『スパルタカス』

昨日、いつものように近所のブックオフに行ったら、『スパルタカス』のブルーレイ・ディスクがあった。

今年発売の新品同様の盤が、何とたったの900円!
もちろん、直ちに購入した。
ローマ帝国に対して反乱を企てた実在の奴隷・スパルタカスの物語である。
1960年の作品。
僕はこの映画が大好きだ。
ハリウッド映画史上、屈指の作品だと信じている。
初めて見たのは高校2年生の時。
深夜のテレビ放送であった。
浪人中には、完全版が映画館で公開されたので、当然のように観に行った。
その後も、ビデオやDVDで何度も見返している。
監督は、僕が最も尊敬するスタンリー・キューブリック
31歳の若さで、これほどの超大作を見事に演出して見せたのはさすがである。
もっとも、キューブリック自身は、この作品を自分の作品だと認めていないが。
出演者がまた豪華である。
7大スターの夢の競演だ。
主演のスパルタカス役はカーク・ダグラスマイケル・ダグラスの父)。
まあ、大スターが自分をいかにカッコ良く見せるかを考えて作った映画だけあって、どこまでもヒーローだ。
それに、ローマの将軍・クラサスがローレンス・オリヴィエスパルタカスの恋人がジーン・シモンズ
ハムレットとオフィーリアの再共演だ。
ローレンス・オリヴィエの、嫉妬に狂う独裁者の演技が強烈な迫力。
ジーン・シモンズは少しババ臭いけれど。
クラサスの政敵・チャールズ・ロートンもいい味を出しているし、スパルタカスを慕うトニー・カーティスはものすごい男前。
ジュリアス・シーザーを演じるジョン・ギャビンは、ちょっと影が薄い。
剣闘士養成所長のピーター・ユスティノフは、コミカルな中にも感情の起伏を垣間見せる素晴らしい演技で、この年(1960年)のアカデミー賞助演男優賞を受賞している。
他にも本作は、美術監督・装置賞、撮影賞、衣裳デザイン賞と、合計4部門のオスカーを獲得した。
ブルーレイの映像は美しくて、とても半世紀前の映画には見えない。
そして、この作品は、脚本が最高だ。
赤狩りでハリウッドを追放されたダルトン・トランボが脚本を書いただけあって、要するに「プロレタリア革命万歳!」というのが一番言いたいことなのだが。
僕は、ヘルメット、ゲバ棒、火炎瓶に憧れているので、深く共感できる。
余談だが、僕は以前、ブログでこの作品を紹介した時、「何千年も前の、本当にいたのかどうかもわからないオッサンの話を持ち出して、自分が英雄気取り。私にとっては、貴様こそ暴君だ!」と2ちゃんねるで罵られたことがある。
昨今の日本人は、権力者と闘うことを忘れていて、どうしようもない。
今こそ、国家権力の横暴に対して、我々が立ち上がるべき時ではないか。
ところで、アマゾンでは「『グラディエイター』が好きな人にはオススメ」などというピント外れなレビューがあったが、あんなクソ映画と一緒にしてはいけない。
スパルタカス』のクライマックス、奴隷軍とローマ軍の決戦のシーンは、本物の軍隊8000人を導入した大迫力の見せ場である。
CGで何でも描ける現代とは違うのだ。
ハリウッドの黄金時代ならではのこんな贅沢な映画は、今では絶対に撮れない。
3時間以上の長編ながら、極めてテンポ良く進むし、話の展開も非常にわかりやすいので、全く長さを感じさせない。
歴史映画が好きな人は、ぜひ見て欲しい。
それにしても、文化の価格崩壊が起きている。
900円でこのソフトを売っているということは、店の買い取り価格は150円くらいだろうか。
手放した人は何を考えているのだろう。
安く買えるのはありがたいが、何だか悲しい。