『大統領の陰謀』

この週末は、ブルーレイで『大統領の陰謀』を見た。

大統領の陰謀 [Blu-ray]

大統領の陰謀 [Blu-ray]

この作品を見るのは2回目。
ウォーターゲート事件」を題材にした、1976年のアメリカ映画。
「これぞ社会派」と呼ぶに相応しい作品である。
監督はアラン・J・パクラ
主演は、我らがダスティン・ホフマンロバート・レッドフォード
二大スター夢の共演だ。
他にも、ジャック・ウォーデン(『チャンス』の大統領役)、マーティン・バルサム(『サイコ』『トラ・トラ・トラ!』など)、ジェイソン・ロバーズ(僕が初めて知ったのは『ザ・デイ・アフター』)といった、渋い役者が脇を固めている。
更に、気付かなかったが、F・マーリー・エイブラハム(『アマデウス』『スカーフェイス』)も出ているよう。
あと、キャサリン・ロス(『卒業』『明日に向かって撃て』)がチラッと出ていた。
ダスティン・ホフマンロバート・レッドフォードとの、一瞬だけの再共演である。
と、まあ、役者はスゴイ。
ところが、僕は普段、新聞の国際面など滅多に読まない。
従って、「ウォーターゲート事件」と言われても、名前くらいは聞いたことがあるが、詳細は知らない。
40年も前のアメリカの事件だからなあ。
本作が公開されたのは、ウォーターゲート事件ニクソン大統領が辞任したわずか2年後だから、当時の(とりわけアメリカの)観客は、事件のことを鮮明に覚えていただろう。
多分、本作は観客が事件のことをよく知っていることを前提にして作られている。
だから、今の僕が見ても、背景がなかなか理解出来ないのだ。
特に、人名が大量に出て来るので、誰が何をした人なのか、いちいち覚えていられない(展開も早いし)のが辛い。
約2時間20分をこの勢いで駆け抜け、しかも最後は急ぎ足になる。
それだけ全体が大きい事件なのだろう。
仕方のないことなのだけれど。
ただ、役者の演技が確かなのと、編集のテンポがいいので、詳しいことは分からなくても、とにかく、『ワシントン・ポスト』の若い記者二人が、ほんの少しの手掛かりを辿りながら、巨大な陰謀事件の全貌を暴いて行くのだなということは非常によく伝わって来る。
単に見ているだけでも楽しめないことはない。
劇中、「ディープ・スロート」という謎の情報提供者が出て来て、これが胡散臭いなと思っていたら、実在の人物とのことで驚いた。
確かに、誰かが内部情報を提供してくれないと、こんな事件の実態はつかみようがないよな。
70年代というのは、世界的に政治家の腐敗・堕落が話題になった時代のようで、同じ頃、日本でも『金環蝕』(山本薩夫監督)という、これまたオールスターの壮大な疑獄映画が作られた。
こちらの方が、日本人には理解しやすいだろう。
それにしても、『大統領の陰謀』では、新聞記者の取材の仕方、裏の取り方が克明に描かれていて、興味深かった。
一軒一軒自分の足で取材先を訪ねる地道な方法はもちろん、特に電話の使い方が面白かった。
実は、僕が以前勤めていた会社が新聞沙汰になったことがある。
『読売新聞』の夕刊に記事が載ったら、その日の夕方、『毎日』『産経』『日経』から立て続けに電話が掛って来た。
僕はアルバイトなので、とりあえず電話に出る。
以下、再現。
記者「『○○新聞』と申しますが。」
僕「お世話になっております。」
記者「今日の『読売新聞』の記事の件について、どなたかお分かりになる方はいらっしゃいますか?」
僕「今、ちょっと分かる者はいないのですが。」
記者「そうですか。ではまた改めます。」
翌日の某新聞の朝刊を見たら、僕の会社の記事があり、末尾には「同社では『担当者不在のためコメントできない』としている」とあった。
「なるほど、新聞の記事はこうやって作られるのか」と、当時二十歳代の僕は思った。
あの時、「天皇制には断固反対です」などと言っておけば、翌日の新聞には「同社では『天皇制には断固反対』とコメントしている」などと書かれたのだろうか。
そんなはずはないな。
その前に、僕がクビになるか。
ところで、アメリカでは二大政党制がきちんと機能していて、国民も、マスコミも、自分のスタンスをはっきりとさせている。
かつての日本では「大企業・農家は自民党支持、労働者・学生は社会党支持」と、明確に分かれていた。
もっとも、社会党は政権を獲る気など全くなかったが。
今、ようやく自民・民主という二大政党の形だけは出来たが、民主党は公約を守らずに突然増税したり、社会的弱者であるはずのニートやフリーターが自民党を支持したり、とにかくメチャクチャである。
別にアメリカの真似をしろとは言わないが、国民がもう少し政治に関心を持って、民主主義が機能するように出来ないものだろうか。
もちろん、現在の日本で完全小選挙区制なんかにすると、国会が大阪維チンの会に乗っ取られてしまうので、それだけは避けなければなるまい。
まあ、今の日本のマスコミは、まるっきり国民の生活を第一には考えておらず、不世出の偉大な政治家である小沢一郎先生を理不尽極まりなくボロカスに叩く一方、我が国を不幸のドン底に陥れることが確定しているヒトラーよりも遥かに悪質な最低の下司チンピラ独裁者・橋の下なんぞを気色悪く礼賛するような偏向っぷりだから、期待するのも無駄か。
こんなクソ野郎が、下痢ピーで総理を途中で放り出した汚らわしいエセ愛国者とビッチビチのブリブリ小手先ペテン詐欺コンビを組んで日本を実効支配しようとしているのだから、この国も滅亡が近いだろう。
ま、政治家やマスコミの体たらくは、民度を反映しているのだから、如何ともし難いわな。
あまりの情けなさに、涙の代わりに反吐が込み上げて来る。
ちなみに、本作はアカデミー賞助演男優賞(ジェイソン・ロバーズ)、脚色賞、美術賞、録音賞の4部門を受賞している。