『極北のナヌーク』

連休中は、ブルーレイで『極北のナヌーク』を再見した。

1922年のアメリカ映画。
何と、『戦艦ポチョムキン』(1925年)よりも前の映画である。
もちろん、サイレント。
恥ずかしながら、僕は前回(2019年2月)ブルーレイで見た時まで、本作のことを知らなかった。
が、こんな古典を自宅で見られるとは、いい時代になったもんだ。
監督は、「ドキュメンタリー映画の父」と呼ばれるロバート・フラハティ
本作は、ドキュメンタリーという体裁だが、実際には、演出もかなりあるらしい。
例えば、本作では銛を使って狩りを行なうが、実際には、この時代のイヌイットは既に銃で狩りを行なっていた。
ナヌークの二人の妻は、監督の内縁の女性が演じた。
有名なのは、イグルー(雪で作った小屋)の内部を撮影するのに、当時のカメラでは光量が足りなかったため、半円形のイグルーを作り、外から撮影したことである。
従って、現在の概念では、ドキュメンタリーとは呼び難いものである。
川口浩探検隊』のようなものかも知れない。
だが、本作の迫真性は、100年近く経った今でも、全く失われていない。
カラーだったら、現在、深夜のNHKで流れていても、違和感がないほどの完成度だ。
後半、生々しいアザラシの解体シーンもある。
現在なら、残酷描写があるとして「R指定」になるだろう。
本作を見ていると、黒澤明の『デルス・ウザーラ』を思い出すが、50年も後の作品なんだな。
しかも、その『デルス・ウザーラ』が今から40年以上も昔の作品だという…。
現在でも、酷寒の地のロケは大変だろうが、この当時は、その比じゃないだろう。
機材なんかも、今とは全く違うだろうし。
最後の方で、吹雪のシーンがあるが、雪に覆われて凍えている犬達も可哀想だが、それを撮影するスタッフも大変だ。
困難を重ねて撮影された映像は、正に必見である。
モノクロ、スタンダード、サイレント。
「序文 ロバート・フラハティ。W・マッケンジー氏の代理として1910年~16年に極北を探検した。旅は毎回、何ヵ月にも及んだ。数人のイヌイットと行動を共にし、彼らへの理解と敬意が深まった。1913年、万全の防寒対策をし、ハフィン島で越冬した。最初は同行の数人を撮影しただけで、内容を重要視していなかった。しかし、別探検を経て、不十分だと気づいた。そこで再び撮影を開始。ボートの難破などの困難を乗り越え、すばらしい映像が撮れた。隊長である混血のムースと共に、文明社会に貴重な資料を持ち帰ることができた。編集中、ネガが燃えるという災難に見舞われたが、それにより改善点に気づいた。1人のイヌイットを象徴的に捉えるという、効果的な視点を見出すことができた。次の訪問には、カメラだけでなく、現像し、映写できる装備も持参。イヌイットたちに映像を見せ、理解と感謝を得た。そして、ナヌーク一家を味方につけた。1920年、すべて撮ったと判断し、旅を終えることに。ナヌークはもう1年と引き留めた。なぜ私が喧騒の世界やわずらわしい世界に戻るのか、最後まで理解しなかった。その後、2年と経たないうちに、ナヌークが餓死したとの知らせが届いた。しかし、フィルムを通し、世界中の人々が温和で勇敢で素朴な彼を知った。」
「謎に包まれた不毛の地。広大な土地には、岩が転がり、風が吹き荒れる。そこは極北。」
「土地はやせ、気候も過酷。ほかの民族は生き延びることができないほど。その上、イヌイットの食料源は動物のみ。にもかかわらず、彼らは世界一陽気で恐れを知らぬ、楽天的な愛すべき人々だ。『ナヌーク』はクマを意味する。ナヌーク一家と彼を慕い、頼る人たちは、イヌイットの一集団としてアンガヴァ半島北部で暮らしている。親切で誠実な彼らは忍耐強く協力してくれた。」
「ナヌークたちの漁場は小国並みの広さがある。イングランドほどの面積だが、人口は300に満たない。」
「集団の長であり、偉大なハンターとして名をはせているナヌーク。」
「ニーラ 微笑みの人」
「夏の旅の準備をするナヌーク。川を下って、白人の交易所に行き、海でサケやセイウチを狩る。」
「ナヌーク」
「アレグー」
「ニーラ」
「クナユー」
「そしてコモック
「内陸部では、シカ猟の失敗は死を意味する。ほかに食糧はない。シカのエサであり、燃料に使うコケがまばらに生えているだけなのだ。」
「このようにして、コケを燃料にする。」
「旅の前にカヤックの骨組みをアザラシの皮で覆わなければならない。」
「川までひたすら歩く。」
「流木の作った骨組みにアザラシとセイウチの皮を張った小舟。」
「アザラシ皮のブーツを天日干しにする。」
「白人との交易所『ビッグ・イグルー』に到着。」
「キツネ、アザラシ、セイウチに加え、7頭のホッキョクグマまで、ナヌークはすべての獲物をモリ以上の武器を使わず、接近戦で仕留めた。」
「ホッキョクギツネやホッキョクグマの毛皮をナイフやアクセサリー、キャンディーと交換する。」
「若いハスキー犬を誇らしげに並べるナヌーク。最高級の食肉となる。」
「ニーラも負けじとハスキー犬を並べる。まだ4ヵ月に満たないレインボーも。」
「偉大なハンターに敬意を表し、商人は蓄音機でもてなし、その原理を説明する。声の『缶詰め』の作り方だ。」
「ごちそうをもらう子供たちもいる。乾パンとラードだ。」
「調子に乗って食べすぎたアレグーにはヒマシ油だ。」
「海を漂う氷の塊が湾に入り込み、海岸を160キロにわたって埋め尽くす。飢えに苦しみ、移動も困難な仲間のため、偉大なハンター、ナヌークが立ち上がる。」
「危険な浮氷を渡り歩けるかどうかが成功のカギとなる。」
「いい漁場を探し当てる。」
「エサはない。牙製のルアーをアザラシの毛で作った糸で動かす。」
「ナヌークは食糧にありつけて大喜び。歯でとどめを刺す。」
「好調な日の獲物。」
「仲間の漁師を乗せて陸に戻る。」
「氷がなくなり、サケもいなくなった。何日も食糧がない。ある時、遠くの島にセイウチがいるとの情報が入った。興奮する彼らの目には、ごちそうが映っている。」
「岸で休む群れを発見し、緊張が走る。」
「交代でセイウチを見張る。彼らは水中ではどう猛だが、地上では無力だ。」
「体重は約2トン。さらに、モリを突き刺すのも困難なかたい皮で覆われている。牙をむいて雄叫びをあげる姿から『極北のトラ』とも呼ばれる。」
「怒った群れは荒い鼻息を出し、つがいは救出に来る。体当たりして、捕まった個体を逃がそうとする。」
「死んだ獲物を転がして引き、波からあげる。」
「野営地に持ち帰るまで待てない。空腹に耐えきれないのだ。」
「冬」
「長い夜、悲しげな風の音。昼は短く、つらい日々。海にも陸にも雪が煙る。時折、冷やかしのように太陽が顔を出す。水星が何日も地平近くに見えている。」
「ナヌークはアザラシ狩りのため、氷に覆われた海に繰り出す。」
「海を漂う氷の塊は冬の荒れ狂う風に押され、凍りついた海岸に激しくぶつかる。塊は強い力になすすべもなく砕け、巨大な破片が飛び散る。」
「雑然とした地形は、そりを引くのもひと苦労。」
「ナヌークは、わなに近づくホッキョクギツネを見つけ、回り道の合図をする。」
「早い日の入りが近づき、野営する場所を探す。」
「風の力で雪が押し固められた場所は、イヌイットの家『イグルー』を建てるのにぴったり。」
「セイウチの牙ナイフをなめて濡らすナヌーク。すぐに凍り、切れ味が良くなる。」
「動く父の横で…。」
「外気が入らないよう、ニーラたちは、つなぎ目や隙間を雪で埋める。」
「子供たちにとっては退屈な時間だ。」
「1時間足らずで完成。」
以下、後半。

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