『レインマン』

この週末は、ブルーレイで『レインマン』を見た。

1988年のアメリカ映画。
監督はバリー・レヴィンソン。
製作総指揮は、『ザ・ディープ』『ミッドナイト・エクスプレス』のピーター・グーバー。
主演は、『卒業』『真夜中のカーボーイ』『大統領の陰謀』『マラソンマン』『クレイマー、クレイマー』『トッツィー』の名優ダスティン・ホフマンと、『ハスラー2』のトム・クルーズ
本作を見るのは二度目。
前回は、10年位前にDVDで見たと思うのだが、酔っ払っていたからか、内容を余り覚えていなかった。
今回は、ちゃんとシラフで見た(当たり前か)。
ユナイテッド・アーティスツ
カラー、ワイド。
タイトル・バックは港で船から降ろされる赤いランボルギーニ
音楽は全体的に軽い。
若いチャーリー・バビッド(トム・クルーズ)は、高級車のディーラーをしているが、経営が思わしくない。
常に自転車操業
恋人スザンナ(ヴァレリア・ゴリノ)とも、すれ違い気味。
彼女を乗せて車を飛ばしていたら、自動車電話(当時は高級品だっただろう)で父親の訃報が入る。
急遽、彼女を連れて葬式のために実家へ帰ることになった。
チャーリーは母親が幼い時に亡くなり、父親とは憎み合っていた。
恋人スザンナは紹介もしてもらえない。
遺言には、大事にしていた車1台とバラを残すとあった。
まるで、シェイクスピアが妻に残した遺産みたいだな。
僕が死ぬ時は、細君にもっとマシなものを残そう。
で、父親の遺産300万ドルは、匿名の受益者の信託財産になるという。
会社の資金繰りが火の車のチャーリーは、どうしても父の遺産が欲しい。
信託会社に行くが、ナシのつぶて。
チャーリーは、父の管財人であるブルーナー医師(ジェリー・モレン)に会うために、自閉症患者の施設に行く。
チャーリーは受益者の招待を何とかして聞き出そうとするが、ブルーナー医師は頑なにそれを拒む。
諦めて帰ろうとした時、スザンナの待つ車の中にレイモンド(ダスティン・ホフマン)という見知らぬ男がいた。
彼は、実はチャーリーの兄貴だという。
レイモンドは自閉症患者であり、彼こそが300万ドルの相続人であった。
しかし、彼にはカネの観念がないらしい。
レイモンドは記憶力がスゴイ。
一度読んだ本の内容は全部覚えている。
本棚には、シェイクスピアの『マクベス』や『ハムレット』や『十二夜』があった。
自閉症と言っても、程度は色々あるのだろうが。
ちょっと人とのコミュニケーションが苦手な位の人なら、僕も何人か知っている。
この程度なら「自閉症」とは言わないのだろうが。
だが、レイモンドのは、一人では日常生活が送れないレベルだ。
チャーリーはレイモンドと散歩をする。
と見せかけて、施設から車で連れ出してしまう。
ホテルへ行くも、レイモンドは部屋が違うと落ち着かない。
ダスティン・ホフマンの演技がスゴイ。
本当に自閉症患者のように見える。
申し訳ないが、彼と並ぶと、トム・クルーズはただのイケメン役者にしか見えない。
レイモンドは、スイート・ルームで、チャーリーがスザンナとメイク・ラヴ中に勝手に部屋に入って来て、テレビを見る。
読む本がないと、電話帳を熟読し、全部暗記してしまう。
スザンナは、チャーリーがレイモンドを遺産のために無断で施設から連れ出したことを知って、激怒する。
1年間、彼と付き合ったらしいが、あまりの身勝手さに、とうとう堪忍袋の尾が切れたのだ。
で、彼女は部屋を出て行ってしまう。
彼女がいないと、チャーリーはレイモンドの面倒を一人で見なければならない。
チャーリーが虐待しようとすると、レイモンドはそれを一々「暴行記録」としてノートに付けている。
チャーリーは、関係者に電話をして、「オレにカネを半分よこさないと裁判を起こす」と凄む。
人間、カネが絡むと嫌だねえ。
チャーリーは、仕事でロサンゼルスに戻らなければならない。
けれども、空港で、レイモンドは各航空会社の事故の件数と死者数を詳細に挙げ、どうしても飛行機に乗りたがらない。
それどころか、金切り声でわめく。
仕方なく、チャーリーは車でロスへ向かうことにする。
アメリカの地理がよく分からないが、「飛行機で3時間のところが、車だと3日掛かる」らしいから、反対側なんだろう。
で、今度は高速で事故渋滞に出食わす。
レイモンドは、「高速は危険だ」と言う。
仕方がないので、一般道へ。
ペーパー・ドライバーの僕でも、高速なら100キロ出せるが、一般道では60キロしか出せないことは知っている。
しかも、施設の習慣で、レイモンドは夜11時には消灯だと。
急いでホテルを探す。
翌日は朝から雨。
レイモンドには、「雨の日には外出しない」というルールがある。
もう、いつロスへ着くか、分からない。
チャーリーの仕事はパアだ。
他にも、色々と注文が多く、融通が全く利かないレイモンドに、ついにチャーリーはブチ切れる。
「精神科へ行くぞ!」
ところが、精神科の医者も、レイモンドの病気のことはよく知らない。
病名については、日本語だと漢字だから、一般の人でも大体の意味は想像が付く。
ところが、英語ではラテン語起源の難単語だから、誰も知らないということが結構頻繁に起こるようだ。
本作は、実はロード・ムービーなんだな。
アメリカの色々な場所の風景が実に美しい。
で、後半は、こんな自分勝手なチャーリーが、次第に兄弟愛に目覚めて行く。
いい映画だけど、ファンタジーだな。
障害者を描く映画としては、ちょっとご都合的な部分も多い。
まあ、ハリウッド映画だから、仕方がないが。
僕は、父が障害者だったので、一生面倒を見ることが、如何に大変で覚悟の要ることか、多少は分かるつもりだ。
だから、ラストは、まあ妥当だと思う。
アカデミー賞作品賞、監督賞、主演男優賞(ダスティン・ホフマン)、脚本賞受賞。
ベルリン国際映画祭金熊賞受賞。