『軽蔑』

この週末は、ブルーレイで『軽蔑』を見た。

軽蔑 [Blu-ray]

軽蔑 [Blu-ray]

1963年のフランス・イタリア合作映画。
監督はジャン=リュック・ゴダール
文句を言いながらも、ゴダール3連発である。
主演はブリジット・バルドーミシェル・ピコリ
ブリジット・バルドー(愛称BB。ちなみに、フランス語なので発音は「ベベ」)は、マリリン・モンローと並ぶセックス・シンボル。
ニュー・シネマ・パラダイス』にも、クソガキどもがバルドーの裸を見て興奮しているシーンがある。
本作でも、惜しげなく尻を見せている(なぜか尻ばかり)。
この頃は綺麗だったが、やはり寄る年波には勝てず、今や見る影もないお婆ちゃんになっていて、以前、無断で撮影したカメラマンを殴ったことがあったような(記憶が曖昧です。違っていたら、すみません)。
ミシェル・ピコリは、僕が初めて認識したのは『美しき諍い女』(ジャック・リヴェット監督)の画家の役だった。
この映画は、カンヌでグランプリを獲ったような作品なのに、日本のマスコミは「ヘア解禁」などという下世話なネタのみで大騒ぎ。
正に、このマスコミにして、この国民あり。
民度が伺える。
そもそも、映倫による検閲は芸術に対する冒涜だ。
また話が際限なくそれてしまいそうなので、この辺で止めておくが。
で、つまるところ『軽蔑』は、アンナ・カリーナとの私生活がうまく行っていないゴダールが、それをネタに一丁仕上げた作品である。
多分、アンナ・カリーナはヌードNGだから、脱ぎ脱ぎ女優のバルドーを主演にしたのだろう。
舞台となっている映画の都チネチッタの衰退ぶりは切ないが(当時でこうなのだから、今は推して知るべしだろう)。
そして、何故か大巨匠フリッツ・ラングが本人の役で出演(小学生の頃観た『メトロポリス』には感動した)。
そう言えば、『気狂いピエロ』にはサミュエル・フラーが出ていたな。
ゴダールも、大先輩には頭が上がらなそうだ。
ミシェル・ピコリ演ずる脚本家ポールはゴダール本人の投影。
アメリカ人プロデューサー・プロコシュの拝金ぶり暴君ぶりは、ハリウッドに対する抗議だろう。
登場人物が多国籍なので、言語も、仏・英・独が入り混じって、頭がおかしくなりそう。
おまけに舞台はイタリアである。
画面の色調は、相変わらず青・白・赤というフランス国旗の色で埋め尽くされている。
カプリ島を始めとして、イタリアの風景はとても美しい。
フリッツ・ラングが撮っている(という設定の)『オデュッセイア』は、失礼ながら学生映画のようで、訳が分からん。
彼の映画があまりに難解なので、プロコシュはポールに脚本の書き直しを依頼して来るのだが、これを引き受けるかどうかでカミーユ(ポールの細君)との間に隙間が出来てしまう。
まあ、何でこんなことでもめるのか、女心はよう分からん。
実際のゴダールアンナ・カリーナとの関係をかなり模しているらしいが。
アンナ・カリーナは単なる我がまま娘なんだろう。
結局、最初はカミーユがプロコシュを毛嫌いしていたのに、いつの間にやら何故か二人は出来てしまう。
それで、あのラスト。
気狂いピエロ』なんかよりもストーリーははるかに分かりやすいが、要するにゴダールの個人的な映画。
共産党のこともチラッと出て来る。
ゴダールに思い入れがない人には、何とも言いようのない作品かも知れない。