この週末は、ブルーレイで『怒りの葡萄』を見た。
- 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
- 発売日: 2017/10/04
- メディア: Blu-ray
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監督は、『わが谷は緑なりき』『荒野の決闘』『西部開拓史』のジョン・フォード。
原作はジョン・スタインベックだが、情けないことに未読。
音楽は、『荒野の決闘』『イヴの総て』『七年目の浮気』『西部開拓史』『大空港』のアルフレッド・ニューマン。
主演は、『荒野の決闘』『戦争と平和(1956)』『間違えられた男』『十二人の怒れる男』『史上最大の作戦』『西部開拓史』『ウエスタン』のヘンリー・フォンダ。
共演は、『十戒』のジョン・キャラダイン。
20世紀フォックス。
モノクロ、スタンダード・サイズ。
テーマ曲は、学校の音楽の授業で習った「赤い川の谷間」。
舞台は1930年代のアメリカ・オクラホマ。
長い一本道をこちらに向かって歩いて来る一人の男。
運送会社のトラックが停まっている。
「乗せてくれ」と運転手に頼む男。
2キロ先の家まで帰るという。
男の名はトム・ジョード(ヘンリー・フォンダ)。
出稼ぎの小作農。
人殺しで刑務所に4年いたという。
聞かれもしないのに、強引に自分のみの上を運転手に聞かせる。
トラックを降りるトム。
家の近くで、元説教師のケーシー(ジョン・キャラダイン)に遭遇。
彼は最早、説教をすることもないという。
トムは、刺されたからシャベルで殴り返し、相手の頭を潰したから刑務所に入っていたが、4年で仮出所して来た。
砂嵐が来る。
二人でトムの家に行くが、人の気配がない。
奥にミューリーという男がいた。
ジョード家は2週間前に伯父のジョンの所へ行ったらしい。
しかし、ジョン伯父の家もすぐに立ち退き、家族でカリフォルニアへ行くという。
この地域は強い砂嵐のため、小作制度を続けて行けない。
そのため、地主が立ち退きを命じたのだ。
ここに住んでいた者達はトラクターで追い立てられた。
仲間も食うために土地会社に寝返った。
トラクターでバリバリと家ごと潰すのである。
ヒドイ話しだ。
だが、ミューリーはこの土地から出て行けないと言う。
管理人の車がやって来た。
隠れる3人。
翌日、ジョン伯父の家では、ジョード家の人間が朝食を摂っていた。
彼らはカリフォルニアで800人の求人があるという話しをしている。
そこへ、トムとケーシーがやって来る。
トムは母親(ジェーン・ダーウェル)と再会する。
トムは家族みんなから「脱獄か?」と聞かれる。
そこへ地主がやって来て、「明日までにここを出て行け」と告げる。
固まってしまう家族。
彼らは家財を売って旅費を作った。
荷物をオンボロ・トラックいっぱいに積み込む。
このトラックが、本当に今にも潰れそうな代物で、ハラハラさせられる。
農奴の悲哀を感じさせられる。
運転席に乗れない家族は皆、荷台に乗る。
ケーシーも一緒だ。
正にパンク寸前である。
じいさんが「わしは行かん」と強行に主張する。
仕方がないので、鎮静剤を飲ませる。
登場人物の一人一人に強烈な個性というか、クセがある。
労働者階級独特の、とでも言おうか。
これが、この映画に説得力を与えている。
トラックは走り出した。
オクラホマから国道66号線をひた走る。
途中で休憩を取る。
じいさんはやはり「行きたくない」と言っていたのだが、卒中で死んでしまう。
葬式も出せないので、家族で野原に埋葬する。
悲惨な話しだが、この時点では、家族は未だカリフォルニアに夢を抱いていた。
警察に疑われないように、「人殺しではない」と書いた紙切れを瓶に入れ、傍に置いておいた。
元説教師のケーシーが祈りを捧げる。
じいさんは死んだが、相変わらずの大家族である。
夜、50セント払ってキャンプに泊まる。
トムの妹の旦那がギターの弾き語りを聞かせる。
彼は歌が上手い。
キャンプで一緒になった人達にも皆、色んな事情があった。
カリフォルニアの現地を見て来た人は、当地の悲惨な状況を語る。
500人の枠に、職のない3000人が押し寄せている。
賃金を下げられ、この人は妻と二人の子供を亡くしたという。
それも、栄養失調で。
ニュー・メキシコに入った。
ガソリンを入れ、カフェでパンを買おうとする。
店員は、貧乏人に対して露骨にイヤな顔をする。
でも、15セントのパンを10セントで売る。
子供達はキャンディーを欲しがった。
お代は見かねた他の客が払ってくれた。
ものすごく重い映画だが、わずかな救いか。
ニュー・メキシコを出て、アリゾナに入った。
ここは通過するだけである。
(と言うより、法的に途中で降りられない。)
羊の大群とすれ違う。
そして、雄大なコロラド川。
ここを越えたら、ついにカリフォルニアである。
アメリカの地理には全く疎いが、本作はロード・ムービーでもある。
ボロボロのトラックは荷物と人を載せ過ぎて、今にも倒れそうである。
家族はひととき、川で水浴びをする。
ばあさんは「じいさんに会いたい」とうわ言のようにいう。
トラックはガタガタである。
これから、この車で砂漠を越えなければならない。
ガソリン・スタンドの店員は「貧農め」と完全に見下している。
ばあさんの体調が悪かった。
砂漠を夜、越える。
昼間なら、渇きで死んでしまう。
それに、車がなければ、とても歩ける所じゃない。
検問で「荷物を調べるから、車から降ろせ」と言われる。
ボロボロのトラックに積み込んだ大量の荷物である。
降ろすのは大変な手間だ。
懇願すると、「野菜か種がなければ」と見逃してくれた。
ばあさんの調子が悪いが、医者は13キロ先である。
エンストでトラックを押していると、目の前に素晴らしい緑の景色が広がった。
だが、母親は「ばあさんが死んでしまった」と告げる。
実は、亡くなったのは検問の前だったが、止められると困るから隠していたのだ。
涙が出るね。
何が何でも一家で砂漠を越えなければならないという思い。
ばあさんをカリフォルニアに埋めると誓う。
ところが、彼らを待ち受けていたのは、想像を遥かに超える過酷な現実であった。
「働き場所なんかある訳ない」と告げられる。
摘み取りの仕事も1ヶ月前までだった。
「キャンプへ行け」と命じられる。
市内で泊まると逮捕だと。
大変な困難を乗り越えてやって来た移民は、どこまで虐げられるのか。
「うまい話しなんかない。煽ったヤツが悪い。」
3キロ先のキャンプには貧農が溢れていた。
途方に暮れる家族。
周りの子供達は、食い物を恵んでくれと群がって来る。
まるで物乞いの集団だ。
この映画を見ると、こんな時代を超えて、今のアメリカがあるんだということを思い知らされる。
保安官は資本家とグルである。
資本家に楯突く労働者に発砲する保安官。
その弾が一般女性に当たる。
何と悲惨な。
地主階級、資本家の搾取の実態。
立ち向かう労働者には、ものすごい葛藤がある。
それが克明に描き出されている。
母親役のジェーン・ダーウェルは大変な名演だった。
当然のように、アカデミー賞を獲っている。
故郷を追われた人達の悲哀。
まるでユダヤ人のようである。
しかし、同じ人間として、こんなのが見過ごせるか。
現在の日本も、格差・貧困が問題になっている。
もう、ずっと景気は悪い。
我々も、いつ失業者になるか、分からない。
この映画で描かれていることは、対岸の火事ではない。
何故、現代の日本では暴動が起きないのか。
アカデミー賞監督賞、助演女優賞(ジェーン・ダーウェル)受賞。