『魔人ドラキュラ』

この週末は、ブルーレイで『魔人ドラキュラ』を再見した。

魔人ドラキュラ [Blu-ray]

魔人ドラキュラ [Blu-ray]

  • 発売日: 2016/08/24
  • メディア: Blu-ray
1931年のアメリカ映画。
監督はトッド・ブラウニング
あの『フリークス』の監督だな。
僕は昔、今は亡き早稲田通りのACTミニシアターの会員だったが、ここのオールナイトでは、いつも『フリークス』を上映していた。
『アンダルシアの犬』やら『カリガリ博士』やらと一緒に。
原作はブラム・ストーカー。
主演はベラ・ルゴシ
僕は小学生の頃、テレビで『ドラキュラ』が放映されているのを見た記憶があるが、それはおそらく、1958年の『吸血鬼ドラキュラ』の方だと思う。
クリストファー・リーピーター・カッシングが出ているヤツだな。
それから、学生の時、コッポラの『ドラキュラ』が公開されたので、観に行った記憶がある。
ゲイリー・オールドマンウィノナ・ライダーアンソニー・ホプキンスキアヌ・リーヴスと豪華キャストの大作だった。
まあ、有名な作品だから、何度も映画化されているのだが、その原点が本作ということだ。
1931年だよ。
スゴイ!
しかも、80年以上も昔の映画なのに、既に我々がよく知るところの吸血鬼映画の要素が全て盛り込まれている。
歴史を振り返ることが如何に重要であるかが分かる。
ユニバーサル映画。
モノクロ、スタンダード・サイズ。
画質は良い。
テーマ曲は、チャイコフスキーの『白鳥の湖』。
走る馬車。
イギリスの事務弁護士レンフィールドは、トランシルヴァニアのドラキュラ伯爵に招かれて、彼の古城を目指している。
その手前の集落に立ち寄る。
謎の言葉(ハンガリー語?)を話す人々。
もう、この時点でイギリス人には耐えられないだろう。
日本語でも字幕が出ないので、不気味さが増す。
で、カタコトの英語が話せる村人によると、今夜は悪魔が出る夜らしい。
ドラキュラ伯爵の古城へ行くと言うと、恐ろしがって、誰も行きたがらない。
レンフィールドは、村人からお守りの十字架をもらう。
ドラキュラ城はマットアートである。
何か、大林宣彦の『ハウス』を思い出した。
城の中に棺が横たわっている。
中から女が出て来る。
たたずむドラキュラ。
城内は非常に不気味だ。
レンフィールドは城の手前で、迎えの馬車に乗り換えた。
しかし、気付くと、その馬車は誰も手綱を握っていないのに勝手に走っている。
おまけに、預けたはずのレンフィールドのカバンもない。
だんだん不安になる彼。
ようやく城に着いた。
蜘蛛の巣が大量に張っている城内。
コウモリが飛ぶ。
厳かにドラキュラ(ベラ・ルゴシ)が登場する。
「I am Dracula.」
まるで、昔のNOVAのCMのようにゆっくりとした英語で話すドラキュラ。
初代ドラキュラを演じたベラ・ルゴシは、ハンガリー出身で英語が苦手だったらしいが、却って不気味な雰囲気を漂わせている。
城内には、クモやらネズミやらアルマジロ(!)やらがウロウロしている。
如何にも、『フリークス』の監督が撮りそうな気色悪い映像。
外観はマットアートだったが、城内のセットは広大である。
レンフィールドは、ドラキュラとロンドンの屋敷の賃貸契約を交わしに来たのだった。
とにかく、ゆっくりとしゃべるドラキュラ。
おかげで、TOEIC0点の僕にも聴き取りやすい。
レンフィールドが、書類で指先を切って出血する。
それをじっと見る。
もう、この視線が怪しい。
だが、レンフィールドの胸元にちらりと見えた十字架にビビって、後ずさりする。
この辺の、じらす演出も巧み。
レンフィールドは、ドラキュラからワインを勧められる。
それを飲んで、倒れてしまう。
眠り薬か何かが入っていたのだろう。
3人の女達が彼の周りに集まって来るが、ドラキュラは下がるように手で合図する。
そして、血を吸う…。
本作では、直接的に血を吸う場面は映らない。
まあ、当時の検閲の関係だろうが。
けれども、それが観客の想像力を高めるとも言える。
場面変わって、大嵐の中、イギリスへ向かう客船。
ドラキュラが潜み、レンフィールドは客として乗っている。
一夜明けて、嵐は収まり、船はイギリスに着いたが、船員は皆死んでいた。
唯一の生存者であるレンフィールドは、半狂乱になって精神病院へ。
街で、花売りの娘の血を吸うドラキュラ。
続いて、クラシックを聴きに劇場へやって来る。
さすがに貴族だけあって、高尚な趣味だ。
余談だが、案内係の女性は懐中電灯で足元を照らす。
この時代に、既に懐中電灯があったとは!
ドラキュラは、この女性を操って、桟敷席へ案内させる。
そこには、医師であるホイットニー博士がいた。
実は、博士はドラキュラが引っ越して来たロンドンの屋敷の隣人なのである。
さも偶然を装って挨拶するドラキュラ。
そこには、博士の娘ルーシー、ミナ、ミナの婚約者のジョン・ハーカーもいた。
博士から娘達を紹介されて、嬉しそうなドラキュラ。
「この世には、死よりも恐ろしいことがあるんです」と、気味悪くつぶやく。
ルーシーの方は、貴族であるドラキュラを気に入ったようだ。
その夜、ルーシーが窓を開けて寝ていると、コウモリが入って来る。
気が付くと、ドラキュラが部屋の中にいる。
そして、ミナの血を吸う。
翌朝、ルーシーは失血死していた。
彼女のノドには、二つの小さな傷跡がある。
それは、最近の一連の不快な失血死事件の犠牲者と同じものだった。
一方、精神病院ではレンフィールドがハエやクモを(食料として)寄越せと叫んでいた。
こんな虫の血を吸いたいのであった。
要するに、人間の血は主人であるドラキュラが頂くということだな。
科学者のヴァン・ヘルシング教授は、一連の事件はノスフェラトゥ(吸血鬼)の仕業だと断定する。
吸血鬼は、トリカブトの匂いを怖がる(ニンニクじゃないのか)。
果たして、レンフィールドはトリカブトを嫌がった。
レンフィールドは、「ミナさんにだけは手を出さないで下さい」とドラキュラに懇願する。
でも、その願いも空しく…。
さあ、これからどうなる?
本作は、さすが後に立て続けに続編が作られ、『フランケンシュタイン』や『狼男』も作られ、更には何度もリメイクされることになった作品のオリジナルだけあって、非常によく出来ている。
ただ、ラストはめちゃめちゃあっけない。
しかし、デジタル・リマスタリングの効果もあるが、とてもそんな古い映画とは思えない。
余談だが、レンフィールドが「Words, words, words!」と叫ぶシーンがある。
これは、明らかに、『ハムレット』だろう。

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