『悪魔の発明』

この週末は、ブルーレイで『悪魔の発明』を見た。

1958年のチェコスロバキア映画。
監督はカレル・ゼマン
原作はジュール・ヴェルヌ
H・G・ウェルズと並ぶSFの父。
小学生の頃、市立図書館で借りた『地底旅行』を夢中で読んだ。
リチャード・フライシャー監督、カーク・ダグラス、ジェームズ・メイソン主演の映画『海底二万哩』も非常によく出来ている。
これは独特の作品である。
カレル・ゼマンチェコのアニメ、特撮監督。
本作では、銅版画調の美術に、実写や人形アニメを組み合わせて、独特の世界観を構築している。
モノクロ、スタンダード・サイズ。
不穏なテーマ曲から始まる。
主人公のシモン・アールは、人類の進歩を信じて生きている。
蒸気船やら人力飛行船、潜水艦など、どこかクラシックな乗り物が多数登場。
蒸気と電気が人類を飛躍的に発達させた。
アールは大西洋を客船に乗り、次は汽車に乗り換えての旅。
目的地は療養所。
天才発明家ロック教授のもとへ。
アールは教授を師匠と仰いでいる。
世紀の発明までもう少しのところまで来ていた。
嵐の夜、沖合に停まった船から一隻のボートがロック教授の住まいの方へ。
怪しい連中が上陸し、家内に侵入する。
アールと教授は拉致された。
連日、捜索が続けられた。
洋上のダルティガス伯爵の軍艦にも捜索隊がやって来る。
捜索隊は船内を捜すが、何も見付からない。
船長と伯爵が乾杯する。
伯爵は自分のことを「閣下と呼べ」と命じる。
伯爵は教授を丁重にもてなした。
「ようこそ。無礼をお許し下さい。私の王国をご覧下さい。」
教授は助手のアールがいないと不安がる。
そんなことは意に介さず、伯爵は「潜水艦の発明で、私は海の王になった」などとのたまっている。
「工場も研究所もお使い下さい」と教授に言う。
一方、アールは船内の別室に監禁されていた。
ロック教授は船の甲板に招かれる。
船長のスペードと科学者のセルコを紹介される。
洋上を航海していた商船アメリア号と遭遇。
部下に「いつものようにやれ」と命じる伯爵。
潜水艦が海中へ。
アールは潜水艦の牢獄に幽閉され、今回の出来事を日記にしるしていた。
潜水艦の中では、海賊達が刀を研いでいる。
連中は、潜水艦に乗って、アメリア号の船底に突撃。
大きな穴が開き、そこから浸水して、タイタニック号のように沈むアメリア号。
海賊達は、船内に侵入して、お宝を奪う。
「潜水艦は恐ろしいことに利用されている。海賊達に盗まれたのだ。」
海上で女性の遭難者が助けを求めている。
海賊達が救助する。
船内で、自分のドレスにアイロンをかける女性。
このアイロンというのが、火でコテを熱して…という古典的なものである。
船長がそれを見付けて、「ここで何している」と怒る。
潜水艦は、伯爵の根拠地・バックカップ島へ。
教授の発明を実現させられる所はここだけだと。
潜水艦は、唯一の島への入り口である海底トンネルを通った。
その頃、アールはダルティガスの屋敷の対岸の朽ちた小屋で数ヵ月、生活していた。
教授は特別待遇だったが、アールは「教授が完成出来ない時は君の番だ」と船長から告げられる。
一方、教授は「抑圧されたエネルギーを解放する」と、研究に燃えていた。
要するに、原子力のことだな。
で、悪の伯爵は、原爆を作って世界を支配しようとしているのであった。
まあ、1958年と言えば、第五福竜丸事件の4年後だから、核兵器反対というのは極めてタイムリーなテーマだっただろう。
アールが言うには、教授は子供のように純真だと。
つまり、原子力エネルギーを見出した科学者に悪意は全くなく、それを悪用する連中が悪いのだと。
で、アールは「完成は近い。偉大な発明が悪魔の手に渡るのを阻止せねば」と、このことを世界に知らせるべく、文書を気球に結び付けて飛ばした。
さあ、これからどうなる?
ジュール・ヴェルヌの原作がどういうものだかは知らないが、これを19世紀末に書いているのだから、先見の明があるのだろう。
ストーリー自体は、現代人の目から見れば、ありふれているが。
それよりも、本作の映像は、絵なのか実写なのか、境目が分からない。
この技法が評価されたのだろう。
最後に、壮大なネタバレだが、ロック教授は芹沢博士だな。

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