『黄金狂時代』

この週末は、ブルーレイで『黄金狂時代』を再見した。

黄金狂時代 The Gold Rush [Blu-ray]

黄金狂時代 The Gold Rush [Blu-ray]

  • 発売日: 2016/12/22
  • メディア: Blu-ray
1925年のアメリカ映画。
監督・製作・脚本・主演は、『キッド』『巴里の女性』の偉大なる喜劇王チャールズ・チャップリン
なお、このディスクに収録されているのは、1942年に製作されたサウンド版で、チャップリン自身による音楽とナレーションが加えられている。
共演は、『キッド』『巴里の女性』のヘンリー・バーグマン、『キッド』のアルバートオースチン
モノクロ、スタンダード・サイズ。
優雅で穏やかな音楽が流れる。
画質は良い。
ゴールド・ラッシュの時代、多くの人々が一攫千金を夢見てアラスカへやって来た。
雪の峠を登るエキストラの列をロングで捕らえたシーンは、映画史上に残っている。
まるで『八甲田山』のようだ。
一方、チャーリー(チャップリン)は、いつもの格好で雪のガケ道を軽々と歩いている。
クマが現れたりするが、全く意に介さない。
バックに流れているのは、あの「♪誰かさんと誰かさんが麦畑」の曲ではないか。
ここは、かなりの山深い奥地である。
雪道で迷って、死んだ者もいると看板に注意書きがある。
その頃、探検家のビッグ・ジム(マック・スウェイン)は、ついに金鉱を見付けた。
なお、この人は体型が芋洗坂係長のようである。
猛吹雪の中、チャーリーは、お尋ね者の悪党ブラック・ラーセンが居座る山小屋へ転がり込む。
中には、ワンコもいるのが微笑ましい。
そこにあった鶏肉にかぶり付くチャーリー。
「出てけ!」と迫るビッグ・ジムだが、外は猛吹雪で出て行けない。
そこへ、テントが飛ばされてしまったビッグ・ジムもやって来る。
彼は、悪党の脅しにも屈しない。
ラーセンとビッグ・ジムの取っ組み合いで、二人が握ったライフルの銃口が常にチャーリーの方を向き、逃げ惑うチャーリー。
お決まりのドタバタ・コントである。
ビッグ・ジムは「俺はここにいる」と言って、居座る。
食べ物がないので、彼らは飢えが極限に達していた。
小屋が猛吹雪できしむ。
チャーリーは、ろうそくに塩を掛けて食う。
当時のろうそくは、獣脂だか蜜蝋だかで出来ていて食えたのだろう。
塩の瓶が、現在の日本のスーパーで売られているものと同じ形だ。
3人は、カードのくじを引いて、一番少ない数が出た者が食べ物を探しに行くことにする。
結果、ラーセンが負け、ワンコを連れて出て行く。
しかし、悪党のラーセンには、捜査の手が迫っていた。
猛吹雪の中、彼を追う二人の刑事がテントの中にいる。
ラーセンは刑事を銃殺し、彼らの物資を奪う。
さすが悪党だ。
その頃、感謝祭を祝うために、小屋のチャーリーとビッグ・ジムは、チャーリーの片側の靴を煮て食う。
これも、映画史上有名なシーンである。
しかし、幾ら煮たからといっても、本当に靴なんか食えるのだろうか。
これは、実話に基づいているらしいが。
いよいよ食い物がなくなって、ジムは幻覚を見るようになる。
何と、チャーリーがニワトリに見えるのだ。
このニワトリの着ぐるみを着たチャップリンも有名。
捕まえようと追うジムから逃げるチャップリン
最早、ジムは鶏でなくて人間でも食おうとする勢いだ。
チャーリーは銃を構える。
その時、小屋にクマが入って来る。
それを撃つチャーリー。
画面には映らないが、これで彼らは当座の食糧を得たようだ。
その頃、ラッセンはジムの金鉱を見付ける。
チャーリーとジムは二手に分かれて金鉱へ向かっていたが、先に到着したジムとラッセンが対決する。
やられるジム。
しかし、悪は長く続かない。
ラッセンはガケが雪崩で崩れて死ぬ。
このシーンも、当時としては最新の技術を導入して撮ったのだろう。
続いて、極北の町の酒場で働く娘ジョージアジョージア・ヘイル)。
彼女に言い寄る女たらしのジャックを嫌っている。
チャーリーは、彼女の働く酒場にやって来る。
靴が片方なく、布でグルグル巻きにしているので、痛風患者のようである。
とにかくジョージアは、ジャックのことが嫌いなので、まともな男と結婚して、とっとと酒場を辞めたいと思っている。
彼女は、言い寄るジャックに恥をかかせるために、たまたまその場にいたチャーリーと踊る。
むすぼらしいチャーリーは夢のよう。
ぶかぶかのズボンがずり落ちるので、腰を縛ろうとして手に取ったヒモは、大型犬をつないであるものだった。
そこへニャンコがやって来て、大型犬と追いかけっこを始めたので、引っ張られてチャーリーは転倒する。
ジョージアは大ウケ。
まあ、こんなのは文章で書いても何の面白みもないが、チャップリン映画の定番のコミカルな動きだ。
そして、ジャックを袖にするジョージア
彼女の気を引けなかったジャックは、チャーリーに対して怒りを露わにする。
二人の取っ組み合いが始まるが、ジャックは落ちて来た柱時計に当たってノック・ダウン。
喝采の中、一人酒場を後にするチャーリー。
この辺が、チャップリン映画に特有の、笑いの後の哀愁だな。
酒場の近くにある鉱山技師のハンク(ヘンリー・カーティス)の小屋では、豆料理を作っていた。
豆の匂いに吸い寄せられるように小屋の前を通り掛かったチャーリーは、一計を案じ、小屋の前で倒れて死んだフリをした。
ハンクに助けられたチャーリーは、小屋に招き入れられ、豆料理を食べる。
その頃、ジムは意識を回復したが、記憶を失っていた。
チャーリーは、ハンクの小屋の留守番を頼まれる。
たまたま小屋の前で女友達と雪合戦をしていたジョージアと再会。
さあ、これからどうなる?
この後、有名なロールパンのダンスや、ガケの上の小屋のシーンなどがある。
特に、ガケの上の小屋のシーンは、ドリフのコントにしか見えない。
まあ、ドリフがチャップリンを参考にしたのだろうが。
ガケの上の小屋は、ミニチュアの外観と、キャストがいる実物大のセットを編集で見事につなげている。
今見ても、非常に完成度の高い特撮である。
本作は、最初は雪山でロケを始めたのだが、チャップリンが風邪を引くなどして、2週間で挫折。
その後は、スタジオに雪山のセットを作って撮影した。
このセットも、広大なものである。
コメディーだが、相当な製作費と撮影期間を掛けている。
まあ、言い古された言葉だが、コメディー映画に必要な要素は、既にチャップリンが全てやり尽くしているということだな。
そして、チャップリンの映画は「ヒューマン・コメディー」だ。
まあ、本作の結末は、「結局、世の中はカネ」と取れなくもないが。
本作は、チャップリンの代表作とされているが、それは便宜上で、チャップリンの映画はみんな代表作だろう。
シェイクスピアだって、一応『ハムレット』が代表作とされているが、『ロミオとジュリエット』も『ヴェニスの商人』も『リア王』も、みんな代表作だ。
余談だが、日本では紅白歌合戦のお陰で、「蛍の光」が流れてから年が明けるが、海外では、新年を迎えてから「蛍の光」を歌う。

Charlie Chaplin - The Gold Rush (Trailer)