『新・猿の惑星』

この週末は、ブルーレイで『新・猿の惑星』を見た。

1971年のアメリカ映画。
監督は、『オーメン2/ダミアン』のドン・テイラー
主演は、『史上最大の作戦』『クレオパトラ』『猿の惑星』『ポセイドン・アドベンチャー』『猿の惑星・征服』『最後の猿の惑星』のロディ・マクドウォール
共演は、『猿の惑星』『続・猿の惑星』のキム・ハンター、『追憶』『ダーティハリー3』のブラッドフォード・ディルマン、『史上最大の作戦』のサル・ミネオ、『普通の人々』『ブレードランナー』のM・エメット・ウォルシュ、『猿の惑星・征服』のリカルド・モンタルバン。
音楽は、『猿の惑星』『パットン大戦車軍団』『トラ・トラ・トラ!』『パピヨン』『チャイナタウン』『カサンドラ・クロス』『オーメン』『エイリアン』『スタートレック』の巨匠ジェリー・ゴールドスミス
猿の惑星』シリーズの3作目である。
僕が本作を初めて見たのは、中学生の時、KBS京都というマイナー放送で、『猿の惑星』シリーズ5本を一挙に放映した時だった。
その後、DVDでも見たので、今回がおそらく3回目。
猿の惑星』はSF映画史上に残る傑作で、特に衝撃的なラスト・シーンが有名。
『続・猿の惑星』は、「地球消滅」という、1作目とは別の意味で衝撃的な結末。
普通なら、さすがにもう続編は作れないはずだが、商魂たくましい20世紀フォックスは、「過去に戻る」という必殺技を使って、更に続きを作った。
時は1973年。
海に浮いているロケットの残骸から始まる。
ヘリや軍隊が出動し、3人の乗組員を救助する。
彼らがヘルメットを取ると…何と、それはサルだった。
出だしはいいね。
サスペンス・タッチのテーマ曲。
コーネリアスロディ・マクドウォール)、ジーラ(キム・ハンター)、マイロ博士(サル・ミネオ)の3匹のサル達は檻に入れられた。
持って来た服に着替え、オレンジを差し入れると、ナイフとフォークで食べる。
到底、サルとは思えない。
彼らは動物病院に送られ、ゴリラの隣の檻に入れられる。
ここで、未来の地球は破壊され、直前に脱出したサル達は過去の地球へ到着したということが明かされる。
サルは、未だ口をきけない時代である。
動物学者のルイス・ディクソン博士(ブラッドフォード・ディルマン)と女医ステファニーが到着し、サル達の知能検査をする。
その時、サル達がしゃべった。
驚くルイス達。
ここで、隣の檻のゴリラが暴れ出し、マイロ博士の首を絞めて殺してしまう。
どうでもいいが、このシーンのゴリラは着ぐるみ丸出しである。
大統領がサルの査問委員会を開くことになった。
サルのことは世界中でニュースになる。
日本語のテレビ・ニュースも出て来るが、これを見ている茶の間は、明らかにヘンである。
一体いつの時代だ?
コ―ネリアスとジーラは、互いの手を鎖でつながれて、委員会に呼ばれる。
しゃべるサルに、委員会は騒然となる。
未来の世界では、人間とサルの関係が、今と逆転していると説明。
つまり、これは第1作の、ちょうど「裏返し」なんだな。
サル達が「未来から来た」というのを、委員会の面々は信じられないが、他に説明のしようもない。
「地球が爆発するのを宇宙船から見た」とサル達は言う。
まあ、厳密には、過去へのタイム・トラベルというのは出来ないのだが。
それを言ってしまうと、この話しが成り立たなくなる。
サルの宇宙飛行士は、一躍人気者になった。
檻からホテルへ移され、市内観光も許される。
豪華なホテルの部屋。
完全なVIP待遇である。
ジーラは、ウーマンリヴの講演で拍手を浴びる。
コ―ネリアスは、ボクシングを観戦して、「動物的だ」と漏らす。
この辺は、ちょっとサルの目から見た社会風刺も入っていて、面白い。
ジーラは、博物館でゴリラの剥製を見て、倒れる。
彼女は妊娠していた。
ジーラが実は何か隠しているのではないかとにらんだ大統領顧問のハスライン博士は、ホテルで彼女にワインを飲ませ、未来のサルと人間との戦争のことを聞き出す。
彼は、秘かにジーラの発言を録音していた。
「あのサルは危険です」と大統領に進言するハスライン博士。
この大統領が、ちょっと信じられないくらいリベラル派なんだなあ。
何か、政治家に遠慮でもしたのか。
それとも、監督が民主党支持だったのか。
で、「サル達は重大な情報を隠している」として、CIAによる尋問が行われることになった。
ハスラインは、ジーラに催眠術を掛けて、真実を聞き出した。
未来社会では、犬や猫が伝染病で死に絶え、人間はサルをペットにするようになる。
サルは2世紀足らずで言葉を覚え、人間の奴隷になる。
しかし、彼らはついに立ち上がり、人間に対して「No!」と言う。
革命の話しは感動的なのだが、シリーズの後の作品で描かれていること微妙に異なる。
委員会は、胎児を堕ろし、2匹のサルから生殖能力を奪うという結論を出す。
リベラルな大統領は反対するんだけどね。
この作品には、キリスト教的な価値観が出て来る。
この後も、重要な登場人物が「運命は変えられない」と言う。
本シリーズは、最後に見事に運命を変えてしまうのであるが。
で、身の危険を感じたコ―ネリアスとジーラは脱走する。
この時に、誤って人を一人、殺してしまった。
さあ、彼らの運命や如何に。
本作は、サルの特殊メイク以外、特撮らしい特撮がほとんどない。
「特撮のないSF」なんて、CG全盛の昨今では考えられないだろう。
まあ、回を追う毎に製作費が削られて、アイデア勝負になったのだろうが。
「過去に戻る」というのは、苦肉の策とは言え、脚本はうまく作られている。
しょぼいと言えばしょぼいのだけれども、それなりに面白い作品ではある。
ラストは、『オーメン』と一緒。