『俺たちに明日はない』

この週末は、ブルーレイで『俺たちに明日はない』を見た。

俺たちに明日はない [Blu-ray]

俺たちに明日はない [Blu-ray]

1967年のアメリカ映画。
言うまでもなく、アメリカン・ニューシネマの先駆けである。
実在の銀行強盗・ボニーとクライドの物語。
舞台は1931年。
街並みや車など、古き良き時代のアメリカが見事に再現されている。
ボニーを演じるのはフェイ・ダナウェイ
本作で一躍スターになった。
美人ですね。
タワーリング・インフェルノ』や『ネットワーク』にも出ていた。
クライドを演じるのはウォーレン・ベイティ(ビーティではないらしい)。
この二人の出会いが唐突。
でも、この先の無軌道さを既に暗示している。
クライドは刑務所から出てきたばかり。
「職業は銀行強盗」と言ってのける。
ボニーは退屈な日常に飽き飽きしていて、こんなとんでもない野郎に惹かれる。
しかし、ありきたりの恋愛ものとは違う。
クライドは女を受け入れられない。
ボニーは、それでもクライドの男らしさに惹かれるのであった。
途中で仲間に加わるモスは、ちょっと頭の弱い兄ちゃん。
さらに、同じくワルであるクライドの兄と、何にも知らないその妻も、行動を共にするようになる。
よくもまあ、こんな奴らと簡単に仲間になれるものだが。
クライドの兄を演じるジーン・ハックマンがいい味を出している。
その妻は、もっと味がある(彼女を演じたエステル・パーソンズは本作でアカデミー助演女優賞を受賞)。
この作品は、登場人物のキャラクターが非常によく描かれている。
ボニーとクライドのメチャクチャな犯罪については、マスコミも大々的に報じている。
彼らは、貧しい人に同情し、銀行を悪役に見立ててやっつけてくれるヒーローのように扱われている。
襲った銀行の数も、スゴイことになっている。
保安官には屈辱を与える。
おまけに人まで殺してしまった。
いかにヒーロー扱いされようとも、社会的には極悪人なのだ。
彼らの華々しい活躍にも次第に綻びが生じ始め、結局は権力によって葬り去られる運命にある。
この転落っぷりが素晴らしい。
それから、この話は、やはり1930年代でないと成立しないだろう。
風景がのどかだ。
さらに、ボニーとクライドの衣装が、ものすごくオシャレである。
逃亡生活を送りながら、どこでこんなドレスやスーツを調達しているのか。
謎だ。
原題の『Bonnie and Clyde』を『俺たちに明日はない』とした邦題のネーミング・センスは称賛に値する。
いくらヒーローぶっても、社会的な悪はやがて抹殺される。
ボニーの母は冷徹にそれを見通している。
しかし、本物の悪は国家権力なのだ。
我々は断固として、国家権力と闘い抜かねばならない。
さもなければ、やはり「俺たちに明日はない」のである。
アカデミー賞助演女優賞、撮影賞受賞。