『遊星よりの物体X』

この週末は、ブルーレイで『遊星よりの物体X』を見た。

遊星よりの物体X Blu-ray

遊星よりの物体X Blu-ray

  • 出版社/メーカー: IVC,Ltd.(VC)(D)
  • 発売日: 2019/11/29
  • メディア: Blu-ray
1951年のアメリカ映画。
監督はクリスティアン・ナイビイ。
製作は、『脱出(1944)』『三つ数えろ』『赤い河』の巨匠(監督)ハワード・ホークス
音楽は、『我が家の楽園』『スミス都へ行く』『疑惑の影』『赤い河』『見知らぬ乗客』『私は告白する』『ジャイアンツ』『ナバロンの要塞』『北京の55日』『ローマ帝国の滅亡』の巨匠ディミトリ・ティオムキン
主演は、『ダーティ・メリー/クレイジー・ラリー』のケネス・トビー。
共演は、『宇宙戦争(1953)』のロバート・コーンスウェイト、『放射能X』のジェームズ・アーネス。
僕は以前に、ジョン・カーペンター監督のリメイク版『遊星からの物体X』を何度か見たことがあるのだが、オリジナル版は見たことがなかった。
リメイク版の方がSFというよりホラーの趣きが強い。
聞くところによると、リメイク版の方が原作に忠実なのだそうだ。
「物体」が人間に擬態して、誰が人間で誰が擬態なのかが分からなくなる恐怖というのが軸にあったのだが、おそらく、50年代の技術では、その部分をうまく描写出来ないと考えたのだろう。
オリジナル版は、前半がSF、後半がモンスター映画といった感じになっている。
しかし、SF映画の古典として有名な作品であり、いつかは見たいと思っていたので、今回、見ることが出来て良かった。
モノクロ、スタンダード・サイズ。
不安げなテーマ音楽が流れる。
猛烈な吹雪の夜。
舞台はアラスカのアンカレッジ。
将校クラブに新聞記者のネッド・スコットがやって来る。
外はマイナス30度だという。
スコットがアメリカ空軍のパトリック・ヘンドリー大尉(ケネス・トビー)と握手をする。
ヘンドリーによると、北極探検隊から「不審な飛行機が墜落したので、至急調査されたし」という連絡が入ったのだという。
ヘンドリー、スコットらは早速、北極へ向かうことになった。
空軍機で北極の基地に到着。
飛行機にはワンコも乗っている。
基地に着くと、ヘンドリーは恋人のニッキ・ニコルソンと会う。
このニッキというのは、原作には登場しないらしく、本作でも単なるメロドラマ要員で、ストーリーには余り関与しない。
ヘンドリー、ニッキ、スコットらは、アーサー・カリントン博士(ロバート・コーンスウェイト)のところへ。
博士によると、墜落したのは2万トンの金属の塊で、すごいスピードで飛んで来て墜落したという。
この物体は、放射能を帯びていて、明らかに隕石ではないとのこと。
現地に向かう空軍機から見ると、雪の中に、まるでミステリー・サークルのように丸い鏡面が出来ている。
空軍機が着陸し、犬ゾリで現場に向かう。
この辺のロケは大変だっただろう。
現場へ到着すると、飛行機の翼のような物が熱で溶けて氷の中にめり込んでいる。
エンジンが超高温だったのだろう。
ものすごい放射能反応がある。
アメリカのSFを見ていて、いつも思うのは、放射能が充満しているところで、防護服も着ていないことだ。
氷の下に埋まっているのは円形の物体で、明らかに空飛ぶ円盤である。
しかも、謎の金属で出来ている。
ヘンドリーは、氷を爆弾で溶かすことにする。
スコットはこの事件に狂喜乱舞するが、ヘンドリーは「軍事機密なので報道はするな」と告げる。
本作は、軍人、新聞記者、学者がそれぞれの立場から対立するのも、見所の一つとなっている。
ダイナマイトを爆破させると、円盤の本体も大爆発を起こしてしまった。
エンジンの爆発のようだ。
「マズイ!」って、だったら最初から爆破なんかするな。
で、円盤の本体から少し離れた所で強い放射能反応がある。
氷の中に、人間のような形のものが埋まっている。
おそらく、円盤から脱出して凍ったのだろう。
斧を使って氷ごと取り出す。
犬ゾリに載せて基地へ。
基地の中では、氷が溶けないように、ヘンドリーが部屋の窓を割って外気が入るようにした。
そして、部下に4時間交替で見張るように命じる。
未知の物体が大気に触れたら、どうなるのだろうかと心配するカリントン博士。
ヘンドリーは、スコットに「新聞発表は待て」と釘を刺す。
保守的な軍隊とリベラルなマスコミのソリが合わないのは、古今東西変わらない。
で、ここは北極なので、ひとたび吹雪になると、通信が途切れて、陸の孤島状態になる。
上官からの指示は途中で切れている。
本作の中では、常にヘンドリーが独断で物事を進め、それが後に届いた上官からの指示と食い違っていることが多々ある。
軍隊組織というのは、これでいいのだろうか。
まあ、即座の判断が必要な場合に、不自由な通信で一々上官の指示を仰いでいられないのだろうが。
カリントン博士は、「物体の分析は不可欠だ」と主張する。
最初に物体の見張りに着いた者は臆病で、物体の不気味な目や手が耐えられないという。
しかし、この時点では、観客には未だ物体の姿は見せていない。
臆病な部下の哀願を聞いて、ヘンドリーは2時間交替に変更する。
寒いので、電気毛布が差し入れられる。
見張りの者は、氷の中の物体の目が見えて不気味なので、毛布を掛けて隠す。
ところが、この毛布が、電源の入った電気毛布だったんだな。
しばらくすると、温められて氷がどんどん溶け出す。
外のワンコが騒ぎ出す。
何かが出て来た。
見張りが必死で撃つ。
逃げる。
見張りはヘンドリーの基へ飛んで行き、「物体が出て来て、発砲したがビクともしない」と報告する。
ヘンドリー達が皆で行ってみると、氷の塊に人の形の跡が残っている。
ドアが開いているので、外に出たのだろう。
ヘンドリー達が窓から外を見ると、ワンコが人のような形のものに襲われている。
駆け付けると、物体は逃げた。
ワンコがやられている。
倒れたワンコのそばには、ちぎれた手が落ちている。
その手を、カリントン博士が分析する。
その組織は、とても死んだとは思えないものだった。
動脈がなく、まるで植物だ。
だから、銃撃しても平気なのである。
例えて言うならば、新種のニンジンだ。
要するに、植物が進化して、知能を持つようになったというのである。
一同は「信じられん…」。
すると、ちぎれた手が動いている。
物体は、血を主食にしており、血を求めてさまようだろう。
基地の人間の運命や如何に?
で、後半は、博士のマッド・サイエンティストぶりが明らかになって来る。
正直なところ、そんなに怖い映画ではない。
僕は、ジョン・カーペンターのリメイク版の方が怖くて好きだ。
本作は、昔のハリウッド映画らしく、幾ら怪物が出て来ても、根底のところで明るさは失わない。
軍人が主役だから仕方がないのだが、どうも軍隊が正義になってしまっているのが、僕は根が左翼なので受け付けない。
僕もマスコミの端くれなので、新聞記者に感情移入したいところだが、本作の新聞記者は結局、単なる目立ちたがり屋にしか見えない(特に、ラスト)。
科学が絶対ではないので、科学者が狂っているのはまあいいが。
まあ、でも、有名な古典なので、見て良かった。

The Thing From Another World (1951) Official Trailer #1 - Howard Hawks Horror Movie