『グリース』

この週末は、ブルーレイで『グリース』を見た。

1978年のアメリカ映画。
監督はランダル・クレイザー。
主演は、ジョン・トラボルタ
彼にとっては、『サタデー・ナイト・フィーバー』に続く大ヒット作。
共演はオリビア・ニュートン・ジョン
もちろん、名前はよく知っているが、洋楽に全く疎い僕は、曲がすぐに思い浮かばない。
まあ、聴けば分かるのだろうが。
本作の舞台は1950年代のアメリカ。
作中に、マリリン・モンローエルヴィス・プレスリーが出て来る。
冒頭は海辺で戯れる二人。
夏休みに避暑地で知り合い、彼女はオーストラリアに帰らなければならないので、再会を信じつつ別れた。
突然トーンが変わり、ポップなアニメーションのオープニング・タイトル。
バックに流れるテーマ曲は有名。
新学期のライデル高校。
本作に出て来る生徒達は、どう見ても高校生には見えない。
ダニー(ジョン・トラヴォルタ)は、この高校の「T・バーズ」と呼ばれるグループのリーダーで、髪にグリースを塗り、黒い革ジャンとスリムなブルー・ジーンズでカッコ良くキメていた。
高校生のクセに、堂々とタバコを吸っているよ。
日本が戦後の復興に必死だった時代に、アメリカはこうだったのかねえ。
授業をサボる悪ガキ(オッサン)達。
アメリカの高校生は頭が悪そうである。
そこへ、転入生のサニー(オリビア・ニュートン・ジョン)がやって来る。
彼女はオーストラリアから、父親の仕事の関係でライデル高校に転校することになったのであった。
それにしても、トーンがコントのようである。
女性グループ「ピンク・レディース」は、PTAのママさんの集まりにしか見えない。
羽野晶紀ソックリなのもいるし、大阪のオバチャン軍団みたいだ。
実際、当時30歳代だった役者も多いようである。
登校早々、サンディ「ピンク・レディース」と知り合い、つるむようになる。
実は、冒頭の海岸で戯れていた二人は、ダニーとサンディなのであった。
ピンク・レディース」達は、サンディの夏の恋の相手がダニーと聞いてビックリ。
本編には、音楽が随所に挿入される。
そして、トラボルタ達は踊る。
一応、ミュージカル仕立てになっている。
そもそも、オフ・ブロードウェイの人気ミュージカルを映画化した作品だ。
リアルタイムで観た人達は懐かしいのだろうが、知らない者からすると、稀に見るハチャメチャでトンチンカンな映画である。
出来損ないの『アメリカン・グラフィティ』といった感じだろうか。
高校生(に見えないが)どもは、アメフト(?)の試合に沸く。
車を運転する高校生達。
更には、酒も飲む。
何と言うか、アメリカの高校って、こんなに自由というか、緩いんだね。
で、いよいよダニーとサンディの運命の再会。
ダニーは気持ちとは裏腹、仲間の手前、クールな態度を崩すことが出来なかった。
「こんな人だとは思わなかった!」
彼は一発でフラれてしまう。
まあ、高校生くらいならありがちな展開だな。
本作に出て来る高校生達は、やたら「クール」を連発する。
日本の高校生が「ヤバい」しか語彙がないようなものか。
ピンク・レディーズ」達は、ワインをラッパ飲みしている。
そんな高校生がいるのか。
ピンク・レディーズ」のアバズレどもから見れば、サンディはカマトトぶっている。
彼女だけ、全くノリが違うのだ。
まあ、とにかく大したストーリーはない。
50年代が舞台なので、全体的に古臭い。
特に、クルマは古い。
でも、出て来るのはチャラい若造(老けているが)ばっかりなので、クラシックな雰囲気は皆無だ。
そして、下品である。
ダニー達は、ポンコツ車を「稲妻グリース」に改造する。
本作は、ブルーレイの割には画質が良くないような気がする。
そもそも、撮影時にピンが甘かったのではないか。
ダニーは、体育の授業に参加するように先生から促される。
生徒が老けていて、まるで定時制のようである。
バスケ、レスリング、野球と、色々こなして行く。
そんなことをしている内に、ダニーとサンディはヨリを戻す。
何と言うか、登場人物はみんな個性的だが、それは外見の話しで、キャラがイマイチ立っていない。
みんな同じようにガラが悪く、頭が悪そう。
ただ、後半になると、リッゾが妊娠したり、フレンチーが高校をやめて美容学校に行ったりして、それぞれの動きが描かれるが。
さて、ライデル高校が、TV局の主催する全米高校ダンス・コンテストの会場に指名された。
そんなものがあるのか。
さすが、アメリカだ。
日本の高校に、修学旅行だとか体育大会だとか、旧制中学の軍隊的な行事が未だに残っているのとは大違いである。
ダンス・コンテストの当日。
TVカメラが古い。
リボルバー式の交換レンズだ。
ダニーとサンディは、ダンスでペアを組むことになっていた。
ちょっと、この辺は『サタデー・ナイト・フィーバー』っぽい。
ところが当日、別の女が強引にダニーを奪い、しかも優勝してしまう。
哀れサンディは涙をこらえることが出来ない。
またまた、すれ違う二人。
まあ、如何にも青春映画だが、最後まで見るには、なかなか忍耐がいる。
このノリには、どうにも付いて行けない。
しかしながら、みんな歌はうまい(歌詞はヘンだが)。
本当に実力のある役者が選ばれているのだろう。
日本の芸能界は、見習った方がいい。
若くて可愛いだけで、演技力も歌唱力もないのが、事務所のゴリ押しでドラマに出たり、CDを出したりしている。
こんなことをしているから、日本の芸能文化は、いつまで経ってもアメリカには勝てないのである。
クライマックスのカー・レースのシーンは、『ベン・ハー』のパロディ。
1979年の洋画興行収入3位。
ちなみに、1位は『スーパーマン』、邦画の1位は『銀河鉄道999』。
映画興行が、子供中心になり始めた時代だろうか。