『べオウルフ/呪われし勇者』

この週末は、ブルーレイで『べオウルフ/呪われし勇者』を見た。

ベオウルフ/呪われし勇者 ディレクターズ・カット版 [Blu-ray]

ベオウルフ/呪われし勇者 ディレクターズ・カット版 [Blu-ray]

2007年のイギリス・アメリカ合作映画。
監督はロバート・ゼメキス
主演はレイ・ウィンストン
共演は、『遠すぎた橋』『エレファント・マン』のアンソニー・ホプキンス
ワーナー・ブラザーズ
カラー、シネスコ・サイズ。
勇ましい音楽から始まる。
本作は全編フルCGで撮影されている。
まるでゲームの映像を見ているように不自然で、古典の風格など全くない。
幾ら最新の技術を使っても、作品にマイナスなら、何の意味もない。
酒盛りの席。
デンマーク 507年」という字幕。
原作には、具体的な年号など出て来ない。
リアリティを出すための小細工である。
フロースガール王(アンソニー・ホプキンス)は、この館をヘロッドと名付ける。
酒池肉林の宴である。
まあ、『ハムレット』でも連日連夜、城では酒盛りが行われていたから、デンマーク人は酒が好きなのだろう。
そこへ、ゾンビみたいな巨人・グレンデル(クリスピン・グローヴァー)が登場し、暴れ回る。
グレンデルって、こんなおぞましい形相なのだろうか。
グレンデルは、その場にいた人間の身体を裂き、生き血を飲み干す。
フロースガールが剣を持つと、グレンデルは消える。
グレンデルが棲みかに戻ると、母親(アンジェリーナ・ジョリー)がいる。
ただし、この時点では未だ声だけの登場。
グレンデルは、「人間はうるさい」とボヤく。
一方、フロースガールは、酒も宴も禁止し、怪物退治をする者を募る。
それを伝え聞いたベオウルフ(レイ・ウィンストン)は、船に乗ってデンマークへ向かう。
嵐の中の航海である。
なお、メイキングを見たが、このベオウルフは役者とは似ても似つかない。
詐称レベルだ。
何でもCGで描けるなら、その内、役者なんかいらなくなってしまうだろう。
映画って一体、何なのか?
で、ベオウルフが上陸すると、フロースガールの使者がやって来る。
フロースガールはベオウルフを歓迎し、グレンデルを呼び寄せるために宴を催す。
フロースガールは、グレンデルを倒したら、黄金の杯を与えるとベオウルフに告げる。
しかし、アンファース(ジョン・マルコビッチ)は、ベオウルフが本当に勇者かどうか、疑っている。
ベオウルフは、素手で怪物と闘うと言って、素っ裸になる。
この後、CGをフルに使って、ベオウルフの局部を見事に隠す。
このためにしか役立っていないんじゃないか。
グレンデルが登場。
ベオウルフとの闘いの末、片腕をもぎ取られる。
グレンデルは退場。
棲みかに戻ったグレンデルは、ベオウルフにやられたと母親に訴え、息絶える。
何か、このグレンデルのキャラクターに違和感がありまくりなのだが、原作にはない独自の解釈なんだろう。
本作には、他にも独自の解釈が色々と見られるが、成功しているとは言い難い。
否、大失敗である。
翌朝、ベオウルフが目覚めると、部下が全員、惨殺され、天井から亡骸をぶら下げられていた。
グレンデルは死んだはずだから、これは母親の仕業だろうということに。
アンファースはベオウルフに詫び、家宝の剣を渡す。
ベオウルフはグレンデルの棲みかへ乗り込む。
そこで、グレンデルの母親と対決する。
だが、この母親は、全裸の妖艶な美女であった(もちろん、CG)。
まるで、昔の樹まり子のAVのように(古い!)、全身が金粉で覆われている。
で、母親はベオウルフを誘惑する。
もう、この辺で、頭の中には「???」が点灯する。
『ベオウルフ』って、こんな話しだったっけ?
で、ベオウルフは、母親を殺したとフロースガールに報告し、グレンデルの首を王の前に差し出す。
しかし、フロースガールは疑っている。
いや、これじゃあ、ベオウルフは勇者じゃないことになってしまうじゃないか。
フロースガールは、ベオウルフを世継ぎに指名し、自らは城から身投げして絶命する。
って、幾ら時間を短縮するためとは言え、原作と話しが違い過ぎではないか。
まあ、確かに、原作も決して面白い話しではないが。
メイキングを見ると、監督は、原作を「退屈な古典」としか見ていない。
本作は、原作の素材だけを借りて、好き勝手に料理して、失敗した。
英文学の古典中の古典なのだから、もう少し原作に敬意を払おうよ。
本作は、やたらキリスト教に絡めた描写が出て来るが。
この時代、デンマークでは未だキリスト教は広まっていないだろう。
何か、時代考証もデタラメである。
原作にはない色恋沙汰が、本作のメインになってしまっている。
そして、ベオウルフは「訳ありの勇者」だ。
もし、原作がこんな話しなら、1000年以上も生き残っていないだろう。
ハリウッドは、続編とリメイクと日本のコミックの映画化だけじゃ題材が足りなくて、ついに古典にも手を出したか。
後半の竜は、まんま(首一つの)キングギドラだな。
余談だが、メイキングの中で、監督は『ベオウルフ』を「中学の教科書に出て来る」と言っていたが。
それは現代語訳ではないのか?
シェイクスピアならともかく、まさか古英語を中学生が読む訳はなかろう。
それにしても、この監督(って、アカデミー賞監督だよ)は、余りにも古典を冒涜している。
英文科の学生は、間違っても、本作を見てレポートを書いてはいけない。