地方・旧州/第一次大戦の激戦地)
born→borne
bear(他)(bear oneselfで/様態の副詞句を伴って)ふるまう(=carry) ・bear oneself well りっぱにふるまう
wel→well
in(前)(時間を表わして)~(のうち)に、~の間、~中
so(副)(程度を表わして)それ(これ)ほど、そんな(こんな)に、これくらい
litel→little(形)(時間・距離など)短い(⇔long)
space(名)(通例単数形で)(時の)間、時間 ・in such a short space of time そんなに短い時間で
in(前)(状態を表わして)~の状態に(で)
hope(名)望み、希望(⇔despair) ・in hope 期待して
stonden→stand(自)(~の状態に)ある(+補)(in)
in a person's good graces 人に気に入られて、人に好意をもたれて
lady(名)貴婦人

Embrouded was he, as it weere a meede
Al ful of fresshe floures, white and reede.

Embrouded→Embroidered
embroider(他)(布などに)刺繍(ししゅう)する
as it were(挿入句的に用いて)いわば、まるで
meedemeadow(名)(特に低地帯の干し草を作る)牧草地、草地
Al→All
all(副)まったく、すっかり
ful→full(形)多くて、たくさんいて(of)
of(前)(目的格関係を表わして)(形容詞に伴って)~を
fresshe→fresh
floures→flowers
redde→red

Syngynge he was, or floytynge, al the day;
He was as fressh as is the monthe of May.

Syngynge→Singing
floytynge→fluting
flute(自)フルートを吹く
day(名)(副詞的に)~日
as(副)(as ~ as ~で、形容詞・副詞の前に置いて)(~と)同じ程度に、同様に、同じくらい(as ~ as ~で前のasが指示副詞、後のasは接続詞)
fressh→fresh(形)生き生きして、元気のいい、はつらつとして
as(接)(as ~ as ~で同程度の比較を表わして)~と同じく、~と同様に、~のように、~ほど
monthe→month

Short was his gowne, with sleves longe and wyde.

gowne→gown(名)ガウン(ウエストを締めないゆるやかな形の外衣)
with(前)(付帯状況を表わす句を導いて)~して、~したまま、~しながら(名詞の後に前置詞付きの句・副詞・形容詞・分詞などの補足的要素を従える)
sleves→sleeves
sleeve(名)(衣服の)そで、たもと
longe→long
wyde→wide

Wel koude he sitte on hors and faire ryde.

well(副)上手に、うまく
koude→could
sitte→sit
hors→horse
faire→fair(副)きれいに、りっぱに
ryde→ride

He koude songes wel make and endite,
Juste and eek daunce, and wel portreye and write.

songes→songs
endite→indite(他)(詩文・演説文などを)作る、書く
Juste→Joust
joust(自)馬上槍試合をする
eek→eke(副)(古)また、さらに、そのうえ
daunce→dance
portreye→portray(他)(人物・風景などを)描く
write(自)著述する、著作する

So hoote he loved that by nyghtertale
He slepte namoore than dooth a nyghtyngale.

so(副)(程度・結果を表わして)(so ~ that ~で)(順送りに訳して)非常に~なので~
hoote→hot(副)激しく
love(自)愛する、恋をする
that(接)(副詞節を導いて)(so ~ thatの形で程度・結果を表わして)(非常に)~なので、~(する)ほど
by(前)(時・期間を表わして)(時の経過を表わして)~のうちに、~の間は(byの後の名詞は無冠詞) ・by night 夜に
nyghtertale→nighttime(名)夜間(⇔daytime) ・at nighttime 夜分に
slepte→slept
sleep(自)眠る
namoore→no more
no more than ~=nothing more than ~とまったく同様
dooth→does
do(自)(代動詞としてbe以外の動詞の反復を避けるのに用いて)(同一の動詞(およびそれを含む語群)の反復を避けて)
nyghtyngale→nightingale(名)サヨナキドリ、ナイチンゲールツグミに似たヨーロッパ産の小鳥/ウグイスより大型/雄は春に夕方から夜ふけまで美しい声で鳴く)

Curteys he was, lowely, and servysable,
And carf biforn his fader at the table.

Curteys→Courteous
courteous(形)礼儀正しく思いやりのある、丁重な(⇔discourteous)
lowely→lowly(形)謙虚な
servysable→serviceable(形)(古)喜んで助ける、親切な、世話好きの(=obliging)
carf→carved
carve(自)肉を切り分ける
biforn→before(前)(位置・場所などを表わして)~の面前(眼前)に
fader→father
at the table 食卓について
【参考文献】
原文対訳「カンタベリィ物語・総序歌」』苅部恒徳、笹川寿昭、小山良一、田中芳晴・編・訳・注(松柏社
カンタベリー・テールズ市河三喜、松浪有・編注(研究社)
新英和中辞典 [第7版] 並装』(研究社)
リーダーズ英和辞典 <第3版> [並装]』(研究社)
新英和大辞典 第六版 ― 並装』(研究社)

『黒いオルフェ』

この週末は、ブルーレイで『黒いオルフェ』を見た。

黒いオルフェBlu-ray

黒いオルフェBlu-ray

1959年のフランス・ブラジル・イタリア映画。
監督はマルセル・カミュ
主演は、ブレノ・メロとマルペッサ・ドーン。
僕は、本作のタイトルは以前から何度も耳にしていたが、恥ずかしながら、どんな映画か全く知らなかった。
元になっているのはギリシア神話だが、その内容もよく知らなかった。
本作の出演者は、『自転車泥棒』のように、全員素人らしい。
カラー、スタンダード・サイズ。
画質は、1950年代の映画とは思えないほど良い。
舞台はブラジルのリオ・デ・ジャネイロ
カーニバルのサンバから始まる。
趣のあるテーマ曲。
これも、映画音楽史上有名な作品らしい。
船が港に着く。
乗客が皆、踊っている。
本作は、「ブラジル人が全員、踊ってばかりいるように描かれている」として、本国では大変不評だったらしいが、確かにそういう面はある。
田舎から出て来た娘ユーリディス(マルペッサ・ドーン)は、カーニバルの見物のために田舎から出て来た。
リオの街を歩くユーリディス。
このリオの街が、近代的な高層ビルが立ち並んでいて、とても50年代とは思えない。
満員の市電(乗客が車外にまではみ出している)の運転手オルフェ(ブレノ・メロ)は、歩いているユーリディスに「よう、乗らないか」と声を掛ける。
終点についても、それに気付かず、未だ乗ったままのユーリディスにもオルフェは優しい。
オルフェはギターの名手で、大変なモテ男であった。
彼には、ミラという派手な婚約者がいる。
このミラ役の女優は、若い頃のマリー・ジランに似ているな。
ミラは、渋るオルフェを連れて、役所に婚姻届を出しに行く。
この役所の婚姻係のオッサンが冗談ばかり言うヤツで、「夫の名前がオルフェなら、妻はユーリディスだね」と言う(これが実は伏線)。
ミラは、オルフェに「また他の女が!」と怒るが、婚姻係は「ギリシア神話だよ」と告げる。
本作には、お役所仕事を皮肉っている場面が、随所に見られる。
ミラはオルフェに「指輪を買って」とねだる。
僕の細君がこういうタイプじゃなくて、本当に良かった。
オルフェは、「ギターを質から出さないといけないので、カネはない」と言う。
僕も、若い頃はしょっちゅう質屋通いをしていたものだ。
本作も、当時の貧しい人々の暮らしを描いているのだろう。
オルフェはギターを質から出すが、そのそばから、見知らぬオッサンに蓄音機を売り付けられ、カネがなくなる。
ミラは自分で指輪を買って、代金をオルフェに請求する(僕の細君がこういうタイプじゃなくて、本当に良かった)。
一方、ユーリディスは、従姉妹のセラフィナの家を訪ねる。
丘の上にある、バラックみたいな小屋だ。
街中には、あんなに高層ビルが建っていたのに、庶民はみんな貧しいんだな。
ユーリディスは、「男が村に来て、自分のことを追い掛け回す。殺すつもりだから逃げて来た」とセラフィナに告げる。
そして、少年からお守りをもらう。
オルフェの家はセラフィナの家の隣だ。
オルフェがギターの練習をする。
弾き語り。
名曲だ。
隣の家にいるユーリディスは、そのメロディーに乗せて踊る。
オルフェの家に、また別の女が押し掛けて来る。
オルフェは隣の家に避難する。
そこで、ユーリディスと再会する。
夜、カーニバルのリハーサル。
踊るオルフェ。
ミラもセラフィナも踊っている。
ユーリディスと踊るオルフェ。
オルフェはユーリディスに「本気だ」と告げる。
そこへ、死神の仮装の男がやって来て、ユーリディスがパニックになる。
ユーリディスはどこかへ逃げる。
探すオルフェ。
ようやく彼女を見付けると、謎の男はオルフェに、「女は預ける。俺は急がない」と言い残して、去る。
ユーリディスを連れて帰るオルフェ。
「オレは外で寝る」と言うオルフェ。
つまり、彼女には手を出さないということだな。
まあ、ブラジルだから外で寝られるのだろう。
しかし、お互い意識しているので、二人とも眠れない。
そして、一緒に朝を迎えるオルフェとユーリディス。
オルフェはまた弾き語り。
さあ、これからどうなる?
翌日はカーニバル。
まるで渋谷のハロウィンみたいだな。
警察は治安維持のために、片っ端からしょっぴくし。
警察権力を見ていると、学生運動の弾圧を思い出して、許し難い。
で、後半は驚きの展開。
衝撃の結末が待っている。
当たり前だが、全編に神話的要素が溢れている。
ギリシア神話を、うまく現代化したと言えるだろう。
恋愛がテーマだから、『ロミオとジュリエット』っぽい部分もあるな。
しかし、こういう話しだとは全く知らなかった。
日々是勉強だな。
カンヌ国際映画祭パルム・ドールアカデミー賞外国語映画賞受賞。

Black Orpheus Orfue Negro 1959 Trailer

イギリス文学史I(第3回)『ベーオウルフ』(その2)

原文読解
それでは、『ベーオウルフ』の冒頭部分(序詞、第1節)を読んでみましょう。
下に、「原文」「現代英語」「日本語訳」を記しました。
「現代英語」には、語注も付けてあります。
ほとんどの英文科の学生は古英語を学んでおらず(僕も全く読めません)、また、イギリス文学史を学ぶにあたって、古英語を理解出来ることは前提ではないと思うので、現代英語で読めば良いと思うからです。
ですので、原文は、あくまで参考のために載せました。
※原文の内、「æ」にマクロン(長音記号)、及び「y」にマクロンは、うまく表示されていません。

Beowulf

Beowulf(名)ベーオウルフ(8世紀初めの古期英語の叙事詩の名/その主人公)
(1)

(原文)
(テキスト2ページ、2行目~)
Hwæt wē Gār-Dena in geār-dagum
þēod-cyninga þrym gefrūnon,
hū ðā æþelingas ellen fremedon.

(現代英語)
Attend! We have heard of the thriving of the throne of Denmark,
how the folk-kings flourished in former days,
how those royal athelings earned that glory.

attend(自)注意する、注意して聞く
hear of ~ ~のこと(消息)を聞く
thrive(自)栄える、繁栄する、盛んになる
of(前)(主格関係を表わして)(動作の行為者、作品の作者を表わして)~が、~の
throne(名)(the ~)王位、帝権
Denmark(名)デンマーク(ヨーロッパ北西部の王国/首都Copenhagen)
how(副)(疑問詞)(方法・手段を尋ねて)(to doまたは節を導いて)どうやって~するか
folk(形)民衆の、庶民の、国民(大衆)の、民衆的な
flourish(自)(副詞句を伴って)(人が)(歴史のある時に)活躍する
in(前)(時間を表わして)~(のうち)に、~の間、~中
former(形)前の、以前の、先の ・in former days 昔
day(名)(しばしば複数形で)時代、時世、時期
royal(形)気高い、高貴な、威容のある
atheling(名)(アングロサクソンの)王子、貴族、(特に)皇太子、皇子
earn(他)(名声・評判などを)博する、取る
that(形)(指示形容詞)(対話者同士がすでに知っているもの・人・量をさして)あの(⇔this)
glory(名)栄光、誉れ、名誉

(日本語訳)
序詞(1-52)

いざ聴き給え、そのかみの槍の誉れ高きデネ人の勲、民の王たる人々の武名は、
貴人らが天晴れ勇武の振舞をなせし次第は、
語り継がれてわれらが耳に及ぶところとなった。

(2)

Oft Scyld Scēfing sceaþena þrēatum,
monegum mǣgþum meodo-setla oftēah;
egsode eorlas, syððan ǣrest wearð
fēasceaft funden; hē þæs frōfre gebād:
wēox under wolcnum, weorð-myndum þāh,
oðþæt him ǣghwylc þāra ymb-sittendra
ofer hron-rāde hȳran scolde,
gomban gyldan: þæt wæs gōd cyning!

Was it not Scyld Shefing that shook the halls,
took mead-benches, taught encroaching
foes to fear him — who, found in childhood,
lacked clothing? Yet he lived and prospered,
grew in strength and stature under the heavens
until the clans settled in the sea-coasts neighbouring
over the whale-road all must obey him
and give tribute. He was a good king!

it(代)(it is(was)~ thatの構文で文の主語・(動詞または前置詞の)目的語・副詞語句を強調して)(このitの次にくるbeの時制は通例clause内の動詞の時制と一致し、clause内の動詞の人称は直前の名詞・代名詞に一致する)
Scyld(名)スキョル(デンマークのスキョル王朝(the Scyldings)の名祖といわれる伝説上の英雄/BeowulfではSceafの息子とされ、北欧伝説ではOdinの末裔とされている)
that(代)(関係代名詞)(It is ~ that ~の形で名詞(相当語句)を強調して)~のは
shake(他)(~を)震動させる、震わせる、揺るがせる
hall(名)(行事用の)集会場、ホール
take(他)(副詞句を伴って)(ある場所から他へ)持って行く、連れていく
mead(名)はちみつ酒
bench(名)ベンチ、長腰掛け(通例二人以上が座れる長いす)
teach(他)(人に)(~するように(するしかたを))教える(+目+to do)
encroach(自)(他国・他人の土地などを)侵略(侵入)する
foe(名)敵
fear(他)(~を)恐れる、怖がる
who(代)(関係代名詞)(非制限的用法で/通例前にコンマが置かれる)そしてその人は
childhood(名)幼年時代、幼児 ・in one's childhood 子供時代
lack(他)(~を)欠く、(~が)ない
clothing(名)衣類、衣料
yet(接)それにもかかわらず、しかしそれでも、それなのに
live(自)(しばしば時の副詞句を伴って)生きる、生存する
prosper(自)(子供が)すくすくと育つ
grow(自)(次第に)(~に)なる
in(前)(状態を表わして)~の状態に(で)
stature(名)(精神的な)偉大さ
heaven(名)(またthe heavens)天、天空(=skies、sky)
until(接)(動作・状態の継続の期限を表わして)~まで(ずっと)
clan(名)(集合的/単数または複数扱い)一族、一門
settle(自)(~に)定住する、住みつく(in)
in(前)(場所・位置・方向などを表わして)~において、~で
seacoast(名)海岸、海浜、沿岸
neighbouring→neighboring(形)近所の、近隣の
over(前)(海・川・通りなど)の向こう側に(の)(=across)
whale(名)クジラ(鯨)(英米では食用としない)
all(代)(複数扱い)(同格にも用いて)だれも、みな(通例代名詞の場合に用いる)
obey(他)(人に)従う、服従する
tribute(名)貢ぎ(物)

シェーフの子シュルドは、初めに寄る辺なき身にて
見出されて後、しばしば敵の軍勢より、
数多の民より、蜜酒の席を奪い取り、軍人らの心胆を
からしめた。彼はやがてかつての不幸への慰めを見出した。
すなわち、天が下に栄え、栄光に充ちて時めき、
遂には四隣のなべての民が
鯨の泳ぐあたりを越えて彼に靡き、
貢を献ずるに至ったのである。げに優れたる君王ではあった。

(3)

Ðǣm eafera wæs æfter cenned
geong in geardum, þone God sende
folce tō frōfre; fyren-ðearfe ongeat,
þæt hīe ǣr drugon aldor-lēase
lange hwīle; him þæs Līf-frēa,
wuldres Wealdend, worold-āre forgeaf;
Bēowulf wæs brēme — blǣd wīde sprang —
Scyldes eafera, Scede-landum in.

A boy child was afterwards born to Scyld,
a young child in hall-yard, a hope for the people,
sent them by God; the griefs long endured
were not unknown to Him, the harshness of years
without a lord. Therefore the life-bestowing
Wielder of Glory granted them this blessing.
Through the northern lands the name of Beow,
the son of Scyld, sprang widely.

boy(形)男の子の、少年の(ような) ・a boy baby 男の赤ちゃん
child(名)赤子、赤ん坊
afterwards(副)(英)=afterward(副)のちに、あとで
born(形)(人などが)生まれて ・be born to ~のもとに生まれる
to(前)(方向を表わして)(到達の意を含めて)~まで、~へ、~に
in(前)(行為・動作の方向を表わして)~の中に
hall(名)(昔の)荘園領主の邸宅
hope(名)望み、希望(⇔despair)
people(名)(the ~)(一国家に属する)国民、選挙民
send(他)(神が)(~を)許す、与える(+目+目)
grief(名)(死別・後悔・絶望などによる)深い悲しみ、悲痛
long(副)長く、長い間、久しく
endure(他)(~を)耐え忍ぶ
unknown(形)未知の、不明の、未詳の ・be unknown to ~にはわからない
to(前)(行為・作用の対象を表わして)~にとっては、~には
harshness(名)<harsh(形)(人・罪・気候など)厳しい、苛酷(かこく)な
year(名)(複数形で)非常に長い間、多年(=ages)
lord(名)(封建時代の)領主、君主
therefore(副)それゆえに、従って、それ(これ)によって(=consequently)
life(名)(個人の)命、生命
bestow(他)(人に)(名誉・称号などを)授ける、贈る(=confer)(on)
wielder(名)<wield(他)(権力・武力などを)ふるう、掌握する
of(前)(目的格関係を表わして)(しばしば動作名詞または動名詞に伴って)~を、~の
grant(他)(~を)(願いを聞き入れて正式に)与える(+目+目)(to)
this(形)(指示形容詞)この/(対話者同士がすでに知っているもの(人)をさして)
blessing(名)祝福(の言葉)
through(前)(あちこち至る所を表わして)~じゅうを(に)、~の間を(あちこち) ・The news spread through the whole country. そのニュースは国じゅうに広まった。
northern(形)北の、北にある
land(名)国、国土
name(名)(a ~)(~という)評判、名声(=reputation)
Beow→Beowulf
spring(自)一躍(突然)(~に)なる
widely(副)広く、広範囲に

やがて館に世嗣ぎの男子が生れ出でた。
民を安んぜんとて神がこの世に遣わし給うたのである。
統べるべき君主なきままに民が久しく
耐えたる苦難を神は見そなわした。
命の主なる、栄光を司り給う神は、現し世の誉れを
この君に授け給い、シュルドの御子ベーオウルフは、
声望普く広まり、シェデランドにて
その名は隠れなきものであった。

(4)

Swā sceal geong guma gōde gewyrcean,
fromum feoh-giftum on fæder bearme,
þæt hine on ylde eft gewunigen
wil-gesīþas, þonne wīg cume,
lēode gelǣsten; lof-dǣdum sceal
in mǣgþa gehwǣre man geþēon.

For in youth an atheling should so use his virtue,
give with a free hand while in his father's house,
that in old age, when enemies gather,
established friends shall stand by him
and serve him gladly. It is by glorious action
that a man comes by honour in any people.

for(接)(通例コンマ、セミコロンを前に置いて、前文の付加的説明・理由として)という訳は~だから(=as、since)
youth(名)青年時代、青春(期)、若いころ ・in youth 若いころに
use(他)(才能・暴力などを)行使する、働かす
his(代)彼の
virtue(名)徳、美徳、徳行、善行(=goodness/⇔vice)
with(前)(道具・手段を表わして)~を用いて、~で
free hand(名)(a ~)(~する)自由行動権、自由裁量権 ・give a person a free hand 人に自由裁量を与える
that(接)(目的を表わして)~するように、~せんがために
age(名)(人生の)一時期 ・old age 老年
when(副)(関係副詞)(非制限的用法で/通例前にコンマが置かれる)(~すると)その時(書き言葉で多く用いられる)
gather(自)(通例副詞句を使って)集まる(⇔scatter)
established(形)常設の、常勤の(=permanent)(⇔temporary)
friend(名)味方
shall(助動)(予言を表わす)~であろう、~なるべし
stand by ~を援助(味方)する
serve(他)(人に)仕える、奉仕する ・serve a master 主人に仕える
gladly(副)喜んで、快く
by(前)(手段・媒介を表わして)~で
glorious(形)栄光ある、栄誉ある、光輝ある、名誉の
action(名)(具体的な)行動、行為
man(名)(男女を問わず一般に)人、人間
come by ~を手に入れる
honour(名)(英)=honor(名)名誉、栄誉
in(前)(範囲を表わして)~において、~内で
people(名)民族、種族、国民(文化的・社会的な共通性をもつ人々)

王子たる者、かくのごとく、父君の庇護の下にある時より、
すべからく徳を施し、惜しみなく財宝を頒ち与うるべきである。
さすれば、やがて年老いたる後、いざ合戦の秋到るや、
忠義なる郎党は、王を助け、仕えまつるであろう。
いかなる民にあっても、人は名誉ある
行いをもって栄えるものである。

(5)

Him ðā Scyld gewāt tō gescæp-hwīle
fela-hrōr, fēran on Frēan wǣre.

At the hour shaped for him Scyld departed,
the hero crossed into the keeping of his Lord.

at(前)(時の一点を表わして)~に ・at the beginning 初めに
hour(名)(the ~、one's ~)死期
shape(他)(進路・方針・未来・一生などを)定める、決める
for(前)(用途・指定・適否を表わして)~向きに(の)、~用に(の)
depart(自)死去する、亡くなる、逝く
cross(自)(道・川を)越えて(~から)(~へ)渡る、渡航する(into)
keeping(名)管理、保管、守護(of)
lord(名)(通例the Lord)神

さるほどに、いと力すぐれたるシュルド王は、
定命尽きて、主の御許へとみまかった。

(6)

Hī hyne þā ætbǣron tō brimes faroðe,
swǣse gesīþas, swā hē selfa bæd,
þenden wordum wēold wine Scyldinga,
lēof land-fruma lange āhte.

They carried him out to the edge of the sea,
his sworn arms-fellows, as he had himself desired them
while he wielded his words, Warden of the Scyldings,
beloved folk-founder; long had he ruled.

carry(他)(~を)(他の場所へ)(持ち)運ぶ、運搬する(to)
edge(名)(二つの線の接する)縁、へり、かど(of)
sworn(形)誓い合った、契(ちぎ)った ・sworn friends 盟友、無二の友
arms(名)(複)(騎士が盾(たて)・旗などに用いた)紋章、しるし
fellow(名)(通例複数形で)(主に男性の)仲間
as(接)(様態・状態を表わして)~のように
have(他)(もの・人を)(~して)もらう、(~)させる(+目+過分)
himself(代)(再帰的に用いて)(一般動詞の目的語に用いて)
desire(他)(人などに)(~して)ほしいと願う
wield(他)(健筆を)ふるう
word(名)(しばしば複数形で)(口で言う)言葉
Warden(名)総監、総督
beloved(他)(古)beloveの過去分詞/愛されている
founder(名)始祖、開祖
rule(他)支配する、統治する

されば股肱の臣らは、シュルディング人の王、
国を統べるべき慕わしき君が、未だ言の葉を
意のままに操る能う間に自ら仰せ付けたとおり、
亡骸を波打ち寄せる渚へと運んで行った。

(7)

Þǣr æt hȳðe stōd hringed-stefna,
īsig ond ūt-fūs, æþelinges fær;
ālēdon þā lēofne þēoden,
bēaga bryttan on bearm scipes,
mǣrne be mæste; þǣr wæs mādma fela
of feor-wegum, frætwa, gelǣded.

A boat with a ringed neck rode in the haven,
icy, out-eager, the atheling's vessel,
and there they laid out their lord and master,
dealer of wound gold, in the waist of the ship,
in majesty by the mast. A mound of treasures
from far countries was fetched aboard her,

with(前)(所持・所有を表わして)~を持って(た)、~のある
ringed(形)環状の
neck(名)首に相当する部分
ride(自)(通例副詞句を伴って)(船などが)浮かぶ
haven(名)港、停泊所
icy(形)氷でおおわれた
out(副)(船など)陸を離れて、沖へ(出て)
eager(形)(~を)しきりに求めて、熱望(切望)して
vessel(名)(通例ボートより大型の)船
lay out(遺体)の埋葬準備をする、安置する
their(代)彼ら(彼女ら)の
master(名)支配者、主君
dealer(名)<deal(他)(人に)(~を)配る、分配する
wound(動)windの過去形・過去分詞
wind(他)(糸などを)巻く
waist(名)中部甲板
majesty(名)威厳
by(前)(場所・位置を表わして)~のそばに(で)、のかたわらに(の)、の手元に
mast(名)帆柱、マスト
mound(名)(積み上げた)山(of)
from(前)(出所・起源・由来を表わして)~から(来た、取ったなど)
far(形)(距離的に)遠い、遠くへの、はるかな(⇔near) ・a far country 遠い国
country(名)国、国家
fetch(他)(ものを)取って(取りに)くる、(人を)呼んで(呼びに)くる
aboard(前)(船・列車・バス・飛行機)に乗って

泊には、環形なす舳を備えた船、王の御座船が、
氷もて覆われ、今や船出せんとて繋がれていた。
家臣らは、慕わしき王、宝環を頒ち与え給う君、
高名なる君主を、船の懐の、帆柱のかたえに
安置しまつった。そこには、遠方より集めた
数々の財宝が積みこまれた。

(8)

Ne hȳrde ic cȳmlīcor cēol gegyrwan
hilde-wǣpnum ond heaðo-wǣdum,
billum ond byrnum; him on bearme læg
mādma mænigo, þā him mid scoldon
on flōdes ǣht feor gewītan.

and it is said that no boat was ever more bravely fitted out
with the weapons of a warrior, war accoutrement,
swords and body-armour; on his breast were set
treasures and trappings to travel with him
on his far faring into the flood's sway.

it(代)(形式主語としてあとにくる事実上の主語の不定詞句・動名詞句・that節などを代表して)
say(他)(人に)(~と)言う、話す、述べる、(言葉を)言う(+that)/(+wh.)
that(接)(名詞節を導いて)(~)ということ/(主語節を導いて)
ever(副)(否定文で)かつて(~することがない)
more(副)もっと、いっそう
bravely(副)華やかに(=gaily)、立派に、景気よく
fit out(船を)艤装(ぎそう)する、装備する(=equip)
with(前)(材料・中身を表わして)~で ・fill A with B AをBで満たす
weapon(名)武器、兵器、凶器
warrior(名)戦士、武人、武士、古つわもの、勇士
war(形)戦争の(に関する)
accoutrement(名)(複)(職業などがひと目でわかる)装身具、飾り衣装、携帯品、(武器・軍服以外の)装具
sword(名)剣、刀
body armour→body armor(名)(警官・兵士などの)防弾防刃チョッキ、ボディーアーマー
breast(名)胸
trappings(名)(複)装飾、アクセサリー
on(前)(動作の方向を表わして)~に向かって、~をめがけて ・go on a journey 旅行に出かける
far(形)長距離(時間)の ・a far journey 長い旅行
fare(自)(古)行く(=go)、旅をする
flood(名)(古)海、川、湖
sway(名)揺らぐ(揺れる)こと、振動

武器・甲冑、刀剣・銅甲にて、船舶が
かくも目もあやに飾られた有様を
聞き及んだためしはない。王の胸の上には、
共に海の涯へとはるばる漂い行くべき
数多の宝物が置かれていた。

(9)

Nalæs hī hine lǣssan lācum tēodan,
þēod-gestrēonum, þon þā dydon,
þe hine æt frumsceafte forð onsendon
ǣnne ofer ȳðe umbor-wesende.

This hoard was not less great than the gifts he had had
from those who at the outset had adventured him
over seas, alone, a small child.

hoard(名)(財宝・食料などの)貯蔵
not less ~ than ~ ~にまさるとも劣らない
great(形)(通例数量を表わす名詞を伴って)多数の、多量の、たくさんの
have(他)(~を)得る、もらう、受ける
from(前)(送り主・発信人などを表わして)~から(の) ・have A from B BからAを受ける
those(代)(指示代名詞)(whoなどの関係代名詞を伴って)(~な)人々(⇔these)
who(代)(関係代名詞)(制限的用法で)~する(した)(人)(通例「人」を表わす名詞を先行詞とする形容詞節をつくる)/(主格の場合) 
outset(名)(the ~)初め、発端 ・at the outset 最初に
adventure(他)(命・お金を)危険にさらす
sea(名)(しばしば複数形で/通例修飾語を伴って)波、波浪
alone(副)ひとりで、単独に(で)
small(形)幼い、年が若い

王が幼かりし頃、初めに彼をただ一人波路を越えて
流した者らがなしたのに決して劣ることなく、
家臣らは捧げ物、夥しき宝を
今は亡き王に供えまつったのである。

(10)

Þā gȳt hīe him āsetton segen gyldenne
hēah ofer hēafod, lēton holm beran,
gēafon on gār-secg; him wæs geōmor sefa,
murnende mōd. Men ne cunnon
secgan tō sōðe, sele-rǣdende,
hæleð under heofenum, hwā þǣæm hlæste onfēng.

High over head they hoisted and fixed
a gold signum; gave him to the flood,
let the seas take him, with sour hearts
and mourning mood. Men under heaven's
shifting skies, though skilled in counsel,
cannot say surely who unshipped that cargo.

high(副)高く
hoist(他)(~を)(ひょいと)持ち上げる、かつぎ上げる
fix(他)(通例副詞句を伴って)(~を)(~に)取り付ける、据える
gold(形)金色の、黄金色の
signumsign(名)標識、標示、掲示
to(前)(行為・作用の対象を表わして)(間接目的語に相当する句を導いて)~に ・give a to B AをBに与える
let(他)(容認・許可を表わして)(人・ものなどに)(~)させる、(人・ものなどに)(~することを)許す(+目+原形)
with(前)(様態の副詞句を導いて)~を示して、~して
sour(形)不機嫌な、気難しい
heart(名)(環状、特に優しい心・人情が宿ると考えられる)心、感情
mourn(自)(死者・死・損失・不幸に対して)嘆く、悲しむ、哀悼する、弔う(=grieve)
mood(名)(一時的な)気分、機嫌
man(名)(通例複数形で)兵、水兵、下士官
shifting(形)移動する
skilled(形)熟練した、腕のいい(in)
in(前)(性質・能力・芸などの分野を限定して)~において、~が
counsel(名)助言、忠告
unship(他)(船荷などを)おろす、陸揚げする
cargo(名)貨物、積荷、船荷

家臣らはさらにまた、王の頭上高く
金糸の幟を押し立て、潮が遺骸を運ぶにまかせ、
亡骸を海原に託した。彼らの心は萎れ、
悲嘆に打ち沈んだ。広間に控える評定衆
天が下の丈夫たちは、何者がこの積荷を受け取るか、
正しく言い当てるすべを知らなかった。

(11)

[I] Ðā wæs on burgum Bēowulf Scyldinga,
lēof lēod-cyning, longe þrāge
folcum gefrǣge; fæder ellor hwearf,
aldor of earde. Oþþæt him eft onwōc
hēah Healfdene; hēold, þenden lifde,
gamol ond gūð-rēouw, glæde Scyldingas.

Then for a long space there lodged in the stronghold
Beowulf the Dane, dear king of his people,
famed among nations — his father had taken
leave of the land — when late was born to him
the lord Healfdene, lifelong the ruler
and war-feared patriarch of the proud Scyldings.

for(前)(時間・距離を表わして)~の間(ずっと)
long(形)(時間・過程・行為など)長い、長期にわたる
space(名)(通例単数形で)(時の)間、時間
there(副)(thereは形式上主語のように扱われるが、動詞の後に通例不特定のものや人を表わす主語が続く/「そこに」の意味はなく、日本語ではthere isで「~がある」の意になる)(述語動詞にseem(to be)、appear(to be)、come、liveなどを用いて)/(beを述語動詞として)
lodge(自)(~に)下宿(寄宿)する
stronghold(名)とりで、要塞
Beowulf(名)べーオウルフ(8世紀初めの古期英語の叙事詩の名/その主人公)
Dane(名)デンマーク
people(名)(one's ~)(君主に対して)臣民
famed(形)名高い、有名な(=famous、renowned)
among(前)~の間で
nation(名)(集合的/単数または複数扱い)(政府の下で共通の文化・言語などを有する)国民(全体)
take leave of ~ ~にいとまごいする、あいさつをして~と別れる
when(接)(主節の後にwhenの導く従属節がくる時文脈上で)(~すると)その時(主節が進行形または過去完了形で表される場合に用いられる)
late(副)遅れて、間に合わないで
born(形)(人などが)生まれて(to)
to(前)(行為・作用の対象を表わして)~に対して、~に
lifelong(形)一生の、終生の
ruler(名)支配者、統治者、主権者
patriarch(名)家長、族長(昔の大家族・種族の長)
proud(形)自尊(自負)心のある、誇り高い

第1節(53-114)

時あたかも、シュルディング人のべーオウルフ、国民の
敬愛の的なる王は、都城にて人々の間に久しく令名高かったが、
その父君、貴き君は家郷を去って彼岸へと
旅立った。やがてべーオウルフには
やんごとなきヘアルフデネが誕生し、この君は命ある間は、
老いてなお武勇に秀で、栄あるシュルディング人を治めた。

(12)

Ðǣm fēower bearn forð-gerīmed
in worold wōcun: weoroda rǣswan,
Heorogār, ond Hrōðgār ond Hālga til;
rde ic þæt ..... wæs Onelan cwēn,
Heaðo-Scilfingas heals-gebedda.

He next fathered four children
that leapt into the world, this leader of armies,
Heorogar and Hrothgar and Halga the Good;
and Ursula, I have heard, who was Onela's queen,
knew the bed's embrace of the Battle-Scylfing.

next(副)(場所・時間・程度などを表わして)次に、次いで
father(他)(~の)父となる ・He fathered three children. 彼は3人の子の父となった。
four(形)(基数の4)4の、4個の、4人の
that(代)(関係代名詞)(人・ものを表わす先行詞を受けて通例制限用法で)(~する(である))ところの/(主語として)
leapt(動)leapの過去形・過去分詞
leap(自)(副詞句を伴って)飛ぶように行く(行動する)
world(名)(通例単数形で)人の世、この(あの)世 ・the world この世、現世
this(形)(指示形容詞)この/(これから述べたり指示しようとする物事をさして)(⇔that)
leader(名)指揮官
army(名)(単数または複数扱い)軍
Hrothgar フローズガール(Beowulf中のZealandの王/その居城Heorotを怪物Grendelに襲われ12年間にわたって悩まされるが、Beowulfに救われる)
good(名)善・徳(⇔evil)
Ursula(名)アースラ(女性名)
hear(他)(ニュースなどを)聞き知る、聞かされている、話に聞く(+that)
queen(名)王妃
know(他)(幸・不幸などを)経験する、経験で知っている、味わう、(~に)出あう
embrace(名)抱擁
battle(名)(一般に)戦い、争い、闘争(=fight、struggle)

この王に、御子が合せて四人次々と
この世に生れ出でた。軍勢を統べる将に、
へオロガール、フロースガール、良きハールガが生れたのだが、
また聞き及ぶところでは、[……]は戦の誉れ高きシュルディング朝の王たる
オネラの褥の伴侶となったという。

(13)

Þā wæs Hrōðgāre here-spēd gyfen,
wīges weorð-mynd, þæt him his wine-māgas
georne hȳrdon, oððþæt sēo geogoð gewēox
mago-driht micel.

Then to Hrothgar was granted glory in battle,
mastery of the field; so friends and kinsmen
gladly obeyed him, and his band increased
to a great company.

then(副)それから、その後で
battle(名)(特定地域における組織的な)戦い、戦闘
mastery(名)勝利、征服(of)
field(名)戦場
so(接)(等位接続詞として)そこで、それで、~ので
kinsman(名)同族(同国)の人
gladly(副)喜んで、快く
band(名)(単数または複数扱い)(人の)一隊、一団
increase(自)(数量・程度などが)ふえる、増加する、増大(増進)する(⇔decrease)
to(前)(限度・程度・結果などを表わして)~に至るまで、~するほどに
great(形)(通例数量を表わす名詞を伴って)多数の、多量の、たくさんの
company(名)(集合的/単数または複数扱い)一行、一団、一隊(of)

さるほどに、フロースガール王は戦の首尾に、
兵馬の誉れに恵まれ、家臣らはかの君に心服し、
若武者の一団、春秋に富む家臣の大いなる群が、
育っていった。

(14)

Him on mōd be-arn
þæt heal-reced hātan wolde,
medo-ærn micel men gewyrcean,
þonne yldo bearn ǣfre gefrūnon,
ond þǣr on innan eall gedǣlan
geongum ond ealdum, swylc him God sealde,
būton folc-scare ond feorum gumena.

It came into his mind
that he would command the construction
of a huge mead-hall, a house greater
than men on earth ever had heard of,
and share the gifts God had bestowed on him
upon its floor with folk young and old —
apart from public land and the persons of slaves.

come into ~ ~に入る
would(助動)(時制の一致により従属節内でまた間接話法で用いて)(意志未来を表わして)~しよう
command(他)(権力・権限のある者が)(~を)命令する、命じる
construction(名)建設、建造、架設、敷設、建設工事(作業)(⇔demolition)(of)
huge(形)(形・大きさなど)巨大な
house(名)(特定の目的のための)建物
on earth 地上に(生きている)
ever(副)(比較級の前後・最上級の後でそれらを強めて)これまで、今まで、ますます
hear of ~(しばしば完了形で)~の存在(事実)を聞いて知っている
share(他)(ものを)共有する(with)
gift(名)(~の)賜物(たまもの)、恩恵
on(前)(動作の対象を表わして)~に対して、~に当てて
its(代)それの、あれの、その
with(前)(接触・交際・結合などを表わして)~と
folk(名)(複数扱い)人々
apart from ~ ~は別として、~を除いて
land(名)(所有物としての)土地、地所 ・public land 公有地
of(前)(同格関係を表わして)~という、~の、~である
slave(名)奴隷

王の心の裡には、一つの思いが起った――
人々に命じて館の普請、人の子らが
耳にしたためしのない大いなる蜜酒の広間の
造営に当らせ、その殿堂の中にて、
神が己れに下されしごとく、
入会地と人の命とを別にしてなべてのものを
老若の家臣に頒ち与えようとの思いが。

(15)

Ðā ic wīde gefrægn weorc gebannan
manigre mǣgþe geond þisne middan-geard,
folc-stede frætwan.

Far and wide (as I heard) the work was given out
in many a tribe over middle earth,
the making of the mead-hall.

far and wide 遠く広く、あまねく
as(代)(関係代名詞)(前後の主節全体を先行詞として、非制限的に用いて)それは~だが
out(副)すっかり、完全に
many(形)(many aに単数形の名詞・動詞を伴って/単数扱い)数々の、多数の
tribe(名)(集合的/単数または複数扱い)種族、部族、~族
over(前)~の全部を、~の隅々まで
earth(名)(天空に対して)地、地表、地上
making(名)作ること、製造(法)(of)

さて、それがしが遠近にて聞き及びしところにては、王はこの世の
諸国の民に力役を仰せ付け、殿堂を
装い飾るよう申し付けた。

(16)

Him on fyrste gelomp,
ǣdre mid yldum, þæt hit wearð eal-gearo,
heal-ærna mǣst; scōp him Heort naman,
sē þe his wordes geweald wīde hæfde.

And, as men reckon,
the day of readiness dawned very soon
for this greatest of houses. Heorot he named it
whose word ruled a wide empire.

reckon(他)(~だと)思う、推測する(+that)
day(名)特定の日、期日、約束の日
readiness(名)用意ができていること(for)
dawn(自)(ものが)現われだす、見えだす
for(前)(準備・保全・防止を表わして)~に備えるために(の)、~を保つ(直す)ために(の)
great(名)(the greatest)とてもすてきな人(もの)
Heorot(名)(Beowulf中の、Hrothgarが建てた館)
name(他)(~に)(~と)名をつける、命名する(+目+補)
whose(代)(関係代名詞)(制限的用法で)(その~が(を、に))~する(ところの)(人)(「人」を表わす名詞を先行詞とする形容詞節をつくる)
word(名)(通例単数形で/one's ~、the ~)指図、命令
wide(形)(面積が)広い、広大な
empire(名)帝国

やがて時至って
類なき宏壮なる館が滞りなく人々の間に
落成することとなった。威令及ばぬところなき王は、
この館をヘオロットと命名した。

(17)

Hē bēot ne ālēh, bēagas dǣlde,
sinc æt symle.

He made good his boast, gave out rings,
arm-bands at the banquet.

make(他)(目的語に動作名詞を伴って、動詞と同じ意味をなして)(~を)する、行なう(同じ意味の動詞より、この表現のほうが1回だけの行為であることが強調される)
good(副)りっぱに、ちゃんと
boast(名)誇り、自慢(の種)
give out(~に)(賞品・用紙・ビラなどを)配る、配布する
armband(名)腕章
banquet(名)(大勢の人が出席しての正式の)宴会

かの君は約束を違えることなく、宴席にて
宝環を、金銀珠玉を頒ち与えた。

(18)

Sele hlīfade
hēah ond horn-gēap, heaðo-wylma bād,
lāðan līges; ne wæs hit lenge þā gēn,
þæt se ecg-hete āþum-swēoran
æfter wæl-nīðe wæcnan scolde.

Boldly the hall reared
its arched gables; unkindled the torch-flame
that turned it to ashes. The time was not yet
when the blood-feud should bring out again
sword-hatred in sworn kindred.

boldly(副)くっきりと、きわ立って
rear(他)(古)(ものを)まっすぐに立てる、起こす、差し上げる
arched(形)アーチ形の、弓形の
gable(名)切り妻、破風(はふ)
un-(接頭)動詞につけてその「逆」の動作を表わす
kindle(他)(火を)つける
torch(名)たいまつ
flame(名)炎、火炎
turn(他)(~に)変じる、転化する(to)
ash(名)(複数形で)灰殻、燃え殻
time(名)(ある決まった)期日、定刻 ・The time will come when ~ 将来~する時が来るだろう(when ~はtimeにかかる関係詞節)
not yet(今までのところでは)まだ~ない
when(副)(関係副詞)(制限的用法で)~する(した)(時)(通例「時」、時には「場合」を表わす名詞を先行詞とする形容詞節をつくる)
blood feud(名)(何代にもわたる二族内の)地で血を洗う争い、血の恨み(=vendetta)
should(助動)(時制の一致で従節内に用いて/単純未来の場合)~であろう
bring out(真価・特徴などを)引き出す、発揮する
sword(名)剣、刀
hatred(名)(嫌悪(けんお)・怨恨(えんこん)などによる)憎しみ、憎悪
sworn(形)誓った、契(ちぎ)った(=pledged) ・sworn brothers 義兄弟
kindred(名)(複数扱い)親族、親類(の人々)、親類縁者

館は
広き破風を備えて高く聳え立ち、忌わしき
焔のうねりを待つこととなったのである。ただし、
不倶戴天の怨みの故に義理の父子の間に
解き難き確執が生ずるのは未だ先のことであった。

(19)

Ðā se ellen-gǣst earfoðlīce
þrāge geþolode, sē þe in þȳstrum bād,
þæt hē dōgora gehwām drēam gehȳrde
hlūdne in healle; þǣr wæs hearpan swēg,
swutol sang scopes. Sægde sē þe cūþe
frumsceaft fīra feorran reccan,
cwæð þæt se Ælmihtiga eorðan worhte,
wlite-beorhtne wang, swā wæter bebūgeð:
gesette sige-hrēþig sunnan ond mōnan
lēoman tō lēohte land-būendum,
ond gefrætwade foldan scēatas
leomum ond lēafum; līf ēac gesceōp
cynna gehwylcum, þāra ðe cwice hwyrfaþ.

It was with pain that the powerful spirit
dwelling in darkness endured that time,
hearing daily the hall filled
with loud amusement; there was the music of the harp,
the clear song of the poet, perfect in his telling
of the remote first making of man's race.
He told how, long ago, the Lord formed Earth,
a plain bright to look on, locked in ocean,
exulting established the sun and the moon
as lights to illuminate the land-dwellers
and furnished forth the face of Earth
with limbs and leaves. Life He then granted
to each kind of creature that creeps and moves.

it(代)(it is(was)~ thatの構文で文の主語・動詞または前置詞の)目的語・副詞語句を強調して)(このitの次にくるbeの時制は通例clause内の動詞の時制と一致し、clause内の動詞の人称は直前の名詞・代名詞に一致する)
with(前)(様態の副詞句を導いて)~を示して、~して
pain(名)(精神的な)苦痛、苦悩、心痛
that(接)(It is(was)~ that ~の形で副詞語句を強調して)~のは
powerful(形)強い、強力な、頑固な
spirit(名)(修飾語を伴って)(~の性格(気質)を持った)人、人物
dwell(自)(副詞句を伴って)(~に)住む、居住する(in)
darkness(名)暗やみ
time(名)(特定の)時、時期
hear(他)(~が)聞こえる、(~を)聞く(+目+過分)
daily(副)毎日
fill(他)(場所・空間を)埋める、占める、詰める(しばしば受身)(with)
amusement(名)おかしさ、おもしろさ
music(名)美しい調べ、気持ちのよい音
harp(名)ハープ、竪琴(たてごと)
clear(形)(音・声など)はっきりした、さえた
song(名)(特に、歌うのに適した)短詩、バラッド
perfect(形)熟達した(in)
tell of ~(~のこと)を話す、語る
remote(形)(時間的に)遠い、遠い昔(未来)の
man(名)(無冠詞で総称的に)(動物と区別して)人、人間
race(名)(修飾語を伴って)(生物の)種族、種類、品種 ・the human race 人類
form(他)(ものを)形づくる、形成する
earth(名)(天空に対して)地、地表、地上
plain(名)平原、平地、平野、(樹木の少ない)草原
bright(形)(色が)あざやかな、さえた(⇔dull)
look on ~を見る
lock(他)(ものを)(~に)(かぎをかけて)しまい込む(in)
exult(他)(~と)言って大喜びする(+引用)
establish(他)(人を)(場所・職業・地位などに)落ち着かせる(+目+as 補)
as(前)~として
light(名)灯火、明かり
illuminate(他)(~を)照らす、照明する
dweller(名)住人、居住者
furnish(他)(人に)(必要物を)供給する(with)
forth(副)(通例動詞に伴って)前へ、見える所へ
face(名)表面
limb(名)(木の)大枝
leaf(名)葉
life(名)生命
kind(名)種類(of)
of(前)(分量・内容を表わして/数量・単位を表わす名詞を前に置いて)~の
creature(名)生き物
creep(自)はう、はって進む(=crawl)
move(自)体(手、足など))を動かす、動く

時に、大胆不敵なる悪鬼、暗闇に住まう者は、
日ごと広間の賑やかなるさんざめきを
耳にしては、艱難の時を苛立ちつつ
忍んでいた。館には竪琴の調べが、
伶人の朗々たる吟詠の声が響き渡った。人類の始まりを
遠つ世より説き起して物語るすべを知る者は、
全能の主が大地を、海に囲まれた
麗しき原を創造し、地に住む者らの光明とて
太陽・太陰を勝ち誇りつつ天に置き、
地の面を枝と葉とをもて
装い飾り、また、生きて動き回る
なべての物のために
命を創り給いしことの次第を語った。

(20)

Swā ðā driht-guman drēamum lifdon,
ēadiglīce, oððæt ān ongan
fyrene fremman fēond on helle.

So the company of men led a careless life,
all was well with them: until One began
to encompass evil, an enemy from hell.

lead(他)(ある種の人生を)過ごす、送る ・lead a life 暮らす
careless(形)(生活など)のん気な、気楽な、悩みのない ・a careless life のん気な人生
life(名)(通例単数形で)(具体的な)生活、暮らし方
all(代)(単数扱い)すべて(のもの)、万事
until(接)(動作・状態の継続の期限を表わして)~まで(ずっと)
one(代)(記述の語と関係なく修飾語を伴って)(特定の)人、者
begin(他)(~し)始める、(~し)だす(+to do)
encompass(他)(古)(悪い結果などを)もたらす
evil(名)悪、悪事、不善、邪悪
hell(名)地獄(⇔heaven)

かくして人々は喜びの裡に、
幸福に恵まれて日々を送っていたが、やがて
一人の者が、地獄の悪霊が禍事をなし始めた。

(21)

Wæs se grimma gǣst Grendel hāten,
mǣre mearc-stapa, sē þe mōras hēold,
fen ond fæsten; fīfel-cynnes eard
won-sǣlī wer weardode hwīle,
siþðan him Scyppend forscrifen hæfde
in Caines cynne — þone cwealm gewræc
ēce Drihten, þæs þe hē Ābel slōg.

Grendel they called this cruel spirit,
the fell and fen his fastness was,
the march his haunt. This unhappy being
had long lived in the land of monsters
since the Creator cast them out
as kindred of Cain. For that killing of Abel
the eternal Lord took vengeance.

Grendel グレンデル(OEの叙事詩Beowulfに出る怪物/Cainの末裔で、人を食っていたが、Beowulfに退治された)
call(他)(人を)(~と)呼ぶ、称する(+目+補)
spirit(名)(天使・悪魔などの)超自然的存在
fell(名)荒れた高原、高原地帯
fen(名)沼地、沼沢地
fastness(名)要塞(ようさい)、とりで
march(名)(特に紛争中の)国境、辺境
haunt(名)よく出入りする場所、通い先
being(名)生き物
monster(名)(想像上の)怪物、化け物
creator(名)(the Creator)造物主、神
cast out(~を)追い出す、追放する
Cain(名)カイン(AdamとEveの第一子/弟Abelを殺した)
for that(古)(接)~という理由で、~であるから、~なので(=because)
killing(名)殺害、殺人
Abel(名)アベル(Adamの第2子/兄Cainに殺された)
eternal(形)永遠の、永久の
take(他)する、行なう
vengeance(名)復讐(ふくしゅう) ・take vengeance 復讐をする

この荒ぶる悪霊、曠野を、沼沢と砦とを
住処とする音に聞えた辺境の彷徨者は、
グレンデルと呼ばれた。この幸せ薄き者は、
創造主が彼をカインの裔として追放し給いしより後は、
妖怪の族の巣くう所に久しく棲んでいた。
アベルをあやめし故により、永しえなる主は
この殺害の罪を罰し給うた。

(22)

Ne gefeah hē þǣre fǣhðe, ac hē hine feor forwræc,
Metod for þȳ māne, man-cynne fram.

There was no joy of that feud: far from mankind
God drove him out for his deed of shame!

feud(名)氏族間などの長年にわかる流血の)確執、不和、宿恨
far from ~ ~から遠くに
mankind(名)人類、人間
drive(他)(副詞句を伴って)(人が)(鳥獣・人などを)追い出す
deed(名)行為、行動

カインはかかる怨恨の業によって喜びを得ることなく、かえって神はこの科の故に
彼を人類の間より遥か彼方へと追い放ち給うたのである。

(23)

Þanon untȳdras ealle onwōcon,
eotenas ond ylfe ond orcnēas,
swylce gīgantas, þā wið Gode wunnon
lange þrāge; hē him ðæs lēan forgeald.

From Cain came down all kinds misbegotten
— ogres and elves and evil shades —
as also the Giants, who joined in long
wars with God. He gave them their reward.

come down(ものが)落ちてくる、落ちる
all(形)(複数名詞の前に置いて)あらゆる、すべての、みな
misbegotten(形)(古)庶出の、私生児の
ogre(名)(童話などの)人食い鬼
elves(名)elfの複数形
elf(名)小妖精(森・ほら穴などに住み人にいたずらをするといわれる、民話に出てくる妖精)
evil(形)(道徳的に)悪い、よこしまな、邪悪な
shade(名)亡霊、幽霊
as(前)たとえば~のように(な)
join(自)(競争・娯楽・会話などに)参加する(in)
with(前)(感情・態度の対象を導いて)~に対して、~に
give(他)(人に)(賞・地位・才能・信頼などを)与える、授ける(+目+目)
reward(名)報い、罰

そのカインより、ありとあらゆる邪まなる末裔が、
妖怪と妖精と悪霊とが、また
久しきにわたり神に刃向かいし巨人どもが
生れ出た。されば、神は彼らに応報を下し給うた。
(忍足欣四郎・訳)

【参考文献】
Beowulf: Old English Edition (PENGUIN ENGLISH POETS)
Beowulf: A Verse Translation (Penguin Classics)
ベーオウルフ―中世イギリス英雄叙事詩 (岩波文庫)』忍足欣四郎・訳
新英和中辞典 [第7版] 並装』(研究社)
リーダーズ英和辞典 <第3版> [並装]』(研究社)
リーダーズ・プラス』(研究社)
新英和大辞典 第六版 ― 並装』(研究社)