『追想』(1975)

この週末は、ブルーレイで『追想』を見た。

追想 [Blu-ray]

追想 [Blu-ray]

1975年のフランス・西ドイツ合作映画。
監督はロベール・アンリコ。
ロベール・アンリコと言えば、『冒険者たち』だな。
主演は、『トパーズ』のフィリップ・ノワレ
しかし、フィリップ・ノワレと言えば、何と言っても、『ニュー・シネマ・パラダイス』だろう。
それから、『審判』のロミー・シュナイダー
MGM。
カラー、ワイド。
ノスタルジックなテーマ曲が流れる。
タイトル・バックは、チャリを漕ぐ3人の家族と、一緒に走るワンコ。
微笑ましい風景。
だが、これが一変するのだ。
舞台は、1944年、ドイツ占領下のフランスの小都市モントバン。
街では銃声が響くのが日常。
首を吊られたゲリラの死体も並んでいる。
主人公のジュリアン・ダンデュ(フィリップ・ノワレ)は外科医で、町の病院に勤務している。
彼は、美しい妻クララ(ロミー・シュナイダー)、娘フロランス、母と4人で暮らしていた。
しかし、戦争の進展と共に、ドイツ軍は連合軍の上陸に備えるべく、全市町村の掃討作戦を開始。
ジュリアンの病院にも連日、ドイツの負傷兵や、ゲリラの重傷者が担ぎ込まれて来た。
彼らの描写が実に生々しい。
そこへドイツ軍が乱入してくる。
片っ端からベッドを探り、政治犯を発見。
ジュリアンは「患者を勝手に動かすな」と告げるが、逆にドイツ軍から「医者じゃなきゃ、あんたは銃殺だ」と脅される。
政治犯は、拉致されるかのように連れ去られて行った。
物資が不足して、薬もない。
ジュリアンが帰宅すると停電が起きるが、家族は慣れっこになっている。
ジュリアンの家にはお手伝いもいて、結構いい暮らしぶりである。
ここで、娘の入浴シーンがある。
娘(連れ子)がこの時点で何歳かは分からない。
だが、小学5年生で成績優秀者で表彰されるシーンがあった。
ジュリアンとクララは結婚5年目だから、どう考えても18歳未満である。
日本の法律では、18歳未満が衣服の一部または全部を身に着けていないと児童ポルノに該当する。
巨匠ロベール・アンリコの、セザール賞作品賞まで獲った作品を児童ポルノ扱いするとは!
国家権力の横暴を断じて許せない。
先の「表現の不自由展」の顛末を見ても分かるが、この国の政治家は本当に文化度が低い。
それはさておき、ジュリアンは病院の地下にゲリラを隠した。
ドイツ軍からは「家族に気を付けろ」と脅されている。
家族の身を案じたジュリアンは、同僚であり友人でもあるフランソワの助言により、家族をバルベリー村へ疎開させることにした。
そこにはジュリアンの古い城があった。
翌日、クララとフロランスはフランソワの運転する車に乗ったが、母親は残るという。
ジュリアンは、「僕も2~3日のうちに会いに行くからね」と約束して、病院へ向かう。
連日の手術で忙しく、あっと言う間に五日が経った。
家族からの電話もないので、心配になり、ジュリアンはバルベリーへ向かって車を走らせた。
戦時下とは思えない南フランスの美しい緑豊かな風景。
ジュリアンの古城も絶壁の上にそびえ立っていた。
宿舎に到着したが、妻と娘の姿は見当たらない。
礼拝堂に行ってみると、老若男女村人全員の銃殺死体が転がっていた。
壮絶なシーンだ。
ジュリアンは、医者なのに吐いてしまう。
ドイツ兵がいる。
逃げるジュリアン。
城の中庭に行ってみると、フロランスの血まみれの死体が。
更に、妻の黒コゲの死体も。
ドイツ兵に強姦された後、火炎放射を浴びたのである。
何ということだ!
余りのことに嗚咽するジュリアン。
僕も、自分の家族がこんな目に合わされたら、気が狂って死んでしまうだろう。
戦争は悲惨だ。
最近も、「領土を取り戻すには戦争するしかない」などという暴言を吐いた政治家がいたが、恥を知れ!
どんなことがあっても、戦争はいけない。
ジュリアンは礼拝堂に行き、そこに立っていたキリストの像を叩き壊す。
信仰なんて、何の役にも立たないじゃないかと。
ここから、妻の回想シーンが何度も挿入されながら、話しが進んで行く。
ジュリアンの城の尖塔の上に、古い猟銃が隠してあった。
かつてイノシシ狩りに使ったものだ。
ジュリアンはそれを取り出し、引き裂いたカーテンの布で磨く。
城は、今やドイツ軍に占拠されていた。
夜、ジュリアンは灯かりと銃を持ってドイツ軍のいる場所へ。
城の周りの谷の上に架かっている古い木の橋の橋桁を、下の窓から鉄棒を突き刺して外す。
スゴイ仕事だが。
飲料タンクの水を抜く。
マジック・ミラー越しに、ドイツ兵達が備蓄してあったワインで酒盛りをしているのが見える。
ドイツ軍の大佐は「この村はゲリラの巣だったが、殲滅した」という。
どこからか8ミリの映写機とフィルムを見付けて来たドイツ兵。
テーブル・クロスをスクリーン代わりにして上映。
映し出されたのは、何と若い頃のジュリアンとクララだった。
涙ぐむジュリアン。
妻の回想。
娘の回想。
「ママは何故出て行ったの?」と尋ねるフロランス。
朝、へべれけのドイツ兵が顔を洗おうとすると、水が出ない。
「ゲリラが侵入したかも知れん!」と叫ぶドイツ軍の大佐。
娘の回想。
娘が小学校で成績優秀者で表彰される。
賞品としてもらったのは『シラノ・ド・ベルジュラック』の本。
シラノのセリフを諳んじてみせるジュリアン。
異常にうまい。
フィリップ・ノワレは元舞台役者らしいから、きっとシラノも演じたことがあるんだろう。
妻と娘の思い出を胸に、ジュリアンはドイツ兵への復讐を誓うのであった。
全編を通して、フィリップ・ノワレの演技が素晴らしい。
戦争の悲惨さが伝わって来る。
彼は決して、人前では家族を惨殺された悲しみを表に出そうとしない。
それが、ラストの名演技につながる。
さっきも書いたが、戦争で家族を惨殺された悲しみなんて、本当に計り知れない。
何を言っても、経験していないから、軽くなってしまう(そして、決して経験したくない)。
なお、原題の「Le vieux fusil」は、leが男性定冠詞(英語のthe)で、vieuxが「古い(英語のold)」、fusilが「銃(英語のgun)」。
象徴的なタイトルだ。
邦題の「追想」も、妻と娘の回想シーンを多用している語り口から、いいタイトルだと思う。

Bande-annonce Le Vieux Fusil

『嵐が丘』を原書で読む(第26回)

(テキスト27ページ、5行目〜)

‘What do you mean?’ asked Heathcliff, ‘and what are you doing? Lie down and finish out the night, since you are here; but, for heaven’s sake! don’t repeat that horrid noise—Nothing could excuse it, unless you were having your throat cut!’

what(代)(疑問代名詞)(不定数量の選択に関して用いて)何、どんなもの(こと)、何もの、何事/(目的格の場合) ・What do you mean? どういう意味ですか。
do(助動)(be以外の動詞の疑問文に用いて)
mean(他)(人が)(~で)(~を)意味する、(~の)意味で言う ・What do you mean by that suggestion? どういうつもりでそんな提案をするのか。
ask(他)(物事を)聞く、尋ねる(+引用)
Heathcliff ヒースクリフ(Emily Brontëの小説Wuthering Heights(1847)の主人公/復讐の鬼)
lie down 横になる
out(副)最後まで
since(接)(理由)~だから、~のゆえに
for Heaven's sake(命令形を強めて)お願いだから
don't do notの短縮形
do(助動)(否定の命令法を作って)
that(形)(指示形容詞)(軽蔑などの感情をこめて用いて)例の、あの
horrid(形)恐ろしい、いまわしい
could(助動)(仮定法(叙想法)で用いて)(現在の事実に反対の仮定の帰結節に用いて)~できるだろう
excuse(他)(通例否定文で)(事情が)(~の)弁解(言い訳)になる ・Nothing will excuse such rude behavior. どんな事情があってもそのような無礼な行為をしていいという言い訳にはならない。
unless(接)(否定の条件を表わして)~でない限り、もし~でなければ
have(他)(もの・人を)(~して)もらう、(~)させる(+目+過分) ・When did you last have your hair cut? この前髪を刈ってもらったのはいつですか。
your(代)あなた(たち)の、君(ら)の
throat(名)のど、咽喉(いんこう)

‘If the little fiend had got in at the window, she probably would have strangled me!’ I returned.

fiend(名)悪魔、悪霊、(悪)鬼
get in(中に)入る
would(助動)(仮定法(叙想法)で用いて)(would have+過分で/過去の事柄について帰結節で無意志の仮定を表わして)~しただろう
strangle(他)(人を)絞め殺す
return(他)(~に対して)(返事を)する、答える(+引用)

‘I’m not going to endure the persecutions of your hospitable ancestors again— Was not the Reverend Jabez Branderham akin to you on the mother’s side? And that minx, Catherine Linton, or Earnshaw, or however she was called—she must have been a changeling—wicked little soul! She told me she had been walking the earth these twenty years: a just punishment for her mortal transgressions, I’ve no doubt!’

I’m I amの短縮形
be going to do ~するつもりである、~することにしている
endure(他)(~を)耐え忍ぶ
persecution(名)迫害、虐待
of(前)(主格関係を表わして)(動作の行為者、作品の行為者を表わして)~が、~の
hospitable(形)(人が)もてなしのよい、客扱いのよい(⇔inhospitable)
ancestor(名)先祖、祖先(=forbear)
reverend(形)(the Reverend/聖職者の敬称または呼び掛けに用いて)~師(聖職者に対する敬称としては、姓と名をつけるのがていねいな用法)
akin(形)(~と)血族で、同族で(to)
to(前)(行為・作用の対象を表わして)~にとっては、~には
on(前)(近接を表わして)~に接して、~に面して ・on ~ side ~側に
side(名)(通例父・母の修飾語を伴って)(血族で)~方(かた)
minx(名)生意気娘、おてんば娘
Catherine(名)キャサリン(女性名/愛称Cathy、Kate、Kitty)
Linton(名)リントン
Earnshaw(名)アーンショウ(Emily BrontëのWuthering Heightsに登場する、主人公Heathcliffの養家の名)
however(副)(譲歩の副詞節を導いて)どんなに(どんな方法で)~でも(=no matter how)
call(他)(人を)(~と)呼ぶ、称する(+目+補)
must(助動)(当然の推定を表わして)(must have+ppで過去についての推定を表わして)~したにちがいない
changeling(名)取り替え子(さらった子の代わりに妖精たちが残すとされた醜い子)
wicked(形)(人・言行など)(道徳的に)邪悪な、不思議な、不正な
soul(名)霊魂、魂
tell(他)(人に)(~を)話す、告げる、語る、言う、述べる(+目+that)
walk(他)(場所を)歩いて見回る
earth(名)(通例the ~)(天空に対して)地、地表、地上
twenty(形)(基数の20)20の、20個の、20人の
just(形)(要求・報酬など)正当な、当然な
punishment(名)罰、処罰、懲罰、折檻(せっかん)(for)
for(前)(対象)(報償・返報を表わして)(好意・成果など)に対して、~の返報として
her(代)彼女の
mortal(形)永遠の死を招く、地獄に落ちる、許されない(⇔venial)
transgression(名)(宗教・道徳上の)罪
I've I haveの短縮形
have(他)(感情・考えなどを)(心に)抱いている
no(形)(主語・目的語になる名詞の前に用いて)(複数名詞、不可算の名詞の前に用いて)どんな(少しの)~もない
doubt(名)疑念、不信(感) ・I have my doubts about her honesty. 彼女が正直かどうかは疑わしいと思う。

Scarcely were these words uttered, when I recollected the association of Heathcliff’s with Catherine’s name in the book, which had completely slipped from my memory till thus awakened.

scarcely ~ when ~するかしないうちに
word(名)(しばしば複数形で)(口で言う)言葉
utter(他)(声・言葉・うなり声・ため息などを)口から出す、発する
recollect(他)(過去のことを)(努力して)思い出す、回想する
association(名)関連(with)
with(前)(接触・交際・結合などを表わして)~と
which(代)(関係代名詞)(非制限的用法で/通例前にコンマが置かれる)/(主格・目的格の場合)そしてそれは(を)
completely(副)完全に、完璧(かんぺき)に
slip(自)(頭・記憶などから)抜ける、消える(from)
from(前)(分離・除去などを表わして)~から(離して)
my(代)私の
till(接)(動作・状態の継続の期限を表わして)~まで(ずっと)
thus(副)このように、かように
awaken(他)=awake(他)(感情・関心などを)呼び起こす

I blushed at my inconsideration; but, without showing further consciousness of the offence, I hastened to add,
‘The truth is, sir, I passed the first part of the night in—’ Here I stopped afresh—I was about to say ‘perusing those old volumes,’ then it would have revealed my knowledge of their written, as well as their printed contents; so, correcting myself, I went on,
‘In spelling over the name scratched on that window-ledge. A monotonous occupation, calculated to set me asleep, like counting, or—’

blush(自)顔を赤らめる、(顔が)赤くなる(at)
at(前)(感情の原因を表わして)~に(接して)、~を見て、聞いて、考えて
inconsideration(名)無思慮、無分別、軽率
without(前)(主に動名詞を伴って)~せずに
show(他)(感情・態度・気配などを)表わす、(好意・感謝などを)示す
further(形)(farの比較級)そのうえの、それ以上の
consciousness(名)(またa ~)問題、事物(の存在)に対する意識、自覚(of)
offence(名)(英)=offense(名)(義務・慣習などの)違反、反則
hasten(自)(副詞句を伴って)急ぐ、急いで行く(する)(+to do)
add(他)(言葉を)付け加える(+引用)
truth(名)真実、真相、事実(⇔lie、falsehood) ・The truth is(that)~ 実を言うと~
sir(名)(男性への呼び掛け)あなた、先生、閣下、お客さん、だんな(見知らぬ人に、召し使いから主人に、生徒から先生に、店員から客に、目下から目上に、または議会で議長に対する敬称/日本語ではこの語を訳さず文全体を丁重に訳せばよい場合が多い)
pass(他)(時間などを)過ごす、つぶす(+目+前+doing)
in(前)(行為・活動・従事を表わして)~して、~に従事して(+doing)
here(副)(文頭に用いて)この点で、ここで
stop(自)止まる、停止する
afresh(副)さらに、新たに、再び
about(形)今にも(~し)かけていて(+to do)
say(他)(人に)(~と)言う、話す、述べる、(言葉を)言う(+引用)
peruse(他)(~を)読む
old(形)古い
volume(名)(特に、分厚い)本
then(副)(通例文頭または文尾に用いて)それなら、(それ)では
would(助動)(仮定法(叙想法)で用いて)(条件節の内容を言外に含め陳述を婉曲(えんきょく)にして)~であろう、~でしょう
reveal(他)(秘密・事実などを)(人に)漏らす、明かす、明らかにする、暴露する(⇔conceal)
knowledge(名)(またa ~)知る(知っている)こと、知識、認識(of)
of(前)(目的格関係を表わして)(しばしば動作名詞または動名詞に伴って)~を、~の
their(代)彼らの
written(形)書いた、書面にした
as well as ~ ~はもちろん、~も~も
print(他)(印刷機・コンピューターなどが)(文字・写真などを)印刷する、プリントする
content(名)(複数形で)(書物・文書などの)内容
so(接)(等位接続詞として)そこで、それで、~ので
correct(他)(誤りを)訂正する、直す(=rectify)
myself(代)(再帰的に用いて)(一般動詞の目的語に用いて)私自身を(に)
go on(行動・関係を)続ける
spell(他)(語を)つづる、(~の)つづりを言う(書く)
over(副)繰り返して ・read it over 繰り返して読む
scratch(他)(~に)(印・名前などを)ひっかくようにつける(書く)(on)
windowledge(名)=windowsill(名)窓敷居、窓台(窓下の外側または内側にある横材で。よく植木鉢などが置かれる)
monotonous(形)単調な、一本調子の
occupation(名)職業、業務
calculated(形)(~することを)意図されて、狙って(=designed)(+to do)
set(他)(~を)(~の状態に)する、させる(+目+補)
asleep(形)眠って(⇔awake)
like(前)(たとえば)~のような(=such as)
count(自)数を数える、計算する

‘What can you mean by talking in this way to me!’ thundered Heathcliff with savage vehemence.

can(助動)(可能性・推量を表わして)(疑問文で)~はずがあろうか、いったい~だろうか
by(前)(手段・方法・原因・媒介を表わして)(doingを目的語にして)(~すること)によって
talk(自)(人と)話をする、話し(語り)合う(to)
in(前)(方法・形式を表わして)~で、~をもって ・in this way この方法で、こうやって
this(形)(指示形容詞)この/(対話者同士がすでに知っているもの(人)をさして)(⇔that)
way(名)やり方、手段 ・in this way このように(して)
to(前)(行為・作用の対象を表わして)~に対して、~に ・talk to ~と話をする
thunder(他)どなって言う、大声で言う(+引用)
with(前)(様態の副詞句を導いて)~を示して、~して
savage(形)(人が)かんかんに怒った
vehemence(名)激烈さ、猛烈さ、熱情 ・with vehemence 激しく、熱烈に

‘How—how dare you, under my roof?—God! he’s mad to speak so!’

How dare you ~! よくもまあ(ずうずうしくも)~できるものだ。
under a person's roof 人の家に(泊めてもらって)、人の世話になって
God(名)(感嘆・のろい・祈願などに用いて)
he's he isの短縮形
mad(形)ばかげた、無謀な、無分別な(=crazy、frantic)(+to do) ・You were mad to do that. そんなことをしたなんて君も無分別だった。

And he struck his forehead with rage.

strike(他)(~を)打つ、たたく、殴る
his(代)彼の
forehead(名)額(ひたい)、前額部(=brow)(人間の感情・性格を示す部分とされている)
rage(名)(またa ~)(抑えがたい)激怒、憤怒 ・with rage 怒りで

I did not know whether to resent this language, or pursue my explanation; but he seemed so powerfully affected that I took pity and proceeded with my dreams; affirming I had never heard the appellation of ‘Catherine Linton’ before, but, reading it often over produced an impression which personified itself when I had no longer my imagination under control.

know(他)(~を)知る、知っている、(~が)わか(ってい)る(+wh.)
resent(他)(~に)腹を立てる、憤る、憤慨する(怒りが必ずしも表情・動作などに現われることは意味しない)
language(名)下品な言葉、悪態、ののしり
pursue(他)続行する
explanation(名)釈明、弁解
seem(自)(~と)見える、思われる、(~)らしい(通例話し手の推量をこめた見方・判断を示す語で、文法上の主語と判断の主体は一致しないことが多く、時に判断の主体を示すのにto a personを従えることがある)(+補)
so(副)(程度・結果を表わして)(so ~ that ~で)(順送りに訳して)非常に~なので~
powerfully(副)協力に
affected(形)影響を受けた
that(接)(副詞節を導いて)(so ~ thatの形で程度・結果を表わして)(非常に)~なので、~(する)ほど
take(他)(感情などを)感じる、経験する ・take pity 哀れむ、同情する
pity(名)哀れみ、同情 ・take pity 気の毒がる
proceed(自)(中断後)(~を)続ける、続けて(~)する(=continue)(with)
with(前)(処置・関係の対象を導いて)~に対して、~について、~にとっては
affirm(他)(再度繰り返したり、質問に答えて)(~を)断言する、確言する(=assert)(+that)
appellation(名)名称、名
of(前)(同格関係を表わして)~という、~の、~である
before(副)(時を表わして)以前に、かつて、すでに
read over(~を)読み通す、通読する
produce(他)(~を)引き起こす、招来する
impression(名)印象、感銘
which(代)(関係代名詞)(制限的用法で)~する(した)(もの、事)(通例「もの」を表わす名詞を先行詞とする形容詞節をつくる)/(主格の場合)
personify(他)(人間以外のものを)擬人化する、人格化する
itself(代)(再帰的に用いて)それ自身を(に)/(一般動詞の目的語に用いて)
when(接)~する時に、~時(時を表わす副詞節をつくる)
have(他)(部分・属性として)(特徴・性質・能力などを)もっている
no longer もはや~しないで(でない)
imagination(名)想像、想像力、構造力 ・have one's imagination 想像力がある
under(前)(状態を表わして)(~の支配で・監督・影響など)のもとに ・under the control 支配下にあって
control(名)支配(すること)、取り締まり、管理、監督、管制 ・under the control 管理(支配)下に
【参考文献】
Wuthering Heights (Penguin Classics)』Emily Brontë・著
嵐が丘(上) (光文社古典新訳文庫)小野寺健・訳
新英和中辞典 [第7版] 並装』(研究社)
リーダーズ英和辞典 <第3版> [並装]』(研究社)
リーダーズ・プラス』(研究社)

日本古典文学を原文で読む(第3回)『日本書紀』

日本書紀』について
日本書紀』は、『古事記』と並び称される、日本で最も古い書物の一つです。
けれども、やはり『古事記』と同様、実際に読んだことがある人は少ないでしょう。
もちろん、僕もこれまで読んだことはありませんでした。
ただ、小学生の頃、市民図書館で手に取ってみたことはあります。
初期の天皇が百何十歳まで生きたという記述を見て、「ウソをつけ」と突っ込んだ記憶があるので。
最初の方の神話の部分の内容は、『古事記』と重なっています。
旺文社の『古語辞典』には、「『古事記』に比べ諸説を列挙するなど考証的であり」とありますが、諸説を列挙しているのは最初の神話の部分だけです。
日本書紀』には、神代から持統天皇までの歴史が記述されています。
文学色が強い『古事記』と比較して、歴史書ですので、出来事を羅列した、淡々とした記述です。
なので、歴史の教科書のようで、読んでいても面白くはありません。
僕は私立文系でしたが、高校時代は世界史も日本史も苦手で、第一志望が英語・国語・小論文で受験出来る大学だったので、早々と歴史の勉強を投げ出してしまいました。
今では大いに後悔していますが。
日本書紀』は、『古事記』ほどではありませんが、人気があるようで、世の中には関連書もたくさん出ています。
しかし、高校の古文の教科書には、『日本書紀』は載っていません。
前回も書きましたが、僕が受験生の時に持っていた(使った訳ではありません)駿台の『古典文学読解演習』という参考書には、1問目から『古事記』と『日本書紀』の問題文が載っていて、驚いたことがあります。
先程も書いたように、『日本書紀』は歴史書ですので、『古事記』のように国文科で読むことはあまりないようです。
僕が在籍していた学部でも、当時のシラバスを見ると、国文科ではなく、東洋文化専修に『日本書紀』を読む演習のクラスがありました。
もっとも、僕は英文科だったので、この授業は受けていませんが。
日本書紀』は、当然ながら、日本史の教科書にも出て来ます。
山川の『詳説日本史』を引いてみましょう。

天武天皇の時代に始められた国史編纂事業は、奈良時代に『古事記』『日本書紀』として完成した。(中略)720(養老4)年にできた『日本書紀』は、舎人親王が中心となって編纂したもので、中国の歴史書の体裁にならい漢文の編年体で書かれている。神話・伝承や「帝紀」「旧辞」などを含めて、神代から持統天皇に至るまでの歴史を天皇中心に記している。

なお、脚注には次のようにあります。

本文中には中国の古典や編纂時点の法令によって文章を作成した部分もあることから十分な検討が必要であるが、古代史の貴重な資料である。この『日本書紀』をはじめとして朝廷による歴史編纂は平安時代に引き継がれ、『続日本紀』『日本後紀』『続日本後紀』『日本文徳天皇実録』『日本三大実録』と六つの漢文正史が編纂された。これらを「六国史」と総称する。

僕の手元にある高校生用の文学史のテキストにも、もちろん解説があるので、こちらも引いてみましょう。

日本書紀 三十巻。養老四(七二〇)年成立。舎人親王らの編。天武天皇の時代、『古事記』と前後して編集事業開始。巻一、二が神代。三以下は歴代天皇紀。持統天皇(六八六―六九七在位)までの歴史を歌謡を除いてほぼ純粋な漢文体で記す。官撰国史の最初。

テキストについて
それでは、実際に読むには、どのようなテキストがあるのでしょうか。
ここでは、現在の日本で流通している主な文庫版を取り上げたいと思います。
岩波文庫版(全5巻)

日本書紀〈1〉 (岩波文庫)

日本書紀〈1〉 (岩波文庫)

初版は1994年。
坂本太郎家永三郎井上光貞大野晋・校注(各巻共通)。
本書は、『日本書紀』の訓み下し文に注を施してあり、中ほどには詳しい補注、更に、その後に原文が掲載されています。
もっとも、原文は漢文なので、そのままでは到底読めませんが。
現在、文庫で『日本書紀』の原文・書き下し文が収録されているのは岩波版しかありません。
(一)には、神代から祟神天皇までを収録。
日本書紀〈2〉 (岩波文庫)

日本書紀〈2〉 (岩波文庫)

初版は1994年。
(二)には、垂仁天皇から安康天皇までを収録。
日本書紀〈3〉 (岩波文庫)

日本書紀〈3〉 (岩波文庫)

初版は1994年。
(三)には、雄略天皇から欽明天皇までを収録。
日本書紀〈4〉 (岩波文庫)

日本書紀〈4〉 (岩波文庫)

初版は1995年。
(四)には、敏達天皇から斉明天皇までを収録。
日本書紀〈5〉 (岩波文庫)

日本書紀〈5〉 (岩波文庫)

初版は1995年。
(五)には、天智天皇から持統天皇までを収録。
講談社学術文庫版(全2巻)
日本書紀(上)全現代語訳 (講談社学術文庫)

日本書紀(上)全現代語訳 (講談社学術文庫)

初版は1988年。
訳は宇治谷孟(上・下巻共通)。
本書は、『日本書紀』の全文を初めて現代語訳したものです。
今でも、文庫で『日本書紀』の全現代語訳が読めるのは講談社学術文庫版のみです。
(上)には、神代から宣化天皇までを収録。
日本書紀(下)全現代語訳 (講談社学術文庫)

日本書紀(下)全現代語訳 (講談社学術文庫)

初版は1988年。
(下)には、欽明天皇から持統天皇までを収録。
河出文庫
現代語訳 日本書紀 (河出文庫)

現代語訳 日本書紀 (河出文庫)

初版は2005年(ただし、基になった版は1976年)。
訳は福永武彦
本書は、『日本書紀』全三十巻のうち、文学的と思われる箇所を選んで、現代口語に翻訳した抄訳です。
現在、新刊書店で流通している『日本書紀』の文庫版は以上の3種類しかありません。
原文読解
それでは、『日本書紀』本文の冒頭部分を読んでみましょう。
下に、「原文(書き下し文)」「現代語訳」を記しました。
書き下し文は岩波文庫版、現代語訳は講談社学術文庫版からの引用です。
また、書き下し文の下には、語注も付けてあります。
なお、原文は縦書きですが、ここでは、ブログの書式のため、横書きになりますが、ご了承下さい。

日本書紀 巻第一

日本書紀(作品名)歴史書。三十巻。舎人(とねり)親王ら撰(せん)。養老四年(七二〇)完成奏上。神代から持統(じとう)天皇に至る歴史を漢文編年体で記す。「古事記」と密接な関係を有するが、「古事記」に比べ諸説を列挙するなど考証的であり、また漢文風潤色が施されている。「日本紀(にほんぎ)」とも。「六国史(りくこくし)」の第一。
(くゎん)(接尾)書籍などを数える。
第一(だいいち)(名)いちばん初めであること。最初。

神代上

神代(かみよ)天地開闢(かいびゃく)から神武天皇の前までの神々が国を治めたという神話時代。
(かみ)(名)はじめ。冒頭。
(1)

(訓み下し文)
(テキスト16ページ、3行目~)
古に天地未だ剖れず、陰陽分れざりしとき、渾沌れたること鶏子の如くして、溟涬にして牙を含めり。

(いにしへ)(名)遠く過ぎ去った世。見たこともない遠い昔。古代。太古。
(格助)時を示す。~(とき)に
天地(あめつち)天と地。乾坤(けんこん)。
未だ(いまだ)(副)(下に打消の表現を伴って)まだ。今でもまだ。
わかる(自ラ下二)分離する。一つのものが別々になる。「天地(あめつち)のわかれし時ゆ(=カラ)」
(助動特殊型)打消の意を表す。~ない。
(名)(陰陽の)陰。「陰陽(を)分かれざりしとき」
(名)(陰陽の)陽。「陰(め)陽分かれざりしとき」
(助動特殊型)今より前(過去)に起こったことをいう。以前~た。~た。
とき(名)ころ。時分。折。場合。
まろかる(自ラ下二・四)「まろがる」とも。丸く固まる。固まって一つになる。
たり(助動ラ変型)動作・作用が継続・進行している意を表す。~ている。
とりのこ(名)卵。特に、鶏卵。
(格助)「ごと(し)」「まにまに」「から」「むた」などの形式語を下に伴う。
如し(ごとし)(助動ク型)ある一つの事実と他の事実とが同類・類似のものである意を表す。~ようだ。~と同じ。
して(接助)連用修飾語に付いて状態を表す。~の状態で。~で。
ほのか(形動ナリ)(音・形・色・光などが)かすかだ。ぼんやり。
きざし(名)芽ばえ。「溟涬(ほのか)にしてきざしをふふめり」
含む(ふふむ)(外に現さず、まだ内にじっと秘めている意)(自マ四)花や葉がまだ開かない。
(助動ラ変型)完了した動作・作用の結果が存続している意を表す。~ている。~てある。

(現代語訳)
天地開闢と神々
昔、天と地がまだ分かれず、陰陽の別もまだ生じなかったとき、鶏の卵の中身のように固まっていなかった中に、ほの暗くぼんやりと何かが芽生えを含んでいた。

(2)

其れ清陽なるものは、薄靡きて天と為り、重濁れるものは、淹滞ゐて地と為るに及びて、精妙なるが合へるは搏り易く、重濁れるが凝りたるは竭り難し。

それ(接)(漢文「夫」の訓読から)文のはじめに用いて、改まった感じで以下の事柄を述べたてる意を表す。そもそも。いったい。
澄む(すむ)(自マ四)くもりがなく明らかになる。濁りなく清らかになる。
明らか(あきらか)(形動ナリ)明るいさま。くもりがないさま。
もの(名)(形式名詞として)ある属性を有する実体や事柄を表す。
(係助)特にとりたてて区別する。~は。~の方は。
たなびく(自カ四)雲や霞(かすみ)などが横に長く引く。雲や霞のように長く連なる。
(接助)ある事が起こって、次に後の事が起こることを表す。~て、それから。そうして。
(あめ)(名)天。天空。⇔地(つち)
(格助)~の状態になる意を表す。変化の結果を示す。~と。
なる(自ラ四)(それまでと違った状態やものに)なる。成長する。変化する。
重し(おもし)(形ク)どっしりしている。落ち着いている。重々しい。
濁る(にごる)(自ラ四)(水・酒などが)不透明になる。にごる。
ツツヰ 積り、こもって止る意。
(つち)(名)大地。地上。地面。⇔天(あめ)
(格助)動作の帰着点を示す。~に。
及ぶ(およぶ)(自バ四)ある所にまで届く。達する。至る。
くはし(形シク)精妙でうつくしい。うるわしい。
(たえ)(形動ナリ)神々(こうごう)しいほどにすぐれている。何ともいえずすばらしい。霊妙だ。
(格助)体言・活用語の連体形に付き、あとに述べる事態をもたらしたものを指示する。一般に主語を示すといわれるもの。~が。
合ふ(あふ)(自ハ四)離れていたものが一つになる。一緒になる。
易し(やすし)(形ク)(動詞の連用形に付いて)そうなる傾向がある。そうなりがちである。
凝る(こる)(自ラ四)寄り集まって固まる。凝結する。
かたまる(自ラ四)固くなる。
難し(-がたし)(接尾ク型)~するのが困難だ、~しにくい、の意を表す。

やがてその澄んで明らかなものは、のぼりたなびいて天となり、重く濁ったものは、下を覆い滞って大地となった。澄んで明らかなものは一つにまとまりやすかったが、重く濁ったものが固まるのには時間がかかった。

(3)

故、天先づ成りて地後に定る。

(かれ)(接)それゆえに。だから。それで。そこで。さて。
先づ(まづ)(副)はじめに。さきに。
成る(なる)(自ラ四)(自分の力によるのではなく)成り立つ。実現する。できあがる。
(のち)(名)あと。次。以後。
定まる(さだまる)(自ラ四)(物事が)決まる。

だから天がまずでき上って、大地はその後でできた。

(4)

然して後に、神聖、其の中に生れます。

然して(しかうして)(接)「しかして」「しかうじて」とも。そうして。それから。
かみ(名)神話で、国土を創造し、支配した存在。神代に登場する神々。
其の(その)近い前に話題にのぼった事物であることを示す語。その。あの。
(なか)(名)内部。うち。
(格助)場所を示す。~に。~で。
生れます(あれます)(自サ四)「生(あ)る」の尊敬語。出現なさる。お生まれになる。

そして後から、その中に神がお生まれになった。

(5)

故曰はく、開闢くる初に、洲壌の浮れ漂へること、譬へば游魚の水上に浮けるが猶し。

曰く(いはく)言うこと。言うことには。言うよう。
ひらく(自カ四)あく。広がる。開く。
初め(はじめ)(名)最初。はじまり。第一。
くに(名)国土。国家。日本国。
(格助)主語を示す。~が。
浮かる(うかる)(自ラ下二)自然に浮く。浮かぶ。
漂ふ(ただよふ)(自ハ四)浮かんで揺れ動く。
こと(名)ことのようす。さま。
たとへば(副)他の物にたとえて言えば。
あそぶ(自バ四)動きまわる。
(いを)(名)「うを」とも。さかな。
(みづ)(名)飲み水や、川・海・湖・池などの水。
(格助)連体修飾語をつくる。所有を表す。~が持っている。~のものである。
(うへ)(名)上の位置。高い所。上のほう。⇔下(した)
浮く(うく)(自カ四)空中や水面などに、支えから離れて不安定な状態にある。浮かぶ。漂う。
(格助)体言・連体形の下に付き、「ごと」「ごとし」「むた」「まにまに」「からに」などに続ける。

それで次のようにいわれる。天地が開けた始めに、国土が浮き漂っていることは、たとえていえば、泳ぐ魚が水の上の方に浮いているようなものであった。

(6)

時に、天地の中に一物生れり。

(とき)(名)そのころ。当時。
一つ(ひとつ)(名)数の名。一。ひとつ。
(もの)(名)ふつうのもの。一般の事物。
(助動ラ変型)動作・作用の完了した意を表す。~た。

そんなとき天地の中に、ある物が生じた。

(7)

状葦牙の如し。便ち神と化為る。

かたち(名)物の形態。外形。姿。
葦芽(あしかび)(名)葦の若芽。=葦角(あしづの)
すなはち(副)すぐに。たちまち。ただちに。

形は葦の芽のようだったが、間もなくそれが神となった。

(8)

国常立尊と号す。

(格助)言ったり、思ったりする内容を受けていう。引用の「と」。
まうす(他サ四)(人の呼び名などを格助詞「と」を介して受けて)「世間で~という」の意の謙譲語。~と申し上げる。

国常立尊と申しあげる。

(9)

至りて貴きをば尊と曰ふ。自余をば命と曰ふ。並に美挙等と訓ふ。

至りて(いたりて)(副)いたって。きわめて。非常に。
貴し(たふとし)(形ク)あがめ敬うべきである。崇高だ。尊い
をば 動作・作用の対象を強く示す意を表す。
命・尊(みこと)(命)神や天皇また目上の人を敬っていう語。
いふ(自他ハ四)名付ける。呼ぶ。
これ(代)近接の指示代名詞。話し手に近い事物・場所などをさす。/事物をさす。このもの。このこと。
より(格助)一定の範囲を限定する意を表す。~以外。
余り(あまり)(名)あまったもの。残り。余分。
並びに(ならびに)(副)全部。すべて。ことごとく。両方ともに。

――大変貴いお方は「尊」といい、それ以外のお方は「命」といい、ともにミコトと訓む。

(10)

下皆此に効へ。

(しも)(名)あとの部分。終わりのほう。
(名・副)すっかり。残らず。
(格助)動作の対象を示す。~に。~に対して。
ならふ(他ハ四)学ぶ。習得する。体得する。

以下すべてこれに従う――

(11)

次に国狭槌尊。次に豊斟渟尊。凡て三の神ます。

(つぎ)(名)あとに続くこと。また、そのもの。
すべて(副)全部合わせて。全部ひっくるめて。
-はしら(接尾)神仏を敬って数える。
(格助)連体修飾語をつくる。
ます(自サ四)「あり」「居(ゐ)る」の尊敬語。いらっしゃる。おいでになる。

次に国狭槌尊、次に豊斟渟尊と、全部で三柱の神がおいでになる。

(12)

乾道独化す。

乾道 坤道に対する言葉。乾は陽、坤は陰。したがって乾道は陽気を意味する。
独り(ひとり)(名)単独であること。また、その物だけであること。
なす(他サ四)つくる。こしらえる。

この三柱の神は陽気だけをうけて、ひとりでに生じられた。

(13)

所以に、此の純男を成せり。

ゆゑ(名)原因。理由。いわれ。事情。
(格助)原因・理由を表す。~により。
この 話題となっているものを指示する語。この。
純男 純粋な男性
(格助)対象としてとりあげたものを示す。~を。

だから純粋な男性神であった、と。

(14)

一書に曰はく、天地初めて判るるときに、一物虚中に在り。

ある(連体)人や物や所などを漠然とさす語。ある。
ふみ(名)文書。書物。
初めて(副)最初に。初めて。
そら(名)太陽・月・星・雲のある空間。天。天空。
(格助)連体修飾語をつくる/所属を表す。~のうちの。
在り(あり)(自ラ変)存在する/(物が)ある。

ある書(第一)ではこういっている。天地が始めて分かれるとき、一つの物が空中にあった。

(15)

状貌言ひ難し。

かたち(名)ようす。ありさま。
言ふ(いふ)(自他ハ四)ことばで形容する。

そのありさまは形容しがたい。

(16)

其の中に自づからに化生づる神有す。

自ら(おのづから)(副)自然と。ひとりでに。
(格助)場合・状況などを示す。~に。~の場合に。
なりいづ(自ダ下二)生まれ出る。生まれつく。
います(自サ四)「あり」「居(ゐ)る」の尊敬語。いらっしゃる。おありになる。

その中に自然に生まれ出た神がおられた。

(17)

国常立尊と号す。

国常立尊という。

(18)

亦は国底立尊と曰す。

(また)(副)もう一つ。別に。

別名を国底立尊ともいう。

(19)

次に国狭槌尊。亦は国狭立尊と曰す。

次に国狭槌尊、別名を国狭立尊という。

(20)

次に豊国主尊。亦は豊組野尊と曰す。

次に豊国主尊、別名豊組野尊という。

(21)

亦は豊香節野尊と曰す。亦は浮経野豊買尊と曰す。亦は豊国野尊と曰す。亦は豊齧野尊と曰す。亦は葉木国野尊と曰す。亦は見野尊と曰す。

また豊香節野尊とも、また浮経野豊買尊とも、また豊国野尊とも、また豊齧野尊とも、また葉木国野尊とも、また見野尊ともいう。

(22)

一書に曰はく、古に国稚しく土稚しき時に、譬へば浮膏の猶くして漂蕩へり。

いし(形シク)語義未詳。ととのわない・幼いの意か。
浮かぶ(うかぶ)(自バ四)空中や水面などに、支えから離れて不安定な状態で存在する。「海(うなはら)の上に浮かべる雲の根」
あぶら(名)植物の種子などから絞りとった、水に溶けない液体、および動物の脂肪。

また一書(第二)ではこういっている。昔、国がまだ若く、大地も若かった時には、譬えていえば、水に浮かんだ脂のように漂っていた。

(23)

時に、国の中に物生れり。

生る(なる)(自ラ四)生まれる。生じる。

そんなとき、国の中にある物が生まれた。

(24)

状葦牙の抽け出でたるが如し。

ぬけいづ(自ダ下二)離れて出る。抜け出る。

形は葦の芽がつき出したようであった。

(25)

此に因りて化生づる神有す。

(格助)動作のよりどころを示す。~に。
よる(自ラ四)(「~によりて」「~によって」の形で、接続助詞のように用いて)~のために。~ので。~から。
(接助)原因・理由を表す。~のために。~ので。

これから生まれた神があった。

(26)

可美葦牙彦舅尊と号す。

可美葦芽彦舅尊という。

(27)

次に国常立尊

次に国常立尊

(28)

次に国狭槌尊

次に国狭槌尊

(29)

葉木国、此をば播挙矩爾と云ふ。

葉木国――これをハコクニという。

(30)

可美、此をば干麻時と云ふ。

可美――これをウマシという。

(31)

一書に曰はく、天地混れ成る時に、始めて神人有す。

まろかる(自ラ下二・四)「まろがる」とも。丸く固まる。固まって一つになる。
成る(なる)(補助ラ四)自然にそのような状態になる。

また一書(第三)ではこういっている。天地がぐるぐる回転して、かたちがまだ定まらないときに、はじめて神のような人があった。

(32)

可美葦牙彦舅尊と号す。

可美葦芽彦舅尊という。

(33)

次に国底立尊。

次に国底立尊。

(34)

彦舅、此をば比古尼と云ふ。

彦舅――これをヒコジという。

(35)

一書に曰はく、天地初めて判るるときに、始めて俱に生づる神有す。

ともに 一つになって。~といっしょに。

また一書(第四)ではこういっている。天地がはじめて分かれるときに、始めて一緒に生まれ出た神があった。

(36)

国常立尊と号す。

国常立尊という。

(37)

次に国狭槌尊

次に国狭槌尊

(38)

又曰はく、高天原に所生れます神の名を、天御中主尊と曰す。

(また)(副)同じく。同様に。やはり。また。
高天原(たかまのはら)(名)日本神話で、「天(あま)つ神」の住む天上の国。「葦原(あしはら)の中つ国」・「根の国」に対していう。
み-(接頭)(名詞に付いて)尊敬の意を表す。
(な)(名)他と区別するために呼ぶことば。呼び名。名前。

また高天原においでになる神の名を天御中主尊というと。

(39)

次に高皇産霊尊

次に高皇産霊尊

(40)

次に神皇産霊尊

次に神皇産霊尊

(41)

皇産霊、此をば美武須毗と云ふ。

皇産霊――これをミムスヒという。

(42)

一書に曰はく、天地未だ生らざる時に、譬へば海上に浮べる雲の根係る所無きが猶し。其の中に一物生れり。

うなはら(名)広々とした海。広い池や湖についてもいう。
(くも)(名)空に出て、日や月を隠し、雨や雪を降らせるもととなるもの。雲。また、比喩(ひゆ)的に、雲のように一面にたなびいて見えるもの。桜や藤(ふじ)の花の遠景にいう。
(ね)(名)物事のはじまり。起源。根源。
かかる(自ラ四)(雲・かすみなどが)おおう。かぶさる。
(ところ)(名)場所。
無し(なし)(形ク)存在しない。ない。

また一書(第五)ではこういっている。天地がまだ固まらないとき、たとえば海上に浮かんだ雲の根がないように、漂っていた中に、一つの物が生まれた。

(43)

葦牙の初めて埿の中に生でたるが如し。

(ひぢ)(名)どろ。また、ぬかるみ。=泥土(うひぢ)
おひいづ(自ダ下二)(人が)生まれ出る。(植物などが)生え出る。
たり(助動ラ変型)動作・作用が完了した意を表す。~た。

葦の芽がはじめて泥の中から生え出したようである。

(44)

便ち人と化為る。

すなはち(接)そこで。その時に。そして。

それが人となった。

(45)

国常立尊と号す。

国常立尊という。

(46)

一書に曰はく、天地初めて判るるときに、物有り。葦牙の若くして、空の中に生れり。

また一書(第六)にこういっている。天地がはじめて分かれたときに、ある物があり、葦の芽のようで空の中に生まれた。

(47)

此に因りて化る神を、天常立尊と号す。

これから出られた神を天常立尊という。

(48)

次に可美葦牙彦舅尊。

次に可美葦芽彦舅尊。

(49)

又物有り。浮膏の若くして、空の中に生れり。

またある物があり、浮かんだ脂のようで空の中にできた。

(50)

此に因りて化る神を、国常立尊と号す。

これから生まれた神を国常立尊という。
宇治谷孟・訳)

【参考文献】
旺文社古語辞典 第10版 増補版』(旺文社)
駿台受験叢書 古典文学読解演習 古典とともに思索を』高橋正治・著(駿台文庫)
1995年度 二文.pdf - Google ドライブ
詳説日本史B 改訂版 [日B309] 文部科学省検定済教科書 【81山川/日B309】笹山晴生佐藤信五味文彦、高埜利彦・著(山川出版社
精選日本文学史』(明治書院

『幸福な生活について』を原文で読む(第2回)

Lucius Annaeus Seneca

Lūcius -ī(男)ルーキウス(ローマ人の個人名(略称L.))
Annaeus -ī(男)アンナエウス(ローマ人の氏族名)
Seneca -ae(男)セネカ(Annaea氏族に属する家名/特に(1)L. Annaeus Seneca、Corduba生まれの修辞学者(前55?-?後40)。(2)L. Annaeus Seneca、(1)の息子/ストア哲学者・悲劇作家・政治家(前4?-後65)/Nero帝の師)

DE VITA BEATA

(前)(+奪格)(関連・限定)~に関して、~について
vīta -ae(女)(vivo)生活、暮らしぶり
beātus -a -um(形)(完了分詞)(beo)幸福な、祝福された、恵まれた
(テキスト8ページ、2行目~)

I. 1 Vivere, Gallio frater, omnes beate volunt, sed ad pervidendum quid sit quod beatam vitam efficiat caligant; adeoque non est facile consequi beatam vitam, ut eo quisque ab ea longius recedat quo ad illam concitatius fertur, si via lapsus est; quae ubi in contrarium ducit, ipsa velocitas maioris intervalli causa fit.

vīvō -ere -vixī victum(自)生きている、生きる
Galliōnis(男)ガッリオー(ローマ人の家名)
frāter -tris(男)兄弟
omnēs -ium(男)(女)(複)(omnis)すべての人々
beātē(副)(beatus)幸福に
volō velle voluī(他)欲する、望む、願う(+不定法)
sed(接)しかし、けれども
ad(前)(+対格)~のために、~の目的で
pervideō -ēre -vīdī -vīsum(他)(per-/video)見通す、見分ける
quis quis quid(代)(疑問詞)だれ、何、どれ
sum esse fuī(自)(繋辞として)~である
quī quae quod(代)(関係代名詞)(+直説法)(事実関係)~するところの(人・もの)
efficiō -cere -fēcī -fectum(他)(ex-/facio)もたらす、ひき起こす(+物・事の対格)
cālīgō -āre(自)(目が)かすむ
adeō(副)その程度まで、それほどに
-que(接尾辞)itaque、atque、quisqueなどのように副詞、接続詞、関係代名詞などに付けられる
nōn(副)(noenum)~でない
facile(副)(中性)容易に、たやすく
consequor -quī -secūtus sum(他)(形式受動相)(con-/sequor)達成する、獲得する
ut(副)(関係詞)(理由)~の故に、~だから
is ea id(代)(指示詞)彼、彼女、それ
quisque quaeque quidque(代)(quis/-que)(程度の奪格と比較級を伴って)~すればするほどますます
ab(前)(+奪格)(abは母音とhの前で)~から、~より
longus -a -um(形)遠い
recēdō -ere -cessī -cessum(自)(re-/cedo)離れる、遠ざかる
quō(副)(qui, quis)(+比較級)quō ~ eo ~であればあるほど
ad(前)(+対格)(空間的)~の方へ、~に向かって
ille illa illud(代)(指示詞)あれ、それ、あの人、その人、彼、彼女
concitātus -a -um(形)(完了分詞)(concito)急激な、急速な
ferō ferre tulī lātum(他)運ぶ、持っていく(+人の対格)
(接)もし~ならば/(+直説法)(単純な可能性)
via -ae(女)(人生の)道、進路
lapsus -a -um(完了分詞)→labor
lābor -bī lapsus sum(自)(形式受動相)(cf. labo)失敗する、間違える
quī quae quod(代)(関係代名詞)(連結詞として)=et is、sed isなど
ubī(接)~(の)時に
in(前)(+対格)(空間的)~へ、~に向かって、~の方へ、~の中へ
contrārium -ī(中)(contrarius)反対側
dūcō -ere duxī ductum(他)導く、連れて行く
ipse -a -um(強意代名詞)自ら、自身
vēlōcitās -ātis(女)(velox)(文体の)速度
mājor -or -us(形)(比較級)(magnus)より大きな
intervallum -ī(中)(時間的・空間的)間隔
causa -ae(女)理由、原因(+属性)
fīō fierī factus sum(自)(facioの受動として用いられる)なる

Proponendum est itaque primum quid sit quod adpetamus; tunc circumspiciendum qua contendere illo celerrime possimus, intellecturi in ipso itinere, si modo rectum erit, quantum cotidie profligetur quantoque propius ab eo simus ad quod nos cupiditas naturalis inpellit?

prōpōnō -ere -posuī -positum(他)(pro-/pono)前に置く、展示する、人目にさらす
ita(副)それゆえ
prīmum(副)(中性)(primus)まず、第一に、最初に
appetō -ere -petītī -petītum(他)(ad-/peto)(得ようと)努力する、熱望する、激しく欲求する(+物・事の対格)
tunc(副)(tum)それから、その次に
circumspiciō -ere -spexī -spectum(他)(circum-/specio)よく考察する
quā(副)(女性単数奪格)(qui)どの道を通って、どんな経路で
contendō -ere -tendī -tentum(自)(con-/tendo)急いで行く
illō(副)(男性単数奪格)(ille)その場所へ、そこへ、そちらへ
celer celeris celere(形)すばやい、迅速な
possum posse potuī(他)(~することが)できる(+不定法)
intellegō -ere -lexī -lectum(他)(inter-/go)(知的に)把握する、理解する
in(前)(+奪格)(ある状況・状態など)~で、~において、~のもとで ・in itinere 道中で
iter itineris(中)(eo/cf. itio)旅、旅行 ・in itinere 道中で
modo(副)(奪格)(modus)ただ、~だけ ・si modo(+接続法)もし~でありさえすれば
rectus -a -um(形)(完了分詞)(rego)正しい、正当な、適当な
quantus -a -um(形)(quam)(疑問詞)どれほど大きい(多い)
cotīdiē(quot/dies)毎日、日々
prōflīgō -āre -āvī -ātum(他)(pro-/fligo)打ち負かす、打ちのめす
quantō(副)(奪格)(quantum)(疑問詞)(疑問)どの程度、どれほど
-que(前接辞)(2語を並列する場合、2番目の語に付ける/語群や文の場合はその先頭の語に付ける)~と~、また、そして
propius(副)(比較級)(中性)(propior)より近く
ab(前)(+奪格)~によって
sīmus -a -um(形)(ギリシア語)平たい、平らな
ad(前)(+対格)(空間的)~の方へ、~に向かって
nōs(代)(複数)我々、私たち(→ego)
cupiditās -ātis(女)(cupidus)熱望、切望
nātūrālis -is -e(形)(natura)自然な、本来の
impellō -ere -pulī -pulsum(他)動かす、駆る、追いやる

2 Quamdiu quidem passim vagamur non ducem secuti sed fremitum et clamorem dissonum in diversa vocantium, conteretur vita inter errores brevis, etiam si dies noctesque bonae menti laboremus.

quamdiū(副)(関係詞)~の間
quidem(副)確かに、全く ・quidem ~ sed 確かに~(ではあるが)しかし
passim(副)(passus)いたるところに、あちらこちらに
vagor -ārī -ātus sum(自)(形式受動相)(vagus)さまよう、放浪する、動き(飛び)回る
nōn(副)(noenum)~でない
dux ducis(男)(女)(duco)指導者
sequor -quī secūtus sum(他)従う
sed(接)(否定辞の後で)(~ではなく)~で
fremitus -ūs(男)ぶつぶつ不平を言うこと
et(接)~と(そして)~
clāmor -ōris(男)叫び
dissonus -a -um(形)(dis-/sonus)(音が)不調和の
dīversus -a -um(形)(完了分詞)(diverto)異なった方向を向いた
vocō -āre -āvī -ātum(他)(vox)呼ぶ、呼び寄せる
conterō -ere -trīvī -trītum(他)(時を)過ごす
vīta -ae(女)(vivo)人生、生涯
inter(前)(+対格)(時間的)~の間に、~のうちに
error -ōris(男)(erro)さまようこと、放浪
brevis -is -e(形)(時間が)短い
etiam sī(接)たとえ~であっても
diēs -ēī(男)(女)昼間、日中
nox noctis(女)夜
bonus -a -um(形)強い、健全な
mens mentis(女)精神、心
labōrō -āre -āvī -ātum(自)(labor)骨折る、働く

Decernatur itaque et quo tendamus et qua, non sine perito aliquo cui explorata sint ea in quae procedimus, quoniam quidem non eadem hic quae in ceteris peregrinationibus condicio est: in illis comprensus aliquis limes et interrogati incolae non patiuntur errare, at hic tritissima quaeque via et celeberrima maxime decipit.

cernō -ere -crēvī -crētum(他)判決する、決定する、規定する
itaque(副)(ita/-que)従って、それゆえに
quō(副)(qui, quis)(疑問詞)どこへ
tendō -ere tetendī tentum(tensum)(自)伸びる、向かう、進む
sine(前)(+奪格)~がなく、~なしに
perītus -a -um(形)(cf. experior)経験のある、熟練した
aliquis -qua -quid(不定代名詞)(alius/quis)誰か、ある人
explōrātus -a -um(形)(完了分詞)確かな、確実な
prōcēdō -ere -cessī -cessum(他)(pro-/cedo)前に進む、進み出る
quoniam(接)~であるからには、~だから
īdem eadem idem(指示形容詞)(is/-dem)同じ、同一の、同様の
hīc(副)この機会(場合)に、この状況で
cēterus -a -um(形)その他の、それ以外の、残りの
peregrīnātiōnis(女)(peregrinor)外国旅行
condiciōnis(女)(condico)状況、事情
comprensus -a -um(完了分詞)=comprehensus
conprehensus -a -um(完了分詞)→comprehendo
comprehendō -ere -hendī -hensum(他)(con-/prehendo)知覚する、理解する
aliquis -qua -quid(不定代名詞)(alius/quis)何か、あるもの
līmes -mitis(男)(cf. limus)小道
interrogō -āre -āvī -ātum(他)質問する、尋ねる
incola -ae(男)(女)(incolo)居住者、住人
patior -tī passus sum(他)(形式受動相)(~の状態に)しておく、ほうっておく(+不定法)
errō -āre -āvī -ātum(自)誤る、間違う
at(接)(対照的に)しかし、それに対して
hic haec hoc(指示代名詞)これ、この人
tritis -is -e(形)(自然力などが)激しい、苛酷な、荒れ狂う
via -ae(女)道、道路
celeber -bris -bre(形)込んでいる、いっぱいになった
maximē(副)(最上級)最も
dēcipiō -pere -cēpī -ceptum(他)(de-/capio)欺く、だます
【参考文献】
幸福な生活について (大学書林語学文庫 3011)』山敷繁次郎・訳注(大学書林
羅和辞典 <改訂版> LEXICON LATINO-JAPONICUM Editio Emendata水谷智洋・編(研究社)

『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』

この週末は、ブルーレイで『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』を見た。

1977年のアメリカ映画。
監督は、『アメリカン・グラフィティ』のジョージ・ルーカス
音楽は、『屋根の上のバイオリン弾き』『ポセイドン・アドベンチャー』『タワーリング・インフェルノ』『大地震』『ジョーズ』『ファミリー・プロット』『未知との遭遇』『スーパーマン』『1941』『E.T.』の巨匠ジョン・ウィリアムズ
撮影は、『博士の異常な愛情』『フレンジー』『オーメン』『オーメン2/ダミアン』のギルバート・テイラー
編集は、『ファントム・オブ・パラダイス』『キャリー』のポール・ハーシュ、『アメリカン・グラフィティ』のマーシア・ルーカス、『カンバセーション…盗聴…』『カッコーの巣の上で』のリチャード・チュウ。
主演はマーク・ハミル
共演は、『アメリカン・グラフィティ』『カンバセーション…盗聴…』『ナバロンの嵐』『地獄の黙示録』のハリソン・フォード、『博士の異常な愛情』『エクソシスト2』のジェームズ・アール・ジョーンズ、『マダムと泥棒』『戦場にかける橋』『アラビアのロレンス』『ローマ帝国の滅亡』『ドクトル・ジバゴ』のアレック・ギネス、『エレファント・マン』『アマデウス』のケニー・ベイカー、『アレキサンダー大王』のピーター・カッシング
僕は小学生の頃、友達の家に皆で集まって、テレビ放送を録画した本作を見た。
しかし、内容はロクに覚えていない。
本作の初公開は1977年なので、その時の記憶はないが、『帝国の逆襲』や『ジェダイの復讐』を公開していた時に話題になっていたのは何となく覚えている。
でも、僕は全然興味が湧かなかった。
昔から、流行りものには背を向けて生きて来たのだ。
特撮には興味があったので、SFXの本などを読むと、よく本作のことが取り上げられていたが。
小学6年生の時には、学校の先生の影響で『2001年宇宙の旅』にハマッた。
その先生は、『スター・ウォーズ』のことを「見世物はつまらん」と斬って捨てた。
僕も素直にそれを信じた。
ちょうどその頃、駅前のスーパーの家電売り場でレーザー・ディスクのデモンストレーションが行われており、『2001年』のソフトが流されていた。
僕は毎日、学校帰りにそこへ通って、『2001年』を何十回も見た。
それ以来、僕の最も尊敬する映画監督はスタンリー・キューブリックである。
という訳で、今に至るまで、『スター・ウォーズ』の新作が公開される度に大騒ぎになるのも斜めに見ていたし、もちろん、第1作をもう一度見てみようという気も起こらなかったのだが。
でも、色々な意味で映画史上に残っている作品であるのは間違いないので、ちゃんと見直した方がいいだろうと思い、ブルーレイを買った。
細君も驚いていたが。
20世紀フォックス
カラー、シネスコ・サイズ。
「遠い昔、はるかかなたの銀河系で」という字幕。
例のテーマ曲が流れる。
「エピソード4 新たなる希望」。
本作は、ウィキペディアによると、デジタル合成やCG処理を加えてあるので、特撮部分はオリジナルとは違っているようである。
「時は内乱のさなか、凶悪な銀河帝国の支配に反乱軍は秘密基地から奇襲を仕掛け、帝国に対し初めて勝利を収めた。更にその戦闘の合間に反乱軍のスパイは帝国軍の究極兵器の設計図を盗み出すことに成功。それは“デス・スター”と呼ばれ、惑星をも粉々に粉砕にするパワーを持つ宇宙要塞基地だった。凶悪な帝国軍に追われながら、レイア姫は盗み出した設計図を手に故郷へと急いだ。人民を救い、銀河に自由を取り戻すために…」という長い長い字幕。
この間の『悪霊』もそうだったが、こんな長い説明的な字幕を最初に出されても、なかなか頭に入って来ない。
映画は映像で見せるものではないのか。
反乱軍の指導者の一人レイア姫キャリー・フィッシャー)は惑星オルデランへ帰還の途上、帝国軍に襲撃される。
ダース・ベイダーが乗り込んで来る。
船内に設計図があるものと、連中は探し回るが、見付からない。
レイア姫は、R2-D2に救援メッセージと設計図のデータを載せる。
本作の特撮は、やはり『2001年』の技術が基本になっていると思う。
レイア姫は捕まったが、設計図はないと言い張る。
気の強い女だ。
そして、一般的なヒロインほど美人ではない(ファンの人がいたらすみません)。
無人の脱出ポッドにR2-D2は相棒のC-3POと共に乗り込む。
飛んで行く脱出ポッドを見て、ダース・ベイダーは「設計図はあの中だ」と悔しがる。
脱出ポッドは砂漠の惑星に到着した。
突然、R2-D2は撃たれる。
R2-D2C-3POは、原住生物ジャワの軍団に連れて行かれる。
ジャワは、要するに奴隷の様にドロイドを売買するのが目的であった。
ある集落で、そこに叔父夫婦の元に暮らすルーク・スカイウォーカーマーク・ハミル)がC-3POR2-D2を購入する。
ルーク曰く、「ここは宇宙のド田舎だ。」
C-3POは通訳機であった。
突然、ルークの前でR2-D2がホログラムのレーア姫を映す。
「助けて、オビ・ワン・ケノービ!」
ルークは、「ベン・ケノービという老人なら知っているが。」
ルークの父親は既にこの世にいない。
叔父さんに「士官学校に行きたい」と頼むが、家の収穫が忙しいから、もう1年待てと諭される。
この星には太陽が二つあった。
夜、R2-D2が出て行った。
後を追ったルークはR2-D2を発見するが、サンド・ピープルにノック・アウトされる。
それをベン・ケノービ(アレック・ギネス)が見付け、助ける。
オビ・ワン・ケノービとは、ベン・ケノービの昔の名前であった。
そして、腕のもげたC-3POも見付かる。
彼らはオビ・ワンの家へ行く。
オビ・ワンはルークの父親とは戦友であった。
オビ・ワンはルークに、ジェダイ騎士の武器であるライトセーバーを渡す。
それから、フォースの話しをする。
このフォースというのは、本作の要となるのだが、イマイチよく分からない概念だ。
で、オビ・ワンの弟子ダース・ベイダーは帝国軍に寝返ったのだという。
その時、R2-D2が再びホログラムを映し出した。
ルーク姫のメッセージは「もう一度父を助けて下さい、ケノービ将軍」というものであった。
オビ・ワンはルークに、「私と一緒にオルデランへ行くか」と持ち掛けるが、ルークは家の仕事があるから行けないと断る。
ルークらは、ジャワが帝国軍にやられている現場を発見する。
心配になって家に帰ってみると、家は襲撃され、叔父夫婦も無惨に殺されていた。
その頃、帝国軍の要塞に捕まっていたレイア姫は、ダース・ベイダーから「秘密基地の場所を教えろ」と迫られていたが、頑として口を割らなかった。
で、叔父夫婦を殺されたルークは、オビ・ワンと共にオルデランへ行く決意をする。
彼らは、モス・アイズリー宇宙港へ行く。
そこは、宇宙の荒くれが集まっているところだった。
酒場へ行く。
何か、E.T.の親戚みたいな変な怪物がゴロゴロしている。
ルークはゴロツキにケンカを売られる。
オビ・ワンはライトセーバーで助ける。
オビ・ワンは、密輸商人のハン・ソロハリソン・フォード)とチューバッカ(ピーター・メイヒュー)と会う。
ハン・ソロは貨物船ファルコン号の船長だ。
危険な仕事は引き受けたくなかったハン・ソロだが、借金を抱えているので、1万7000の報酬を出すというオビ・ワンの言葉に、彼らをオルデランまで送り届ける仕事を引き受ける。
ハン・ソロは絡んで来たグリードという変な生物を撃ち殺す。
西部劇みたいだ。
ハン・ソロ達、船に乗る。
ファルコン号はポンコツだが、スピードが自慢だという。
光速の1.5倍だとか。
相対性理論も完全無視だな。
そこへ、さっきの酒場の揉め事で、帝国軍が捜しに来る。
銃撃戦。
振り切って、ファルコン号は出発。
超空間(ハイパー・スペース)へ。
さあ、これからどうなる?
ストーリーは意外と単純。
よく言われるように、『隠し砦の三悪人』が元になっている。
もう40年以上も前の映画だが、斬新なセットなどは、今見ても全く古臭くない。
宇宙なんだが、セリフがみんな英語だ。
クライマックスは、もうゲームそのもの。
子供の頃からゲームとは全く縁のなかった僕は、着いて行けない。
完全にドンパチだね。
編集の妙かな。
まあ、この作品からSF映画が変わったのは事実だが。
「フォースはいつも君と共にある」って、何だよ。
僕は、やっぱり『2001年』派かな。
そして、長い長いエンドロール。
今みたいな長いエンドロールは、この映画から始まったらしい。
アカデミー賞編集賞美術賞、衣装デザイン賞、作曲賞、録音賞、視覚効果賞受賞。
1978年洋画興行収入1位(ちなみに、2位は『未知との遭遇』。邦画の1位は『野性の証明』)。

Star Wars A New Hope 1977 Trailer

『悪霊』(1987)

お盆休みのブルーレイ鑑賞第三弾は、『悪霊(1987)』。

1987年のフランス映画。
監督は、ポーランドの巨匠アンジェイ・ワイダ
地下水道』や『灰とダイヤモンド』は学生の頃、ビデオで見たが、衝撃的だった。
原作はドストエフスキー
僕は、恥ずかしながら、ドストエフスキーは1作も読んだことがない。
脚本はジャン・クロード・カリエール
代表作は、『昼顔』『ブリキの太鼓』『シラノ・ド・ベルジュラック(1990)』など。
美術はアラン・スタルスキ。
代表作は、『シンドラーのリスト』『戦場のピアニスト』など。
主演は、『パッション(1982)』のイェジー・ラジヴィオヴィッチ。
共演は、『アラビアのロレンス』『ローマ帝国の滅亡』『ドクトル・ジバゴ』のオマー・シャリフ、『パッション(1982)』のイザベル・ユペール、『北ホテル』のベルナール・ブリエ。
『悪霊』は有名な作品なので、いつか見たいと思っていたが、Blu-rayが千数百円で手に入るとは、すごい時代になった。
カラー、ワイド。
悲愴な音楽が流れる。
タイトル・バックは、雪の中、荷車を引いて墓場に向かい、穴を掘って何かを埋める男。
彼の名はシャートフ(イェジー・ラジヴィオヴィッチ)。
「1870年頃、若い過激派の一団で同じ村の出身者たちがスイスからロシアへ帰って来て、旧体制の転覆を口にしていた。オルグのピエールの到着が待たれた。彼がグループの鼓吹者のスタヴローギンを連れて来るはずだった。彼が新しい時代の救世主なのだ。ロシアの人間は不安を抱きながらも、皆が急激な革命の到来を信じていた。自由主義者は警戒をしていたが、グループの真の意図は分からなかった。その一人印刷工シャートフはグループから離れた。彼は心配もあったが、ピエールとスタヴローギンの帰国を待った」という、説明的で長い長い字幕。
本編が始まる前に固有名詞を幾つも出されても、分かる訳がない。
本作の前半は、ほぼ登場人物の人間関係を把握するだけで終わる。
セリフも観念的なので、眠くなって来る。
原作は、もっとセリフの嵐らしいが。
後半になって、ようやく物語が展開し始める。
で、ロシアのあり地方の町にあるスチェパン教授(オマー・シャリフ)の元へ、シャートフが再びやって来る。
スチェパンは彼を歓迎する。
シャートフは、彼らの組織が本当に民衆のことを思っているかに疑問を持ち、怒っている(だから、一旦組織を離れた)。
なお、本作はロシアが舞台だが、セリフはフランス語なので、違和感がある。
スチェパンの息子ピエール(ジャン・フィリップ・エコフェ)は破壊的な思想の持ち主。
反乱分子の首は斬れなどとすぐに口にする。
彼は、本は一切読まないと断言する。
そんな息子を、「シェイクスピアユゴー民衆の敵ではない」と諭すスチェパン。
ピエールは、シャートフにチラシの作成を依頼するが、シャートフは「印刷機は隠した」と告げる。
冒頭、墓場で穴に埋めたのは印刷機だったのだ。
シャートフは、友人の建築技師で自殺志願者のキリーロフ(ローラン・マレ)を訪ねる。
所変わって、駅前の酒場で自称・元軍人のレビャドキンが昼間から酒を飲んでいると、貴族の令嬢リーザがやって来る。
そこへ、汽車が到着し、ニコラス・スタヴローギン(ランベール・ウィルソン)が降りて来る。
彼は、終始ニヒルな笑みを浮かべている。
過激派に絡んでいるが、上流階級に属しているようである。
リーザがニコラスに声を掛けるが、そこへ顔が白塗りで足の悪い娘が現われ、ニコラスにひざまずく。
彼女はレビャドキンの妹マリアであった。
レビャドキンは彼女を連れて立ち去る。
シャートフはニコラスに近付き、ビンタをする。
それを見たリーザが卒倒。
今度は、教会にシャートフがやって来る。
教会の周りは見るからに貧しい人ばかり。
リーザは自分の指輪やイヤリングをお布施する。
教会には知事もいる。
雨の中、ニコラスがキリーロフの家を訪れるが、すぐに去る。
キリーロフは自殺主義者であり、神を信じない。
そこへ、ピエールが来る。
シャーロフがニコラスに銃を向ける。
ニコラスはシャーロフに、「君は殺される」と。
しかし、ニコラスはシャーロフを騙したので、シャーロフは信じない。
キリーロフに言ったのと逆のことを言ったのだ。
さて、ニコラスの妻はマリアであった。
ニコラスはレビャドキンの家を訪ねる。
レビャドキンは、「私はフォルスタッフでした」と言う。
大酒飲みということか。
ニコラスは、賭けをして負けたから、マリアと秘密の結婚をしたのであった。
マリアは、ニコラスの姿を見て驚く。
この娘は、足だけでなく、頭もおかしいようだ。
逃げ出すニコラス。
歩いていると、懲役囚のフェージカがニコラスに近寄り、レビャドキン兄妹殺しを1500ルーブルで引き受けると持ち掛ける。
翌日、ニコラスを訪ねるピエール。
リーザからことづかったという手紙をニコラスに渡す。
ニコラスは、昨晩、フェージカからレビャドキン兄妹殺しを持ち掛けられたという話しをする。
ピエールとニコラスは馬車で会合に向かう。
車中で、ピエールはニコラスに「我々が中央委員会だ」と告げる。
会場に着いたが、集まったメンバーは「これは会議か懇親会かで決を採ろう」などと揉めている。
要するに、民主的な会議の仕方など全く知らない連中が集まっているということだ。
ピエールは発言せず、コニャックを頼む。
ニコラスも何も言わない。
シャーロフも無言。
ようやく、一人の学生が「僕の理論では、無限の自由は無限の専制に達する」と発言する。
ピエールは「バカげている」と一蹴。
ピエールは出席者に、「君達は密告するの?」と尋ねて回る。
皆、一様に「ノー」と答える。
しかし、シャーロフは出て行く。
これで、ピエールはメンバーに、「シャーロフは密告者だ」と印象付けることに成功した。
それを見たニコラスも帰る。
ピエールがニコラスを追い掛ける。
ピエールは「革命を起こそう」と呼び掛けるが、ニコラスは「君は頭がおかしい」と吐き捨てる。
そりゃそうだろう。
あんな幼稚なメンバーで、どうやって革命を起こそうというのか。
だが、ピエールはニコラスにひざまづいた。
どうしてもカリスマ性のあるニコラスをシンボルに副えたいのだ。
その願いもむなしく、ニコラスは去ってしまった。
この辺りまで、ほぼ登場人物の紹介。
原作は読んでいないから何とも言えないが、長編小説の内容を短い時間に詰め込み過ぎて、説明的になっているのではないか。
一方、ピエールは、知事を懐柔しようともしていた。
知事の元を訪ねるピエール。
その頃、工場では、給料の不払いを巡って、労働者達が知事に談判しようと立ち上がっていた。
知事の屋敷に向けて行進を始める労働者達。
やっと革命らしくなって来た。
そこへ、たまたま通り掛かったシャーロフは、「君に頼るしかない」とリーダーにされる。
シャーロフを先頭に進む労働者達。
知事の屋敷の前で、「給料を支払え」と叫ぶ。
知事は「けしからん!」と激怒。
官憲が投入される。
まるで、首相の演説に野次を飛ばしたら警察に排除されたどこかの国のようだ。
自由で民主的なはずの先進国は、19世紀のロシアと同じくらい退化しているのである。
知事は労働者達を捕らえ、鞭打ちの刑を命ずる。
ピエールは、知事に耳打ちし、「シャーロフを釈放して下さい」と頼む。
労働者が裸にされ、次々と鞭打ちにされる中、何故かシャーロフの釈放が宣言される。
明らかに怪訝そうな顔をする労働者達。
自分がリーダーなのに、釈放される訳には行かないと、自ら服を脱ぐシャーロフだが、抵抗空しく、屋敷の外に放り出されてしまった。
これで、シャーロフのメンツは丸潰れ。
労働者達の団結は解けてしまった。
ピエールというのは、一体何がしたいのか。
過激派のリーダーのクセに、権力者側ともつながりを持ち、労働運動を妨害する。
さあ、これからどうなる?
これらは全てピエールのシャーロフに対する私怨だということが、次第に分かって来るのだが。
クライマックスの火事のシーンは、『サクリファイス』の10倍くらいスゴイ。
昔は、こういうシーンを、CGではなくて、ちゃんとセットを組んで撮影したんだな。
『乱』もそうだった。
火を使った撮影は難しい。
タワーリング・インフェルノ』なんか、スゴイと思う。
それから、最後の方で教授が言う「シェイクスピア、ラファエルは科学よりもすぐれている」というセリフが印象的。
私立文系なもんで。
本作を見ていると、この連中は、連合赤軍なんかと大差ないなと思う。
如何にマルクス主義が素晴らしい理論であったとしても、人間は理論通りには決して動かないから。
それこそ、シェイクスピアが描いたように、複雑でドロドロしている。
最後は、比較的あっさりと終わる。

Les possédés (1988) Bande Annonce VF [HD]

『妖婆 死棺の呪い』

お盆休みのブルーレイ鑑賞第二弾は、『妖婆 死棺の呪い』。

妖婆 死棺の呪い Blu-ray

妖婆 死棺の呪い Blu-ray

1967年のソ連映画
総監督はアレクサンドル・プトゥシコ
監督はコンスタンチン・エルショフとゲオルギー・クロパチョフ。
原作はニコライ・ゴーゴリ
主演はレオニード・クラヴレフ。
共演は、ナターリヤ・ワルレイ、アレクセイ・グラズィリン、ニコライ・クトゥーゾフ。
カラー、スタンダード。
不安げな音楽が流れる。
ヴィイとは人々の空想の産物である。民間に伝わる伝説だ。私は聞いたとおりに語る。脚色はしない。ゴーゴリ」という字幕。
舞台は中世ロシア。
神学校の庭にたくさんの学生達がいる。
鐘が鳴る。
校長が校舎から出て来る。
これから休暇が始まり、学生達は帰省するのだが、「帰省の途中、悪さをしないように」と釘を刺す。
学生達は、ニヤニヤしながら聞いている。
校長の話しが終わるや、学生達は一目散に散って行った。
案の定、途中でガチョウを盗んだり、若い娘を引っ掛けたり、好き放題の学生達。
こんなのが神学生とは。
哲学生のホマー・ブルート(レオニード・クラヴレフ)は、仲間と3人で故郷へ向かっていたが、道に迷ってしまう。
「野宿するしかないか」と思っていたところ、村を発見。
その家へたどり着き、中から出て来た老婆(ニコライ・クトゥーゾフ)に「家に泊めてくれ」「何か食べさせてくれ」と頼む。
しかし、老婆は「今日は何もない。暖炉も焚いていない」と答える。
とは言っても、ロシアなので、野宿なんかしたら死んでしまう。
無理矢理頼み込んで泊めてもらうが、3人は小屋や納屋にバラバラに泊められる。
ホマーは納屋に案内された。
ブタや牛やニワトリと同居である。
そこへ老婆が入って来て、ホマーに迫る。
そして、ホマーに馬乗りになる。
老婆はホウキを持っている。
やがて、魔女と共にホマーは浮かび上がる。
「こいつは魔女だ!」
空を飛びながら大暴れし、ようやく地面に着いた時、ホマーは老婆をボコボコにする。
すると、老婆の姿が美少女(ナターリヤ・ワルレイ)に変わった。
怖くなったホマーはその場から逃げ出す。
川を渡り、神学校へ戻ると、校長が呼んでいる。
「50キロ先の村の令嬢がメッタ打ちにされて瀕死の状態だ。お前に祈って欲しいと願っているから、行け」と命じられる。
そして、「途中で逃げ出すな」と念を押される。
何だか分からないが、ものすごい圧力を感じる。
ホマーは何人かの村人と一緒に馬車で送られる。
道中、何を聞いても答えない村人。
村人達が眠っているスキに逃げ出そうと試みるも、それは狸寝入りで、ギロリと睨まれて、止められる。
村人達は、ホマーのことを「哲学者先生」と呼ぶ。
如何に一般庶民にとって、神学生というのが将来の約束されたエリートだったかということだろう。
日本で言えば、旧制高校生みたいな感じだろうか。
伊豆の踊子』にそんな場面があったような。
馬車は酒場の前で停まる。
「さあ、着いたぞ。」
ホマーと村人達はウォッカで乾杯し、ベロンベロンに酔っ払う。
ウォッカは強いからな。
余談だが、缶チューハイは、タカラ缶チューハイ以外は皆、焼酎ではなくウォッカを使っている。
あれは何故なんだろう。
チューハイって、「焼酎ハイボール」の略ではないのか。
タカラ缶チューハイは気分良く酔えるのだが、他の(ウォッカが原料の)缶チューハイは必ず悪酔いする。
先日、安房鴨川に行った時、駅前のイオンにはタカラ缶チューハイが売っていなかったので、仕方なくストロング・ゼロのロング缶を買った。
3本飲んだら、次の日の朝、胃がムカムカして大変だった。
まあ、あんな安い酒だから、ウォッカと言っても、どんな程度のものか分かったもんじゃないし。
他にも、怪しい甘味料とか、何が入っているか分からん。
やっぱり、タカラ缶チューハイじゃなきゃダメだな。
ついでに、ビールはそういう心配はないが、発泡酒とか第三のビールは飲まないようにしている。
日本酒も、安いのは糖分や酸味料を混ぜているが、そういうのも飲まない。
ああ、話しが逸れた。
ロシア人はみんなウォッカだ。
で、酔っ払ったホマーは逃げようとするが、またも、村人がバルタン星人のように分身の術を使う幻覚を見たりして、逃げられない。
翌朝、村を目前にして、「お嬢様が亡くなった」という知らせが入る。
この村人達の不穏な様子を見ていると、何か知っているようではある。
が、それが何かは明かされない。
一人の村人が「ホマーを帰してやるか」と言う。
でも、逃げられない。
結局、ホマーは「この村を甘く見ないほうがいいぜ」と告げられてしまう。
亡くなった娘の父親は、遺体を前にして、「お前をこんな姿にしたのはどこのどいつだ」と嘆いている。
そこへホマーが連れられて来る。
父親とはもちろん、面識がない。
ホマーが娘の遺体を見ると、何と件の美少女ではないか。
「娘とはどういう関係だ?」
「会ったことすらありません!」
「なぜ娘はお前に祈祷を頼んだ?」
この娘は、死ぬ間際にホマーの名を挙げ、「彼は事情を知っている」と言ったらしい。
父親は、「今日から三日三晩祈ってくれ」と。
ホマーが「自分は学生なのでできない」と答えると、「いやとは言わせん」と高圧的な態度。
村人は皆が声を上げて泣いているが、どこか、金正恩が亡くなった時の北朝鮮国民のようにわざとらしい。
棺を出して、遺体安置所へ。
夕食はブタの丸焼き。
その席で、ホマーは、ミキータという若者が、この娘に誘惑されて骨抜きにされた話しを聞かされる。
実際、美少女ではある。
そして、再び遺体安置所へ。
村人達は口々にホマーに対して「気をつけて」とか「達者でな」とか言う。
でも、外からカギを掛けろという命令だと。
ホマーは一人で娘の遺体と向き合う。
一瞬、娘が血の涙を流す。
ろうそくの灯が消える。
不真面目なホマーは、祈りの途中で嗅ぎタバコを。
すると、死んだはずの娘が起き上がった。
さあ、これからどうなる?
西洋に共通しているのだろうが、この娘も、ハムレットの亡霊のように、雄鶏が鳴くと元の場所へ戻る。
本作は、コミカルな部分もあるが、クライマックスは妖怪が大量に出て来て、なかなかにコワイ。
ブルーレイのジャケットの裏には、松任谷由実のコメントが載っている。
「幼稚とも思える特殊撮影や、レトロなパントマイムが、
かえってロシアという国の持つ、
神秘的な闇の深さを運んで来る。
私にとってはどんなに最先端のホラーより
ずっとずっと怖い映画。
今観ても、本当に何かに取り憑かれそうになるのです。」
67年と言えば、『ローズマリーの赤ちゃん』の前年だが、作品の時代背景のせいもあって、かなりクラシックな趣。
昨今のホラーは、CGがウソ臭過ぎて、話しにならない。

Вий (1967) трейлер

『幸福の設計』

お盆休みには、『幸福の設計』をブルーレイで見た。

幸福の設計 ジャック・ベッケル Blu-ray

幸福の設計 ジャック・ベッケル Blu-ray

1947年のフランス映画。
監督は、『モンパルナスの灯』『穴(1960)』の巨匠ジャック・ベッケル
『モンパルナスの灯』は大人になってからブルーレイで見たが、運に恵まれない芸術家の半生に涙が出た。
『穴』は学生の頃、友人と名画座で観たが、ラストのアッと驚く大どんでん返しに息を呑んだ。
本作は、これら2本よりも以前の作品だが、これらとは違ってコメディー・タッチである。
主演はロジェ・ピゴとクレール・マフェイ。
共演は、『旅路の果て』『フレンチ・カンカン』『恋人たち(1958)』のガストン・モド。
モノクロ、スタンダード・サイズ。
哀愁の漂ったテーマ曲が流れる。
画質は良いが、音質は悪い。
舞台はパリ。
エッフェル塔のお膝元。
アントワーヌは印刷所で本の印刷や製本をして働いている。
凱旋門のお膝元では、妻のアントワネットがデパートの売り子をしている。
証明写真を撮りに来る紳士。
スピード写真が30フラン。
8分間で出来上がるという。
戦後すぐのこの時代に、既にスピード写真があったのか。
彼女は夫がもらって来た落丁本を職場の同僚で回し読みしている。
今日、持って来たのは『谷間の百合』。
バルザックか。
しかし、同僚は喜ばない。
この時代のフランスでも、既に純文学は大衆には受けなかったのだろう。
デパートのそばには宝くじ屋がある。
ここのおばさんがくれたハズレくじを、アントワネットはしおり代わりに本に挟む。
実は、これがラストへの重要な伏線。
本作は、さすが『穴』の監督だけあって、物語の伏線が実に周到に張り巡らされている。
細君は、ラストがどうなるかを途中で分かったというが。
一方、アントワーヌの同僚は3週間のバカンスを取るという。
さすがフランスだ。
日本では、3週間の休みというのは考えられない。
僕は今の会社に勤めて10年以上になるが、有休を取ったのは、親戚の葬式に出るためと、インフルエンザに罹った時だけだ。
休日出勤も平均すれば月に1~2回あるが、代休を取ったことはただの一度たりともない。
でも、別に今の勤務先がブラック企業だとは全く思っていない。
政府は「働き方改革」なんていうが、「時間になりました。はい、さようなら」みたいな心構えでは、良い仕事は出来ないと思っている。
少なくとも、我々より上の世代の日本人は皆、そう考えていると思う。
本作では、勤務中にカフェでワインを飲んでいる連中まで出て来る。
日本なら、上司に見付かったらクビだろう。
アントワーヌは自転車通勤をしている。
彼ら夫婦は、貧しい生活をしているが、自転車で通勤出来る程度の都心には住んでいるということだ。
まあ、日本とは住宅事情が違うのだろうが。
アントワネットは美人なので、あちこちで男に声を掛けられる。
客にナンパされ、しつこく追い掛けられて、地下鉄に飛び乗ったりすることもある。
アントワネットが仕事帰りに立ち寄る行き付けの食料品店。
この店の主人のロランは女好きのスケベ親父で、彼女に気がある。
彼女のために、わざわざ並んでいる野菜とは別の新鮮な商品を奥から出して来たり、サービスでサーディンの缶詰めをくれたりする。
僕は一昨日、安房鴨川のイオンで酒の肴にオイル・サーディンの缶詰めを買ったが、400円強くらいだった。
これが、今の彼女達の境遇では贅沢品のようだ。
フランスは戦敗国ではないので、生活状況は『自転車泥棒』ほどの悲壮感はないが、それでも貧しいことには変わりはない。
アントワーヌはサイドカー付きのバイクが欲しいが、憧れるだけだ。
僕が『OED』を買えないのと同じだな。
で、ロランの店の前にアントワーヌが自転車を停めていたら、店のトラックがこの自転車をひいてしまった。
前輪が変形して、使い物にならない状態。
アントワーヌがロランに抗議しても、彼は聞く耳を持たない。
ところが、そこへアントワネットがやって来て、アントワーヌが彼女の夫だと判ると、態度を豹変。
前輪は無料で代わりの物を探すし、それまでの間は、店の自転車を貸すという。
下心丸出しだな。
アントワーヌは、そのことに気付いて、心配でならない。
夫婦の暮らすアパートには洗面台がないので、手や顔は台所の流しで洗う。
僕も、学生の頃に風呂ナシのアパートに住んでいた時は洗面台などなかった。
今は普通のファミリー向けのマンションなので、付いているが。
貧しいので、食事も節約するしかない。
フランスの食卓に必須のチーズも、明日のランチのために残しておかないといけない。
背景としては、戦後の貧しい暮らしもあるが、本作のトーンは基本的に、アントワーヌとアントワネットのメロドラマである。
だから、そんなに深刻さはない。
「愛さえあれば、お金なんて」という感じである。
まあ、僕も若い頃はそう思っていたが、ある程度の歳になって来ると、余りにもお金がないのはしんどい。
で、アントワネットはちょっと性格に大雑把なところがあって、すぐにバッグなんかの置き場所を忘れる。
まあ、このことも後の重要な伏線。
アントワーヌは旧式のラジオしか持っていないので、感度を高めるために、自分で屋根上にアンテナを設置している。
彼らの隣の部屋に住むボクサーのリトンもアントワネットに気があり、旦那が屋根上に上がっている間に、窓から部屋に忍び込む。
今なら住居侵入罪で現行犯逮捕だな。
近所の夫婦が外出するからと言って、子供をアントワーヌ夫妻に預けに来る。
まだよちよち歩きのその子は、家にある活字本を、理解出来ないながらもめくっている。
子供が本好きになるためには、幼い頃から周りに本のある環境が必要だと思うが、昨今では難しくなっている。
このままでは、今の中高年がいなくなったら、紙の本はなくなってしまう。
出版業界に身を置く人間としては由々しき事態だが、これも時代の流れなのか。
休日、アントワーヌとアントワネットは仲良くサッカー観戦に出掛ける。
翌朝、アントワーヌが出勤のために起床する。
アントワネットが鍋の中を見ると、肉が一切れしかないが、旦那に食べさせる。
僕も小学生の頃、実家が貧乏だったので、朝食は一パックの納豆を家族4人で分けて食べていた時期がある。
ひもじいのは本当にツライ。
で、アントワーヌが借り物の自転車で出勤するのを、アントワネットが窓から見送る。
若い夫婦の微笑ましい風景。
そこへ、ロランが部屋まで自転車の車輪を持って来る。
花束と一緒に。
ご丁寧に、長持ちするように鉢植えだとか。
そして、「給料を弾むから、ウチの店に来ないか」と彼女を口説く。
「あなたみたいな美人に家事は似合わない」と。
まあね。
女性は美人だと、生き方の選択肢が増えてお得なのは一面の真理だ。
しかしながら、そんな気はさらさらないアントワネットは、花束を旦那に見せられないと、近所の奥さん友達にあげてしまう。
すると、その夜、その奥さんの旦那が怒鳴り込んで来る。
「ウチの嫁にこの花束をやったのは本当にあなたか?」と。
アントワネットが認めると、その奥さんは旦那をビンタ。
近所の夫婦喧嘩まで誘発してしまうなんて、本当に美人は罪だ。
そんなアントワネットを、アントワーヌは優しく追及する。
基本的に、彼は優しいんだな。
僕がこれまでに観た映画の中で最高の優男は、『ニキータ』のジャン・ユーグ・アングラードだと思うが、もちろん、そこまでではない。
で、話しは変わって、色んな物を乱雑に放り込んであるアントワネットのバッグの中から、バラバラと宝くじが出て来る。
彼女はこういうものには全く無頓着なので、アントワーヌが当選番号を調べる。
新聞を見たが、該当箇所がちょうど足の形に切り抜かれている。
靴の中敷きに使ったんだな。
新聞紙を中敷きに使ったりすると、余計に臭いそうだが。
時代だな。
で、その中敷きには宝くじの当選番号が書いてあるのだが、どうやら今手元にあるくじは、1等の当たりの様である。
しかし、1文字だけ活字がかすれて読めない。
アントワーヌは、はやる心を抑えて、近所の行き付けのカフェに出掛ける。
このカフェでは、明日、娘の結婚式だということで、老夫婦はバタバタと忙しそうだったが、何とか宝くじの当選番号のリストを見せてもらう。
果たして、傷痍軍人宝くじ、「139 800」、1等80万フランが当選ではないか!
ここまでの、アントワーヌの心の動きが、とてもよく描写されている。
見ているこちらまでドキドキする。
アントワーヌは急いで帰宅し、奥さんに報告する。
アントワーヌはバイクが欲しい。
アントワネットは暖房と洗面所付きの家が欲しい。
実際、この家には暖房がないようだ。
パリの緯度は札幌よりも北なので、冬は寒い(行ったことがないので、想像だが)。
アントワネットは、部屋の中でもコートを着ている。
アパート、バイク、スーツ、コート…。
欲しい物を、「ルージュの伝言」のように、アントワネットが口紅で鏡に書き連ねる。
ちなみに、僕は生まれてこの方、宝くじは一度も買ったことがない。
当たる確率より、外れる確率の方が遥かに高いからだ。
「いつか当たるかも」と思って買い続けると、仮に当たったとしても、それまでに費やした金額から考えると、必ず赤字になるからだ。
同様の理由で、ギャンブルも一切やらない。
得をすることよりも、損をすることがイヤなのだ。
という訳で、「もし宝くじが当たったらどうする?」なんていうことも真面目に考えたことはないのだが。
この映画を見ながら細君に聞かれたので、仕方なく、「新宿の紀伊国屋に行って、店にある辞書を全て買い占める」と答えておいた。
どうでもいい話しだが、僕は辞書マニアである。
昭和2年発行の研究社の『新英和中辞典』の初版も持っている。
我が家の辞書は全部で300冊くらいはある。
以前、飲み会で、我が家に辞書が300冊あると言うと、「300冊? 300冊?」と、2回確認された。
という訳で、僕は宝くじ当選のドキドキは一度も味わったことがないが、アントワーヌは気になって、夜中に目覚めた。
それで、置いてあった当たりくじを、本に挟む。
ただ置いておくだけでは、なくしてしまいそうだと思ったのだろう。
翌日、アントワーヌは仕事を休んで、宝くじの当選金を受け取りに行くことにした。
アントワネットは出勤し、後にアントワーヌが彼女の職場を訪ねることになっていた。
彼女が出掛けると、ロランが部屋にやって来る。
中から出て来たのは旦那の方。
一瞬たじろぐロラン。
そこへ、隣の奥さん(アントワネットの友人)が本を借りに来る。
それが、昨晩アントワーヌが宝くじを挟んだ本だったので、彼はくじを抜いてから彼女に本を渡す。
そのくじは自分の財布に入れた。
ロランは、「奥さんを店で雇いたい」とアントワーヌに申し出る。
が、宝くじは当たったし、そもそもロランのことは憎んでいるので、アントワーヌは彼を追い返す。
ついでに、店の自転車も持って行けと。
地下鉄の駅。
ここの窓口では友人のジュリエットが切符を売っている。
パリの地下鉄の窓口なので、そして、現在のように自動化されていないので、いつも忙しい。
客が次から次へとやって来る。
アントワーヌは、切符を買うために財布をポケットから取り出し、一旦カウンターに置く。
ポケットにはもう一つ、普段使わない身分証が入っており、それも飛び出したので、ポケットにしまう。
と、後ろのおばあさんがアントワーヌの財布の上に荷物を置く。
アントワーヌは急いでいたので、財布をしまわずに行ってしまう。
この一連の流れが、ロベール・ブレッソンの『スリ』のように鮮やかに描かれる。
財布は、おばあさんが荷物を持った時に床に落ち、誰かが蹴飛ばし、コート姿の見知らぬ男の足元に滑り込み、彼が拾って持って行ってしまった。
換金所が開くのは10時。
アントワーヌは傷痍軍人協会に到着した。
ところが、財布がない!
さあ、これからどうする?
この映画の結末は、フランス映画っぽくない。
非常にハリウッド映画的である。
それもそのはずで、ジャック・ベッケルアメリカ映画が好きだったのだとか。
しかし、本作にはこの時代のフランスの一般庶民の生活が実に見事に描かれている。
それに、見ていて気分が滅入る様な映画ではない。
カンヌ国際映画祭恋愛心理映画賞受賞。

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『カンタベリー物語』を原文で読む(第8回)

(テキスト9ページ、11行目~)

(The Friar)

friar(名)(托鉢(たくはつ))修道士

A Frere ther was, a wantowne and a merye,
A lymytour, a ful solempne man.

Frere→Friar
ther→there(副)(thereは形式上主語のように扱われるが、動詞の後に通例不特定のものや人を表わす主語が続く/「そこに」の意味はなく、日本語ではthere isで「~がある」の意になる)(beを述語動詞として)
wantowne→wanton(形)浮かれ騒ぐ、ふざけまわる
merye→merry(形)陽気な、笑いさざめく
lymytour→limitour(托鉢の縄張り特権を持った托鉢僧)
ful→full(副)(形容詞・副詞を修飾して)まったく、非常に
solempne→solemn(形)厳粛な、まじめな、重々しい、荘重な、荘厳な、謹厳な
man(名)(修飾語を伴って)(特定の仕事・性格などの)男性

In alle the ordres foure is noon that kan
So muche of daliaunce and fair langage.

in(前)(全体との関係を表わして)~の中で、~のうちで
alle→all(形)(複数名詞の前に置いて)あらゆる、すべての、みな
ordres→orders
order(名)(カトリックなどの)修道会
foure→four(形)(基数の4)4の、4個の、4人の
noon→none(代)だれも~ない
that(代)(関係代名詞)(人・ものを表わす先行詞を受けて通例制限用法で)(~する(である))ところの/(主語として)
kan→knows
so(副)(程度を表わして)それ(これ)ほど、そんな(こんな)に、これくらい
muche→much(代)(単数扱い)(通例否定・疑問文で)多量、たくさん(⇔little)(of)
of(前)(分量・内容を表わして/数量・単位を表わす名詞を前に置いて)~の
daliaunce→dalliance(名)戯れ、ふざけ、いちゃつき
fair(形)もっともらしい、言葉上手だが誠実みのない ・fair words もっともらしい言葉
langage→language(名)語法、文法、言葉づかい、言い回し ・fine language 美しく飾った言い回し、美文体

He hadde maked ful many a mariage
Of yonge wommen at his owene cost.

hadde→had
maked→made
make(他)(目的語に動作名詞を伴って、動詞と同じ意味をなして)(~を)する、行なう(同じ意味の動詞より、この表現のほうが1回だけの行為であることが強調される)
many(形)(many aに単数形の名詞・動詞を伴って/単数扱い)数々の、多数の
marriage(名)結婚(of)
of(前)(目的格関係を表わして)(しばしば動作名詞または動名詞に伴って)~を、~の
yonge→young
wommen→women
at(前)(数量・代価・費用を表わして)~で
his(代)彼の
owene→own

Unto his ordre he was a noble post.

unto(前)(古)=to(前)(行為・作用の対象を表わして)~にとっては、~には
noble(形)称賛に値する、りっぱな
post(名)柱、標柱、くい

Ful wel biloved and famylier was hee
With frankeleyns over al in his contree,
And eek with worthy wommen of the toun;
For he hadde power of confessioun,
As seyde hymself, moore than a curaat,
For of his ordre he was licenciaat.

full(副)(full wellで)非常に
biloved→beloved(形)(~に)愛されて
famylier→familiar(形)(人が)親しい、心安い(with)
hee→he
with(前)(接触・交際・結合などを表わして)~と
frankeleyns→franklin(名)(14-15世紀ごろの)自由保有地主、郷士
over al→overall(副)端から端まで
contree→country(名)(ある広い)地域
eek→eke(副)(古)また、さらに、そのうえ
worthy(形)尊敬すべき、りっぱな
for(接)(通例コンマやセミコロンを前に置いて、前文の付加的説明・理由として)という訳は~だから(=as、since)
have(他)(部分・属性として)(特徴・性質・能力などを)もっている ・have the authority 権限がある ・She has a sweet voice. 彼女は美しい声をもっている。(この構文では「彼女は美しい声をしている」「彼女は声が美しい」と訳すことができる)
power(名)権限、職権(of) ・have the power 権限がある
confessioun→confession(名)告解
as(代)(関係代名詞)(前後の主節全体を先行詞として、非制限的に用いて)それは~だが
seyde→said
hymself→himself(代)(強調に用いて)(he、himの代わりに用いて)
moore→more
more than ~ ~より多い、~を越える
curaat→curate(名)教区牧師
of(前)(分離・剥奪を表わして)(形容詞とともに用いて)~から
licenciaat→licenciate/licensed(形)認可された、免許を受けた

Ful swetely herde he confessioun,
And plesant was his absolucioun.

swetely→sweetly(副)<sweet(形)優しい、親切な
herde→heard
plesant→pleasant
absolucioun→absolution(名)赦免(しゃめん)

He was an esy man to yeve penaunce,
Ther as he wiste to have a good pitaunce.

esy→easy(形)容易な、平易な、やさしい(⇔difficult、hard)(+to do)
yeve→give(他)(人に)(薬・治療などを)与える、施す
penaunce→penance(名)告解の秘跡(ひせき)
as(接)(時を表わして)~している時、~したとたんに
wiste→wist(動)(古)witの過去形・過去分詞
wit(他)(古)知る、知っている
have(他)(~を)得る、もらう、受ける
good(形)(強意語として)(通例a ~)十分な
pitaunce→pittance(名)(修道院などの)寄進、施し

For unto a povre ordre for to yeve
Is signe that a man is wel yshryve;
For if he yaf, he dorste make avaunt,
He wiste that a man was repentaunt;
For many a man so hard is of his herte,
He may nat weepe, thogh that he soore smerte.

unto(前)(古)~に、~のほうへ、~まで
povre→poor
signesign(名)(徴証となるような)表れ、しるし(=indication、token)
that(接)(名詞節を導いて)(~)ということ/(同格節を導いて)(thatを略すことはない)/(目的語節を導いて)
man(名)(男女を問わず一般に)人、人間
wel→well(副)十分に、よく(=thoroughly)
yshryve→shriven(動)shriveの過去分詞
shrive(他)(古)(shrive oneself)司祭に告白する
yaf→gave
dorste→dared
dare(助動)(否定・疑問・条件文に用いて)あえて~する、思い切って(恐れずに、生意気にも)~する
avaunt(名)自慢
repentaunt→repentant(形)後悔している
so(副)(程度・結果を表わして)(so ~ that ~で)(順送りに訳して)非常に~なので~
hard(形)無情な、冷酷な ・a hard heart 無情
of(前)(関係・関連を表わして)~の点において、~に関して、~について
herte→heart(名)(感情、特に優しい心・人情が宿ると考えられる)心、感情
may(助動)(妥当性や可能を表わして)~できるかもしれない、~できよう
nat→not
weepe→weep(自)(涙を流して)泣く
thogh that→though(接)たとえ~でも、よし~にせよ
soore→sore(副)(古)ひどく、はなはだしく、いたく
smerte→smart(自)(~で)心が痛む、悩む

Therfore in stede of wepynge and preyeres
Men moote yeve silver to the povre freres.

Therfore→Therefore
therefore(副)それゆえに、従って、それ(これ)によって(=consequently)
in stede→instead
instead of ~(前置詞的に)~の代わりに
wepynge→weeping
preyeres→prayers
prayer(名)(複数形で)(学校や個人の)礼拝
moote→must
silver(名)銀貨
to(前)(行為・作用の対象を表わして)(間接目的語に相当する句を導いて)
freres→friars

His typet was ay farsed ful of knyves
And pynnes, for to yeven faire wyves.

typet→tippet(名)(もと)フード(帽子、肩マント、袖など)からたれる細長い布
ay(副)=aye(副)(古)常に、いつも(=ever、always)
farsed→farced
farce(他)(廃)(ガチョウなど)に詰め物をする
of(前)(形容詞に伴って)~を
knyves→knives
pinnes→pins
pin(名)ピン、まちばり
for(前)(目的・意向を表わして)~のために、~を目的として
yeven→give
faire→fair(形)(古)(女性が)美しい
wyves→wives
wife(名)女

And certeynly he hadde a murye noote:

certeynly→certainly
murye→merry
noote→note(名)声音(こわね)

Wel koude he synge and pleyen on a roote;
Of yeddynges he bar outrely the prys.

well(副)上手に、うまく
koude→could
synge→sing
pleyen→play(自)(人が)演奏する、吹奏する、弾く
on(前)(方法・手段・器具を表わして)~で、~によって ・play a waltz on the piano ピアノでワルツをひく
roote→rote(名)クルース(=crwth)
crwth(名)クルース(=crowd)(古代ケルト人の弦楽器)
yeddynges→yeddings/ballads
ballad(名)物語詩
bar→carried
carry(他)(受身不可)(人の)支持(賛同)を得る
outrely→utterly(副)まったく、全然、すっかり(=totally)
prys→price/reputation(名)評判、世評

His nekke whit was as the flour-de-lys;
Therto he stroong was as a champioun.

nekke→neck
whit→white
as(接)(様態・状態を表わして)~のように
flour-de-lys→lily(名)ユリ(キリスト教ではユリは純潔の象徴であり、Easterにはキリスト復活のしるしとして用いられる/また葬儀の花でもある)
Therto→Thereto
thereto(副)なおそのうえに
stroong→strong
champioun→champion(名)(昔の)戦士

He knew the tavernes wel in every town
And every hostiler and tappestere
Bet than lazer or a beggestere,
For unto swich a worthy man as he
Acorded nat, as by his facultee,
To have with syke lazers aqueyntaunce.

tavernes→taverns
tavern(名)居酒屋、バー
well(副)親しく、親密に ・I don't know her very well. 私は彼女をあまりよく知りません。
in(前)(場所・位置・方向などを表わして)~において、~で ・in London ロンドンで(に)
hostiler→hosteler(名)宿の主
tappestere→tapster(名)(酒場の)給仕人(女)、バーテン
Bet→Better
better(副)(wellの比較級)いっそう大いに、もっと(than)
lazer→lazar(名)(古)病気の乞食、(特に)らい病やみ(の乞食)
beggestere→beggar(名)こじき(=panhandler)
swich→such
Acorded→Accorded
accord(自)(~と)一致(調和、和合)する
by(前)(判断の尺度・標準を表わして)~によって、~に従って
facultee→faculty(名)(ある特定のことをする)能力、才能
syke→sick
aqueyntaunce→acquaintance(名)知っていること、面識、なじみ ・have acquaintance with ~を知っている

It is nat honeste, it may noght avaunce,
For to deelen with no swich poraille,
But al with riche and sellerys of vitaille.

it(代)(形式主語としてあとにくる事実上の主語の不定詞句・動名詞句・that節などを代表して)
honeste→honest/honorable(形)光栄ある、名誉な
noght→not
avaunce→advantage(自)利益を得る
deelen→deal(自)(人・会社と)取引する(with)
poraille→porail/poor people
al→all(副)まったく、すっかり
riche→rich(形)(the ~/名詞的に/複数扱い)金持ち(⇔the poor)
sellerys→sellers
seller(名)売り手、販売人(=vendor/⇔buyer)
vitaille→victuals
victual(名)(複数形で)食物、食料

And overal, ther as profit sholde aryse,
Curteys he was and lowely of servyse;
Ther was no man nowheer so vertuous.

overal→overall(副)いたるところに
profit(名)(金銭上の)利益、利得、もうけ(⇔loss)
sholde→should(助動)(仮定法で)(可能性・期待を表わして)きっと~だろう、~のはずである
aryse→arise(自)(問題・困難などが)起こる、発生する(=occur)
Curteys→Courteous
courteous(形)礼儀正しく思いやりのある、丁重な
lowely→lowly(形)謙虚な
servyse→service(名)奉仕
nowheer→nowhere(副)どこにも~ない
vertuous→virtuous(形)(古)有効な、効力(効能)のある(=potent、efficacious)

He was the beste beggere of his hous;
(And yaf a certeyn ferme for the graunt;
Noon of his brethren cam ther in his haunt;)
For thogh a wydwe hadde noght a sho,
So plesant was his “In principio,”
Yet wolde he have a ferthyng, er he wente.

beste→best
beggere→beggar(名)寄付募集員
of(前)(部分を表わして)~の中の
hous→house(名)(居住用の)教団建物、修道院
certeyn→certain(形)(ある)一定の
ferme→farm(名)(廃)(税・賃料などで)定期的に払う一定の額
for(前)(獲得・追求・期待の対象を表わして)~を得るために(の)、~を(求めて)
graunt→grant/privilege(名)(官職などに伴う)特権、特典、特別扱い
none(代)(none of ~で)(~の)いずれも(だれも、何一つ)~ない
brethren→brothers
brother(名)同じ仲間の男、同僚
cam→came
haunt(名)(動物などの)よく出る所、生息地、(犯人などの)巣、根城
thogh→though
wydwe→widow(名)未亡人、寡婦(かふ)
sho→shoe(名)(通例複数形で)靴(bootと区別してくるぶしまでの靴、短靴をさすことがある)
In principio→In the beginning
yet(接)(although、thoughと相関的に用いて)それでも
wolde→would(助動)(過去の習慣・動作などの反復についての回想を表わして)~だったろう
ferthyng→farthing(名)ファージング(英国の小青銅貨/1/4 penny/1961年廃止)
er→ere(古)(接)~する前に、~しないうちに
wente→went

His purchaas was wel bettre than his rente.

purchaas→purchase/gain(名)(複数形)収益(金)、利益
well(副)(able、aware、worthなどの叙述形容詞の前に置いて)かなり、十分に
bettre→better(形)(goodの比較級)(~より)いっそうよい(than)(⇔worse)
rente→rent(名)(廃)収益、収入

And rage he koude, as it weere right a whelp.

rage→romp(自)(通例副詞句を伴って)(子供などが)はね(跳び)回る、ふざけ回る、遊び戯れる
weere→were
as it were(挿入句的に用いて)いわば、まるで
right(副)ちょうど、まさしく、きっかり
whelp(名)犬の子、犬ころ

In love-dayes koude he muchel help,
For there he was nat lyk a cloystrer
With a threedbare cope, as is a povre scoler,
But he was lyk a maister or a pope.

in(前)(時間を表わして)~(のうち)に、~の間、~中 ・in the evening 晩に
love-dayes→love-days
loveday(名)(廃)(論争解決のための)会合の日
muchel→much(副)(動詞を修飾して)おおいに、たいそう、非常に
help(自)役に立つ、足しになる
lyk→like
cloystrer→cloister(名)修道僧(女)
with(前)(所持・所有を表わして)~を持って(た)、~のある
threedbare→threadbare(形)(布・衣類が)すれて糸の見える、すり切れた(=worn) ・a threadbare overcoat すり切れたコート
cope(名)コープ(聖職者のマント形の大きな外衣)
as(代)(関係代名詞)(前の主節の一部を先行詞として、非制限的に用いて)~もそうであるように
scoler→scholar(名)(特に人文科学の分野の)学者
maister→master(名)(宗教的・精神的な)指導者
pope(名)ローマ教皇(法王)

Of double worstede was his semycope,
And rounded as a belle out of the presse.

of(前)(材料を表わして)~で(作った)、~から(成る)
double(形)二つ折りの、二枚重ねの、二度塗りの(など)
worstede→worsted(名)毛織物、ウーステッド
semycope→semicope
semi-(接頭)「半~/~の半分」
rounded(形)(体など)丸い形の、丸みを帯びた(=curred)
belle→bell(名)鐘、釣り鐘
out of(前)(起源・出所を表わして)~から、~からの
presse→press(名)押し型

Somwhat he lypsed, for his wantownesse,
To make his Englyssh sweete upon his tonge;
And in his harpyng, whan that he hadde songe,
Hise eyen twynkled in his heed aryght
As doon the sterres in the frosty nyght.

Somwhat→Somewhat
somewhat(副)やや、いくぶん、多少
lypsed→lisped
lisp(自)舌足らずに発音する
for(前)(原因・理由)~の理由で、~のため(=because of)
wantownesse→wantonness/affectation(名)気取り
make(他)(~を)(~に)する(+目+補)
Englyssh→English(名)英語
sweete→sweet(形)(音・声が)調子のよい、甘美な
tonge→tongue(名)舌
in(前)(行為・活動・従事を表わして)~して、~に従事して
harp(自)ハープをひく
whan that→when(接)~する時に、~時(時を表わす副詞節をつくる)
songe→sung
Hise→His
eyen→eyes
twynkled→twinkled
twinkle(自)(目が)(~で)輝く、きらきら光る
heed→head
aryght→aright(副)正しく
doon→do(自)(代動詞としてbe以外の動詞の反復を避けるのに用いて)(同一の動詞およびそれを含む語群の反復を避けて)
sterres→stars
frosty(形)霜の降りる(ような)
nyght→night

This worthy lymytour was cleped Huberd.

lymytour→limiter/friar
cleped→called
call(他)(人を)(~と)呼ぶ、称する(+目+補)
Huberd(名)ヒューバード(男性名)
【参考文献】
原文対訳「カンタベリィ物語・総序歌」』苅部恒徳、笹川寿昭、小山良一、田中芳晴・編・訳・注(松柏社
カンタベリー・テールズ市河三喜、松浪有・編注(研究社)
新英和中辞典 [第7版] 並装』(研究社)
リーダーズ英和辞典 <第3版> [並装]』(研究社)
リーダーズ・プラス』(研究社)
新英和大辞典 第六版 ― 並装』(研究社)

『ヴェニスの商人』を原書で読む(第4回)

(テキスト6ページ、1行目~)

SALERIO My wind cooling my broth
Would blow me to an ague when I thought
What harm a wind too great might do at sea.
I should not see the sandy hour-glass run
But I should think of shallows and of flats,
And see my wealthy Andrew docked in sand,
Vailing her high-top lower than her ribs
To kiss her burial. Should I go to church
And see the holy edifice of stone
And not bethink me straight of dangerous rocks,
Which touching but my gentle vessel's side
Would scatter all her spices on the stream,
Enrobe the roaring waters with my silks,
And in a word, but even now worth this,
And now worth nothing? Shall I have the thought
To think on this, and shall I lack the thought
That such a thing bechanced would make me sad?
But tell not me; I know Antonio
Is sad to think upon his merchandise.

Salerio(名)サレリオ(Shakespeare, The Merchant of Venice中の、AntonioとBassanioの友人の一人)
my(代)私の
wind(名)(通例one's ~)気息、呼吸
cool(他)(~を)冷やす
broth(名)(だしに野菜などを加えた)薄いクリアスープ
would(助動)(仮定法(叙想法)で用いて)(条件節の内容を言外に含め陳述を婉曲(えんきょく)にして)~であろう、~でしょう
blow(他)(通例副詞句を伴って)(~を)吹き飛ばす
to(前)(限度・程度・結果などを表わして)~に至るまで、~するほどに
ague(名)悪寒(おかん)
when(接)~ならば、~とすると
think(他)(どうしようかなどと)よく考える、思いめぐらす(+wh.)
what(形)(疑問形容詞)何の、何という、どんな、いかほどの
harm(名)(精神的・肉体的・物質的な)害、傷害、危害(=injury)
too(副)(形容詞・副詞の前に置いて)~すぎる
might(助動)(仮定法過去)(現在の仮定や仮定の結果を表わす節で)(現在の推量を表わして)~するかもしれない(のだが)
do(他)(~に)(利益・損害などを)与える、もたらす
at sea 海上に(で)
should(助動)(仮定法で)(可能性・期待を表わして)きっと~だろう、~のはずである
see(他)(~を)、(~が)見える(+目+原形)/(+目+過分)
sandy(形)砂の、砂質の
hourglass(名)(特に1時間用の)砂時計、水(水銀)時計、漏刻
run(自)(砂時計の砂が)こぼれる
but(接)(従位接続詞)(否定文のあとで)(しばしばbut thatで否定の主節に対して条件節を導いて)~しないなら、~でなければ(前から訳すと「(~すれば)必ず~(する)」になる)
think of ~ ~のことを考える
shallow(名)(複数形で/通例the ~)浅瀬、洲(す)
of(前)(関係・関連を表わして)~の点において、~に関して、~について
flat(名)平洲(ひらす)、干潟(ひがた)
wealthy(形)豊富な、たくさんな
Andrew(名)アンドルー(男性名/愛称Andy)
dock(自)(船が)ドック(船渠)に入る
vail(古)(他)(敬意・服従を示して)(帽子などを)脱ぐ、取る、下げる
her(代)彼女の
high-top=topmast(名)トップマスト(下檣(かしょう)の上に継ぎ足した帆柱)
low(副)低く
rib(名)(船舶)肋財
kiss(他)(~に)キスする、くちづけ(接吻(せっぷん))する
burial(名)埋葬地、墓
should(助動)(条件節に用いて実現の可能性の少ない事柄に対する仮定・譲歩を表わして)万一(~ならば、~しても)、もしかして~ということでもあれば(あっても)
to(前)(到達の意を含めて)~まで、~へ、~に ・go to ~に行く
church(名)(キリスト教の)教会(堂)、聖堂
holy(形)神聖な、聖なる
edifice(名)(宮殿・教会など堂々とした)建物
of(前)(材料を表わして)~で(作った)、~から(成る)
stone(名)石材、石 ・a wall of stone 石の壁
bethink(他)(bethink oneselfで)(~を)よく考える、熟考する(of)
straight(副)(古)直ちに
of(前)(関係・関連を表わして)~の点において、~に関して、~について
rock(名)(しばしば複数形で)岩礁、暗礁
which(代)(関係代名詞)(非制限的用法で/通例前にコンマが置かれる)(主格・目的格の場合)そしてそれは(を)
touch(他)(ものが)(ものと)接触する(している)
but(副)ただ、ほんの、~だけ
gentle(形)(態度など)もの柔らかな、上品な
vessel(名)(通例ボートより大型の)船
side(名)(前後・上下以外の)側面、横、わき
would(助動)(仮定法(叙想法)で用いて)(現在または未来の事柄について帰結節で無意志の仮定を表わして)~(する)だろう
scatter(他)(~を)まく、まき散らす
all(形)(複数名詞の前に置いて)あらゆる、すべての、みな
spice(名)(集合的にも用いて)香辛料、香料、スパイス(pepper、cinnamon、nutmeg、mace、ginger、clovesなど)
stream(名)(特に、小川の)流れ、流水
enrobe(他)(~に)ローブなどを着せる、まとわせる
roaring(形)ごうごういう
water(名)(複数形で)海
with(前)(材料・中身を表わして)~で
silk(名)絹布、絹織物
in a word ひと言で言えば、要するに(=in short)
even(副)(同時性などを強めて)まさに、ちょうど(=just)
worth(形)財産が~の、~だけの財産を持って
this(代)(指示代名詞)(すぐ前に言われたことをさして)こう、こういう、このこと
have(他)(感情・考えなどを)(心に)抱いている
thought(名)思いつき(+that) ・have a thought 思いつく
think(自)考える
on(前)(関係を表わして)~について、~に関する
lack(他)(~を)欠く、(~が)ない
that(接)(名詞節を導いて)(~)という/(同格節を導いて)(thatを略すことはない)
thing(名)(無形の)こと、事(柄)、事件
bechance(古)(自)生ずる
make(他)(~を)(~に)する(+目+補)
sad(形)悲しそうな、ふさぎ込んだ、憂鬱(ゆううつ)な
Antonio アントーニオー(Shakespeare, The Merchant of Veniceに登場する青年貿易商)
his(代)彼の
merchandise(名)商品(全体)

ANTONIO
Believe me, no. I thank my fortune for it
My ventures are not in one bottom trusted,
Nor to one place; nor is my whole estate
Upon the fortune of this present year.
Therefore my merchandise makes me not sad.

believe me(挿入的に用いて)本当に、確かに
no(副)(相手の肯定の陳述に応答して)いいえ
fortune(名)幸運
for(前)(原因・理由)~の理由で、~のため(=because of)
it(代)(形式目的語としてあとにくる事実上の目的語の不定詞句・動名詞句・that節などを代表して)
venture(名)冒険的事業、投機的企業、ベンチャー(特に事業で金銭上の危険をかけた行為にいう)
bottom(名)船舶
trust(他)(大事な物事を)(人に)委託する、預ける、任せる(to)
estate(名)財産、遺産
on(前)(基礎・原因・理由・条件などを表わして)~に基づいて、~による
fortune(名)運
this(形)(指示形容詞)(たった)今の、現在の、今~、当~(しばしば時を示す名詞を伴って副詞句をなす) ・this year 今年
present(形)(the ~、one's ~)現在の、現~、今の、今日の
therefore(副)それゆえに、従って、それ(これ)によって(=consequently)

SOLANIO
Why then you are in love.

why(間)(意外なことの発見・承認などの際の発声として)あら!、おや!、まあ!
then(副)(通例文頭または文尾に用いて)それなら、(それ)では
be in love ほれている、恋している

ANTONIO Fie, fie!

fie(間)(軽蔑・不快・非難を表わして)えーい!、ちぇっ!

SOLANIO
Not in love neither? Then let us say you are sad
Because you are not merry; and 'twere as easy
For you to laugh and leap and say you are merry
Because you are not sad. Now by two-headed Janus,
Nature hath framed strange fellows in her time:
Some that will evermore peep through their eyes
And laugh like parrots at a bagpiper,
And other of such vinegar aspect
That they'll not show their teeth in way of smile
Though Nestor swear the jest be laughable.

not(副)(述語動詞・文以外の語句を否定して)~でなく
in(前)(状態を表わして)~の状態に(で)
love(名)(異性に対する)恋愛、恋
neither(副)(neither ~ nor ~で相関接続詞的に用いて)~も~もどちらも~ない(しない)
let(他)(通例let's、時にlet usで勧誘・提案を表わして)~しよう(ではないか)
because(接)(副詞節を導いて)(なぜなら)~だから(である)、~なので
'twere(古)it were(=it would be)の短縮形
it(代)(形式主語としてあとにくる事実上の主語の不定詞句・動名詞句・that節などを代表して)
as(副)(通例as ~ as ~で、形容詞・副詞の前に置いて)(~と)同じ程度に、同様に、同じくらい(as ~ as ~で前のasが指示副詞、後のasは接続詞)
for(前)(不定詞の主語関係を示して)~が(~する)
leap(自)(通例副詞句を伴って)跳ぶ、はねる、跳躍する
now(副)(接続詞的に、話題を変える時などに文頭で用いて)さて、ところで、では
by(前)(誓言・祈願を表わして)(神)のみ名にかけて、(神)に誓って
two-headed(形)両頭の
Janus(名)ヤヌス(頭の前と後ろに顔をもった神/物事の初めと終わりをつかさどり、戸口・門を守護した)
nature(名)(無冠詞/しばしばNature)自然、天然(しばしば擬人化して女神扱い)
hath(動)(古)haveの直説法3人称単数現在形/・he hath=he has
frame(他)作る、形づくる
fellow(名)(通例修飾語を伴って)男、やつ
in(前)(時間を表わして)~(のうち)に、~の間、~中
time(名)(one's ~)(人の)一生
some(代)人(もの)によると、~の人(もの)(もある)(しばしば後に対照的にothersまたはsomeを用いる)
that(代)(関係代名詞)(人・ものを表わす先行詞を受けて通例制限用法で)(~する(である))ところの/(主語として)
will(助動)(人の反復行為・習慣を表わして)よく~する
evermore(副)常に、いつも
peep(自)のぞき見する、のぞく(=peek) ・peep through ~からのぞき見する
their(代)彼ら(彼女ら)の
laugh at ~ ~を見て(聞いて)笑う
parrot(名)オウム
bagpiper(名)<bagpipe(名)バグパイプスコットランド高地人が愛用する皮袋で作った楽器)
other(代)(通例複数形で)ほかのもの、ほかの人たち、他人
such(形)(程度を表わして)(such ~ thatで)非常に~なので
vinegar(名)(表情・態度などの)気難しさ、不機嫌
aspect(名)(またan ~)(人の)顔つき、容貌(ようぼう)
that(接)(副詞節を導いて)(such ~ thatの形で程度・結果を表わして)(非常に)~なので、~(する)ほど
they'll they willの短縮形
show one's teeth 歯をむき出す
in(前)(方法・形式を表わして)~で、~をもって ・in this way この方法で、こうやって
way(名)やり方、手段(of) ・in this way このように(して)
smile(名)ほほえみ、微笑
Nestor(名)ネストル(Homer作Iliad中の老齢の知将)
swear(他)(~であると)断言する、確かに(~であると)言える(+that)
jest(名)冗談、しゃれ
laughable(形)おかしい、おもしろい

Enter Bassanio, Lorenzo, and Gratiano

enter(自)(Enterで)(演劇)登場する(脚本のト書きでしばしば3人称命令法で用いる/⇔exit) ・Enter Hamlet. ハムレット登場。
Bassanio バサーニオ(Shakespeare, The Merchant of Veniceに登場する青年/Portiaに求婚する)
Lorenzo ロレンゾ(男子名)
Gratiano グラシアーノ(Shakespeare, The Merchant of Venice中の、AntonioとBassanioの友人の一人でおしゃべりな男/Portiaの侍女Nerissaと結婚する)

Here comes Bassanio your most noble kinsman,
Gratiano, and Lorenzo. Fare ye well;
We leave you now with better company.

here(副)(文頭に用いて)(特に相手の注意を引くために用いて)ほらここに(へ) ・Here comes John. ほらジョンが(こっちへ)やってきたよ。
your(代)あなた(たち)の、君(ら)の
most(副)(通例theを用いないで)はなはだ、非常に
noble(形)高貴の(=aristcratic/⇔base)
kinsman(名)血族(親戚)の男
fare(自)(well、badlyなどの様態の副詞を伴って)(人が)(よく、まずく)やっていく、暮らす(=get on) ・Fare you(thee)well!(古)さらば!
ye(代)(古)なんじらは(が)(2人称代名詞thouの複数形)
well(副)裕福に、安楽に ・live well 裕福に暮らす
leave(他)(もの・ことを)(~に)託す、預ける(with)
with(前)(処置・関係の対象を導いて)~に対して、~について、~にとっては
company(名)(時に複数扱い)仲間、連れ、一緒に過ごす人
【参考文献】
The Merchant of Venice (Penguin classics) (English Edition)
新訳 ヴェニスの商人 (角川文庫)河合祥一郎・訳
ヴェニスの商人 (対訳・注解研究社シェイクスピア選集 (3))』大場建治・編注訳(研究社)
新英和中辞典 [第7版] 並装』(研究社)
リーダーズ英和辞典 <第3版> [並装]』(研究社)
リーダーズ・プラス』(研究社)
新英和大辞典 第六版 ― 並装』(研究社)