『ローラ』(1960)

この週末は、ブルーレイで『ローラ』を見た。

ローラ ジャック・ドゥミ Blu-ray

ローラ ジャック・ドゥミ Blu-ray

  • 発売日: 2020/04/24
  • メディア: Blu-ray
1961年のフランス映画。
監督は、『天使の入江』のジャック・ドゥミ
本作が長編デビュー作である。
製作総指揮は、『勝手にしやがれ』『気狂いピエロ』『修道女』のジョルジュ・ド・ボールガール。
製作は、『軽蔑』『ドクトル・ジバゴ』『カサンドラ・クロス』の大プロデューサー、カルロ・ポンティ
撮影は、『勝手にしやがれ』『軽蔑』『気狂いピエロ』『ウィークエンド』『パッション』のラウール・クタール
音楽は、『華麗なる賭け』『栄光のル・マン』のミシェル・ルグラン
衣装は、『恋人たち』『鬼火』のベルナール・エヴァン。
主演は、『モンパルナスの灯』のアヌーク・エーメ。
共演は、『赤い影』のアラン・スコット
モノクロ、シネスコサイズ。
今回のブルーレイで発売されたのは、オリジナル・ネガが火災で焼失したので、2012年にデジタル修復されたバージョンである。
「泣ける者は泣き、笑える者は笑いたまえ 中国のことわざより」
マックス・オフュルスに捧げる」という字幕。
甘美なメロディーが流れる。
海岸。
白いスーツにサングラス、白いハットの男が白いオープンカーを飛ばしている。
マッカーサー元帥みたいで目立つ。
舞台はフランスのナント。
世界史で「ナントの勅令」というのが出て来たが、それ以外では知らん。
しかし、ブルーレイの特典映像によると、本作でも有名になったとか。
まあ、僕の住んでいる調布も、NHKの朝ドラで知名度が上がったからな。
水平達が、このオープンカーに「気を付けろ、カウボーイ!」と叫ぶ。
アメリカ人らしい。
一方、ローランは寝坊する。
「しまった、遅刻だ!」
行き付けのカフェに行って珈琲を飲む。
遅刻しそうになっても、カフェでコーヒーを飲むというのは、さすがフランス人か。
カフェにいる中年のおばさんが「ミシェルが車で通り過ぎた!」と騒いでいる。
さっきのオープンカーの男の母親らしい。
ミシェルとは、もう7年間も音沙汰がないという。
ローランは「僕も旅に出よう」と言って、会社へ向かう。
会社に着くや、社長に呼び出される。
社長は、「時間厳守」を命じたのだが、守れないローランをクビにする。
ローランは読書家で、本を読んでいて起きられないようだ。
映画館の前を通ると、マーク・ロブソン監督の『楽園に帰れ』を上映している。
キャバレー「エル・ドラド」に、さっきの水平達がゾロゾロと吸い込まれて行く。
中は踊り子だらけ。
水平達は踊り子と一緒に踊る。
その中で、踊り子のローラ(アヌーク・エーメ)が目当ての水平フランキーがいる。
「また君と寝たいな」と。
森鴎外の『舞姫』を思い出した。
踊り子というのは、要するに、裏の顔は娼婦でもあるんだな。
万国共通だ。
ローラと店を出るフランキー。
ローラの部屋のベッドへ。
彼女は何と子持ちで、イヴォンという名の一人息子がいる。
一方、ローランは行き付けの本屋へ。
彼は本の虫である。
この本屋が、個人経営のこじんまりとした店である。
ああ、昔は本屋と言えば、こんな感じだったなあ。
今はチェーン店ばかりになってしまったが。
デノワイエ夫人が娘のセシルを連れて、本の返品に来ている。
夫人は、セシルのために小さい仏英辞典が欲しいという。
「当店には置いておりません」と。
当時のフランスでは、英語には需要がなかったのだろう。
フランス語に誇りを持っている人達だからな。
フレンチ・コネクション2』を見ても、ジーン・ハックマンはフランスで全く英語が通じなくて困っていた。
まあ、今の若い人達はさすがに英語を勉強しているらしいが。
で、ローランは、セシルを見て、「娘さんに似た彼女(=ローランのこと)を思い出した」と告げる。
もう10年も会っていない。
で、自分の持っている仏英辞典を彼女に貸すと申し出る。
余談だが、会話の中で、人工衛星のことを「スプートニク」と呼んでいる。
この時代は、未だスプートニクしかなかったのか。
その頃、ローラはフランキーに「私がすごく愛した男(=ミシェル)」の話しをしていた。
フランキーは、休暇が終わって、間もなくアメリカへ帰る。
ローラは、イヴォンを学校に迎えに行く。
一方、ローランは自分の部屋で辞書を探している。
見付かった。
辞書は『コンサイス』くらいのサイズである。
で、ローランは行き付けのカフェでカネを借りる。
ミシェルの母親が「別人だった」と落胆している。
ローランはゲーリー・クーパーの映画を観たと。
さすがに、ヌーヴェルヴァーグだけあって、映画の言及が多い。
ローランは、カフェで「美容院が求人している」という話しを聞く。
ローランは、街中でイヴォン連れのローラとすれ違う。
10年振りの再会。
ローラは結婚はしていないが、ダンサーをして、街から街へと渡り歩いていると告げる。
ローラとローランは今夜会う約束をする。
ローランは、求人をしている美容室へ。
店主からは、「仕事の内容についての質問はナシ」と念を押される。
明らかに怪しい。
仕事の内容は「カバンを持って旅をしてもらう」と。
運び屋か。
店主からは、「考える余地はない」と、前金を渡される。
その頃、デノワイエ夫人は何故かウキウキしている。
ローランが辞書を渡しにやって来る。
「英語話せる?」とセシル。
「一応ね」とローラン。
ローランは昔、父親とアメリカにいたという。
そして、セシルに似た幼友達(=ローラのこと)がいたと。
セシルはダンサーに憧れているという。
しかし、デノワイエ夫人は「ダンサーなんかなっちゃダメ!」と。
実は、夫人自身が元ダンサーだったらしい。
まあ、ダンサーの実態をさんざん見せられたからな。
ローランも不幸な生い立ちだったが。
で、セシルは雑貨屋に『メテオ』という雑誌を買いに行って、フランキーと知り合う。
彼がアメリカ人だと判ると、セシルは「英語しゃべって!」とせがむ。
子供が外国人に言うことは、どこの国でも同じだ。
だが、セシルはフランキーの英語を聞いても、「習いたてだから分からない」と。
フランキーは、この街の次はシェルブールに行くという。
ローラは店へ。
が、すぐに「約束がある」と言って出て行く。
店の前でフランキーとばったり会うが、振り切る。
ローランと待ち合わせ(しかし、子連れ)。
ローランは、「この10年、色々あった。今じゃ、典型的な落ちこぼれだ」と。
二人でレストランへ。
ローラは、14歳の時に好きだったミシェルの話しをする。
子供が出来て、彼は姿を消した。
「最低だ」とローラン。
「彼は戻って来るわ」とローラ。
「偶然出来た子は幸せになれない」とローラン。
ここで、ローランの不幸な生い立ちが明かされる。
二人、レストランを出ると、雑貨屋の前に、ミシェルの白いオープンカーが停まっている。
だが、二人とも、何も気付かない。
これは観客に対する伏線。
ローランはローラの部屋へ。
「悪い男ばかりじゃない」と彼女に告げる。
ローラはローランと別れて、店へ出勤。
エルドラドの前にミシェルの白いオープンカーが停まっている。
さあ、これからどうなる?
余談だが、ローランの吸っているタバコはラッキー・ストライクのようだ。
アメリカ出身だからかな。
本作には、14歳のセシルが喫煙するシーンがある。
これは、今では許されないだろう。
全体として、非常にヌーヴェルヴァーグ的な作品である。

Lola - Trailer