『黒い罠』

この週末は、ブルーレイで『黒い罠』を見た。

1958年のアメリカ映画。
監督・脚本はオーソン・ウェルズ
撮影は、『スパルタカス』のラッセル・メティ。
主演は、『十戒』『大いなる西部』『ベン・ハー』『エル・シド』『猿の惑星』『続・猿の惑星』『大地震』『ハムレット(1996)』のチャールトン・ヘストン
共演は、『サイコ』のジャネット・リー、『第三の男』『カジノロワイヤル』のオーソン・ウェルズ、『激突!』のデニス・ウィーバー
何という豪華なキャストだろう。
ジュリアス・シーザーとオセロ(マクベスでもフォルスタッフでもいいけど)の夢の共演だよ。
僕は学生の頃、本作を六本木のシネヴィヴァンかどこかで観たのだが、内容をすっかり忘れてしまっていた。
しかし、今回見て思い出したよ。
よくも、こんなインパクトのある話しを忘れるもんだな。
ユニヴァーサル、モノクロ、ワイド。
不安気な音楽から始まる。
アメリカとメキシコの国境の町。
車に時限爆弾が仕掛けられる。
その車に乗り込んだのは、地元の有力者リネカー氏と金髪の愛人。
一方、同じ頃、同じ町に、メキシコ人の麻薬捜査官ラモン・ミゲル・ヴァルガス(チャールトン・ヘストン)は妻のスーザン・ヴァルガス(ジャネット・リー)と新婚旅行に来ていた。
文章で書くのは難しいが、冒頭のシーンは有名な長回しである。
実に鮮やかだ。
で、リネカーの車が爆発する。
近くには、ヴァルガスとスーザンが偶然、居合わせた。
ヴァルガスは、スーザンをホテルに帰して、爆発した車を調べる。
スーザンは、ホテルに帰る途中、メキシコ人の若い男に「話しがある」と言われ、別の安ホテルへ連れて行かれる。
その頃、ハンク・クインラン(オーソン・ウェルズ)という地元で名高い肥満で足が不自由な老刑事が爆発現場に到着していた。
ヴァルガスとクインランは、お互いに火花を散らす。
スーザンは、ホテル・リッツで、ヴァルガス達が捜査中のグランディ一家の幹部ジョー・グランディ(エイキム・タミロフ)から、「拘留中の弟を解放しろ」とヴァルガスに伝言するように言われる。
この辺は、二つの場面が交互に進む。
鮮やかなカット・バックだ。
リネカー氏の車の助手席に乗っていた女はストリッパーだった。
ヴァルガスは、一人で町を歩いているところを、若い男に狙われる。
クインランは、ストリップ小屋に聞き込みに行く。
そして、昔馴染みの酒場の女主人ターニャ(マレーネ・ディートリヒ)を訪ねる。
アメリカ人で叩き上げのクインランは、メキシコ人でエリートのヴァルガスに対して敵意を隠さない。
最初の内は、どちらに感情移入すれば良いのか、よく分からなかった。
その夜、自分のホテルの部屋に戻ったスーザンは、何者かから監視されていることを知る。
ヴァルガスを襲った若い男は、グランディの手下だった。
で、スーザンは、これまた別の若い男から手紙を受け取る。
中には、先程の安ホテルの前で若い男と撮られたツー・ショット写真が入っていた。
脅迫だな。
スーザンは、一連の嫌がらせに耐えかね、ホテルを出ようとヴァルガスに懇願する。
二人がモーテルに向かって車を走らせていると、後ろからグランディが追って来る。
途中、ヴァルガス夫妻はクインランの相棒ピート・メンジース(ジョゼフ・キャレイア)と遭遇する。
メンジースはヴァルガスに対し、「すぐにクインランと会ってくれ」と言う。
で、ヴァルガスは車を反対方向へ。
そこで、グランディを発見し、確保する。
スーザンは、メンジースに送られ、野中のモーテルへ。
何か、この辺の展開が、ちょっとゴチャゴチャしていて、分かりにくいような気がする。
現代の映画なら、もっとスッキリさせるところだろう。
スーザンは、人気のないモーテルの門を恐る恐る叩くが、応対したモーテルの従業員(デニス・ウィーバー)が実にヘンである。
一方、クインランは容疑者を尋問していた。
彼は、捜査官としての「直感」で、リネカーの娘マーシャ(ジョアンナ・ムーア)の恋人サンチェス(ヴィクター・ミラン)を疑う。
サンチェスが、勤務先からダイナマイトを盗んだのではないかと。
クインランは、マーシャを尋問する。
そこへ、グランディを連れたヴァルガスが到着する。
ヴァルガスは、クインランの強引な見立てに対し、大いに疑問を呈する。
しかし、それが聞き入れられる気配はない。
サンチェスは、自宅の洗面所からダイナマイトが発見されたとして、逮捕されてしまった。
だが、ヴァルガスが先程、洗面所を調べた時には、ダイナマイトなどなかった。
ヴァルガスは、クインランに対し、「君はサンチェスを陥れた」と言う。
この後、ヴァルガスはこの件を疑って、独自に調査を開始する。
一方、朝になって、グランディとクインランが手打ちしそうな気配が観客に匂わされる。
12年も禁酒していたクインランに、グランディが酒を飲ませたのだ。
その頃、スーザンが泊まっている野中のモーテルに、若造どもが集結していた。
彼らは、グランディの子分だった。
しかも、麻薬を所持しているようである。
スーザン、絶体絶命のピンチ!
で、ヴァルガスは、クインランがダイナマイトを購入したという証拠を発見する。
一方、モーテルの管理人室を選挙した若造達のリーダー・パンチョ(バレンティン・デ・ヴァルガス)は、助けを求めようとするスーザンの電話を故意に繋がない。
さあ、これからどうなる。
ここまでで、およそ半分である。
最初は、どういう方向に話しが進むのか、よく見えなかったが、ようやく展開して来た。
この後、かなりのどんでん返しがある。
すげえ黒い話しである。
ああ、一部ネタバレになってしまうが、殺されたグランディの血走った目がスゴイ。
まあ、ストーリー自体は陳腐だという声もあるが、本作は、撮影や編集の技術の革新性が、現在でも高く評価されているようだ。
と言うより、公開時は散々な評価だったのが、見直されているということである。
さすがはオーソン・ウェルズだ。