『タワーリング・インフェルノ』

この週末は、ブルーレイで『タワーリング・インフェルノ』を見た。

タワーリング・インフェルノ [Blu-ray]

タワーリング・インフェルノ [Blu-ray]

1974年の作品である。
70年代パニック映画の最高傑作。
138階建ての超高層ビルが炎に包まれる惨状を描く。
僕が子供の頃、「ゴールデン洋画劇場」などのスペシャルの際には、やたらとこの作品が放映されていたような記憶がある。
当日は、父も母も、かなり興奮していた。
もちろん、僕もこれまでに何度も見た。
僕はパニック映画が大好きだ。
当時のパニック映画は、基本的に「人間の愚かさ」をテーマにしている。
タワーリング・インフェルノ』は、ワーナーと20世紀フォックスの共同制作であり、スティーブ・マックイーンポール・ニューマンという二大スターの夢の共演。
他にも、フェイ・ダナウェイとかフレッド・アステアとか、大スターばかりが顔を揃えている。
さらに、大掛かりな撮影。
もちろん、CGなどない時代なので、セットに実際に火を放っているのだ。
スタントマンが耐熱服を着込んで、その上から火を付けて撮影したりしている。
文字通り「命懸け」の撮影である。
超高層ビルは、高さ30メートル以上のミニチュアを作った。
また、サンフランシスコの本物の消防隊員が千人以上出演しているという。
だから、これほどリアルな映画が作れたのだ。
ヘリコプターが強風で煽られて爆発するシーンや、展望エレベーターが宙吊りになるシーンなどは、今見てもスゴイ迫力である。
この作品では、スティーブ・マックイーンポール・ニューマンが「同格」になるように気を遣ったそうだが、僕は昼間から恋人とイチャイチャしているポール・ニューマンよりも、冷静に判断をしながら自ら現場に飛び込んでゆく消防隊長のスティーブ・マックイーンの方が、はるかにかっこいいと思う。
男だよ。
消防隊員を描いた映画と言えば、『バックドラフト』なんていうのもあったが、本作と比べれば、どうでもいい。
ポセイドン・アドベンチャー』(本作と同じスタッフ)と『タワーリング・インフェルノ』は、パニック映画の古典だ。
ちなみに、『ポセイドン・アドベンチャー』のリメイク『ポセイドン』は、本物のクソ映画だった。
名作のいい所を全部取っ払って、特撮をCGにすれば、ああいう映画になる。
今は、大人の鑑賞に耐え得るような特撮映画というのがほとんどない。
技術は進歩したかも知れないが、内容が子供だましなのだ。
70年代パニック映画の優れた点は、人間ドラマがきちんと描けていることに尽きる。
つまり、脚本がしっかりしているのだ。
ウィリアム・ホールデン演じるビル会社の社長など、その後のパニック映画でも踏襲される典型的な悪役である。
義理の息子役のリチャード・チェンバレンも然り。
彼が死ぬ場面は、正に芥川龍之介の『蜘蛛の糸』のような教訓に満ちている。
ドラマとスペクタクルが見事に融合したからこそ、この年の興行収入1位に輝いたのだろう。
余談だが、恋愛映画の聖典のような扱いを受け(そして、今や忘れ去られた)『タイタニック』は、正統派のパニック映画だと思う。
70年代のパニック映画のオマージュのようなシーンが随所に散りばめられている。
それはさておき、毎度同じことを言って恐縮だが、『タワーリング・インフェルノ』のような映画は、もう二度と撮れないだろう。
展開が早く(つまり、とっとと火事が起こる)、2時間45分もある映画なのに、全く飽きることがない。
本作はアカデミー賞の撮影賞、編集賞、歌曲賞を受賞している(作品賞にもノミネートされた)。
ラストが、ちょっとご都合が良過ぎるのが残念だが。
ブルーレイの巻末に収録されている特典映像のメイキングも、非常に興味深い。