『オズの魔法使』

この週末は、ブルーレイで『オズの魔法使』を6年ぶりに再見した。

1939年のアメリカ映画。
監督は、『風と共に去りぬ』のヴィクター・フレミング
本作は、テクニ・カラーである(一部モノクロ)。
風と共に去りぬ』もそうだが、この時代にカラー映画とは、さぞかし観客の度肝を抜いただろうと思われる。
製作は、『クォ・ヴァディス』のマーヴィン・ルロイ。
主演はジュディ・ガーランド
本作はスタンダード・サイズ。
ウィキペディアには、わざわざ本作の画面アスペクト比についての記述があるが、そもそも戦前にシネマ・スコープやヴィスタ・ヴィジョンがあるはずがない。
MGMのライオンの顔が違う。
最初はモノクロ。
主題歌は、有名な『虹の彼方に』。
舞台はアメリカ・カンザス州。
愛犬トトと一緒に野道を走るドロシー(ジュディ・ガーランド)。
家へ着く。
彼女は、ヘンリーおじさん、エムおばさん、下働きのハンク(レイ・ボルジャー)、ヒッコリー(ジャック・ヘイリー)、ジーク(バート・ラー)と暮らしている。
しかし、おじさん夫婦は彼女の話しを聞いてくれない。
「どこか遠くの国へ行きたいなあ」と、ドロシーは夢見ていた。
そして、『虹の彼方に』を歌う。
未だ少女なのに、いい声である。
大地主のミス・ガルチ(マーガレット・ハミルトン)が「トトに噛まれた!」と言って、家へ怒鳴り込んで来る。
「トトを処分しろ!」と。
ドロシーが断ると、トトは没収された。
ミス・ガルチがトトをカゴに載せて自転車を漕いでいると、トトは隙を見て逃げ出し、ドロシーの元へ。
ドロシーはトトを連れて家出する。
道すがら、マーヴェル教授というインチキな占い師に出会う。
インチキな水晶玉を覗いて、ドロシーは家へ飛んで帰る。
そこへ竜巻が来る。
この竜巻シーンはスゴイ。
実は、極めて単純な仕掛けで撮ったらしいが、CG満載の『ツイスター』もビックリの迫力である。
ドロシーは、この竜巻で、家ごと飛ばされてしまう。
彼女が気を失っている間に、家は着地する。
気が付いた彼女がドアを開けると、画面がカラーになる。
この演出がいいね。
ここまで約19分。
ドロシーがドアを開けると、そこは夢の国(魔法の国オズ)だった。
背景は絵である。
原色のセット。
夢のチョコレート工場』みたいだが、間違いなく、本作から着想を得ているのだろう。
そこへ、北の良い魔女(ビリー・バーク)が現れる。
大地主のミス・ガルチは、この国では、何故か悪い魔女であり、家の下敷きになって死んでしまった。
で、マンチキンという名の小人達がいっぱい出て来る。
本物の小人である。
これだけたくさん出て来ると、不思議な映像になる。
『フリークス』や『エル・トポ』を思い出したが、もちろん、本作の方がファンタジーである。
本作は、やはり歌や踊りがたくさんのミュージカルだ。
小さい人達が悪い魔女の死を祝う。
ここはマンチキン市というらしい。
市長まで出て来た。
そこへ、死んだ魔女の姉の西の悪い魔女(マーガレット・ハミルトン)が現れた。
顔が緑だ。
身体に悪そうなメイクである。
実際、本作では、メイクのアレルギーで降板した役者もいるらしい。
当時は、メイクの技術も未だ発展途上だったのだろう。
悪い魔女が消えた。
こいつは神出鬼没だ。
で、何の力か、死んだ魔女の履いていたルビーの靴がドロシーの足元に移る。
北の良い魔女は、「黄色いレンガ道をたどってエメラルドの都に行き、オズの魔法使いに会えば、カンザスへ戻してくれるだろう」とドロシーに助言してくれた。
という訳で、ドロシーはエメラルドの都を目指すことになった。
もちろん、愛犬のトトも一緒に。
このトトが、実に素晴らしい忠犬ぶりを見せてくれる。
いつでもドロシーの後ろを、テクテクと付いて歩く。
シッポを振り振り、とてもごきげんである。
可愛いね。
このワンコの名演技は、やはり映画史上に残っているのであった。
さて、ドロシーが黄色いレンガの道を歩いていると、道が幾つも分かれている所に辿り着いた。
彼女が迷っていると、道端のカカシ(レイ・ボルジャー)が案内してくれた。
カカシには脳みそがない。
だから、脳みそが欲しかった。
オズの魔法使いに会えば、脳みそをくれるかも知れない。
カカシは、ドロシーに「一緒に連れてって」と頼んだ。
途中、お腹が減ったので、森でリンゴをもぎ取ると、リンゴの木が怒った。
今度は、ブリキの男(ジャック・ヘイリー)を見付ける。
衣装が重そうである。
ブリキ男は心が欲しかった。
で、彼もドロシーのお供をすることに。
西の悪い魔女がジャマをして来るが、ドロシー達は負けない。
更に、森の中でライオンが登場する。
彼は、見た目は偉そうだが、実は臆病なのだった。
「勇気が欲しい。」
だから、ライオンもドロシー達と一緒に行こうということになった。
これで、桃太郎が犬、猿、キジを連れて行ったように、ドロシーはカカシ、ブリキ男、ライオン、そしてトトを連れ、鬼ヶ島ではなく、エメラルドの都へ向かうのであった。
ずっと歩いていて疲れたのか、ドロシー、トト、ライオンは眠くなって来た。
生き物は眠くなるのだが、カカシやブリキ男には、それが理解出来ない。
横になり、動かなくなって、どうしようかと思っているところへ、雪が降って来る。
ドロシー達が目覚め、喜ぶカカシとブリキ男。
一行は、ついにエメラルドの都へ。
さあ、これからどうなる?
クライマックスに登場するオズの大魔王は、まるでタイムボカンの悪の親玉みたいだ。
しゃべり方までソックリである。
もちろん、タイムボカンの方が真似たのだろう。
本作は、当時としては画期的な特撮が満載である。
いや、今見ても、驚かされるような出来栄えである。
これだけの特撮ファンタジーは、おそらく前例がないだろうから、撮影は、さぞ大変だったに違いない。
結末は、まあ予想通りなのだが、夢のある物語ではないか。
アカデミー賞作曲賞、歌曲賞、特別賞(ジュディ・ガーランド)受賞。

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