『天使の入江』

この週末は、ブルーレイで『天使の入江』を見た。

1963年のフランス映画。
監督は、ヌーヴェルヴァーグの名匠ジャック・ドゥミ
シェルブールの雨傘』は、中学生くらいの時に、京都の名画座で観た。
音楽は、『華麗なる賭け』『栄光のル・マン』のミシェル・ルグラン
ちなみに、衣装はピエール・カルダンらしい。
主演は、『恋人たち』『審判』『鬼火』『オーソン・ウェルズのフォルスタッフ』の大女優ジャンヌ・モロー
本作は、ジャック・ドゥミの長編第2作である。
モノクロ、ワイド。
軽快な音楽で始まる。
舞台はパリ。
銀行に勤めるジャンは、体調が悪くて、同僚キャロンの車で自宅まで送ってもらう。
ジャンは安月給で生活するのがやっと。
車なんか買えない。
キャロンの身分不相応な高級車に驚くと、彼は「ルーレットで大儲けした」と告白する。
もちろん、奥さんには内緒。
一度、大金をスッて、借金したのが奥さんにバレたことがあるらしい。
「お前もやってみろ」とキャロンの悪魔のささやき。
僕の父はギャンブルは一通りやったらしいが、僕は全くやらない。
得をするよりも、損をすることの方がイヤなんだ。
浪人中、一度だけ友人に誘われてパチンコに行ったことがあるが、1000円投入して、何事も起こらず、それっきり。
ビギナーズ・ラックなんかなくて、本当に良かったと思う。
ジャンの実家は時計屋である。
母親はもういない。
帰宅して、父親に、同僚の車の話しをする。
父親は呆れて、「来週には車を手放す。賭けで身を滅ぼす」と断言する。
そして、「もしもお前が手を出したら、家を追い出す!」と。
そりゃそうだろう。
翌日、勤務先に行くと、案の定、キャロンは昨日、大金をスッたという。
しかし、結局、ジャンは週末にキャロンと一緒にルーレットをしに行く約束をさせられてしまう。
キャロンは「有り金全てはたいて、勝負に出る!」などと、恐ろしいことを言っている。
市営カジノに行くと、実業家の夫人ジャッキー(ジャンヌ・モロー)が騒いでいて、従業員に追い出される場面に出くわす。
ルーレットで、キャロンは1万フラン、ジャンは控えめに500フラン賭ける。
キャロンは「5000以上じゃないと儲からない」と言う。
後に、ジャンは48万フランを「半年分の給料」と言う。
と言うことは、6で割ると、月収は8万フラン。
現在の日本円で20万円強と考えると、1万フランというのは3万円くらいか。
3万円を1回に賭けるとは、やはり金銭感覚がマヒしているな。
で、1発目のルーレットで当たって、ジャンは調子に乗る。
連勝。
しかし、引き際は心得ていて、ほどほどのところで「そろそろ帰ろう」と言い出す。
結局、ジャンは48万フラン、先輩は41万フランを得る。
前述のように、給料の半年分というから、150万円くらいを1時間くらいで儲けた計算だろう。
ジャンは帰宅して、父親に、「賭けで稼いだから、3週間、旅行に行く」と告げる。
父親は、そんな息子に「出て行け!」と言い放つ。
ジャンはニースへ。
本作は、当たり前だが、フランスの地理を知らないと、理解出来ない。
しかし、僕はパリが北にあるということくらいしか知らない。
安宿に泊まる。
2週間予約したが、カジノに行くと言うと、「前金で」と言われる。
すぐに宿代も払えなくなるということだろう。
そして、カジノへ行くと、例のジャッキーがいる。
二人で賭けて勝つ。
更に、連勝。
銀行員の性なのか、ジャンはほどほどのところで、「もう帰ろう」と言い出す。
結局、ジャッキーは85万フラン、ジャンは90万フラン勝った。
二人で出て行く。
「さっきまで一文無しだったのに、人生って面白い」と、下らない格言めいたことをほざくジャッキー。
彼女は、全部スッたら、友達のところへ行くのだという。
僕だったら、ギャンブルで文無しになって頼って来る友人なんか、絶交だな。
そんなカネはない。
ジャッキーは勝ったので機嫌が良くて、「ごちそうする」と。
最高級のレストランへ。
本当に、あぶく銭だな。
アメリカの小説みたいだな」とジャン。
二人は踊る。
ジャッキーは本物のギャンブル依存症であった。
ギャンブルが夫にバレて、「やめてくれ」と言われたが、無理なので、離婚した。
息子の親権も元夫に。
うわ、ロクでもない人生だな。
酒を飲んで気分が良くなったジャッキーは「運が向いて来た」と、またカジノへ戻る。
今度は大負け。
二人とも全額スッてしまう。
「もう二度としない」とつぶやくジャッキー。
ウソばっかり。
今まで何万回、そんなことを言っては破って来たのか。
アル中が二日酔いになって、「もう飲まない」と言うのと全く同じだ。
で、カネがないので、駅の待合室に泊まるというジャッキーに、ジャンは「それならば、僕のホテルへ」。
部屋で抱き合う二人。
さあ、これからどうなる?
銀行員がギャンブルに手を出してもいいのか。
それにしても、本当にロクでもない。
人間のクズを見事に描き出している。
日本に公営カジノを導入しようとしている維チンは、こんな人間を大量に生み出そうとしているのだ。
コロナで大人気の吉村がパチンコ屋を叩いた理由は、カジノの邪魔になるからである。
要するに、単なるクソ野郎じゃないか。
ホント、どいつもこいつも。
ジャッキーはジャンに、二人の関係を「私たちはただの賭け仲間よ」と言い切る。
彼を連れまわした理由は、「幸運をもたらすからよ」と。
もう若くもないのに、痛々しい女だ。
「賭けのいいところは、贅沢と貧困の両方を味わえること」とジャッキー。
そんなジェットコースターみたいな人生はイヤだ。
平凡が一番。

La Baie des Anges (1962) Bande Annonce VF [HD]