『007は二度死ぬ』

この週末は、ブルーレイで『007は二度死ぬ』を見た。

1967年のイギリス・アメリカ映画。
「007」シリーズ第5作。
監督はルイス・ギルバート
脚本を、あのロアルド・ダールが書いているのが驚き。
主演はショーン・コネリー
共演は、『豚と軍艦』『日本沈没』『砂の器』『新幹線大爆破』『東京湾炎上』『八甲田山』『皇帝のいない八月』『連合艦隊』『零戦燃ゆ』『226』の丹波哲郎、『キングコング対ゴジラ』『三大怪獣地球最大の決戦』の若林映子、『キングコング対ゴジラ』『キングコングの逆襲』の浜美枝、『ミクロの決死圏』のドナルド・プレザンス、更に、シリーズの常連であるロイス・マクスウェルデスモンド・リュウェリンバーナード・リー等。
音楽は例によってジョン・バリー
プロダクション・デザインは例によってケン・アダム。
主題歌を歌っているのはナンシー・シナトラ
今回は、キャストからも分かるように、日本が舞台である。
面倒なので、ストーリーは省略する。
60年代の日本の様子がうかがえて興味深いが、突っ込みどころも多数。
以下に、気付いた点を羅列する。
本編は宇宙空間から始まる。
しかし、『2001年宇宙の旅』以前の映像なので、今見ると、ほとんどギャグである。
続いて、香港でのボンドと地元娘のベッド・シーン。
香港のシーンは、カンフー映画のようである。
そして、ボンドが撃たれて死んでしまう。
インチキ・エキゾチックなオープニング。
ゲイシャ・ガールのイメージ等が出て来る。
まあ、これが当時の(もしかしたら、現在も)白人の日本に対するイメージだろう。
で、ボンドは何故か生き返る。
余りに事情が呑み込めないので、口あんぐりである。
ボンドは、色々あって、東京へ行くことになる。
ボンドは「日本語はケンブリッジで習った」と言うが、日本語を話すシーンはほとんどない。
当時の銀座の景色が写されているが、人力車に着物姿の人々等、予想外に古臭い。
ボンドは相撲観戦に行く。
スモウ・レスラーが多数登場。
何故かボンドの隣の席が空いていて、そこに若林映子が座る。
二人は英語で会話する。
ボンドは大里化学とかいう会社に忍び込むが、この建物はホテル・ニューオークラだな。
大企業の社長室に、仏像や甲冑が置かれている。
更に、日本刀を振り回す力士風の男。
日本のイメージはこんなもんだ。
いつもは冴え渡っているケン・アダムのセットも、どうもウソ臭くてイカン。
どうでもいいが、ボンドが出て来るシーンは、皆セットかスクリーン・プロセスである。
本当に日本で撮影したのか、疑わしい。
丹波哲郎登場。
彼は、この頃から既に怪演振りを発揮している。
それにしても、我らが丹波哲郎が悪役じゃなくて良かった。
何故か、丸ノ内線にプライベート車両がある。
ウソつけ!
ボンド曰く、「人肌に燗したsakeが好き」と。
毎回、酒のうんちくが入るねえ。
浴衣を着るボンド。
風呂でボンドの身体を洗う女性達が、絶対に日本人には見えない。
ヘリで吊り上げた車を東京湾に落とすシーンがある。
これはスゴイ。
落ちた車は回収されず、今も海の底に眠っているらしい。
ボンドを迎え撃つチンピラ軍団が多数登場。
昔のヤクザ映画みたいだ。
ボンドは「神戸と上海の間の島」へ行く。
それって本州だろ!
地理がメチャクチャだ。
火口の下に秘密基地がある。
何か、ウルトラセブンっぽいな。
続いて、姫路城に忍者登場!
クロサワ映画ばりのチャンバラを繰り広げる。
もう、いつの時代だよ!
ボンド「タバコは命を救うって、CMみたいだな。」
そんなCM、現代ではあり得ない。
ボンド、日本人に変身する。
が、全然化けられていない。
不美人を差別するボンド。
全く、ヒドイ映画だ。
お箸を使うボンド。
とてもぎこちない。
ボンドが行った漁村の様子が、昔のゴジラ映画のようである(『ゴジラ(第1作)』『モスラ対ゴジラ』)。
つい40年くらい前には、未だこんな風景があったということか。
丸っきり日本に溶け込めていないボンドは、まるで缶コーヒーのCMのトミー・リー・ジョーンズ(宇宙人)のようだ。
ものすごく浮いている。
水着で火山に登る浜美枝
今、そんなことをしたら、「不謹慎だ」と抗議が殺到するだろう。
そして、スぺクターの親玉が初めて顔を出す。
本作は、日本人の目から見たら、もう何だか荒唐無稽過ぎて、言葉を失う。
それでも、1967年洋画興行収入1位(2位は『グラン・プリ』)。
ちなみに、日本映画の1位は『黒部の太陽』、2位は『日本のいちばん長い日』。