『放射能X』

この週末は、ブルーレイで『放射能X』を見た。

1954年のアメリカ映画。
監督はゴードン・ダグラス
主演は、『猿の惑星』『トラ・トラ・トラ!』のジェームズ・ホイットモア。
配給はワーナー・ブラザーズ
本作はモノクロだが、タイトルの文字だけ赤色だった。
元々はスタンダード・サイズだったが、このブルーレイでは、上下をカットしてワイド画面に収められている。
勇壮ながら不気味なテーマ音楽が流れる。
場所はアメリカ・ニューメキシコ州
砂漠の上空を飛ぶ警察の飛行機から始まる。
地上には、幼い女の子が一人で歩いている。
連絡を受けたパトカーが少女のそばで止まり、巡査部長のピーターソン(ジェームズ・ホイットモア)が声を掛ける。
何も話さない女の子。
ショック状態のようだ。
女の子が見付かった場所から5キロ程先に、キャンピング・カーが放置されていた。
ピーターソンが中に入ってみると、グチャグチャである。
現金は残っており、砂糖が散乱していた。
一体、何があったのだろうか。
導入部を見る限り、先日見た『原子怪獣現わる』よりも、カネは掛かっていそうである。
そこへ、『サイコ』の殺害シーンに流れる音楽のような、不快な摩擦音が。
救急車の中で横になっていた先程の少女が、驚いて起き上がる。
この場所の先にある、じいさんが経営するよろず屋も、メチャクチャに荒らされていた。
折れたライフルも見付かる。
床下には、じいさんの無残な死体。
ここでも、現金は取られておらず、砂糖にアリが群がっていた。
そこへ、先程の不快な摩擦音が鳴り響き、ピーターソンの同僚が何者かにやられる。
その場所からは、砂糖だけが持ち去られていた。
この事件を解明するために、FBIからグレアム(ジェームズ・アーネス)が派遣された。
しかし、手掛かりは何もない。
現場からは、20人分の致死量に当たる蟻酸が発見された。
アリ学者のメドフォード博士(エドマンド・グウェン)と、同じく学者であるその娘(美人!)がやって来る。
この時代の、この手の作品にお約束だが、博士は1945年にこの場所の近くで行われた原子爆弾の実験に言及する。
まあ、日本の『ゴジラ』もそうなのだが。
博士は、件の少女に会う。
女の子は、事件のショックで声が出なくなっている。
だが、博士が蟻酸の匂いを嗅がせると、「THEM!」と叫んだ。
「THEM!」は本作の原題である。
ここまで持って来る展開の仕方は、うまいなあ。
博士達は砂漠の現場へ向かう。
ここには、直径12センチの巨大な足跡が残されていた。
まあ、犯人(?)が昆虫だということが既にほのめかされているので、「巨大な」ということになるが、普通の動物なら、さほど巨大ということもない。
僕だって、足のサイズは26.5センチあるしな。
博士は、足跡から推測すると、体長は2メートル半位あるだろうと。
考えられん。
この話しが漏れると、国中がパニックになるだろうと言う。
ついに、一行の前に姿を現す巨大アリ!
人形アニメではない。
2メートル半よりも、もっと大きく見える。
銃を撃っても、全然効かない。
機関銃を乱射して、ようやく退治した。
どうでもいいが、このアリはデカイけれども、大して強くない。
博士は、これは核実験による放射能が原因の、アリの突然変異だと言う。
そして、摩擦音を発して、仲間と交信しているのだとか。
上空から探索すると、砂漠に巨大な巣穴が見付かった。
中には、例の巨大アリが。
辺りには、白骨化した人骨がゴロゴロと転がっている。
ここからの、博士によるアリの生態解説は、なかなか秀逸である。
本作のハリボテのアリに、リアリティを持たせている。
アリは昼間は巣に戻る。
だから、巣を狙うなら昼間だ。
日を改めて、昼間、バズーカで巣を狙うと、爆発炎上する。
ただし、表面だけ。
アリどもは、巣の奥で寝ているだろう。
巣にシアンガスが注入された。
アリはおそらく全滅しただろう。
確認のために、グレアムとピーターソンとメドフォード博士の娘が、ガスマスクを着けて巣の中へ入る。
そこへ、生き残りのアリが襲って来た!
でも、火炎放射で死ぬ。
まあ、ちょっとドリフのコントでありそうな感じかな。
奥に、女王アリの部屋と卵が見付かる。
どうやら、女王アリは砂漠からどこかへ飛び去ったようだ。
さあ、これからどうなる?
作中で、「アリがカミカゼのように(like Kamikaze)飛んでいた」という表現があった。
本作では、アリはちょっとしか映らない。
CG全盛の昨今とは違い、当時の技術では、ハリボテのアリをあまりたくさん登場させるとボロが出るから、これが限界だったのだろう。
そのため、人間ドラマ中心になっている。
けれども、それが正解だったかも知れない。
ドラマは、なかなか展開しない。
実は、女王アリはロサンゼルスの地下(雨水管)に巣穴を作っていた。
最後の15分位で、ようやく街に戒厳令が敷かれる。
ただ、何故この場所にいるかの説明が、イマイチ不足していると感じた。
更に、アリは地下にいる限り、大して人間の脅威ではない。
放っておけば、そんなに犠牲は出なかったのかも知れないのに、下手に退治しようとするから、犠牲者が増えるのではないか。
一匹一匹のアリは弱く、集団で襲って来ない限り、あまり怖くはない。
と、まあ、突っ込みどころは色々ある。
最後に、博士による原子力への警鐘。
やっぱり、『ゴジラ』だな。