『アンタッチャブル』

この週末は、ブルーレイで『アンタッチャブル』を見た。

アンタッチャブル スペシャル・コレクターズ・エディション [Blu-ray]

アンタッチャブル スペシャル・コレクターズ・エディション [Blu-ray]

1987年のアメリカ映画。
監督はブライアン・デ・パルマ
デ・パルマがブレイクしたのは『キャリー』で、その後は『スカーフェイス』、そして、やはり本作になるのだろうか。
主演はケヴィン・コスナー
彼は本作でブレイクした。
その後、『ダンス・ウィズ・ウルブズ』でアカデミー賞作品賞・監督賞など7部門を受賞し、一躍時代の寵児となる(僕は、この映画はあまり好きではないが)。
それから、『JFK』も話題になったなあ。
でも、一方で『ロビン・フッド』とか『ボディガード』みたいな商業主義丸出しの映画に主演して、酷評される。
『ウォーターワールド』で大失敗し、『ポストマン』で終わった。
『ポストマン』なんか、何かの映画を観た時に予告編が流れて、館内が失笑の嵐になったからなあ。
今や、「あの人は今」に近い状態である。
共演はショーン・コネリー
さすがに渋い演技で、アカデミー賞助演男優賞を受賞。
更に、これまた本作でブレイクしたアンディ・ガルシア
僕が彼を初めて観たのは『ゴッドファーザーPART Ⅲ』だったが。
もう一人、チャールズ・マーティン・スミス。
彼は『アメリカン・グラフィティ』に出ていたな。
そして、正義の味方のこれら4人と対決する悪役は、我らがロバート・デ・ニーロだ。
今見れば、豪華スター揃い踏みといった感じだが、当時は、ショーン・コネリーとデ・ニーロ以外は無名に近く、地味なキャストだったようである。
みんな、本作の大ヒットでスターになったと言えるだろう。
実際、この映画は流行っていた。
本編を観ていない中学生でも、正月の「かくし芸大会」か何かで演じられたパロディを見て、みんな知っていた。
音楽はエンニオ・モリコーネ
映画音楽の巨匠で、本作でもいい仕事をしている。
でも、彼の名が世界的になったのは、何と言っても『ニュー・シネマ・パラダイス』だろう。
衣装はジョルジオ・アルマーニ
日本で、「高級スーツの代名詞」として、やたら持てはやされるようになったのは、この後か。
以上のように、かなりの豪華メンバーの手によって作られた作品である。
舞台は、1930年代、禁酒法時代のアメリカ・シカゴ。
僕は以前、この「禁酒法」というのに興味を持って、色々と調べたことがある。
要するに、「酒なんか止めちまえ」という勢力の声が大きくて、何故だか、こんな無茶な法律が通ってしまったのだ。
しかし、別に飲み過ぎなければ、酒なんて悪い訳でも何でもない。
大昔から人間は酒を飲んで来た。
「酒は百薬の長」という言葉まである。
倫理や道徳を、法律で取り締まってはいかん。
これは、今の日本にも言えることだ。
現在の日本では、行き過ぎた国家主義がはびこって、とんでもない法律が通りそうになっている。
こんなのを断固許してはならない!
と、話が逸れそうなので、元に戻す。
禁酒法は、酒の製造や販売は禁止したが、個人が飲むことまでは禁止しなかった。
さすがに、そこまでは無理だと分かっていたんだな。
そのおかげで、この法律はザル法となり、闇で酒は流通し続け、ギャングたちの資金源になった。
本作は、そういう時代を背景にしている。
リズミカルなテーマ曲から映画は始まる。
禁酒法のおかげで大儲けしたのが、有名なアル・カポネだ。
カポネを演じるのはロバート・デ・ニーロ
ハゲてるよ。
堂々の悪役っぷりだ。
彼は、本作に出演するために、わざわざ髪の毛を抜いたらしい。
いつもの「デ・ニーロ・アプローチ」だ。
最近、森山過去とかいう役者が、映画に出るために体重を増やして、「デ・ニーロ・アプローチだ!」などと騒がれていたが、本家の足元にも及ばない。
で、ギャングの抗争は激化し、密造酒を扱わない店は報復のために爆破されたりした。
最初に店が爆破されるシーンは、幼い女の子が巻き添えになり、残酷さを強調している。
政府は、こうした状況を打破するために、財務省のエリオット・ネス(ケヴィン・コスナー)を派遣する。
コスナーは偉そうなスーツで登場。
時計はハミルトンかな。
モリコーネの曲は、いかにも80年代テイスト。
雄大な曲と使い分けている。
悪の組織は巧妙に動く。
そうそう尻尾を掴ませない。
ネスは摘発に失敗し、屈辱的な黒星を上げ、おまけに、それが大々的に報道されてしまった。
それでも、彼は諦めない。
たまたま知り合った初老の警官ジム・マローン(ショーン・コネリー)に協力を依頼する。
ショーン・コネリーは貫禄がある。
さらに、警察学校の生徒だった新米のジョージ・ストーン(アンディ・ガルシア)と、財務省から応援に来た簿記係のオスカー・ウォーレス(チャールズ・マーティン・スミス)もチームに加わる。
まあ、この4人が集まるのは、ちょっと出来過ぎのような気がするが。
ストーンも、警察学校から抜け出したばかりなのに、あんなに活躍出来るかね。
元々テレビ・シリーズらしいから、話はさくさくと進む。
それにしても、経理にいきなり銃を持たせるかね。
少々、展開がマンガチック。
今度は4人で郵便局に乗り込み、初手柄を上げる。
アル・カポネは怒りに震えている。
部下をバットで制裁する。
この場面も残酷だ。
それにしても、カポネのスーツは生地に光沢があって、極めて偉そうだ。
彼は、市会議員まで買収して、ネスを脅迫する。
もちろん、そんなものには屈しない。
続いて、カナダとの国境で取り引きがあると聞いて、4人は部下を引き連れて遠征する。
大自然の中で馬を駆けさせ、いきなり西部劇調になる。
派手なアクションの末、ついに敵を一人確保した。
しかし、証人となるはずだったこの敵と、そして、オスカー・ウォーレスが暗殺されてしまう。
おまけに、警察の内部にまでカポネの手は回っていた。
正に、「警察の裏はドブ」。
悪はのさばる。
今度は、マローンまで殺されてしまう。
助演男優賞ショーン・コネリーが意外に早く死んでしまったので、驚いた。
彼が機関銃でハチの巣にされてもなかなか死なないのは、『スカーフェイス』を彷彿とさせる。
この後、有名な深夜の駅のシーン。
セルゲイ・エイゼンシュテインの『戦艦ポチョムキン』より、オデッサの階段のシーンのオマージュ(という名のパクリ)である。
階段から落ちる乳母車をめぐるスリリングなシーンだが、ちょっとスローモーションを多用し過ぎ。
いや、あまりにスロー過ぎて、かえってうるさい。
クライマックスの殺し屋を追い詰めるシーン。
殺し屋を見下ろすエリオット・ネスが、まるで『ダーティハリー』のよう。
殺し屋が落ちるシーンがいかにも合成で興醒め。
大事なシーンなのに。
それにしても、この映画は、正月の「かくし芸大会」なんかでよくパロディーにされたから、当時現物を見ていない僕でも知っているのだろう。
「『ゴッドファーザー』以来のギャング映画」という声もある。
しかし、『ゴッドファーザー』の格調の高さとは比べ物にならない。
音楽の流し方が、今時のハリウッド映画風。
曲はいいんだが。
最後のアル・カポネは、まるでコントだった。