『オレゴン魂』

この週末は、ブルーレイで『オレゴン魂』を見た。

1975年のアメリカ映画。
監督はスチュアート・ミラー。
主演は、『史上最大の作戦』『西部開拓史』のジョン・ウェインと、キャサリン・ヘップバーン
共演は、『2300年未来への旅』のリチャード・ジョーダン、『パピヨン』のアンソニー・ザーブ、『サイコ』のジョン・マッキンタイア、『ネットワーク』のレイン・スミス。
本作は、ジョン・ウェインアカデミー賞にノミネートされた『勇気ある追跡』(1969年)の続編らしい。
が、『勇気ある追跡』のブルーレイは未だ発売されていない。
まあ、僕は別にジョン・ウェインのファンでもなければ、西部劇のファンでもない。
ただ、70年代の有名な映画ということで、本作を見たのである。
僕の父は西部劇が好きだったが。
山と湖の美しい風景から始まる。
画質は素晴らしい。
画面はシネスコ・サイズである。
走る馬。
勇壮なテーマ曲。
夜、小屋の中でカネを分配する悪党達。
そこへ、ドアを蹴破って突入して来る片目の保安官。
コグバーン(ジョン・ウェイン)である。
瞬く間に悪党どもを撃ち倒してしまった。
舞台はアーカンソー州
アーカンソー州と言われても、クリントンが知事だったことが浮かぶくらいで、どんな所かはさっぱり分からん。
何せ、生まれてこの方、日本から出たことがないもので。
それにしても、オレゴン州じゃないのか?
場所が変わって、法廷。
コグバーンは、この8年間で64人もの容疑者を殺した。
余りに派手に人殺しをやり過ぎるので、パーカー判事(ジョン・マッキンタイア)に、「撃たずに逮捕しろ」と言われ、保安官のバッジを取り上げられてしまう。
今は、昔の無法地帯だった西部とは変わったのだという。
全盛期だった西部劇が衰退し、大スターだったジョン・ウェインもただの腹の出たオッサンになり、昔の名前で出ているという現実とダブる。
「変わったのだなあ」と、時代の流れを痛感させられる。
この保安官は、とにかくアル中であった。
ある日、荷馬車一杯にニトログリセリンを積んだ合衆国騎兵隊が、悪名高いホーク(リチャード・ジョーダン)をボスとする一味に襲われ、皆殺しにされてしまう。
酒を飲みながら、仲の良い中国人とカード遊びをしていたコグバーンは、賞金2000ドルと終身保安官の地位と引き換えに、ホークを逮捕してくれとパーカー判事から頼まれる。
一味には、コグバーンのかつての友人ブリード(アンソニー・ザーブ)も含まれていた。
コグバーンは、とりあえずバッジを返してもらった。
彼は、中国人に「言葉くらい覚えろ!」と言う。
外国人に無理矢理英語を使わせるとは、アメリカ人は傲慢である。
今の日本は、その傲慢なアメリカ人の策略に踊らされているのだ。
それはさておき、小さな集落にホーク一味がやって来る。
牧師の娘ユーラ(キャサリン・ヘップバーン)は子供達を逃がす。
本作には、インディアン差別が見られる。
西部劇が衰退したのは、ネイティヴ・アメリカンの描き方が難しいから、というのもあるかも知れない。
余談だが、キャサリン・ヘップバーンはかなり年を取っていて、父親である牧師と並んでも、到底親子には見えない。
どう見ても、「老夫婦」である。
ユーラは神を信じ切っていて、聖書の一言一句まで覚えており、相当気が強く、悪党にもおびえない。
だが、奴らは彼女の言うこと等全く聞きやしない。
とうとう悪党どもは教会の前でケンカを始める。
そして、止めに入った牧師が撃たれてしまった。
悪党どもは逃げ去る。
哀しむユーラ。
翌朝、そこへコグバーンがやって来る。
「Too late.」であったが。
首謀者は、やはりホークであった。
ユーラと、インディアンの青年ウルフは、コグバーンと一緒にホークに仇討ちをすると言い出す。
コグバーンは、何とかして彼女を思いとどまらせようとするが、結局、二人を連れて旅をすることになった。
途中、悪党からニトロを投げられたりと、危険な目にも遭う。
しかし、気の強いユーラは、そんなことにはちっとも動じない。
アメリカの風景は広大である。
その点が、マカロニ・ウエスタンとは違う。
コグバーンは、実に女性に対して差別的である。
こういう点も、ウーマンリブが席巻した後の70年代に、西部劇が衰えた一因ではないだろうか。
さて、悪党どもが引っ張っているニトロを載せた荷馬車の車軸が折れてしまった。
修理に一晩は掛かる。
しかし、ホークは「カネが第一だ。急げ!」と言い放つ。
この辺に、悪党のドンの冷酷な性格を表現しているのだろう。
保安官側と悪党側が交互に描かれて、物語が進行する。
ユーラは、とにかくよくしゃべる。
彼女には北部なまりがあるらしい。
片や、コグバーンは南部出身なのか。
アメリカの北部と南部の出身者がどう違うのか、正確には分からないが、要するに対比させたいのだろう。
コグバーンとユーラは合わないらしい。
日本で言えば、関東と関西の出身者の気質が違うようなものか。
どうでもいい話しだが、僕は京都出身、細君は東京出身である。
合うか、合わないか?
それは、ここでは言うのを控える。
ウルフが偵察に行って、悪党どもを見付けた。
悪党どもを迎え撃つ3人。
「逮捕する!」と宣言するコグバーン。
たった3人しかいないのに、さも保安隊が隠れているかのように見せかける作戦。
この巧妙な作戦が成功したのは、昔の恋人から習ったらしいユーラの見事な射撃の腕前による。
悪党どもは、ニトロを置いて逃げてしまった。
まあ、とにかく、このユーラというオバチャンは気が強いんだな。
コグバーン達は、3人でニトロを運んだ。
会話の中で、コグバーンは、前の奥さんに逃げられたということが明かされる。
ユーラは酒がキライであった。
聖職者というのは、本当に面白くない人種だね。
コグバーンは、すごい酒太りの酔っ払いである。
これじゃあ、奥さんも逃げるだろう。
僕も気を付けよう。
一方、荷馬車を奪われたホークは、復讐に燃えていた。
さあ、これからどうなるか。
クライマックスの急流アクションは、『脱出』ばりの見せ場である。
だって、ニトロを積んだイカダで川を下るんだから。
本作を見ながら、最も恐れたのは、まさかジジ・ババのメロ・ドラマにはなるまいな、ということであったが、さすがにそれはなかった。
まあ、その手前くらいまでは行くんだけどね。
年老いた大スター同士のメロ・ドラマなんて、今更誰も望んでいないだろう。