『ハスラー2』

この週末は、ブルーレイで『ハスラー2』を見た。

1986年のアメリカ映画。
主演はポール・ニューマン
彼が主演した1961年公開の『ハスラー』の、25年越しの続編である。
この映画が公開された頃、僕は中学生だったが、本作の影響で「ビリヤード・ブーム」なるものが巻き起こっていたことは、よく覚えている。
僕は全く興味がなかったが。
お正月の「かくし芸大会」か何かで、堺正章が色んな技を披露していたような気がする。
監督はマーティン・スコセッシ
スコセッシと言えば、『タクシー・ドライバー』なのだが、彼が何故、既に伝説となっている映画の続編を引き受けたのだろうか。
ハスラー』はポール・ニューマンの大出世作であるし、もちろん代表作の一つである。
彼くらいのキャリアになると、代表作が何本もあって大変だ。
『暴力脱獄』『明日に向かって撃て!』『スティング』『タワーリング・インフェルノ』と、枚挙に暇がない。
いずれも、映画史上に残る傑作だ。
そもそも、続編が1作目を超えることなど、まずない。
続編の方が高く評価されているのは、『ゴッドファーザーPART.2』くらいだろう(僕は1作目の方が好きだが)。
続編というのは、当然ながら、1作目のヒットを受けて作られる。
一旦は完結している話を続けなければならないので、無理やり設定をひねり出す。
この時点で無理があるのだ。
制作上の自由が色々と制限される。
主人公のエディ(ポール・ニューマン)はもう50歳代。
前作でのミネソタ・ファッツとの死闘から25年。
現在は現役を離れ、酒のセールスをしたり、若いハスラーの胴元をしたりして暮らしている。
それでも、成功してそれなりにいい生活をしているのであった。
彼の車やコートが非常に偉そうである。
ある時、彼は鋭いキューさばきで容赦なく相手を打ち負かしているビンセント(トム・クルーズ)という若いハスラーを目に止める。
ビンセントに若き日の自分の姿を重ね合わせるエディ。
彼は自分の手で、ビンセントを最高のハスラーに育て上げようとする。
この映画は、音楽がいかにも80年代風で、ちと軽い。
風格がない。
ポール・ニューマントム・クルーズが並ぶと、正に「大人と子供」である。
若いトム・クルーズの目付きは、ちょっとディカプリオの若い頃と似ている。
80年代のトム・クルーズのポジションというのは、ちょうど90年代のディカプリオのそれと被るかも知れない。
今思えば、大変なもてはやされようだった。
僕にとって、トム・クルーズはちっとも好きな役者ではない。
僕の尊敬するスタンリー・キューブリックの作品でも、トム・クルーズ主演の『アイズ・ワイド・シャット』だけは見返す気がしない。
彼が出ている『宇宙戦争』は、映画館で観たが、途中で15分くらい眠ってしまい、ストーリーが分からなくなってしまった。
彼の出演作で印象に残っているのは『レインマン』くらいだが、これだって、当然ダスティン・ホフマンのおかげである。
トム・クルーズは有名だが、「いい役者だ」という声はあまり聞かない。
そんな彼が未だ若い上に、身の程知らずな若造の役を演じるのだから、見ていられない。
ゲーセンで遊んでいるところなんか、究極にバカっぽい。
それに、インチキなカンフーっぽい動き。
第1作の時のポール・ニューマンとは、同じ「若い」とは言っても質が違う。
まあ、時代の変化を表しているのだろうが。
エディは、こんなビンセントを育てるために、彼と、ビンセントの恋人カルメン(メアリー・エリザベス・マストランニオ)の3人で旅に出る。
この恋人は、ビンセントと違って、なかなか抜け目がない。
メアリー・エリザベス・マストランニオは『スカーフェイス』が映画デビューだったが、本作でも、癖のある役をうまく演じていて、アカデミー賞にもノミネートされている。
旅の場面は、ロード・ムービー風。
昔馴染みのプール・バーを訪れるも、そこが潰れていたりして、ちょっと哀愁も感じさせる。
今作のエディは、前作のバート(ジョージ・C・スコット)の役回りだが、彼ほど冷徹ではない。
むしろ人間味溢れていて、『初体験/リッジモンド・ハイ』や『プラトーン』にも出ていた名脇役フォレスト・ウィテカー演じるハスラーハスラーと見抜けず、金を巻き上げられてしまったりする。
こんな彼だから、胴元には向いていない。
一方のビンセントの方も、自分の感情の赴くままに動いているから、いかに技術があろうとも、ハスラーには向いていない。
「この二人がうまく行く訳ないだろう」と思って見ていると、案の定、早々に決裂してしまう。
ただ、「こうして置かないと、この二人が対決する見せ場が作れないのだろうな」と思って見ていると、やはり…。
まあ、続編というのは、こういうものである。
従って、僕は本作をあまり積極的には評価しない。
ラストは賛否あるのではないだろうか。
確かに、ポール・ニューマンは、その時々に応じて揺れ動く感情を立派に演じているが、特に本作の演技が(最も)素晴らしいとも思わない。
実績から考えて、「そろそろ彼にもオスカーを」ということで、アカデミー賞主演男優賞を受賞したのだろう。
アカデミー賞とは、そういうものである。
あと、カメラが動き過ぎて、酔いそうになるのが気になった。