『グラン・プリ』

この週末は、ブルーレイで『グラン・プリ』を見た。

グラン・プリ [Blu-ray]

グラン・プリ [Blu-ray]

1966年のアメリカ映画。
監督はジョン・フランケンハイマー
余談だが、僕が小学生の頃、京都のアバンティ・ブックセンターでキネマ旬報から出ている『世界の映画作家3』という本を立ち読みしたことがある。
その本に取り上げられていたのが、ジョン・フランケンハイマーアーサー・ペンスタンリー・キューブリックの3人だった。
今から考えると、かなり毛色の違う人達だが、古い本なので、出た頃には3人とも「新進気鋭の作家」というような括りだったのだろう。
製作総指揮には、「アイ・アム・えーっとスパルタカス」(英会話のCM風)のカーク・ダグラスが名を連ねている。
主演はジェームズ・ガーナー
当初はスティーヴ・マックイーンの予定だったらしいが、交渉が決裂した。
後に、マックイーンはレース映画の佳作『栄光のル・マン』を手掛けることになる。
本作は、世界の有名スターが出演している。
とりわけ、フランスからイヴ・モンタンと、我が日本から「世界のミフネ」こと三船敏郎が出演しているというのは、特筆に値しよう。
音楽は『アラビアのロレンス』や『ドクトル・ジバゴ』で名高いモーリス・ジャール
なかなか勇壮な音楽である。
僕は、以前書いたようにクルマに関しては全くの素人だが、それでも楽しめる作品になっている。
上映時間は3時間という長い映画である。
OVERTUREから始まるのは、まるで『ベン・ハー』のようだ。
本作は70ミリ・フィルムで撮影され、シネラマで上映された。
冒頭のモナコ・グランプリのシーンは、とにかく「これでもか!」と言わんばかりにレース風景を描いている。
『栄光のル・マン』もそうだったが、場内放送で登場人物を紹介する。
マルチ画面の多用は、当時としては斬新だっただろう。
リゾート地・モナコの一般道をレーシング・カーがかっ飛ばす。
急なカーブ、猛烈なスピード。
実際のレーシング・カーにカメラを積んで撮ったという映像は、今見ても大変な迫力である。
「4輪はガソリンに包まれた箱だ。棺桶だ。」
時速240キロ。
空中撮影もスゴイ。
これをシネラマで見たら、エライことになりそうだ。
目が回る。
酔う。
車に弱い僕は、我が家の液晶テレビで見ていても、正直、気分が悪くなった。
事故を起こすクルマにもカメラを積んで撮影している。
クルマが回転するのと一緒にカメラも回って地面に衝突。
今では絶対に撮れない映像だろう。
今なら全部CGだ。
ケガ人(ストッダード=ブライアン・ベッドフォード)を船に乗せて運ぶ。
駆け寄る恋人。
彼の兄さんもレース中の事故で死んだという。
本作は、世界各国からレーサーが集まって来る群像劇だが、『栄光のル・マン』と違って、ドラマ部分にもかなり比重がある。
ただ、大したドラマではない。
要するに、「レースに命を賭ける男達と、それを取り巻く女達」だ。
見せ場は、何と言っても最初のレース。
レースが終わった夜に、イヴ・モンタンが展示されているクラシック・カーに乗ってみるシーンがいい。
結構渋いクルマだった。
イヴ・モンタンは、妻がいるのに、エヴァ・マリー・セイントと恋愛関係になる。
翌日はフランス・グランプリ。
本作は、あちこちのレースに行くので、忙しい。
世界のミフネ登場。
我らが三船敏郎は、日本の著名な実業家・矢村役である。
ヤムラというのは、ホンダをモデルにしているらしい。
三船敏郎は、貫禄あり過ぎである。
日本語で喋っているが、後には英語を話すシーンもある。
全く余談だが、以前、NHK大河ドラマの『山河燃ゆ』で日系一世の役を演じていたのを思い出した。
次の日のレースは、冒頭とは打って変わって、ソフトフォーカスにスローモーションを多用し、音楽を流すというファンタジー調の演出。
まあ、あんなリアルなレース描写が続けば、観客も疲れるからな。
しかし、レースの迫力なんかは、正に映画の醍醐味だろう。
このレースでは、イヴ・モンタン演じるサルティが優勝する。
本作は登場人物に不倫が多い。
正直言って、メロドラマはいらん。
これのために休憩込みで3時間というのは、ちょっと長くないか。
三船敏郎がインチキな日本庭園でお茶を飲む。
後ろにはナゾの着物姿の女性(ゲイシャ?)
どうして、外国映画で描写される日本は、いつもこんなに変なのだろうか。
大ケガをしたストッダードが実家に帰ると、部屋中に優勝カップがある。
やはりレースで亡くなった兄の部屋だ。
今度はベルギー・グランプリ。
のどかな田園風景。
雨が降って来た。
すごい水しぶき。
事故車の残骸だらけ。
この撮影は大変だっただろう。
イヴ・モンタンのクルマの車輪が外れた!
事故で死者が続出する。
それでも、彼らはレースのことしか考えない。
結局、三船敏郎のヤムラのクルマが優勝。
ここで休憩。
後半はオランダ・グランプリから。
これはマルチ画面。
ストッダードは、大ケガをしても、なおクルマに乗りたい。
そして、優勝する。
負けたヤムラ(ミフネ)も、やはり勝ちたい。
また場面は変わって。
ジェームズ・ガーナーが乗ったヤムラのクルマが炎上。
火を吹きながら走っている。
何とか脱出。
よく、こんなシーンを無事に撮影出来たものだ。
今なら確実にCGだろう。
「走ることに何の意味がある」とは、イヴ・モンタンのセリフ。
これが本作のテーマだ。
まあ、これだけ危険なレースをリアルに見せられたら、説得力はある。
でも、もう一つの「彼らを取り巻く女達」はどうかね。
続いて、イタリア・グランプリ。
外国語が飛び交う。
またもゲイシャ・ガール登場。
このレースで、イヴ・モンタンのクルマが爆発する。
奥さんと不倫相手の二人の女性が駆け寄る。
不倫相手が幾ら「自分は愛されている」と思っていても、こういう時に勝つのは結局奥さん。
この場面はいいね。
上で「メロドラマはいらん」と書いたけど、ここは見せ場。
あんまり続きを書くとネタバレになってしまうので、この辺で止めておこう(もう大分バレてしまったが)。
迫真の映像で、僕のようなクルマ素人にも楽しめる映画だ。
1967年の外国映画興行収入の2位である(ちなみに、1位は『007は二度死ぬ』。邦画の1位は『黒部の太陽』。スゴイ時代だ)。
アカデミー賞編集賞、録音賞、音響編集賞受賞。