『1941』

この週末は、ブルーレイで『1941』を見た。

1979年のアメリカ映画。
監督は、『激突!』『続・激突!カージャック』『ジョーズ』『未知との遭遇』のスティーヴン・スピルバーグ
原案は、『ダーティハリー2』『地獄の黙示録』(いずれも脚本)のジョン・ミリアス
撮影は、『ローズマリーの赤ちゃん』『エクソシスト2』のウィリアム・A・フレイカー
編集は、『未知との遭遇』のマイケル・カーン
音楽は、『屋根の上のバイオリン弾き』『ポセイドン・アドベンチャー』『タワーリング・インフェルノ』『大地震』『ジョーズ』『ファミリー・プロット』『未知との遭遇』『スーパーマン』の巨匠ジョン・ウィリアムズ
出演は、『脱出』『ネットワーク』『大統領の陰謀』『エクソシスト2』『スーパーマン』のネッド・ビーティ、『卒業』『ジョーズ』のマーレイ・ハミルトン、『ダーティハリー2』のティム・マシスン、『グラン・プリ』の我らが三船敏郎、『ワイルドバンチ』のウォーレン・オーツ、『博士の異常な愛情』『ゲッタウェイ』『ブレージングサドル』のスリム・ピケンズ、『カサンドラ・クロス』のライオネル・スタンダー、『ジョーズ』のスーザン・バックリニー、『気狂いピエロ』(出演)のサム・フラー、『天国の門』のミッキー・ローク等。
本ディスクに収録されているのは、シネスコ・サイズ。
ドタバタ・コメディーだから、ストーリーを書いても内容はうまく伝わらないと思うが。
1941年12月7日、日本軍による真珠湾攻撃を受けて、アメリカ西海岸の住民は、「次は自分達が攻撃されるのでは」と恐怖していた。
これは字幕で出る。
本編は、1941年12月13日、南カリフォルニア州の沿岸から始まる。
早朝、霧で煙った海岸に1台の車が到着。
若い女性が降りて来て、素っ裸になり、海へ飛び込んで寒中水泳。
不穏な音楽が流れる。
いきなり『ジョーズ』のパロディー。
現われたのは、サメではなく、日本軍の潜水艦。
我らが三船敏郎が演ずるはミタムラ司令官。
何故か、攻撃目標はハリウッド。
しかし、羅針盤が壊れて進路を見失い、カリフォルニアの沿岸まで来てしまったらしい。
まあ、僕もアメリカの地理はよく分からんので。
それにしても、三船はこんなバカバカしい役を、大真面目に演じている。
だから、余計におかしい。
場面変わって、ハンバーガー・ショップで店長にどやされながらバイトをするダンス好きの青年ウォーリー(ボビー・ディ・シッコ)。
彼の頭の中は、ダンスと女の子のことでいっぱい。
店の客は、時節柄軍人ばかり。
客とドタバタ大乱闘を演じ、ウォーリーはバイトをクビになってしまう。
女達は兵隊さんに媚びる。
いつの時代も、どこの国でも、この構図は変わらんのか。
バイトをクビになったウォーリーは、洋品店で高級スーツを試着。
店員のオッサンは、「こんな若造がこんな高級スーツを買えるのか」と相手にしない。
僕も昔、新宿の英国屋(紀伊国屋本店の下)で、店員に全く相手にされなかった記憶がある。
屈辱的だ。
店員は、客を選んじゃイカンよ。
さて、ウォーリーは試着室でサイレンを鳴らす。
店内は、「すわ、日本軍の襲来か!」と騒然となる。
そのスキに、高級スーツを着たまま逃げる。
完全なドタバタですわ。
またまた場面が変わって、ジョーズみたいな顔のP40で大空を飛び回るワイルド・ビル・ケルソー大尉(ジョン・ベル―シ)。
本作は、色んな場面で、色んな登場人物を、並行して描いて行く。
僕の稚拙な文章力で、これをうまく説明するのは難しい。
ケルーソー大尉は、郊外のガソリン・スタンド(『激突!』の撮影をした場所らしい)に愛機を着陸させ、「ハイオク満タンに」と言う。
これもギャグのつもりなのだろう。
彼がカフェで油を売っている間に、燃料が満タンになったP40は勝手に動き始める。
その後ろで、爆発するガソリン・スタンド。
派手なコメディーだ。
続いて、大の女好きなバークヘッド大佐(ティム・マシスン)が登場。
彼の秘書は美女である。
何と、飛行機に乗ると発情するのだ。
と言う訳で、二人はセックス飛行中。
しかし、本作にストーリーはあるのか?
多少のお色気はあるのだが。
そして、またも味方の飛行機から間違って爆弾が落ちて、爆発。
爆発シーンは異様に多い。
今度はサンタモニカ。
高級スーツを着たウォーリーが、彼女に会いに来る。
父親はウォード・ダグラス(ネッド・ビーティ)。
ダグラス家は海岸にあるので、軍が庭に高射砲を設置することを(勝手に)決定した。
許し難い軍隊の横暴。
だが、戦争になれば、こういうことも日常茶飯なのだろう。
一方、ハリウッドを目指すミタムラ司令官率いる日本軍の兵士達は、ついにアメリカ本土に上陸した。
木を被って、見付からないように偽装。
でも、木がゾロゾロと動くので、明らかに怪しい。
そこへ、酒飲み運転のクリスマス・ツリー屋ホリー・ウッド(スリム・ピケンズ)のトラックがやって来る。
彼は日本軍の兵士が被っている木を、ツリー用に切り倒そうとする。
もちろん、兵士達は後ずさる。
その頃、ケルーソー大尉のP40は大峡谷を我が物顔で飛行していた。
で、例のクリスマス・ツリー屋は結局、日本兵に捕まり、潜水艦の中へ連れて行かれる。
「ハリウッドはどこだ?」と尋ねるミタムラ司令官に、「オレだ!」と言い張るホリー・ウッド。
要するに、日本人の英語の発音の悪さをバカにしているのだろうが。
でもね、そんなの外国語なんだから、当たり前なんだよ。
逆に、日本語の発音が素晴らしいアメリカ人だって、滅多にいない。
この間、NHKドナルド・キーンさんが日本語をしゃべっているのを見たが、やっぱり外国人発音だったよ。
あのキーンさんですらそうなんだから。
なお、本作にはドイツの将校が出て来るが、彼はドイツ語をしゃべっている(当たり前か)。
日本兵は、もちろん日本語を話している。
本作の日本人エキストラには、三船がかなり演技指導をしたらしい。
だから、日本人の描写は、ハリウッド映画にしては比較的マトモ(ただ、題材が題材なので、やっぱりヘンだが)。
それはともかく、本作を見ていると、アメリカ人は日本とドイツがキライなんだなと思い知らされる。
で、今度は、サンタモニカのオーシャン遊園地。
観覧車から敵機を迎え撃とうとするクロード(マーレイ・ハミルトン)。
この辺では、観覧車が一番高いんだな。
横浜のランドマークみたいだ。
観覧車のてっぺんまで行ったのに、実は高所恐怖症。
で、その頃、ホリー・ウッドは日本軍の潜水艦から逃げ出していた。
それにしても、この話しは長い。
一体どこに向かっているのか?
今度は、ハリウッド大通り。
ものすごいオープン・セットだ。
今回のアメリカ軍の総司令官であるスティルウェル将軍(ロバート・スタック)は、ディズニー映画『ダンボ』の大ファンである。
この非常時に、ハリウッド大通り沿いの映画館を貸し切りにして、『ダンボ』を観ながら涙を流している。
セリフまで一言一句、覚えているよ。
1941年製作の『ダンボ』がカラーなのに驚き。
さすがアメリカだ。
この頃のカラー映画と言えば、他に『風と共に去りぬ』と『オズの魔法使い』くらいしか思い浮かばん。
ちなみに、僕はこの『ダンボ』を子供の頃、テレビで見た。
スピルバーグは当初、この将軍役をジョン・ウェインチャールトン・ヘストンに打診して、断られた。
彼らは筋金入りの愛国者だから、第二次大戦を茶化して描かれるのが我慢出来なかったのだ。
日本なら、ネトウヨが怒り出すようなもんだな。
それでも、僕は民主党支持のスピルバーグの方が信用出来るが。
まあ、チャールトン・ヘストンなんか、『猿の惑星』を見ても、心の底では黄色いサルである日本人なんか、思い切り見下してそうだもんな。
日本人も、いつまでも中国や韓国を敵視していちゃイカンよ。
隣人なんだから。
しかしねえ、やっぱり「笑い」はアメリカとは合わないねえ。
本作の後半のミニチュア・ワークは素晴らしい。
ネタバレになるかも知れないが、僕は本作の、観覧車が転がって海に落ちるシーンを、僕は昔、特撮技術を紹介するテレビ番組で見たことがある。
その時は、「何じゃこれは?」としか思わなかったが。
スピルバーグキューブリックを尊敬しているので、『博士の異常な愛情』のパロディーみたいなシーンもある(もちろん、スリム・ピケンズが出ているからだが)。
最後は、これもネタバレになるが、『黄金狂時代』のまんま。
まあ、日本人にとって、イヤな結末ではない。
逆に言うと、アメリカ人にとってはイヤなんだろうが。
だから、興業的には苦戦した。
巨費を投じた大失敗作。
でもねえ、やっぱりリベラルの方がいいよ。
何かにつけて「日本が、日本が」を連呼するネトウヨなんか、反吐が出るね。
日本人なんだから、日本が好きなのは当たり前なんだから。
そればっかり強調するなよ。
なんて言うと、すぐに「反日だ!」だと。
アホか!
なお、本作は日本ではそこそこヒット。
1980年の洋画興行収入7位(1位は『スターウォーズ/帝国の逆襲』。ちなみに、邦画の1位は『影武者』)。